経理の畑

繁忙期が避けられない経理にとってのワークライフバランスとは?

作成者: 豆知識|Dec 22, 2025 5:14:13 AM

繁忙期が避けられない経理にとってのワークライフバランスとは?

経理の仕事には、どうしても“波”があります。月末・月初、決算期、監査前後、税務申告の直前——これらは避けようのない繁忙期で、業務量が一気に跳ね上がります。さらに、少人数経理では「休むと業務が止まるかもしれない」という不安や、属人化・引き継ぎの難しさが心理的なブレーキになり、「この時期はちょっとしたことでは休めない」など有休取得をためらってしまう ことも珍しくありません。
その一方で、ワークライフバランスは個人の快適さだけでなく、業務品質や組織の安定に直結するテーマです。疲労が蓄積した状態では、ミスの発生率が高まり、チェック工程にも負担がかかります。結果として全体の業務時間が伸び、繁忙期の残業がさらに増える——という負のループに繋がってしまう可能性もあります。
では、「残業ゼロ」を目標にすべきでしょうか。結論から言えば、繁忙期に業務が集中しがちになる経理業務の特性上、完全な残業ゼロを恒常的に実現するのは現実的ではありません。重要なのは、残業そのものを“悪”とみなすのではなく、残業の“質”を上げて時間と負荷をコントロールし、同時に“休み方”を設計すること。経理にとってのワークライフバランスとは、繁忙期を前提にしながらも、業務の波に呑まれない仕組みで心身の余裕を確保し、品質を落とさずに働ける状態ともいえます。

「ワークライフバランス≠“ゼロ残業”」

経理のワークライフバランスを実現するためには、「残業ゼロ」ではなく「残業の質を高める」「ピークを分散する」「休み方を設計する」という3つの視点がポイントになります。ここからは、3つの視点を順に紹介します。

経理のワークライフバランスを実現するための3つのポイント

1. 「残業を減らす」より「残業をコントロールする」

経理にとって最も現実的なアプローチは、“残業の質”を高め、計画的にコントロールすることです。たとえば、このような工夫の仕方が挙げられます。

  • 時間を決めて残業
    繁忙期は「今日は19:30まで」「決算週は水・木のみ延長」など、事前に残業可能枠をブロック。終わりが見えると集中力が上がり、何時になっても帰れない、といった状態も防げます。予定化することで家族やプライベート側の調整もしやすくなります。
  • 前倒しできるタスクを棚卸し
    月末の締めに影響しない準備系(仕訳テンプレ更新、マスタ整備、定型の支払データ準備など)は中旬までに前倒しするのも手です。繁忙期に“思考のいる仕事”を減らし、“手を動かすだけの仕事”に寄せるのもコントロールのコツです。
  • 残業の“質”を上げる環境づくり
    残業時間は集中タイムと位置づけ、割り込みを遮断(チャットの通知ミュート、問い合わせ窓口を1本化)することも有効です。また、チェックリストを使い、業務開始前に「今日やる3点」を明文化するなど、終業時に進捗を簡単に記録すると、翌日の仕事もより速く始められるようになります。
2. 締め日・業務フローの“ズレ”でピークを避ける

残業そのものの総量を減らすよりも、ピークの集中を緩める工夫が効きます。たとえば、このような工夫が考えられます。

  • 経費精算の締め日を月末からずらしたり、ルールを工夫する
    例えば、月末締めから毎月15日締めに変える、もしくは翌月3日朝締め+遅れた分は精算しないルールに変えるなど、営業や現場と合意して締め日をずらすことで、経費の集計・チェックの山を分散できます。
  • 請求書送付は紙から電子へ
    取引先に請求書の電子送付(PDFや請求書発行サービス)を依頼し、受領・確認・承認のリードタイムを短縮することで、紙の到着待ちや押印工程が減り、月末の滞留が緩和されます。
  • 承認経路の標準化
    「例外的な承認者」や「個別ルール」を減らして固定化すると、問合せが減り、処理スピードが安定します。固定化しておくことは、業務の引き継ぎや属人化防止にも役立ちます。
3. “休み方”は計画で確保する

職場環境によっては、休みは取りづらいと感じる場合もありがちですが、取り方の工夫で心理的ハードルを下げられます。

  • 休暇の宣言と共有
    月初に「今月の休み候補日」をチームカレンダーに入れ、繁忙期以外の平日を狙って確保。周囲が休みを前提に行動できるため、依頼や会議の配置が自然と調整されます。
  • 簡単メモで“急な休み”にも備える
    自分の担当業務をメモで可視化(案件一覧、進捗、次アクション、参照ファイルの場所など)。属人化を弱め、急な休みでも最低限の引き継ぎが可能になります。

完全に残業ゼロは難しい。でも工夫次第でプライベートを守れる。

経理業務の特性上、繁忙期や月末において残業ゼロを常に維持するのは現実的ではありません。だからこそ、視点を「残業を減らす」から「残業をコントロールする」へ切り替えることが鍵になります。あらかじめ残業時間を決める、前倒しできるタスクを整理する、締め日や承認フローをずらしてピークを分散する——こうした設計で“質の高い残業”に変えられます。また、休み方は“計画”すれば取れます。休暇予定の共有やメモの整備などによって、心理的なハードルは一気に下がります。
繁忙期を前提にしながら、仕組みで波をならし、休むための設計を入れる。そうすれば、プライベートを守りながら、経理としての品質とスピードも同時に高めていけます。明日からできる小さな工夫をひとつずつ積み重ね、無理なく続けられる“自分たちのベストプラクティス”を育てていきましょう。