経理の畑

「どこまでやれば安心?」 経理視点で考える“高いセキュリティ”とは

作成者: 豆知識|May 11, 2026 1:30:04 AM

昨今、情報漏洩やサイバー攻撃に関する事件が多々発生しています。
ニュースや取引先からの注意喚起メールなどを通して、「顧客情報が流出した」「業務システムが使えなくなり、業務が止まった」といった話を目にする機会も増えてきました。
こうした情報に触れるたびに、「自分たちの会社は大丈夫だろうか」と不安に感じたことがある方も多いのではないでしょうか。

特に経理部門は、会社の預金情報や取引先の口座情報、社員の給与や個人情報など、万が一漏れてしまった場合の影響が大きい情報を日常的に扱っています。
「会社のお金」と「信用」の両方に直結する情報を管理している立場だからこそ、情報漏洩やセキュリティの問題は、決して他人事ではありません。

そのため、ウイルス対策ソフトの導入や複雑なパスワードの設定、二要素認証の利用など、何らかのセキュリティ対策をすでに行っている企業がほとんどでしょう。
「うちは一通り対策しているはずだ」と感じている方も少なくないかもしれません。

一方で、ふとこんな疑問が頭に浮かぶことはないでしょうか。

「どこまで対策しておけば”自社は高いセキュリティで万全だ”と言えるのだろうか…?」
対策を重ねれば重ねるほど、現場の手間や負担は増えていきます。それでも、「これで完璧」と言い切ることはできない。
この終わりの見えない問いこそが、今、多くの業務担当者が感じているモヤモヤなのかもしれません。

「高いセキュリティ」とは、事故を防ぐことだけではない

近年のサイバー攻撃は、手口が非常に多様化しています。昨日まで有効だった対策が、今日には通用しなくなる。そんなケースも、決して珍しいものではありません。

経理の現場を振り返ってみても、

  • 取引先を装った請求書メールが届いた
  • 振込先変更を依頼する、もっともらしいメールを受け取った
  • 退職者のIDが、しばらく削除されていなかったことに後から気づいた

といった「ヒヤリ」とする場面に、心当たりがある方もいるのではないでしょうか。

どれだけ注意していても、人的ミスや想定外の事態を完全に防ぐことは困難です。
特に、忙しい月末や決算期など業務が集中するタイミングでは、なおさら確認作業が後回しになってしまうこともあります。

そう考えると、セキュリティ=事故を100%防ぐことと捉えるのは、少し現実離れしていると言えそうです。

では、本当に求められるセキュリティ対策とは何なのでしょうか。
それは、事故が起こるリスクをできる限り抑えながら、「万が一」が起きたときにも立て直せる状態をつくっておくことではないでしょうか。

「起こらないはず」という前提ではなく、「起こる可能性もある」という前提で備えておく。
この視点への切り替えが、経理にとって現実的なセキュリティ対策につながります。

経理だからこそ考えておきたい「その後」の話

ここで、少し具体的な状況を想像してみてください。

  • 突然、会計データにアクセスできなくなった
  • 給与データが開けず、支払日に間に合わない恐れが出てきた
  • 不正な振込の可能性があり、事実確認と対応を迫られている

こうした事態が起きたとき、「誰が」「何を」「どの順で」対応するのかが決まっていないと、判断が遅れ、結果として被害が大きくなってしまうこともあります。

経理業務には、

  • 月次決算
  • 支払い処理
  • 給与計算

など、企業として止めることができない業務が数多くあります。
だからこそ、「起きないようにする」ことだけでなく、「起きてしまった後にどう動くか」を考えておくことが重要になります。

例えば、次のような点は整理できているでしょうか。

  • 誰のIDが、どの業務・どのシステムに使われているか把握できているか
  • 異動・退職時の権限削除ルールが明確になっているか
  • データのバックアップはどこにあり、復旧方法を理解しているか

また、例えば会計システムなどのシステムが止まりデータが見られなくなった場合、「顧問税理士であればデータを持っている」など、頼る先や業務の代替手段などは検討できているでしょうか。

これらは、必ずしもITの専門知識がなければ考えられない内容ではありません。

むしろ、日々の業務を把握し、実際に困るのがどこなのかを一番よく知っているのは、経理担当者自身です。経理の業務をよく知っているからこそ、「もしこのデータが使えなかったら、次に困るのは何か」といった視点で考えることができます。それ自体が、現実的で効果的なセキュリティ対策と言えるでしょう。

何も起きていない今のうちに
「万が一の後」を想定しておこう

情報漏洩やシステムトラブルは、起こらないに越したことはありません。
しかし、どれだけ対策をしていても、完全に防ぎきれないリスクがあるのも事実です。

だからこそ、

  • 事故が起きる可能性を前提に考えてみる
  • 起きた後に、どう立て直すかを整理しておく

この視点を持っているかどうかが、経理にとっての「高いセキュリティ」を左右すると言えるのではないでしょうか。

実際に「万が一」が起きてしまうと、気が動転してしまったり、冷静な判断が取りづらくなったりすることも十分に考えられます。
だからこそ、何も起きていない今のうちに、自分たちの業務や体制を一度振り返ってみることが大切です。

「どこまで対策すれば安心か」を考えると同時に、「万が一が起きた後、自分たちはどう動けるか」まで想定し、シミュレーションをしておく。それが、経理の現場にとって本当に意味のあるセキュリティ対策につながるのではないでしょうか。