経理の畑

答えはない!自社の身の丈に合った形で、無理なく適切な経理業務を。80名規模の会社の経理に聞く「請求書業務」をスムーズに進める秘訣

作成者: 請求書業務|Sep 10, 2025 1:21:08 AM

取引先が増えれば増えるほど、業務量が増える請求書業務。入金や支払いのミスを起こすことなく、適切に進めるにはどうしたら良いのでしょうか。

今回は、社員数80名ほどの会社で経理を務めるTさんに、発行請求書、受領請求書の業務の進め方についてお聞きしました。

リソースに限りのあるなかで、適切な経理業務を。「身の丈」に合った形を作る大切さ

――まずは、御社の経理体制について教えていただけますか?

Tさん:実務を主に担当している人が1人いまして、私は基本的に管理側となります。延べ人数1.3人程度で80人分の経理を回している感じです。

――Tさんは今の会社に来られる前は、とある大企業の子会社で経理をご担当されていたそうですね。

Tさん:はい、12年ほど担当していました。求められる基準が大企業レベルでしたし、監査対応や予実管理など経理以外の領域にも携わっていたため、監査が入ったときにどういったところがチェックポイントになるのか、何となく勘所がわかるようになりました。その経験は今も活きています。会社の身の丈といいますか、規模感に合ったレベル感で経理業務のやり方を考えられるようになったといいますか。

――身の丈にあった業務というのをもう少し具体的に教えていただけますか?

Tさん:中小企業が大企業と同レベルのことをするのはハードルが高いです。教科書通りのやり方がもちろん正解であるべきなのですが、そのあたりはいずれAIがあるからいいという話になってくるんじゃないかというのが私の意見でして。自分たちの身の丈に合った形にフィットさせ、動かしていける業務設計だけが、しばらく人のなかに収まっていくのではないかと思っているため、これからも身の丈に合った形で対応できるように考えていくことを見失わないようにしたいですし、部下たちにも伝わってほしいなあと思っています。

――ありがとうございます。では、そんな「うちの会社の身の丈に合った形」でどう進めているのか、あらためてお聞きしていきたいと思います。テーマは請求書業務です。まずは御社が発行する「発行請求書」について、一連の流れからお伺いできますか。

Tさん:請求書の作成フローに関して、特に弊社ならではのものはありません。基本的には基幹システムで作成、発行し、相手先の希望に応じた方法で送付しています。

推奨しているのはメールでの送付で、相手方がどうしても紙で送ってほしいと言われる場合は、紙でも対応していますね。あと、指定の電子請求受領システムがある場合は、そちらに準じています。なので、送付方法は3パターンですね。ちょっと課題感がありつつではあるのですが。

――どういった課題感でしょうか。

Tさん:送付方法が3パターンあることで、社内業務が複雑化するとまでは言いませんが、関係者がいろいろと出てきてしまうことですね。できれば、電子請求書の送付機能を使えるようにしたいんです。そこのフォーマットに載せ、確定ボタンをみたいなものを押すと、相手方のニーズに合わせてメールで送ってくれたり、紙で送ってくれたりできればなと。業務を社外に出すための入口として、電子請求書の送付機能を入れたいというのが課題感です。

――たしかにそれが実現するとかなり業務が簡素化しそうですね。。

Tさん:どうしても人の手が介在しなければならない部分はゼロにならないと思うのですが、どこまで減らせるのかという感じですね。

――具体的に何か動かれているんですか?

Tさん:情報収集を進めているのが現状で、展示会に行くなどして、弊社で活用できそうなもののあたりを付けています。ただ、優先順位が高い仕事ではないので、なかなか実際に手を付けられるところまではいっていない感じですね。

――楽にできるようになればいいですね。発行後、入金管理までの流れについても伺えますか。

Tさん:基本的に企業の情報が入っている基幹システムのなかでやっていますね。入金消込については、営業事務みたいな立ち位置の者が担当していまして、月末のタイミングで今月の入金データを出し、それに対してチェックを入れて消込するという地味な作業をしてもらっています。そこから漏れたものがないかを確認し、入金予定があるのに実績になかった場合、そのクライアントを担当している者に「今回入金がなかったけど、何か知ってる?」とコミュニケーションを取るという感じですね。

――基幹システムへの企業情報の登録は現場の方がやられているんですか?

Tさん:昔はそうでしたが、今は入金消込をしている営業事務にしてもらっています。この営業事務は私の管轄範囲内にいる、部下のような立場になるんです。中途半端な状況でマスター登録をさせない体制になっているという感じですね。

――こちらも効率的に登録作業ができるようになっているんですか?

Tさん:活用している課題管理ツール で、マスター申請に使うテンプレートを用意していまして、最低限必要な情報がないと登録できないという縛りをかけています。それにより、やり取りが半往復で済むようにしているんです。

――なるほど。今の進め方で注意していることはありますか?

Tさん:変な企業を登録してしまうことがないよう、営業事務の者に審査機能の一部を付与しています。リサーチやコンプライアンス系のチェックができる権限ですね。クライアント登録がきたら、それらをチェックし、一定の基準に満たしていれば大丈夫だから登録を進行、満たしていなかった場合は私に回してもらうフローを組んでいます。

――課題管理ツールに現場の方が入力し、それを営業事務の方がチェックし、問題がなければそのまま登録を進行、引っ掛かるところがあればTさんに回すという感じですね。

Tさん:そうですね。評点という形で表すようにしていて、評点と想定される取引金額で「私が見る必要があるもの」「ないもの」を分けています。たとえば、評点が50点以下で数千万単位の売上を上げようというときは、私に回してくれといった具合ですね。一定の基準について合意できているという感じです。

――徹底されているんですね。

Tさん:これは副産物的な話になるんですが、こうしてさばいているなかで、担当者が企業や取引額を自分ごと化し始めてくれたんでよすね。基準を満たしているものでも、引っ掛かるものがあったら私に回ってくるようになったのはいい効果があったなと。

――すごいですね。裁量権を与えられて仕事をすることで、担当者のスキル向上にもつながっているのかなと感じました。

Tさん:そうですね。先ほど話したような基準のところに関しては「私が責任を持ったうえで、あなたがさばいていいよ」ということにしているので、ある程度安心感を持ちつつ、吸収できるものはしつつという好循環を作れているのかなという自負はあります。

――企業登録の段階で評点を設けられていること、その評点の決める指標などは、かなり参考になる話ではないかと思いました。

Tさん:本来の流れでいくと、反社チェックをして契約書を締結し、クライアント登録するという段取りが役割分担され、それぞれの目線でOKだとなってからクライアント登録し、取引開始となるのが正解ルートではあると思っています。ただ、ここが最初に申し上げた「身の丈に合った形」の話になるのですが、この正解のやり方を人的リソースの限られた中小企業でやろうとすると、どうしても難しい部分があると言いますか、リスクをとらえきれない部分が出てきてしまうのではと思うんですね。

そのため弊社では、できるだけワンストップで、やり取りの往復が生じないようなやり方を設計しているという感じです。

――なるほど。最後に、会計システムへの仕訳計上についても伺いたいのですが、いかがでしょうか。

Tさん:CSVでのデータ連携をしています。人の手を介してCSVを加工してという流れですね。必要な項目だけ連携できるよう、上手くExcelを組んでやっていますというだけかなと。

受領請求書業務には、請求書受領・管理サービスと基幹システムとを活用

――では、次は「受領請求書」について伺っていきたいと思います。こちらもまずは一連の流れを教えていただきたいです。

Tさん:3営業日までに、現場の方に基幹システムに登録してもらうようにしています。基幹システムに入れるのは、外注に関するコストなど、案件に直轄するようなものですから、案件担当者が請求書を確認したうえで入れてもらう形です。

案件に紐づかない、たとえば家賃のようなインフラ的な経費や業務用ツールの利用料といったものは、請求書受領・管理サービス を使っていまして、そこからデータを取り出し、CSV経由で会計システムに取り込むという方法を採っています。こちらに関しては、CSVで貼り付けてポンと流し込みするだけなので、必ずしも3営業日目までということはなく、4営業日目の朝イチでも間に合うという感じですね。

――前者となる、現場の方がやっている外注先からの請求書については、毎月どれぐらいの数があるんでしょうか。

Tさん:おそらく50件ほどかなと思います。

――こちらは手打ちになりますか?

Tさん:そうですね。請求書を見ての手打ち作業となります。

――そうなると、ミスが起こる可能性もあるのではと思います。何かそのあたりの予防策といいますか、経理側からの声がけなど工夫されていることはあるのでしょうか。

Tさん:税率がらみのところなんかはちょちょこミスがありますが、正直システマチックにはできていないかなと。請求書の内容は、一旦すべて請求書受領・管理サービスに入ってくるので、そちら側のデータと入力されたデータとを照らし合わせ、「違うよ?」というやり取りをしている感じです。おそらく、どこの会社も同じような流れではないかと思いますね。他に何かいい方法があれば、ぜひ知りたいです。

――結果的に数字が間違っていたという場合、基幹システム側の数字の修正は現場の方、経理の方、どちらがされるのでしょうか。

Tさん:現場の方ですね。

――ありがとうございます。

Tさん:やろうと思えば基幹システムを入れなくてもいいんですが、入れないと基幹システム内で案件の採算がまるで見えなくなってしまうので、請求書受領・管理サービスだけではなく基幹システムにも入れているという感じですね。でないと、ちゃんと分析ができないよねということで。

――なるほど。それで請求書受領・管理サービスと基幹システムの2軸で管理されているということなんですね。次は支払い予定の管理から支払いまでの流れなのですが、こちらに関してはいかがですか?

Tさん:振込準備を始めるのは、大体毎月15日前後です。支払うべきものはすべて請求書受領・管理サービスに入ってきているので、そちらでデータを作って取り込むようにしています。あとは今月末からというイレギュラーなものがあるかないかというところを経理担当がチェックするという流れですね。

――最終的には、請求書受領・管理サービスの数字を見て経理の方がダブルチェックをするという感じですか?

Tさん:そうですね。担当者から振込データができたという連絡を受けたあと、私が請求書受領・管理サービスの請求書、会計の仕訳、振込データという3つの整合を確認しています。

――そこはTさんの役割なんですね。

Tさん:ええ。この正誤の確認方法がまだ道半ばでして、今のところは3つのブラウザーで3つのデータを出し、どんどん消していくというやり方になっています。どうやってもシステムチックにはできないなと。Excel内で3つのデータを整合させ、違算なしみたいなことができれば楽なんですが、今のところは作り切れていません。今後作りたいとは思いつつ、今のところは目でチェックしていく形で、最近も3時間ほどかけながら進めました。大体合っているという前提があるからこそ、無駄だなと感じるのかもしれません。

――確かに。ただ、合っている前提とはいえ、しっかりと数字を見ていかなければならないとなると、神経をかなり削るのではないかと思います。

Tさん:そうですね。まあ、慣れもありはしますけれども。

――そうですよね。ただ、そんな慣れているTさんで3時間かかるような仕事ではあるので、いずれはもっと効率的かつ正確にできる仕組みがあれば、チャレンジしていきたいということですね。

Tさん:そうですね。むしろ、人の手を介さない感じになればいいのかなと。会計ソフトでも請求書受領・管理サービスでもどちらでもいいので、CSVで人がデータを引っ張り出して、貼り付けてデータを作る過程が自動で流れていく仕組みができれば、おそらくチェックが不要になるんじゃないかなと。

――なるほど。3時間かかっているのを1時間にしたいではなく、ゼロにしたいということですね。

Tさん:そうです。

――ありがとうございます。では、最後になるのですが、仕訳計上するまでの流れについてです。基本的には発行請求書と同じかなと思うのですが、何か他にありますか?

Tさん:いや、計上のタイミングは発行請求書と同じです。いわゆる月末の振込時は、未払金と買掛金の相手科目預金は仕訳として図れるようになっているので、相手に着金したという銀行のデータを見たタイミングで計上するようにしています。本当にまれではありますが、振込先違いで返ってきたというケースもあるので、一応ここの実態を確認してもらってという感じですね。

――ありがとうございました!