経理の永遠の悩み、「繁忙期は忙しい」は抜け出せないのか?
経理という仕事は、毎年・毎月・毎週、淡々と決まった定期業務がやってきます。月次決算、支払処理、給与、賞与、年末調整、支払調書、そして決算・申告……。カレンダーをめくるたびに押し寄せるタスクを前に、
「繁忙期は忙しくて当たり前、残業は仕方ない」
「改善したいけど、手を付ける時間なんてどこにもない」
そんなふうに思ったことはありませんか?
そう思うのは、経理の皆さまにとって“繁忙期の忙しさ”は避けられない宿命だと思われているからではないでしょうか。
業務改善したい気持ちはある。
生産性を上げたいとも思う。
でも、日々の仕事に追われていると「いまは無理」「時間ができたらやろう」と先送りしてしまいがち。その結果、繁忙期には毎年同じ問題が立ち上がってきます。
毎年同じところで詰まる
毎年同じようなミスが出る
気づけば残業が積み上がる
忙しくて改善に手をつけられない
…そして、また翌年も同じことを繰り返す。この負のループは、経理にとって避けられない宿命なのでしょうか?
なぜ「忙しくて改善できない」のか?その原因を探る
私たちが改善に着手できない最大の理由は、実は時間の不足ではなく「忙しさの終わりが見えないこと」にあります。常に忙しいと感じていると、脳は防衛本能として新しい変化(改善)を拒絶し、目の前の作業をこなすことだけで精一杯になってしまうのです。
しかし、経理業務には他の職種にはない大きなアドバンテージがあります。それは「いつ、どの程度の負荷がかかるか」が、あらかじめ決まっているという点です。
この予測可能性こそが、負のループを断ち切る最強の武器になります。忙しさに振り回される側から、スケジュールをコントロールする側へ。その第一歩が、年間業務の棚卸しと可視化なのです。
年間業務スケジュールを可視化して、閑散期を見つける
- 1. 年間業務スケジュールをざっくり整理し、閑散期を探す
- まずは、自社の経理業務を年間カレンダーに落とし込んでみましょう。そうすると「この時期は毎年ちょっと余裕があるな」という月が見えてきます。たとえばこんな項目を洗い出すだけでも、全体の流れをつかみやすくなります。
- 毎月の定例業務:請求、支払、月次決算、定例会議
- 季節のイベント:賞与、年末調整、支払調書、償却資産申告
- 毎年の恒例行事:決算、監査対応
- スポット業務:制度改正への対応
- リソースの変化:チームメンバーの長期休暇や異動の予定
- 他部署とのやり取りが増える時期
- こうして可視化すると、「ここは忙しい」「ここは比較的落ち着く」という波が自然と見えてきます。
- 11月は年末調整で動けないが、10月は比較的落ち着いている
- 5月の決算明けの6月は、実は一番まとまった時間が取れる
- ポイントは「忙しい月」だけでなく「比較的余裕がある月」をあぶり出すこと。経理は定期業務が多い分、逆に言えば “繁忙期が来る時期が読みやすい” 仕事でもあるのです。
- 2. 閑散期は「なんとなく過ごす」のではなく「改善に使う」
- 忙しくない月は、つい日常業務を淡々とこなして終わってしまいがちですが、その少しの余裕こそが、実は経理にとって最大の活用ポイントです。そこでおすすめなのが、「〇月は業務改善強化月間!」と決めてしまうこと。名前をつけるだけでも、取り組みやすさがぐっと増します。改善テーマは大きなものでなくて構いません。次のような小さな改善で十分な効果が生まれます。例えば、以下のようなちょっとしたことでも改善につながります。
- 担当業務の棚卸しと共有
→特定の担当者に負荷が集中するのを防ぎ、チーム全体でバックアップし合える体制をつくる
- マニュアルの見直し・更新
→手順書を最新の状態に保ち、繁忙期に「これどうやるんだっけ?」と迷うロスタイムをゼロにする
- 「毎年ここで詰まる」要因の特定と改善
→過去のつまずきポイントをあらかじめ解消しておくことで、いちいち調べて確認する手間をなくして業務を円滑に進める
- Excelシートのメンテナンス
→壊れかけの関数や動作が重いファイルを修正し、処理速度の向上と入力ミス防止を両立させる
- 他部署との連携や依頼ルールの再周知
→経費精算の期限や申請ルールを徹底してもらうことで、不備による差し戻しや催促の手間を減らす
- 前倒しできる業務の洗い出しと実行
→繁忙期にやる必要のない書類整理や事前確認を今のうちに終わらせ、ピーク時のタスクを分散させる
- このように1日で終わるような小さな改善でも、積み重ねていくことで繁忙期の負担を確実に減らすことができます。
- 3. 繁忙期を「ただ乗り切る」のではなく、「余裕を持って終える」
- 経理は「会社のお金を管理する仕事」というイメージがありますが、実はその役割はもっと広く、会社の未来をつくるための「本質的な仕事」がたくさんあります。
- 数字の分析による「気づき」の提供
- 精度の高い予算管理による経営への貢献
- より効率的な業務フローの構築
- こうした仕事に取り組むためには、やはり「精神的な余裕」が欠かせません。日々、目の前のタスクに追われていると、どうしても視野が狭くなり、大切な「経営の動き」や「現場の課題」を見落としてしまいがちだからです。
- しかし、事前の準備で心と時間に余裕が生まれると、経理としての景色が少しずつ変わってきます。
- これまでは「数字をまとめるだけで精一杯」だったのが、余裕ができることで「なぜこのコストが増えているんだろう?」という一歩踏み込んだ視点を持てたり、経営に役立つ分析を提案できたり…… 。ただの作業者ではなく、数字を武器に会社を支える「頼れるパートナー」として、もっとダイナミックに活躍できるチャンスが広がります 。
- 繁忙期を「ただ乗り切る」のではなく、「余裕を持って終える」 。そんな働き方ができれば、経理という仕事はもっと楽しく、やりがいのあるものになるはずです。
「繁忙期は忙しい」は事実。でも抜け出せない宿命ではない
「繁忙期は忙しい」という事実は変えられません。しかし、その忙しさに振り回されない工夫は今からでも始められます 。
まずは年間業務スケジュールを可視化して、未来の自分を助けるための「余裕のあるタイミング」を探すことから始めてみませんか?その小さな一歩が、きっとあなたを「改善できる経理」へと変えてくれるはずです。
経理の一般的な年間業務スケジュール(3月決算の場合)を参考に、まずは自社の業務棚卸しと可視化からスタートしてみましょう。