経理の仕事には、どうしても“波”があります。月末・月初、決算期、監査前後、税務申告の直前——これらは避けようのない繁忙期で、業務量が一気に跳ね上がります。さらに、少人数経理では「休むと業務が止まるかもしれない」という不安や、属人化・引き継ぎの難しさが心理的なブレーキになり、「この時期はちょっとしたことでは休めない」など有休取得をためらってしまう ことも珍しくありません。
その一方で、ワークライフバランスは個人の快適さだけでなく、業務品質や組織の安定に直結するテーマです。疲労が蓄積した状態では、ミスの発生率が高まり、チェック工程にも負担がかかります。結果として全体の業務時間が伸び、繁忙期の残業がさらに増える——という負のループに繋がってしまう可能性もあります。
では、「残業ゼロ」を目標にすべきでしょうか。結論から言えば、繁忙期に業務が集中しがちになる経理業務の特性上、完全な残業ゼロを恒常的に実現するのは現実的ではありません。重要なのは、残業そのものを“悪”とみなすのではなく、残業の“質”を上げて時間と負荷をコントロールし、同時に“休み方”を設計すること。経理にとってのワークライフバランスとは、繁忙期を前提にしながらも、業務の波に呑まれない仕組みで心身の余裕を確保し、品質を落とさずに働ける状態ともいえます。
経理のワークライフバランスを実現するためには、「残業ゼロ」ではなく「残業の質を高める」「ピークを分散する」「休み方を設計する」という3つの視点がポイントになります。ここからは、3つの視点を順に紹介します。
経理にとって最も現実的なアプローチは、“残業の質”を高め、計画的にコントロールすることです。たとえば、このような工夫の仕方が挙げられます。
残業そのものの総量を減らすよりも、ピークの集中を緩める工夫が効きます。たとえば、このような工夫が考えられます。
職場環境によっては、休みは取りづらいと感じる場合もありがちですが、取り方の工夫で心理的ハードルを下げられます。
経理業務の特性上、繁忙期や月末において残業ゼロを常に維持するのは現実的ではありません。だからこそ、視点を「残業を減らす」から「残業をコントロールする」へ切り替えることが鍵になります。あらかじめ残業時間を決める、前倒しできるタスクを整理する、締め日や承認フローをずらしてピークを分散する——こうした設計で“質の高い残業”に変えられます。また、休み方は“計画”すれば取れます。休暇予定の共有やメモの整備などによって、心理的なハードルは一気に下がります。
繁忙期を前提にしながら、仕組みで波をならし、休むための設計を入れる。そうすれば、プライベートを守りながら、経理としての品質とスピードも同時に高めていけます。明日からできる小さな工夫をひとつずつ積み重ね、無理なく続けられる“自分たちのベストプラクティス”を育てていきましょう。