上司や同僚の急な退職。「引き継ぎ内容はまとめておいたから!」と言われても、いざその人の業務を引き継ぐとなると、やっぱり不安になるものですよね。
経理業務は特に属人化しやすい性質を持っているため、退職者が一生懸命まとめたつもりでも、実務では「あれ?これどうやるんだっけ?」と手が止まってしまうことは、経理の現場では“あるある”です。
今回は、そんな経理の引き継ぎで実際に起こりやすい「あるあるミス」や、「不十分な引き継ぎ」で起こった困ったエピソードを、経理担当者の声とともにお届けします!
Aさん:
引き継ぎ時に渡された月次決算のマニュアル。
ページ数は多いものの、よく見たら作成日が2年前。中身を確認しながら仕訳入力を進めたのですが、会計システムがバージョンアップしていて画面撮りが古く、マニュアルにある『〇〇ボタン』が見つからなかったんです!仕方なく、似たような名前のボタンを押して処理を進めてしまいました。
結果、翌月の上層部への報告資料に『仮計上分』が計上されてしまい、数字が大幅に狂っていると大騒ぎに。前任者に連絡して確認したら、『あのマニュアルはもう使ってないよ。新しいのは別のフォルダにあるよ』と…。最初に言ってほしかったです。
教訓:
マニュアルは常に最新版にしておくことが大切です。法改正やシステム変更があった際は、古い情報をすぐに廃棄し、最新版に置き換えるルールを徹底しましょう。また、マニュアルには作成日だけでなく、「最終更新日」を明記し、情報が最新かどうかのチェックフローを組み込みましょう。
Bさん:
引き継ぎマニュアルにはこう書かれていました。
「契約書用紙は適宜発注すること」
経理の歴も浅く、契約書用紙の発注なんて滅多にしていないイメージだったので、残りが少なくなったら発注すればいいんだろうな、ぐらいに思っていました。しかし、ある日営業部から「急ぎで契約書を10部準備してほしい!」という依頼が。慌てて棚を確認すると、在庫はゼロ…。「適宜」という言葉を頼りにしていた結果、営業部から「契約書が印刷できない!」と大慌ての電話が入り、社内は一時パニック状態に。
急いで印刷会社に連絡しましたが、特急対応のため追加料金が発生。しかも納品までに半日かかり、営業部のスケジュールにも影響が出てしまいました。
「適宜」という曖昧な表現が、余計なコストと時間のロスを招いた瞬間でした。
教訓:
「適宜」という表現は、判断基準が不明確で、担当者の経験や感覚に依存します。
特に、発注頻度が低いものは、在庫管理のルールが曖昧だとトラブルになりやすいのです。
「契約書用紙は残り○冊になったら発注」「発注は○週間前までに行う」など、数量・期限・条件を具体的に書くことで、迷いをなくし、業務の標準化を進めていくことが大切です。
Cさん:
引き継いだ直後、リース資産の途中解約というイレギュラーな事象が発生しました。今までの業務で発生したことがなかったため、マニュアルを確認してみると、マニュアルには『通常の契約時』の仕訳しか書いてなくて、解約時の処理が全く分かりませんでした。
検索しても何が正しいのか判断がつかなかったため、結局前任者に電話で聞くことになりました。「何年かに1回しかないからマニュアルに書くのを忘れていた」と謝られましたが、かなりヒヤヒヤしました…。
教訓:
マニュアルは「通常業務」を中心に作られがちですが、実際の現場では、頻度は低くても重要なイレギュラー業務が必ず発生します。例えば
などがあります。
こうした業務は、発生頻度が低い分、担当者が経験していないことが多く、マニュアルに記載がないと「どう処理すればいいのか?」と迷い、時間をロスします。さらに、誤った処理をしてしまうと、決算や税務に大きな影響を与えるリスクもあるため、引き継ぎ時に漏れがないか確認しておくことが大切です。
Dさん:
引き継ぎ後、決算処理がようやく終わり、翌期の会計データを入力しようとしたときのことでした。会計システムにログインするパスワードとは別に、会計データにアクセスするパスワードがかけられていたんです。今までそんな運用をしていると知らなかったため、大慌てでした。前任者しかパスワードを知らない状況だったため、急いで前任者に連絡してパスワードを教えてもらいました。幸い、業務に大きな支障は出ませんでしたが。もしあの時連絡がつかなかったら..とゾッとしますね。前任者は間違って入力されたら困るからパスワードをかけていたのでしょうが、そこも教えてほしかったです…。
教訓:
マニュアルは、操作手順だけでなくアクセス情報や権限設定の引き継ぎも重要です。これが抜けてしまうと業務がストップし、スケジュールに大きな影響を与えます。
会計ソフトや銀行振込システムのログインID・パスワード・権限申請の方法など、システム関連情報は別ページでまとめることが必須です。
さらに、セキュリティポリシーに沿って、パスワードは暗号化や社内管理ルールを遵守しましょう。
Eさん:
うちには取引先に請求書を送付するときに、個別のルールみたいなものがいくつかあって…。例えば、A社は「PDFでメール送付」、B社は「紙で郵送」、C社は「専用ポータルにアップロード」、みたいに結構細かくて。ところが、引き継ぎマニュアルには一部ルールがまとめられていない取引先があって、「この取引先ってどれだっけ?」と頭を抱えることに。結局、取引先に確認の電話を何件もかける羽目になり、月末の請求処理が大幅に遅延しました。
さらに困ったのは、支払条件や締日が微妙に違う取引先があって。ほとんどは末締めなんですが、15日締め翌月10日払いという特殊なパターンがあるんです。いつもはミスがないように前任者が直々に処理をしていたのですが、私は対応したことがないのですっかり忘れてしまっていて…。先方にも影響があることなので、きちんと聞いておけばよかったです。
教訓:
取引先ごとの個別ルールは必ず一覧化して記載しましょう。特に以下の項目は要チェックです。
こうした情報が抜けていると、後任者は「マニュアルを読んでも分からない!」状態になり、業務が止まります。引き継ぎ時には「取引先別ルール一覧」を作成しておくことが、トラブル防止につながります。
「マニュアルがあるから大丈夫」…本当にそうでしょうか?
実務で困らないためには、情報の質ときちんとコミュニケーションがとれる体制づくりが重要です。
この4つを意識するだけで、後任者の「どうしよう…」を減らすことができます。
もしもの時に困らないよう事前に確認しておくことが安心につながります。