経理の畑

少人数で業務を行う経理担当者必見!試行錯誤を経て実現した理想の処理方法とは?80名規模の会社の経理に聞く「月次決算」の進め方

作成者: 月次決算|Sep 5, 2025 1:39:25 AM

経理の毎月の仕事である月次決算。スムーズに業務を進めるには、どうしたら良いのでしょうか。

今回は、社員数80名ほどの会社で経理を務めるTさんに、自社での月次決算の進め方の現状や工夫についてお聞きしました。

「5営業日目で締め」が理想ではあるものの……

――まずは、御社の経理体制について教えていただけますか?

Tさん:実務を主に担当している人が1人、私も昔は実務を担っていたのですが、今は基本的に管理側となります。延べ人数1.3人程度で80人分の経理を回している感じです。

――少人数でご担当されているんですね!今回はそんな御社の「月次決算」について伺わせてください。まずはスケジュール感についてお聞きしたいのですが、毎月どのような予定で進められていますか?

Tさん:理想と現実とに少しギャップがありまして、理想は5営業日で締めたいのですが、何だかんだで7、8営業日になってしまっている感じですね。

――理想である5営業日締めの場合、そこまでの流れはどのような形になるのでしょうか。

Tさん:1、2営業日目は、経理側ではなく事業部側にやっていただくことが多く、私たち経理はまだあまり忙しくない期間となります。事業部には基幹システムから売上情報、仕入れ情報、工数、経費を締めてもらっていまして、遅くとも3営業日目までには処理を終えていたいというのが理想ですね。

――「工数」とは何ですか?

Tさん:開発途中で未納となっている案件を月末に期末仕掛として計上する必要がありまして、その際に工数で考えるようにしています。エンジニアがこの1ヵ月でその案件に何時間かけたのかを可視化し、給料プラス開発に必要な付帯経費を盛り込んだものを予定原価としている感じですね。

――「どれぐらい時間をかけたのか」のデータは、勤怠管理システムで管理されている感じですか?

Tさん:基幹システム内に機能があり、そこに「今日はこの案件に何時間入った」と申請してもらっています。基本的には週次で確定処理をしていまして、管理職がその週の稼働状況を確認し、確定する流れになります。

――こうした事業部からの入力作業が1、2営業日で終わっていてほしいと。

Tさん:そうです。3営業日には、売上、仕入れ、経費、工数までが終わっていてほしい感じですね。また、3営業日中に、取引先各社からの請求書も取り付けていただいています。続く4営業日には、基幹システムに入ってこない経費の流し込みをします。

――どういう経費が該当するんですか?

Tさん:全社のインフラ的なものや、私のいる管理部の経費などですね。基幹システムにはビジネス系の経費しか入っていないんですよ。

ここまできたら、5営業日目で最終的な調整をします。先ほど触れた期末仕掛として計上している未納品の開発案件の評価もしますし、部門間配賦もします。部門間配賦というのは、売上を持っていない開発部のコストをビジネス部門に配賦することですね。

――なるほど。

Tさん:全体のインフラに関わるポストのコストも各部に人頭割で配賦していますね。いわゆる管理会計的なところに踏み込むのが5営業日です。

――これが理想のスケジュールということですね。ただ、実際には7、8営業日にかかってしまうことが多いということでしたが、このずれは何が要因で起きているんでしょうか。

Tさん:現場の方々にお願いしている入力部分ですね。ただ、これは別にうちの社員たちがきちんとしてくれていないわけではないんです。むしろ、最近になって「意外とちゃんとやっているんだな」ということが見えてきました。遅れてしまうのは、社内での入力が終わったタイミングで、取引先から請求内容に変更依頼が来ることがあるらしく、そこの調整に時間がかかっているようなんです。

――なるほど。たとえば、どういうときに取引先から依頼がくるのでしょうか。

Tさん:軽めなものから重めなものまであり、軽めなものでいくと、明細部分の表現や検収日の日付など、会計上はあまり影響がないような修正が発生した場合ですね。

重めなものは、認識相違ですね。当社としてはちゃんと納品したというものに対して、「ここの開発まではまだやっていないんじゃないの?」というようなものです。説明をすれば大体調整できる認識のずれなのですが、その調整が月次の締め作業中に完結しないこともあり、売上金額を修正する必要が生じることがある感じです。

さらに、軽め重めに関係なく、会計上の影響の有無も関係なく、修正するとなるとシステムの締めを一旦解除する必要があり、そこの手間で時間を取られるんです。

――基幹システムとの連携が大前提となるため、確定させてから連携をするという運用フローにされているという感じですかね。

Tさん:そうですね。こういうルールにした背景には、以前、修正時にシステムの締めを解除してオープンにしっていたことから果、修正だけではなくいろいろな売上が入ってきていたという痛い目に遭ったケースがあります。要はこちらの想定以上の変動が生じてしまったんですね。

――想定以上の変動とは?

Tさん:たとえば、明細書の文言の修正だけなら、会計に取り込んでいても数字の部分は変わらないので通しちゃうんですが、修正して締め直したと言われたあとに見てみたら変に売上が入っていたという。そこでもう1回巻き戻す対応を求められたこともあったので、これだときついなと。全員が「もうこれでいい」となってから流し込みに着手しようというルールにしました。

――なるほど。先ほどあった工数の話にもつながりますが、途中段階で売上を計上したり請求したりするプロジェクトにおいて、取引先さんとの認識がずれないよう工夫されている点はありますか?

Tさん:フェーズごとに見積書を上げるようにしていますね。第1フェーズはこの機能開発までというように区切り、第1フェーズの見積金額はこれです、と最初に明示してもらうことで、請求もフェーズごとにできるようにしているんです。

社内での工数変化や採算がぶれる可能性はありますが、取引先との認識齟齬は防げるかなと。起こり得るとしたら、後付けで追加の工数が発生する場合くらいで、予定通りに進んでいればあまりもめることはないです。

月次決算段階での数字の一致は最低限に。数字の報告は現場管理職にも実施

――経理として現場の方とやり取りをすることもあると思うのですが、コミュニケーションを取る際に何か工夫されていることはあるのでしょうか。

Tさん:実はそこまで現場との連携がほとんどないのが正直なところなんですよ。限られた人数でこれだけの経理処理を担っていると、一つ一つの数字を掘り下げるには時間が足りませんから。上がってきた数字は合っている前提で進めている形です。

たとえば、当社からの請求書に誤りがあった場合は、業務の中で「おかしかったのでは?」という疑問が浮かび上がってくるので、現状でそこまでクリティカルな誤りをおかす体制にはなっていないんですよね。そのため、そうした数字面でのコミュニケーションはほぼないです。

――月次決算の段階でどこまでの粒度で一致させていくかも聞きたかったのですが、現場から上がってきた数字をしっかり処理していくという回答になる感じですかね。

Tさん:そうですね。預金残高と貯蔵品、印紙など現金同化物を一致させるようにしています。受領請求書と買掛金、売上は月次ではやらず、四半期ごとに確認していますね。買掛仕入れに関しては、一般システムと一致しているかどうかは確認しているという前提がありますが。

――月次決算の段階では必要最低限の項目だけを一致させるというやり方は、ずっと変わらない感じですか?

Tさん:いや、紆余曲折があったかなと思います。私が入社したのが2020年12月なんですが、そのときは外部の税理士事務所に経理業務をお願いしていたらしいんですよ。

そこから徐々に内製化していくなかで、当初は売上や仕入れに関しても検収が済んでいるのかというチェックをやっていました。ただ、それができていたのは12、3営業日で締めだったからなんですね。当時はほぼ私1人でやっていたのですが、試行錯誤しながらでもどうしても結構な時間がかかっていました。

その後、ここ1~2年で締め日が5~7営業日と変更されたことから、これまで通りやるのでは無理だということで、月次の段階ではやめようと整理し、今の形に落ち着いた感じですね。

――なるほど、ありがとうございます。最後に、月次決算後の報告書についてもお聞きしたいです。いつごろ出しているのか、どんな中身なのかお伺いしたいのですが、いかがでしょうか。

Tさん:一通り会計処理が入った状態になったら、速報値として財務諸表示を各種、関係者に展開しています。報告書といえるほどのものではないですが、一応締め日からプラス1営業日目に報告自体はしていると。

――スピード感もってご報告されているんですね。報告書はどうでしょうか?

Tさん:いわゆる報告書という形のものでいくと、今は第3金曜日に行っている定例の取締役会までに作成している形となります。内容は全社の予実対比ですね。今月の推移、クオーター単位での推移、通期での進捗を伝えつつ、今月はどうだったのかを記載しています。今月の情報に関しては、売上や経費のイレギュラーなポイントに絞って記載している感じですね。

あとは、現場の管理職向けにも業績の報告をしています。

――現場の管理職にも共有しているんですね。これはいつごろに行っているんですか?

Tさん:こっちは流動的でして、取締役会の翌週の木曜日にやれればという感じですね。そこで事業セグメントごとにPLをお見せし、管轄事業の状況をお伝えしています。

――現場の数字意識が高まりそうです。ずっとやられていらっしゃるんですか?

Tさん:経理業務を内製化し、ある程度軌道に乗ってからなので、4年ぐらいになるのではと思います。

――御社はグループインされている会社となるため、最終の月次決算が締まったあとは親会社に連携していく形になると思うのですが、こちらに関してはいかがですか?

Tさん:連結に必要なところだけ渡している感じですね。連結パッケージを上げるときに「これ、ちょっと違うのでは?」と指摘を受けることはありますが、会社の会計の仕組みを変えるところまでは求められていません。まだそこまでグループ社数が多いわけではないので、フラグの付け方を統一しなければいけないところまではいっていないのかなと。

親会社基準に合わせた科目の組み換えみたいなことはありますが、Excelを貼り付けたら親会社基準のPLになる形で整えているので。個社として科目の使い方に何か言われることはないですね。

――なるほど、理解できました。ありがとうございました!