経理の仕事に携わっていると、毎日のように新しい書類が手元に届きます。請求書、領収書、契約書、申請書、稟議書、そして決算書類。どの書類も業務に必要不可欠ですが、気づけば棚やキャビネットはぎっしりと詰まってしまいます。年度末に整理しようと思いたっても、量がありすぎるが故に「どこから手をつければいいのかわからない」という迷いの声が多く聞かれます。実際、経理の畑にも「保存期間が分からず捨てられない」「電子化したいが手間がかかる」「前任のやり方を引き継ぐだけで精一杯」といった悩みが寄せられています。
しかし、書類整理は“面倒な後回し業務”ではなく、経理の仕事をより効率的に、そして安心して進めるための基盤づくりです。一度仕組みを整えるだけで、翌年以降の負担は確実に減り、余計な書類を抱え込んでしまう不安からも解放されます。
本コラムでは、年度末に取り組むことで業務と気持ちがスッキリする、書類整理の考え方と実践方法を、“リアルな視点”でお届けします。
経理担当者の多くがつまずくポイントが、「どれを残し、どれを捨てていいのか判断できない」という問題です。判断軸が曖昧なまま整理をしようとしても、結局は“不安だし、全部残しておこう”となりがちです。ここで重要なのが、法定保存期間を正しく理解することです。
実は、経理書類の保存期間はひとつの法律で決まっているわけではなく、主に「法人税法」「消費税法」「会社法」の3つが影響しています。この違いを正しく押さえることで、「何年保存すべきか」が明確になり、書類整理の判断も迷わなくなります。
保存期間:7年
対象書類:帳簿書類(仕訳帳・元帳など)
取引書類(請求書・領収書等)
決算関係書類
棚卸表 など
青色申告の欠損金(赤字)が発生した年度、申告漏れや災害損失金がある年度については、10年の保存が必要
保存期間:7年
対象書類:請求書
領収書
契約書
見積書 など
※仕入税額控除に必要な「適格請求書(インボイス等)」
PDFなどで受領した電子取引の場合は、電子帳簿保存法に基づき、電子データのままでの保存が必要
保存期間:10年
対象書類:財務諸表/計算書類(貸借対照表・損益計算書等)
会計帳簿
附属明細書 など
法人税法よりも長い「10年」の保存が基準。実務では、安全性と管理のシンプルさのために「会計関連書類は10年で統一」の企業も多い。
法定保存期間を過ぎた書類は、原則として廃棄できるため、一番保存期間が長い会社法に基づき、10年を過ぎた書類は廃棄できると言えます。とはいえ、「後で必要になるかもしれない」「廃棄するのは不安」と感じられる経理担当者が多いのも実情です。そんなときに対応方法として考えたいのが、電子化による保存です。紙のまま抱え続ける必要がなく、棚の圧迫を防ぎながら検索も容易になります。過去のものをすべて電子化はしなくとも、これからの書類を電子化していくだけでも、数年後の書類の量は減らすことができます。
これらは、万が一紛失すると企業リスクが非常に大きい文書です。そのため、法律で定められている保存期間を超えていても安易に廃棄せず、「会社の存続に必要か?」という視点で判断する必要があります。
また、こういった永久保存が必要な書類こそ、電子化によって“検索性”を高めておくことが重要です。いざという時にすぐ取り出せる状態をつくることが、経理の安全運用にも直結します。
年度末の書類整理は、「今年こそは行いたい」と思いながらも、どこから始めればいいのか分からないことを原因に後回しになりがちな業務です。複数の経理担当者の声をもとに、今日から取り組みはじめられる4ステップをご用意しました。
経理にとって書類整理は、ときに“雑務”として扱われがちです。しかし実際には、書類整理が行き届いているかどうかは、日々の業務のスピードとミス防止に直結する極めて重要な要素です。
書類整理は手間がかかるものですが、来月や来年の安心と効率化のための投資だと捉えて、少しずつ取り組んでいきましょう。
また、この機会に電子化が可能かも併せて検討していきましょう。電子化は紙を捨てるための手段と認識されることも多いですが、電子化を行うことで、検索・共有が効率的に行えるようになり、経理業務において大きなメリットがあります。一度仕組みを__作れば、その後の運用が圧倒的に楽になるため、年度末という絶好のタイミングを活かしてまずは“捨てられない書類を電子化しておく”という第一歩から始めてみてください。