2026年1月に施行された中小受託取引適正化法(通称「取適法」)。
すでに施行されていることから、多くの企業では制度内容を確認し、要件を満たすための業務の見直しや変更は一通り進んでいるのではないでしょうか。
ただ、「自社では要件を満たせている」と感じている場合でも、一度立ち止まって見直してみたいポイントがあります。
制度要件を満たしていることと、取引が適切に行われていることは、実は同じではありません。
書類や形式は整っていても、実際の運用を見ると違和感がある――そんな状況が起こってはいないでしょうか。
今回は、取適法をきっかけに「適切さ」という視点で業務を見直してみます。
取適法では、発注内容の明示や記録の保存など、押さえておくべき要件が定められています。
そのため、実務においては「要件を満たすこと」が対応のゴールになりがちです。
もちろん、制度要件を満たすことは必須要件です。ただ、それだけで十分かというと、少し考え直す余地もあります。
例えば、こんなケースはないでしょうか。
また、現場とのやり取りの中で、こんな“あるある”を感じることもあるかもしれません。
どれも珍しい話ではありませんが、こうしたケースが積み重なることで、取引の全体像が見えづらくなってしまいます。
ここで意識したいのは、制度要件を満たしている状態と、取引が適切に管理されている状態は別だという点です。
取適法が求めているのは、書類の有無ではなく、取引の実態がきちんと記録として残っていることです。
つまり、「発注書を交付しているか」だけでなく、「実際の取引と記録が一致しているか」という視点で見直すことが重要です。
この視点で見直したときにはじめて、「適切に」対応できている状態だといえます。
では、この「適切さ」をどのように担保していくか。
ポイントとなるのは、制度対応として当てはまる箇所を部分的に切り出すのではなく、業務全体の流れを見直すことです。
取適法に関わる情報は、経理だけで完結するものではありません。取引の背景や業務内容の詳細は現場にあり、経理からは見えにくい部分もあります。
だからこそ、書類やルールを整えるだけでなく、発注から支払までの流れの中で、情報がきちんとつながっているかに目を向ける必要があります。
たとえば、次のような点を社内ルールとして整理しておくと、運用が安定しやすくなります。
こうしたルールを全社で運用することで、「法対応ができているか」だけでなく、「業務がきちんと回っているか」という視点でも見直せるようになります。
さらに、取適法への対応にとどまらず、書類整理や電子化の促進などにもつなげることができるでしょう。
法や制度への対応は、「やらなければならないこと」として捉えられがちです。
一方で、今回取り上げた取適法のように、制度対応は業務のやり方を見直すきっかけにもなります。
たとえば、これまでの電子帳簿保存法への対応を振り返ると、請求書や領収書の電子保存が求められたことで、「どこに保存するか」「どう検索できるようにするか」といったルールの整備が進みました。
その結果、証憑を探す手間が減ったり、紙の管理が不要になったりと、業務の効率化につながったケースもあります。
また、インボイス制度への対応では、取引先が適格請求書発行事業者かどうかの確認や、記載要件のチェックなどが求められるようになりました。これにより、請求書や仕訳の詳細な確認が求められるようになり、結果的に経理業務の精度向上につながるといった側面があります。
上記のように、制度の背景にある考え方に目を向けると、業務改善のヒントが見えてきます。
今後も新たな法や制度への対応が求められたときには、「こなすもの」として終わらせるのではなく、「今の業務で曖昧になっているところはないか」「やり方を見直した方がよい部分はないか」といった視点で取り組んでみてはいかがでしょうか。