経理の畑

「経理の事情の押し付け」にならないコミュニケーションが、スムーズな作業の鍵。 社員20名規模の経理に聞く、現場との「共同月次決算」に必要な視点とは?

作成者: 固定資産管理|Jun 25, 2025 9:32:46 AM

月次決算をスムーズに進めるには、経費や請求書の提出、回収など、現場の社員からの協力が必要不可欠です。スケジュール通りに作業を進めるため、工夫できることには何があるのでしょうか。

今回は、さまざまな会社の経理を担当されてきたUさんに、月次決算の進め方について伺いました。

翌月20日前後までと余裕を持ったスケジュールで進行

――まずは御社の経理体制について、簡単にご紹介いただけますか?

Uさん:バックオフィス全体の管理を私が担っており、秘書業務の担当、労務の担当と各部門に分け、5名前後で全体を担当している形となります。

――今回のテーマは「月次決算」です。まず、御社のスケジュール感について伺っていきたいのですが、毎月、どれぐらいの時期に数字を確定させていらっしゃいますか?

Uさん:翌月20日前後を目指しています。

――ありがとうございます。月次決算は色々苦労があると聞きます。翌月20日に締めるまでの流れについてお伺いさせてください。

Uさん:月末で締めたのち、まずは請求書の発行業務を進めます。営業事務の方が営業人員からすべての情報を集約し、経理側に請求書の発行依頼があるという流れですね。請求書の発行までは3営業日以内というのが目標値です。そのため、5営業日ぐらいまでには売上が確定している形となります。

――営業事務の方が集約するんですね。受領請求書はどうされていますか?

Uさん:受領請求書につきましては、個人の業務委託の方が多かったり、こちら側でコントロールしづらいナショナルクライアント様がいらっしゃったりするため、少しバッファを持たせて10営業日をベースにこちらに請求書を送ってもらえるよう、社内に通知しています。

――発行請求書、受領請求書で締め切り日を変えてらっしゃるんですね。

Uさん:そうですね。さらに、受領請求書については、10営業日で揃ったあとに、記帳の担当者が5日ほどかけて記帳し、その間に法人カードの記帳、請求書に絡まない入出金の記帳も合わせて進行し、中旬頃には記帳が完了するというのが1カ月の大枠の流れになっています。

――おおよそ毎月どれぐらいの件数を処理されているんですか?

Uさん:発行請求書が20件前後、受領請求書が60から70件ぐらいかなと思います。

――なるほど、ありがとうございます。請求書の流れはわかりました。ちなみに社員の方にお願いする経費などはどのように締めていくのでしょうか?

Uさん:社員には月末後、1営業日で経費を出してもらえるようお願いしていまして、3営業日目で経費と勤怠を締めています。その情報を労務の担当者、社労士などに引き継ぎ、15日ぐらいに社労士側から給与明細が上がってくるため、それを記帳するという形ですね。

――経費はかなり早めに現場の方から取り寄せされているんですね!請求書、経費と伺ってきましたが、毎月ずれ込むことなく期日通りに進行できていますか?

Uさん:そうですね。ほぼほぼ遅れはない状態で進められています。

――すばらしいですね!スケジュール通り進行するにあたって、Uさんにとって大変なタイミング、意識しているポイントはありますか?

Uさん:弊社は広告費を回しているため、月次の利益が変わらないよう、広告費の計上月と売上の発生月がずれないようにするところに気を使っていますね。

――なるほど。月次決算の段階で金額を細かく一致させていらっしゃるんですね。

Uさん:はい。他社と比較してみても、弊社は預金残高と帳簿残高の一致や経費の金額など、諸項目についての一致は結構な粒度の高さで行っているかと思います。広告費の取り扱いになるため、一定大きな額の払い出しがあり、預金残高が足りないとキャッシュフローに大きく影響するため、ここだけは慎重にやっているという感じですね。

――確かに慎重に数字管理しないといけないですね。細心の注意を払って金額を合わせに言っていることがわかりました。

Uさん:そうなんですよ。本当にしっかり管理していく必要があるので、例えば使用しているビジネスカードの決済が上がってくるのが2カ月後だったりするので、後から2カ月前の月次を変えるといった計算をすることもあります。

経営視点で経費を理解。経営陣からの説明により、現場社員の理解度が向上

――スケジュールが大幅にずれ込むことはないというお話でしたが、経費など、社員の方が出すべきものもきちんと出してくださっているということでしょうか。

Uさん:基本は問題なく出してもらえていますね。人数が増えてきたこともあり、経費の提出が2営業日以降になったものは翌月に回すというルールのもと進めています。

――しっかりルールに沿った運用をされていらっしゃるんですね。社員の方たちに期日通りに経費を出してもらうために心がけている、コミュニケーションでの工夫はありますか?

Uさん:月末頃から「月初1営業日目がもうすぐですよ」と経理側から2度ほどリマインドを入れるようにしています。

それだけではなく、代表が毎月の定例の中で経費のあり方や使い方を社員に話すこともしていますね。経費の申請は、もちろん社員個人が立て替えたお金を受け取るためのものでもあるのですが、会社の経営面から見てもきちんとしなければならないという理解が社内に浸透しているのかなと思います。

――徹底されていますね。経営側から経費について話すとなると、使いすぎへの注意をするというイメージもありますがどのようなお話をされるんでしょうか?

Uさん:普通はそうですよね。しかし、弊社では逆に経費を使っていないことに対して代表から話があったこともあるんです。営業活動をちゃんとしているのかという方向の話で、経営目線で経費の論点や観点を伝えていることが、社員にも浸透しているのではないかというのが、経理としての印象です。

――使うべきところは使い、使わなくていいところはなるべく削減すると。素晴らしいですね。社員の方の意識への浸透が、スムーズな提出にもつながっていると感じられますか?

Uさん:そうですね。これまでにいろいろな会社で経理を経験してきて思うのは、経理の観点だけで「いついつまでに出してください」「期日を守ってください」と伝えるだけでは、結構守られないなと思うんですよ。それだと経理側の事情だけを汲んでくれと言っているようにしか受け止められないですから。悪く言うと、経理の作業効率の話だけを押し付けてしまう感覚になってしまうので、現場サイドにも「会社のためである」と理解をしてもらうことが、結果的に期日を守ってもらえることにつながるのではないかと思っています。

定例以外にも、代表と社員の一対一での面談や、役員陣と社員、社員同士の一対一の面談など、コミュニケーションの粒度が高い会社だと感じますね。

――経営・現場の垣根なくコミュニケーションが取られているのが月次決算にも活きているように感じました。月次決算の流れの話しに戻りますが、経営陣への数字の報告についてはいかがですか?

Uさん:代表も会計ソフトへのログインが可能であり、毎月のスケジュール感も把握していただいているので、締まった時期に自発的に見ていただいている運用となっています。そのため、月次だけではなく日次レベルでも把握しようと思えばできる状態ですね。

会社全体の予算管理表、事業計画表があるため、経営陣レベルにはそこで毎月の報告、数字合わせをしているところが大きいかと思います。その数字に対して、現場レベルの予算目標を意識するような話が上から出ているため、そのあたりが経営目標になっているところの1つかなとも感じますね。現場の社員たちも、現在の会社の売上や目標値を全員答えられるのではないかと思います。

――お話を伺っていて、月次決算のレベル感が非常に高い会社さんなのではないかと感じました。

Uさん:ありがとうございます。私自身、いろいろな会社さんと比較いたしましても、弊社はだいぶレベルの高いほうだと感じています。