経理の畑

毎週精算、即支払い。スピーディーなやり取りを実現するために“しないこと”とは? 1000名規模の会社の経理に聞く、「立替経費精算」

作成者: 小口現金/立替精算管理|Nov 28, 2025 3:54:51 AM

主に営業社員を中心に発生する立替経費。件数が多くなればなるほど、経理側の作業が増える仕事です。そのうえ、期日までに手続きをしてくれない社員もいるとなると、リマインドだけでも大変なことに……。日々、苦労していらっしゃる経理の方は多いのではないでしょうか。

今回は、社員数1000名ほどの規模の会社の経理部から、代表してTさんに立替経費精算の業務の進め方についてお話をお聞きしました。

経費精算システムを使い、領収書データをベースに申請・支払いまで進行

――まずは、御社の経理体制について教えていただけますか?

Tさん:現在、経理部は16名体制となります。販売管理をする人、財務会計をやる人、連結会計をやる人の主に3種で役割分担しています。販売管理、財務会計は基本的に全員がやっている状態ですね。

――ありがとうございます!今回は「立替経費精算」について伺いたいと思います。
立替精算をどのように進めていらっしゃるのか、まずは従業員からの収集方法を教えていただけますか?

Tさん:経費精算は、クラウド型の経費精算システムを使って申請してもらっています。領収書は申請時に写真撮影して申請する形です。そのデータがシステム上で電子帳簿保存法の基準にのっとって保存されるため、原本は収集していません。

――なるほど。経費はどのような内容が多いですか?

Tさん:経費精算の内容は、社員が立て替えたものが大半で、中身はほとんど交通費です。

――承認はどのようなフローで行われていますか?

Tさん:従業員が経費精算システムで申請を行うと、まずその社員の上長が承認します。その内容が経理に届くので、最終承認を経理にて行っています。

――ありがとうございます。近隣交通費以外の、出張のための仮払いは行われていますか?

Tさん:実は、うちは仮払いは行っていないんです。

――では、完全に領収書ベースでの精算をされている?

Tさん:そうですね。近隣交通費はほとんどが営業に限定されており、本当にたまに拠点間の行き来で発生する程度です。出張などの金額が大きい経費についても、毎週精算をしているので、仮払いの必要性はないかなと思っています。

――毎週精算をされているんですね。集計から振込までの流れを教えていただけますか?

Tさん:振込金額の集計から振り込むまで、経費精算システムで行っています。週1回、月曜日の決まった時間までに、上長から承認が下りて経理まで回ってきたものを対象にして、翌日火曜日に集計処理をし、支払いまで回すという流れになっています。その集計と銀行への振込データもすべて経費精算システムで作成されるので、データをそのまま銀行のサイト上に登録して処理するだけです。

――水曜日には従業員の手元に振り込まれていると。

Tさん:そうですね、水曜日には入っています。

――とてもスピーディーですね。そのスピード感であれば、確かに仮払いが無くても成り立ちそうです。では、その後の会計ソフトへの起票方法を教えてください。

Tさん:経費精算システムから会計ソフトへの仕訳は、API連携を活用しています。経費精算システムで集計を行ったのち、支払いと銀行への振込データを作るタイミングでAPI連携も同時に行い、会計ソフトへ起票しています。

――毎週火曜日に、会計ソフト側に経費精算の仕訳計上までが完了するということですね。

Tさん:そうですね。仕訳のタイミングは火曜日が基準になるため、1週間分の使用明細が、火曜日の伝票日付としてまとまって連携されていくイメージになります。

誰であっても不備は差し戻し。
「例外をつくらない」がルール厳守の空気を崩さない秘訣

――先ほど、近隣交通費のうち、拠点間の行き来は「たまに」というお話がありましたが、スポット的に発生する場合、社員の方が経費精算を忘れてしまうなんてことはないのでしょうか。

Tさん:ありますよ。

――あるんですね。そのときはどうされるんですか?たとえば「2週間前の経費精算を忘れていました」みたいな連絡がきたりするんでしょうか。

Tさん:いや、ふつうに申請を上げてきますね。何なら数カ月前のものを平気で上げてくる社員もいます。

――それは大変ですね。でも、基本は毎週なんですよね?「どれくらい前までならOK」みたいなルールはあるんですか?

Tさん:原則「毎週やってください」というスタンスではありますが、内容の確認は四半期で行っています。ただ、最近はそこまで厳密に確認はしていないですね。

――厳密に確認はしていない?

Tさん:社員が立て替えている事実がある以上、「払いません」ということはできないですし。

――たしかに、おっしゃる通りですね。

Tさん:ええ。やらざるを得ないんです(苦笑)。

――件数的にはいかがですか?精算漏れはそんなにはないのでしょうか?

Tさん:そうですね。件数も減ってきてはいると思います。

――なるほど。ある特定の社員の方が頻繁に申請漏れを起こしている場合、経理部の側から「ちゃんと週次でやってください」といった連絡を取ることはあるのでしょうか?

Tさん:「この人、ちょっとひどすぎるな」と気付けばやるかな、くらいですかね。

――ありがとうございます。精算にルーズな社員がいた場合、どうすればルールを守ってもらえるのかは、いろいろな会社さんでも課題なのではないかと思いまして。何か工夫されていることはありますか?

Tさん:それでいくと、特別な対応をしないように気を付けていますね。声の大きな人、役職の高い人が「じゃあ、今回は経理側で修正しておいてよ」ということは基本的には受け付けません。

――なるほど。

Tさん:不備があれば、問答無用で却下します。

――誰であろうと。

Tさん:そうです。やっぱり言われることがあるんですよ。たとえば、役員が経費精算の申請を上げてきたものの日付が間違っていて、「もう1回社長に承認をもらわないといけないから、このまま通してよ」とか。でも、問答無用で却下です。

――なるほど。

Tさん:そんなことをやり出すと、「この人が言ったらOK」とルールが曖昧になってしまいますからね。

――そうですね。ルールを絶対的なものとして守ってもらうために、例外をつくらない。大事な工夫だと思いました。ありがとうございました!