経済産業省(経産省)の「スタートアップの力で社会課題解決と経済成長を加速する」では、以下のように定義されています。
スタートアップとは、一般に、以下のような企業をいう。
出典:経済産業省, 2025年2月, 「スタートアップ育成に向けた政府の取組 スタートアップの力で社会課題解決と経済成長を加速する」
1. 新しい企業であって、
2. 新しい技術やビジネスモデル(イノベーション)を有し、
3. 急成長を目指す企業
スタートアップという言葉は、英語の「Startup(行動開始・始業開始)」に由来します。IT企業が集中したアメリカのシリコンバレーにおいて、「新しく設立されたばかりの企業」を総称する呼び方として使われるようになったことが始まりと言われています。
実際には、創業して間もない企業を総称してスタートアップと呼ぶケースもあり、組織や個人により定義が異なります。ただ経済産業省の定義にあるように、先進的なアイデア・技術を強みに、新しいビジネスを創り出し、短期間で急成長を遂げる企業を指すのが一般的です。
スタートアップに類似する言葉として、「ベンチャー」という言葉があります。
経済産業省の「スタートアップエコシステム整備促進に関する調査事業報告書」では、以下のように定義されています。
大企業の枠組みでは取り組みにくい独自の技術や新しいアイデアを実践し、成長している企業のこと
出典:経済産業省、平成31年2月,「平成30年度 地方創生に向けたスタートアップエコシステム 整備促進に関する調査事業報告書」
「ベンチャービジネス」という和製英語から派生した言葉と言われており、スタートアップと同様に組織や個人により定義が異なります。
新規事業に挑戦する企業全般を指す言葉として使われることが多く、既存のビジネスモデルをベースに独自のサービスを強みに成長する企業(「スモールビジネス」と呼ばれます)や、スタートアップもベンチャーの一形態に含まれると言えます。
スタートアップに該当する企業の特徴としては、具体的に以下3つの内容が挙げられます。
参考:経済産業省、平成31年2月,「平成30年度 地方創生に向けたスタートアップエコシステム 整備促進に関する調査事業報告書」
スタートアップは、新しいアイデア・技術に基づき、新しいビジネスモデルを創出し、イノベーション(変革)を起こし社会に貢献することを強く意識しています。他に類を見ないビジネスモデルによる将来性の高さから、ベンチャーキャピタルや投資家等からの資金調達を目指す企業が多く見受けられます。
スタートアップは、新しいビジネスモデルを市場に創り出し、圧倒的なシェアを獲得することで、短期間で企業価値を高め、事業を急成長させることを目指します。
その成長を表した図が、以下の成長曲線です。
短期間で急成長するスタートアップは「Jカーブ」と呼ばれる曲線を描きます。一方ベンチャーは、既存のビジネスモデルをベースに、独自のアプローチを実践することで、堅実に右肩上がりの成長を続けます。
出口戦略(イグジット)とは、起業した後に、IPO(新規株式上場)や他企業からのM&A(バイアウト)を目指すことを言います。イグジットの実施により、経営者は投資資金の回収を図り、創業者利潤を得ることができます。
「資金調達」とは、企業が事業を立ち上げる際の創業資金、成長していくための事業資金を獲得することを指します。
スタートアップにおける資金調達の主な方法としては、以下が挙げられます。
起業時に経営者(創業者)が潤沢な資金を保有しているケースはほとんどありません。多くの場合は借り入れ(融資)や出資を受けることになります。また、最近ではクラウドファンディングを活用して資金調達を行うケースも増えています。ここでは、代表的な資金調達方法として「融資」「出資」「クラウドファンディング」の3つを紹介します。
一般的な方法としては金融機関からの借り入れがあります。以前は実績のないスタートアップ企業における金融機関からの借り入れは難しいと言われていました。しかし、個人保証を取らずに融資を実行してくれる金融機関や、スタートアップへの融資を積極的に行っている金融機関も少しずつ増えてきています。もちろん事業計画の提出は必要であり、利息や返済義務も生じます。
投資家から出資を受けることも可能です。
投資家とは、新たなアイデア・技術に投資するエンジェル投資家と呼ばれる個人投資家や、スタートアップの発掘・育成に特化したベンチャーキャピタル(VC)と呼ばれる機関投資家などです。借り入れとは異なり返済義務はありませんが、企業の将来性を見越して出資してもらうため、企業には成長する義務があると言えます。
企業成長に伴走してくれますが、上場やM&Aなどのイグジットを求めることが一般的です。出資してもらう際には、信頼できるパートナーになれるかどうかが重要です。
最近ではクラウドファンディングを利用した資金調達も増えています。支援者の共感を得て資金を募る仕組みで、代表的な方式には、商品・サービスを提供する「購入型」、新製品開発や途上国支援など社会的プロジェクトへの支援を募る「寄付型」、未公開株を提供する「株式投資型」などがあります。
そのほか自治体でも創業融資が用意されていることや各種補助金・助成金などもあります。自社が使える制度がないか、まずは調べてみましょう。
日本政府は、スタートアップを「社会課題の解決」と「持続的な経済成長」を両立させるキープレイヤーと位置づけ、2022年をスタートアップ創出元年と定めました。これに伴い同年11月、2027年度までの5年間を対象とした「スタートアップ育成5か年計画」を策定し、官民一体となった大胆な投資と支援を開始しています。
スタートアップ育成5か年計画は、日本をアジア最大のスタートアップハブとすることを目指し、エコシステム構築のための包括的な目標を掲げています。
2022年時点で約8,000億円であったスタートアップへの年間投資額を、2027年度には10倍の「10兆円規模」へと引き上げる。
将来的には、ユニコーン企業を100社、スタートアップを10万社創出することを目指し、世界有数のスタートアップの集積地を形成する。
目標達成のため、以下の3本柱を中心とした支援施策を展開しています。
計画策定以降、補助金や税制、規制改革などの多角的な支援が行われてきましたが、折り返し地点を迎え、その戦略は「創業数の拡大(数)」から「成長ステージの引き上げ(高さ)」へと、より深化しています。
経済産業省が2025年12月に公表した資料によると、国内のスタートアップ数は2025年時点で25,000社に達し、2021年の16,100社から約1.5倍に増加しました。特に大学発スタートアップの伸びが顕著であり、2024年には5,074社を記録して政府目標(5,000社)を前倒しで達成しています。一連の支援策によって創業環境の整備が進んだことで、国内におけるスタートアップの裾野は着実に広がっており、創業期支援の成果が一定の数値として現れ始めています。
一方で、拡大した裾野を企業規模の拡大(高さ)へと繋げる点には課題も指摘されています。
資金調達額については、国内全体で約8,748億円となり、目標額10兆円に対して進捗率は約9%にとどまっています。世界的な金利上昇等の影響を受け、米国や欧州などの主要国でスタートアップ投資額が大幅に減少する中、日本市場は相対的に底堅く推移している側面はあるものの、目標達成に向けては依然として大きなギャップがあるのが現状です。
また、国内ユニコーン企業数も2025年4月時点で8社にとどまり、目標の100社を大きく下回っています。こうした「数」の伸びと「規模」の課題の乖離を踏まえ、政府は計画の後半戦に向け、スタートアップの成長段階を引き上げる「高さ」の追求を重点テーマの一つとして掲げています。
政府は計画の後半戦に向け、スタートアップの成長段階を引き上げる「高さ」と、成長を維持する「継続性」を重視し、以下の4領域を重点的に強化する方針です。
IPO(新規上場)以外の出口戦略として、事業会社によるM&Aや、既存株式を売却できるセカンダリー取引の活性化を推進し、エコシステム内での資金循環を促します。
起業家の海外派遣や海外投資家との連携を強化し、日本をアジアにおけるスタートアップの集積地(ハブ)として確立するための取り組みを加速させます。
大学等の研究成果を社会実装するため、技術起点で開発期間の長いスタートアップ(ディープテック)に対し、長期・大規模な支援体制を構築します。
特定の都市圏に留まらず、地方自治体・大学・企業が連携した支援基盤を強化し、地域特性を活かしたスタートアップが継続的に輩出される仕組みを整えます。
これらの方向性に基づき、創業支援のみならず、その後の持続的な成長を後押しするエコシステムの強化が進められています。
参考:
・経済産業省「「スタートアップ育成5か年計画」の進捗状況について」
・一般社団法人 日本経済団体連合会「スタートアップ躍進ビジョン レビューブック2025」
これらの後半戦の重点領域(成長の高さ、グローバル、地域、資金循環)に基づき、現在、多岐にわたる具体的な支援策が展開されています。経済産業省は、スタートアップ育成5か年計画のもと、最新の支援策一覧をWebサイトで公開しています。
■経済産業省-スタートアップ支援策一覧(METI Startup Policies)
このサイトでは、後半戦のテーマである「成長段階の引き上げ(高さ)」や「海外展開」などに合致する主要な制度が網羅されており、創業期から成長期まで、企業のフェーズ別に検索が可能です。
スタートアップ支援策を活用したいが、自社で受けられる支援策がわからない場合には、まずこちらを参考にして探すのがおすすめです。掲載されている、スタートアップ支援策から4つご紹介します。
創業期の資金繰りを支え、スタートアップの裾野を広げるための融資制度が拡充されています。
新規開業または開業後概ね7年以内の事業者を対象とした融資制度です。2024年4月からは、創業期(新規開業または開業後税務申告を2期終えていない方)については、原則として無担保・無保証人で融資を利用できるようになるなど、優遇措置が強化されました。
参考:
・日本政策金融公庫「新規開業・スタートアップ支援資金」
・日本政策金融公庫「創業融資のご案内」
起業の大きな障壁となっていた「経営者保証」を不要とする仕組みです。一定の要件を満たすことで、保証人不要で融資を受けることができます。
起業をためらう起業関心層のうち、およそ8割が「借金や個人保証を抱えること」を懸念していると言われています。経営者保証を不要とする制度の活用や有利な条件での融資制度はスタートアップ起業に大きく貢献するとみられています。
参考:中小企業庁「スタートアップ創出促進保証について」
スタートアップがグローバルな競争力を備えるためには、専門性の高い外部人材の確保が不可欠です。本制度では、ストックオプション税制の適⽤対象者を、社内の取締役・従業員に加えて、高度な知識または技能を有する社外の高度人材にも拡大しています。
税制優遇措置の適用を受けるには、設立10年未満の株式会社であることや、「社外⾼度⼈材活⽤新事業分野開拓計画」の策定など、一定の要件を満たす必要があります。
なお、令和6年度税制改正において、認定対象企業の要件の一部が廃止され、社外高度人材の要件が拡充され、スタートアップ企業が活用しやすい環境の整備が進められています。
参考:経済産業省「社外高度人材に対するストックオプション税制」
【関連コラム】
国内の事業会社やコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)が、スタートアップ企業の新規発行株式、またはM&A等による既発行株式を一定額以上取得した場合に、その取得価額の25%を課税所得から控除できる制度です。
スタートアップ側が直接利用する制度ではありませんが、出資する事業会社にとっては投資コストを実質的に抑えられる大きなメリットがあります。そのため、スタートアップにとっては外部資本や大企業の経営リソースを呼び込みやすくなるという、重要な呼び水としての効果が期待されています。
本税制は、スタートアップ投資をさらに加速させるべく、継続的な拡充が進められています。2025年12月に公表された「令和8年度税制改正大綱」では、適用期限をさらに2年間延長し、2028年(令和10年)3月末までとすることが示されました。あわせて、将来的な買収を見据えた「段階的な株式取得」への対応や、吸収合併時の急激な税負担を回避するための見直しなど、出資側がより積極的に資本提携やM&Aに踏み切りやすくなるための実務的な整備も進められています。
参考:経済産業省「オープンイノベーション促進税制」
世界で戦い、勝てるスタートアップを生み出すことを目的として、経済産業省・日本貿易振興機構(JETRO)・新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が事務局となり、2018年6月に設立されたスタートアップ集中支援プログラムです。
実績あるベンチャーキャピタリストや大企業の新事業担当者などの外部有識者からの推薦に基づき、潜在力の高い企業を「J-Startup企業」として選定します。
J-Startup企業に認定されると、政府機関やサポーター企業による支援を得られます。
支援例:
■J-Startup:https://www.j-startup.go.jp/
当社オービックビジネスコンサルタント(OBC)でも、スタートアップとして大きく事業成長を目指す方々に向けて、「スタートアップ支援プロジェクト」という取り組みを行っています。
具体的には、以下の支援サービスを提供しています。
ご興味がございましたら、下記よりお気軽にお問い合わせください。
ここまでスタートアップの定義、特徴、および、スタートアップ支援制度について解説しました。
スタートアップ育成5か年計画という国の大きな後押しもあり、スタートアップ支援は今後ますます活況となるでしょう。この流れに乗り、自社が受けられる支援策をうまく活用することが成功への近道になるのではないでしょうか。