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内部統制とコンプライアンスの違いは?コンプライアンス体制を強化する方法を解説|IPO準備から内部統制・内部監査ならIPO Compass

作成者: コラム|2026年09月17日

この記事でわかること

  • 内部統制とコンプライアンスの違い
  • コンプライアンス体制を強化するメリット
  • コンプライアンス体制を強化する方法と注意点
  • IPO準備企業におけるコンプライアンス体制

1.内部統制とは

●内部統制とは

内部統制とは、企業が業務の適正を確保するために、組織全体で遂行される一連のプロセスや仕組みを指します。規程の整備や承認手続きだけでなく、現場の従業員を含む組織内の全構成員が、日々の業務の中でルールや手続きを実行することで機能します。
また、内部統制は会社法や金融商品取引法とも深く関係しています。会社法では「業務の適正を確保するための体制」として一定の会社に内部統制システムの整備が求められており、企業経営を支える重要な基盤となっています。
一方、金融商品取引法では、上場企業に対して、財務報告の信頼性を確保するための内部統制報告制度(J-SOX)が設けられています。IPOを目指す企業においても、上場審査を見据えて対応を進めることが一般的です。J-SOXは、内部統制のうち財務報告の信頼性確保に関する部分を対象とした制度です。金融庁の内部統制基準では、次のように定義しています。

内部統制とは、基本的に、業務の有効性及び効率性、報告の信頼性、事業活動に関わる法令等の遵守並びに資産の保全の4つの目的が達成されているとの合理的な保証を得るために、業務に組み込まれ、組織内の全ての者によって遂行されるプロセスをいい、統制環境、リスクの評価と対応、統制活動、情報と伝達、モニタリング(監視活動)及びIT(情報技術)への対応の6つの基本的要素から構成される

出典:金融庁「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準」

金融商品取引法では、上場企業は財務報告に係る内部統制を評価し、その結果を報告することが義務付けられています。

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●内部統制の4つの目的

金融庁の内部統制基準では、内部統制の目的として次の4つが示されています。

① 業務の有効性及び効率性

業務が事業目的の達成につながる状態を確保し、人員・時間・資金などの経営資源を効率的に活用すること

② 報告の信頼性

組織内外に提供する財務情報・非財務情報を正確に作成し、利用者が判断に用いることができる状態を確保すること

③ 事業活動に関わる法令等の遵守

法令・社内規程・社会規範などに沿って事業活動を行うこと

④ 資産の保全

資産の取得・使用・処分について、正当な手続きと承認に基づいて行われる状態を確保すること

出典:金融庁「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準」

これら4つの目的はそれぞれ独立したものではなく、相互に関連しています。企業は、自社の業務プロセスが各目的の達成につながっているかを確認し、内部統制の整備に反映します。

●内部統制の6つの基本的要素

内部統制基準では、内部統制の基本的要素として次の6つが示されています。

① 統制環境

組織の気風を決定し、組織内のすべての者が統制に対してどのような意識を持つかに影響を与える基盤

② リスクの評価と対応

組織目標の達成を阻害する要因をリスクとして識別・分析・評価し、そのリスクに適切に対応する一連のプロセス

③ 統制活動

経営者の命令および指示が適切に実行されることを確保するために定める方針および手続き

④ 情報と伝達

必要な情報が識別・把握・処理され、組織の内外や関係者相互に正しく伝えられる状態を確保すること

⑤ モニタリング

内部統制が有効に機能しているかどうかを継続的に評価するプロセス

⑥ ITへの対応

組織目標を達成するために、あらかじめ適切な方針および手続きを定め、それを踏まえて組織内外のITに適時かつ適切に対応すること

出典:金融庁「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準」

これら6つの基本的要素は、いずれも内部統制の4つの目的を達成するために必要であり、内部統制の有効性を判断する規準となります。

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2.コンプライアンスとは

コンプライアンスとは、企業が法令や社内規程を遵守し、社会規範・倫理に則って行動することを指します。コンプライアンス違反が発覚した場合、行政処分や罰則を受けるだけでなく、取引先・消費者からの信頼の失墜、事業継続の困難、ブランド価値の毀損につながるおそれがあります。

3.内部統制とコンプライアンスの違い

ここでは、内部統制とコンプライアンスについて、目的と役割の観点から整理したうえで、それぞれの位置付けを確認します。

●目的

内部統制の目的は、業務の有効性・効率性の担保、報告の信頼性の確保、事業活動に関わる法令等の遵守、資産の保全を通じて、組織全体を健全に運営することです。
一方、コンプライアンスの目的は、法令・社内規程を遵守し、社会規範や倫理に則った企業活動を行うことにあります。

●役割

内部統制は、組織内にルールや手続きを整備し、それらが適切に運用されることで、組織目標の達成を支える役割を担います。
一方、コンプライアンスは、企業や従業員が法令や社内規程、社会規範を守って行動するよう促し、不正や法令違反を防ぐ役割を担います。
両者は役割が異なるものの、健全な企業経営を実現するために、いずれも欠かせない要素といえます。

●内部統制とコンプライアンスの関係

コンプライアンスは、内部統制の4つの目的のうち、「事業活動に関わる法令等の遵守」に関わる概念です。一方、内部統制は法令等の遵守に加え、業務の有効性・効率性、報告の信頼性、資産の保全も対象とします。
実務では、法令・社内規程・社会規範を守るというコンプライアンスの考え方を、規程の整備や承認手続き、モニタリングなどの内部統制の仕組みに落とし込みます。つまり、コンプライアンスで求められる行動を、内部統制によって日常業務の中で実践できるようにする関係です。

4.コンプライアンス体制を強化するメリット

コンプライアンス体制を強化することで、企業の信頼性向上やリスク低減につながります。ここでは、具体的なメリットを整理します。

●社会的信用の向上につながる

コンプライアンス体制を強化し、法令や社会規範を尊重することで、顧客・投資家・取引先からの信用獲得につながります。不祥事発生時のレピュテーションリスクが高まる中、コンプライアンスへの取り組みは企業評価にも影響します。
企業としての社会的信用が高まれば、新たな取引機会が生まれ、事業拡大にもつながります。取引先や投資家と継続的かつ良好な関係を築くことは、経営基盤の安定化にも寄与します。

●従業員とトラブルになるリスクを抑えられる

コンプライアンス体制の強化によって、法令・社内規程に沿った業務ルールが整備・周知されれば、従業員が適切な判断や行動を行える環境が整います。
また、判断基準が組織全体で共有されることで、ハラスメント・長時間労働などの問題の発生防止にもつながります。法令や社内規程に基づく適切な管理体制や相談体制の整備は、従業員が安心して働ける職場環境の構築につながります。

●不正行為や不祥事のリスクを軽減できる

コンプライアンス体制を強化すると、組織全体で不正行為を許さない姿勢を明確に示すことができます。このような意識が組織に浸透することで、従業員が問題に気づいた段階で報告しやすい企業風土の醸成につながります。
問題が早期に発見・報告されれば、事実関係の確認や是正対応を迅速に行うことが可能になります。不正行為による損失や企業価値の毀損、社会的信用の低下を防ぐことは、持続的な成長と安定した事業運営にもつながります。

5.コンプライアンス体制を強化する方法

コンプライアンス体制の強化には、企業としての考え方を明確にすることに加え、日々の業務や仕組み、システムの整備も欠かせません。ここでは具体的な方法を整理します。

●企業理念や企業行動規範を整備する

コンプライアンス体制を強化する方法の一つが、企業理念や企業行動規範の整備です。企業理念は、企業が「なぜ存在するのか」「何を目指すのか」を示す根幹的な考えです。一方、企業行動規範は、従業員が日常業務で守るべき倫理基準や行動原則を示します。
理念や行動規範を明文化することで、従業員が判断に迷った際に立ち返る基準を示すことができます。ただし、これらは一度定めて終わりではなく、企業文化や社会環境の変化に合わせて内容を定期的に見直し、現在の事業活動に沿った基準に更新していくことも必要です。

●従業員へのコンプライアンス教育を行う

コンプライアンス体制を強化するには、従業員へのコンプライアンス教育を定期的に行うことも必要です。社内で守るべき基準が定められていても、すべての従業員が業務上の判断基準やコンプライアンス違反に当たる行為を具体的に理解しているとは限りません。
研修では、法令や社内規程、企業行動規範に基づく判断方法を説明するとともに、過去の違反事例を共有・分析します。従業員一人ひとりが業務上求められる行動を理解することで、日常の意思決定をルールに沿って行う意識が浸透し、トラブルや不祥事の防止につながります。

●ワークフローシステムを導入する

ワークフローシステムの導入も、コンプライアンス体制を強化する方法の一つです。ワークフローシステムは、紙で行っていた申請・承認手続きを電子化し、承認ルートや権限設定を統一して管理する仕組みです。
紙の申請書には、紛失や記入漏れ、改ざんなどが生じる余地があります。一方、システム上で申請・承認を行えば、誰がいつ申請し、誰が承認したかがログとして保存されるため、承認手順や処理履歴の確認が容易になります。また、承認ルートや権限を統一的に管理することで、承認漏れや申請ミス、権限を超えた処理などを防止できます。処理過程の透明性が高まることで、不正行為の抑止だけでなく、法令や社内ルールに沿った業務運用にもつながります。

●ERPを導入する

ERPの導入も、コンプライアンス体制の強化につながります。ERPは「Enterprise Resource Planning」の略で、営業、物流、経理、財務などの基幹業務に関する情報を一元管理するシステムです。
部門ごとに分散していた情報を1つのシステムでまとめて管理することで、データの整合性が保たれ、業務の処理状況を確認しやすくなります。業務内容に応じて利用権限を設定し、処理手順を標準化すれば、権限外の操作や入力ミスの防止につながります。併せて、内部統制に関する確認作業の効率化や管理コストの削減、生産性の向上も期待できます。

6.コンプライアンス体制を強化する際の注意点

コンプライアンス体制は、一度整備すれば終わりというものではなく、その後も継続的な関与が求められます。ここでは、体制を維持していくうえでの注意点を整理します。

●仕組みを形骸化させない運用が重要

内部統制やコンプライアンスの仕組みは、構築しただけでは十分とはいえません。実際の業務が定めたルールや手順に沿って運用されているかを定期的かつ継続して確認する必要があります。
運用状況を確認しないと、業務内容の変化に対応できていないルールが残り、実務との乖離が生じるおそれがあります。実態に合わないルールが増えると、内部統制やコンプライアンスが十分に機能せず、法令違反や不祥事の発生リスクを高めるため、運用実態を定期的に確認する体制が求められます。

●定期的な見直しと教育の継続が必要になる

コンプライアンス体制を維持するには、社内規程や内部統制の整備・運用状況を定期的に見直します。具体的には、法改正や社会環境、事業内容、組織体制の変化を踏まえ、現在の法令や事業活動に適合したルールへ見直すことが重要です。従業員への教育やトレーニングも継続して実施します。改定したルールやコンプライアンス上の留意事項を継続的に共有することで、従業員の理解を深め、組織全体のコンプライアンス意識の維持・向上につながります。

7.IPO準備企業におけるコンプライアンス体制

IPO審査では、企業の継続性や収益性に加え、コーポレート・ガバナンスや内部管理体制が有効に機能しているかも確認されます。そのため、IPO準備企業では、事業の成長と並行して、内部統制やコンプライアンス体制の整備・運用を進めることが重要です。

IPO審査時に指摘が多いコンプライアンス上の問題は、たとえば未払残業や過重労働、個人情報保護法違反、景品表示法違反など、多岐にわたります。こうした問題は、意図的な不正だけでなく、法令への理解不足や管理体制の不備により発生することもあります。法令に違反してしまうと、企業の社会的信用を損なうだけでなく、事業運営や内部管理体制に課題があると判断される可能性があります。結果的にIPO審査にも影響を及ぼし、IPOスケジュールの延期や最悪の場合IPOを諦めざるを得ない可能性もあります。

またIPO審査上は「問題が発生しない体制が構築されているか」だけでなく、「問題が発生した際に適切かつ迅速に対応できる体制が整備されているか」も重要な確認事項となります。どれほど管理体制を整備していても、問題の発生を完全に防ぐことは困難です。そのため、社内規程の整備、権限・職務分掌の明確化、法令遵守に関する教育の実施、内部通報制度の運用などを通じて、コンプライアンス違反の未然防止と早期発見を図るとともに、問題発生時の報告、調査、是正、再発防止までを含めた運用体制を継続的に整備していくことが重要です。

IPOを目指す場合は、早い段階から弁護士などの専門家に相談し、自社に適用される法規制やリスクを把握したうえで、適切なコンプライアンス体制を整備していくことが重要です。

8.最後に

コンプライアンスとは企業が法令や社会規範を遵守して事業活動を行うための考え方であり、内部統制は法令等の遵守を含む複数の目的を達成するために、業務の手順や管理体制を整備・運用する仕組みです。
コンプライアンス体制を強化する際は、制度やシステムを導入するだけでなく、法改正や社会環境の変化に対応しながら、自社の事業内容や組織体制に合わせて継続的に運用できる仕組みを構築することが重要です。
さらに、運用状況の確認と定期的な見直し、従業員への教育まで含めて継続的に取り組むことで、コンプライアンス体制を実効性のあるものとして維持できます。こうした取り組みは、不正や法令違反の防止だけでなく、企業への信頼向上や持続的な事業運営にもつながります。

9.内部統制とコンプライアンスに関するよくあるご質問

内部統制とコンプライアンスの関係は?
内部統制とコンプライアンスは、企業の健全な経営を支えるうえで密接に関係しています。コンプライアンスは、法令や社内規程、社会規範などを遵守するという、企業が守るべき「考え方」や「行動基準」を指します。一方、内部統制は、法令等の遵守を含む複数の目的を達成するために、社内に設ける「ルール」や「仕組み」です。つまり、コンプライアンスに沿った行動を、内部統制によって日常の業務に反映する関係にあります。
コンプライアンスとは簡単に言うと?
コンプライアンスとは、企業が法令や社内規程、社会規範などを遵守して事業活動を行うという考え方です。単に法令違反を防ぐことだけでなく、企業に求められるルールや社会規範に沿って行動することも含まれます。
内部統制とはわかりやすく言うと?
内部統制とは、企業がルールに基づいて業務を進めるための仕組みです。業務手順や承認フローを整備し、権限管理を行うことで、業務の有効性・効率性の担保や法令等の遵守など、内部統制の目的を達成できるよう運用します。
コンプライアンス違反の身近な具体例は?
身近なコンプライアンス違反には、職場でのハラスメント、個人情報の社外への持ち出し、架空経費の請求、残業時間の過少・過大申告などがあります。こうした違反を防ぐには、社内規程を整備するだけでなく、従業員への周知と運用状況の確認を継続し、日常業務がルールに沿って行われているかを確認することが重要です。