DX成功事例 株式会社大原商店

株式会社大原商店
業種:和装小物の製造卸売業/
従業員数:13名/平均年齢53歳(2023年7月時点)

販売管理

属人化・紙文化の温床となっていたレガシーシステムを一新!
社内DXを実現し、月75時間の業務時間削減に成功

導入パートナー:株式会社シーアールネット

DXに取り組むきっかけ

新しい時代に生き残るため、
経営改革を阻む3つの課題を解決する必要があった

2021年に三代目として社長に就任しましたが、経営環境は厳しいものでした。時流として着物の着用人口が減少するなかで、商取引の規模が縮小化し、小口の取引が多くなる分、1取引にかける時間が同じでは利益の確保が難しく、経営の効率化は急務でした。
しかし、当時の業務システムは、1988年に導入したオフコンシステムで、3つの大きな課題がありました。1つ目が「属人化」です。システムを使いこなせるのがベテラン社員の一人だけで、組織や業務プロセスを変えたくてもその人に合わせざるを得ず、属人化が経営改革の制約になっていました。

2つ目は、システムがあるのに、実際は、商品管理・在庫管理・顧客管理がすべて紙で行われており、「生産性が低い」ことでした。約6,000種類4万点もの商品が、各担当者の記憶と紙によって管理されていて、顧客から問い合わせを受けた際は、ファイルを引っ張り出して30分以上探すことも珍しくありませんでした。経理も紙を見ながらの入力作業、ミスや漏れがないか、紙とデータの確認・突合作業に半日以上かけるなど、紙で業務を行うがゆえの無駄な作業によって生産性が低下していたのです。

3つ目が、「売上・原価・粗利が適時に把握できない」ことでした。経営管理において極めて重要な売上・原価・粗利が年1回、丸一ヶ月かけて従業員総出で行う棚卸しでやっと把握できるのが実情でした。
コロナ禍による追い打ちもあり、経営環境がますます厳しさを増すなかで、「これでは生き残れない」と強い危機感を覚え、経営基盤強化を目的とした業務システム改革に取り組むことにしたのです。

DXを推進する動機づけ

会社を変えるために、新しいシステムで既存のルールを刷新
自らが旗を振り、社員に無理がないようDXを推進

20年ほど新規の採用をしていない平均年齢の高い会社でどのように経営改善を行うか数年前から悩んでいましたが、何も変わらないのに「新しいことをしよう、意識を変えよう」と言っても社員も難しいでしょう。会社を変えるために、新しいシステムを導入して、既存のルールを変えようと思いました。
そして、現状の会社の課題とあるべき姿(ビジョン)、システムを新しくすることでどんな風に経営改善できるのかについて、社員に説明するところから始めました。
私がシステム構築をしている間に、少しでも今どきのITツールに触れてもらいたい意図もあり、社員にはオンライン研修を受講してもらいました。システムが出来上がったら、社内勉強会をグループ別に何回か実施し、パソコンを触ったことがない人にも慣れてもらえるように、週報を新しいシステムで書いてもらうなど、なるべく使ってもらう仕組みも考えました。

また、経理部に1人、商品部・営業部に1人、若い人を新たに雇用しました。若く柔軟な人なら新しいシステムに早く順応できるだろうし、社員にとっても良い刺激になると考えたからです。
とはいえ、平均年齢53歳の会社です。社員には、「皆が付いてこれるように頑張るし、そのための投資はするから、皆も頑張って付いてきて」とお願いしましたね。なるべく皆に無理がないようにシステムを導入しようと心がけましたし、それが伝わると信じて進めました。

DXで目指したこと

強みである企画力・提案力を最大化するために
本業に集中できる環境を目指した

経営環境が厳しい状況において、重要なことは会社の強みを活かすことです。当社で言えば、当社の世界観に基づくオリジナル商品の職人気質なものづくりです。この強みは、社員の企画力・提案力に頼る部分が大きい。業務システムを改革することで、社員が無駄な作業にとらわれることなく、本来の業務に集中できるようにしたかったのです。
そして、できた時間は、より良い商品づくりや、お客様の声を聴く時間、外の世界に目を向ける時間に使ってもらって、全員が自分の仕事にまい進する会社になることを期待しています。

実際の取り組み

試行錯誤を繰り返し、
目的達成のために、良いと思ったことはすべて実施した

まずは、企業理念としての私のビジョンを社員に説明するところからスタートしました。ビジョンを実現するための新しいシステムの選定においては、7社のベンダーを比較し、自分で10種類のツールを試しました。ツールに求めた要件としては、1つは「業界特有の業務に対応している」こと。和装業界は商品を貸し出すことが多いので、「いつ」「何を」「誰に」貸し出したのか管理できることがひとつと、得意先ごとに直送先の管理ができることが必要でした。もう1つの要件として、営業が使う情報系ツール「kintone」と連携できることでした。商品管理や顧客管理、受注処理といった現場業務をkintoneで行い、そのデータを販売管理システムに連携することで、現場も経理もペーパーレス化や入力作業の削減ができ、生産性を向上できると考えたのです。もちろん、同時に売上・原価・粗利を適時把握できることも視野に入れ、いくつかの販売管理システムを試した結果、要件を満たしていた商蔵奉行クラウドの導入を決定しました。

システム決定後は、社内勉強会を何回も行い、システムの全体像や実際の使い方などを丁寧にレクチャーしました。運用する中で、課題が新たに出てくれば、都度改善を繰り返しました。先ずは経理部がシステム導入の肝だったので、私自身も経理部と二人三脚で、質問を聞いたり、調べ方を教えたりと積極的にかかわりました。その他にも、若手を採用したり、人事制度を作ろうと動いたり、皆に読んでほしいと思った本は買って全員に配ったり、目的達成のために良いと思ったことは何でもやりました。

取り組みの評価

まだまだ道半ば。会社にとって何が最善なのか、考え続けることが大事

まだまだ道半ばなので、取り組みの評価は「わからない」というのが正直なところですが、できることもできないことも社員に正直に話し、想いをなるべく伝えてきたことはよかったと思っています。少しずつ社員の意識が変わってきていると感じています。
もっと早い段階で社員を頼っても良かったかなとも思っています。商品情報の登録作業は自分でやろうと頑張っていた時期もありましたが、なかなか進まず。自分の限界を認識して社員に登録をお願いしました。システムもしばらく動かしてみて、よりよいシステムがあればまた変えてもいいと考えています。会社にとって何が最善なのか、常に考える続けることが大事だと思っています。

DX化の効果(定量・定性の効果)

3つの課題を解決し、月75時間の業務時間削減に成功

システムを刷新したことで、旧システムで起こっていた「属人化」「生産性が低い」「売上・原価・粗利が適時把握できない」という3つの課題を解決しつつ、月75時間もの業務時間削減を実現することができました。
「属人化」という課題については、パッケージシステムに合わせた運用をすることで、今までの業務を大きく変えることなく標準化でき、入社1年未満の新入社員でもベテラン社員と同じように経理業務ができていて、驚いていますし嬉しいです。

「生産性が低い」という課題は、商品管理を手書きの紙管理から商蔵奉行クラウドとkintoneで行うようになり、ファイルを引っ張り出して調べる無駄な作業がなくなりました。ペーパーレス化による業務削減により、社員は本来の業務に集中できています。
経理においても、営業担当からまわってくる手書きの販売リストを見ながらの入力作業や、入力後の確認作業がなくなりました。現在は、営業担当がkintoneに入力した受注情報が商蔵奉行クラウドに連携されるため、経理が伝票入力する時間がほぼ0になり、月40時間もの削減になっています。
また、旧システムでは、日時更新を行うと修正ができなくなっていたため、売上や仕入の入力ミスがないか、原票と入力データの突合作業に1日1時間ほど費やしていましたが、それも不要になったため、それだけでも月20時間削減できました。
請求書発行時も同様に、修正や再発行ができなかったため、発行前に納品書と突合する作業に月15時間もかけていたのですが、その作業も不要になり、合計すると月75時間もの時間削減ができたことになります。
「売上・原価・粗利が適時把握できない」という課題については、商品情報がデータ化されたことで大幅に改善してきました。商蔵奉行クラウドでほしい情報がすぐに集計でき、簡単にExcelにも出力できるため、分析もできるようになりました。

 

これからの展望とこれから始める企業へのアドバイス

「和装業界のデジタル化」を推進し
着物を着る人に喜んでもらえる環境を提供したい

息の長い取り組みとして、IT化が遅れているこの業界で、自分たちの経験を役立てられたらと考えています。弊社は和装小物の問屋として、和装に関わる全ての商材で、作り手の職人さんたち「川上」から、「川下」の小売店さんまで、多くの関係者の間におります。IT化の効果やノウハウを社員一人一人が実感することで、従来の習慣や常識にとらわれず、業界の課題に対して「これも効率化できないか?」「何か方法があるのでは?」と皆で考えられるようになってきていると感じています。
デジタル化を理解して改めてアナログの良さに気づくこともあります。「和装業界のデジタル化」に向けて自分たちが実践できるIT化を推進し、結果、着物を着る人に喜んでもらえる環境を提供できるようになっていきたいと考えています。

DXを推進するにあたっては、経営者や担当者が旗を振り、できる限りいろいろなツールを見て、いろいろな人の話を聞いて、自分で触って手を動かして試行錯誤することと、社員を誰ひとり置いてけぼりにしないように進めることが大事だと思います。
また、10年・20年前から外部環境を見て、会社を良くしようとデジタル化を進めておくべきだったと痛感しています。一気にやると、どうしても大きな変革になってしまいますから。
世の中、日進月歩で新しいサービスが出てくるので、必要なのは「これで完成と思わないこと」でしょうか。


導入ソリューション・サービス

・ 商奉行クラウド
・ kintone

この事例の導入パートナー
株式会社シーアールネット