監査役とは、株式会社の機関の1つで、株主総会で選任されます。主な役割は、取締役の職務執行を監査し、会社の健全な経営を確保することです。つまり、監査役は業務執行には直接関与せず、株主に代わって、取締役の行動をチェックする立場にあります。
会社法では、監査役は「取締役の職務の執行を監査する権限を有する者(会社法 第381条)」と定義されており、取締役会設置会社では必須の機関です。監査役は、取締役の意思決定や業務執行に介入することはできませんが、違法行為や不正があれば指摘し、必要に応じて報告義務を果たします。
参考:e-GOV 法令検索「会社法 第381条」
| 役割 | 主な職務 |
|---|---|
| 監査役 | 取締役の職務執行を監査する |
| 取締役 | 業務執行に関する意思決定を行う |
取締役は会社の経営方針を決定し、業務を遂行する立場です。一方、監査役はその業務執行が法令や定款に従って適正に行われているかを監視します。両者は役割が明確に分かれており、監査役は経営判断に関与しません。
監査役と会計監査人は、いずれも会社の健全性を確保する役割を持ちますが、監査対象と権限が異なります。
| 役割 | 監査対象 | 担当者 |
|---|---|---|
| 監査役 | 取締役の職務執行全般(業務監査+会計監査) | 株主総会で選任された監査役 |
| 会計監査人 | 財務諸表の適正性(会計監査のみ) | 公認会計士または監査法人 |
つまり、監査役は取締役の職務執行全般を監査し、会計監査人は財務諸表などの財務情報の適正性を監査する点が大きな違いです。
会計限定監査役は、定款の定めにより監査役の監査範囲を会計監査に限定した監査役をいいます。
会社法では、公開会社でない株式会社(監査役会設置会社および会計監査人設置会社を除く)について、監査役の監査範囲を会計に関するものに限定する旨を定款で定めることができます(会社法 第389条)。
| 役割 | 監査範囲 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| 監査役 | 業務監査+会計監査 | 取締役の職務執行全般を監査 |
| 会計限定監査役 | 会計監査のみ | 定款により監査範囲を会計監査に限定 |
この制度は、比較的小規模な非公開会社において、監査体制の負担を抑えながら、財務の適正性を確保するための仕組みです。
参考:e-GOV 法令検索「会社法 第389条」
監査役は、会社と委任契約に準じた関係にあります。会社法は次のように定めています。
(株式会社と役員等との関係)
第三百三十条 株式会社と役員及び会計監査人との関係は、委任に関する規定に従う。
出典:e-GOV 法令検索「会社法 第330条」
この規定により、監査役は会社から委任を受けた「受任者」として、民法の委任規定が適用されます。特に、民法第644条では次のように定めています。
(受任者の注意義務)
第六百四十四条 受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。
出典:e-GOV 法令検索「民法 第644条」
つまり、監査役は善良な管理者の注意義務(善管注意義務)を負い、職務遂行において社会通念上通常期待される水準の注意を払う必要があります。
監査役の設置は原則任意ですが、会社法の規定により、一定の会社では設置義務があります。また、監査等委員会設置会社や指名委員会等設置会社では、監査役を設置することはできません。
| 区分 | 会社の種類 |
|---|---|
| 設置義務あり | 取締役会設置会社(非公開会社で会計参与を置く場合は任意) 会計監査人設置会社 |
| 設置不可 | 監査等委員会設置会社 指名委員会等設置会社 |
| 任意設置可能 | 上記以外の会社(定款の定めにより設置することが可能) |
(取締役会等の設置義務等)
第三百二十七条
2 取締役会設置会社(監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社を除く。)は、監査役を置かなければならない。ただし、公開会社でない会計参与設置会社については、この限りでない。
出典:e-GOV 法令検索「会社法 第327条 第2項」
取締役会設置会社は、原則として監査役を置く必要があります。ただし、非公開会社で会計参与を置く場合は、監査役の設置は任意です。
(取締役会等の設置義務等)
第三百二十七条
3 会計監査人設置会社(監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社を除く。)は、監査役を置かなければならない。
出典:e-GOV 法令検索「会社法 第327条 第3項」
会計監査人を設置する株式会社は、監査役を置く必要があります。これは、会計監査人との連携により、監査体制を強化するためです。
(取締役会等の設置義務等)
第三百二十七条
4 監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社は、監査役を置いてはならない。
出典:e-GOV 法令検索「会社法 第327条 第4項」
監査等委員会設置会社では、取締役の中に監査等委員を置き、監査機能を担うため、監査役を設置することはできません。
(取締役会等の設置義務等)
第三百二十七条
4 監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社は、監査役を置いてはならない。
出典:e-GOV 法令検索「会社法 第327条 第4項」
指名委員会等設置会社では、監査委員会が監査機能を担うため、監査役は設置できません。
監査役の主な役割は、業務監査と会計監査からなる「監査役監査」を実施し、その結果を監査報告として取りまとめることです。
業務監査とは、取締役の職務の執行についての監査を指し、取締役のもとで行われるすべての業務が法令や定款に違反していないことを監査します。取締役の職務の執行における監査のうち、下記については特に重要です。
会計監査は、計算書類の適正性についての監査を指し、会社が作成した計算書類が正しく作成されているかを監査します。
ちなみに非公開会社においては、定款の定めにより、監査役の監査の範囲を会計監査に限定することができます。会計監査に限定された監査役は「会計限定監査役」と呼ばれます。
監査役は、監査報告を作成し、1年間の監査の結果を株主総会で報告します。具体的には、取締役の職務の執行についての監査役の監査の結果、また計算関係書類の適正性についての監査役の意見を監査報告にまとめます。
監査役には、監査の実効性を担保するため、会社法において以下のような権限が与えられています。
出典:監査役制度 -《主な監査役の権限》|公益社団法人日本監査役協会HP
- ①取締役の職務の執行の監査(会社法 第381条1項)
- ②取締役に対する事業報告請求権、会社業務・財産状況調査権(会社法 第381条2項)
- ③子会社調査権(会社法 第381条3項)
- ④取締役会への出席義務及び意見陳述義務(会社法 第383条1項)
- ⑤取締役会の招集請求権及び招集権(会社法 第383条2項、3項)
- ⑥取締役の違法行為差止請求権(会社法 第385条1項)
- ⑦取締役と会社間の訴訟代表権(会社法 第386条1項)
- ⑧取締役等の責任一部免除に関する議案等の同意権(会社法 第425条3項、第426条2項、第427条3項)
- ⑨被告取締役側への会社の補助参加に対する同意権(会社法 第849条3項)
さらに、監査役には以下のような重要な権限もあります。
参考:監査役制度 -《主な監査役会の権限》|公益社団法人日本監査役協会HP
一方、監査役には、取締役会への出席義務や株主総会の議案調査と報告義務、取締役会への報告義務等があり、これらを遵守する必要があります。
監査役監査とは、業務監査と会計監査を指し、株主によって選任された監査役が「株主」に代わり、業務執行に関する意思決定を行う「取締役」の職務執行を監査することです。
監査役監査の業務監査には、「適法性監査」と「妥当性監査」という概念があります。一般的に「適法性監査」とは、取締役の職務執行が法令・定款等を遵守しているかを主眼とした監査、「妥当性監査」とは取締役の職務が経営判断として妥当なものかを主眼とした監査をいいます。監査役監査の範囲は、従来は適法性監査に限定されるという見解が一般的でしたが、最近の学説や判例では「一部妥当性にも踏み込む必要がある」と解釈されています。
会計監査は、会社法に基づく会社法監査、金融商品取引法(金商法)に基づく金融商品取引法監査があります。これらは目的や対象となる会社の要件が異なります。外部の公認会計士及び監査法人が担う監査人と監査役がダブルチェックをして監査を行います。
| 目的 | 株主や債権者の保護 |
|---|---|
| 対象となる会社 | 大会社(資本金が5億円以上、または負債金額が200億円以上)及び指名委員会等設置会社及び監査等委員会設置会社は義務。そのほかの会社においても任意で監査を受けることができる。 |
| 実施方法 | 計算書類の適正性を、会計監査人である公認会計士または監査法人が監査し、監査役監査で、会計監査人における結果の相当性を確認する。 |
IPO準備企業においては、上場申請をする前後に実施される臨時株主総会で、会計監査人を設置することが一般的です。
| 目的 | 投資家の保護 |
|---|---|
| 対象となる会社 | 上場会社、一部の非上場会社 |
| 実施方法 | 計算書類の適正性を、監査人である公認会計士または監査法人が監査し、監査役監査で、監査法人監査における結果の相当性を確認する。 |
IPO準備企業は直前々期(N-2期)以降から金商法と同等の準金融商品取引法監査を受けます。
金商法監査の対象となる上場会社は、会社法監査の対象として当てはまることが多いため、金商法監査と会社法監査の両方を受けることになります。
どちらの監査においても、会計監査人監査または監査人監査で、取締役の職務執行の結果である計算書類の適正性について監査し、監査役監査で、会計監査人または監査人監査における結果の相当性を確認します。つまり、監査役と会計監査人が異なる立場でダブルチェックを実施します。
「監査役監査」と混同されやすいのが「内部監査」です。
この2つは実施主体と監査対象が異なります。監査役監査は、監査役が「株主」に代わり「取締役」を監査することに対し、内部監査は、従業員が「取締役」に代わり「従業員」を監査します。
| 役割 | 実施主体 | 監査対象 |
|---|---|---|
| 監査役監査 | 監査役(株主の代わりに) | 取締役 |
| 内部監査 | 従業員(取締役の代わりに) | 従業員 |
なお、監査役監査を効率的に実施するため、監査役と内部監査部門は、相互に監査の実施状況や監査の結果を確認し意見交換することが推奨されています。一方、後述する監査等委員は、取締役として内部監査部門を直接指示・命令することができます。
監査役になるために公的な必須資格はありません。ただし、会社法で定める欠格事由に該当する場合は、監査役になることができません。
●欠格事由(会社法 第331条 第3項、第4項)
以下の場合は監査役になることができません。
・法人
・会社法等の法律に違反し刑に処せられ、その執行を終わり、または執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者
・その他の法令違反で禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまでまたは免除されるまでの者(刑の執行猶予中の者を除く)
参考:e-GOV 法令検索「会社法 第331条 第3項、第4項」
監査役には「社内」監査役と「社外」監査役があります。社内監査役と社外監査役はいずれも取締役の業務執行の適法性(と一部妥当性)を監査する役割を担いますが、社外監査役にはより高い独立性が求められています。そのため、会社法では社外監査役の要件が定められており、以下のイ~ホのすべてを満たす必要があります。
●社外監査役の要件(会社法 第2条 第16号)
イ) 過去10年間、当該会社またはその子会社の取締役、会計参与、執行役、支配人その他の使用人でないこと
ロ) 過去10年間に当該会社または子会社で監査役を務めたことがある場合、その就任前の10年間に取締役や会計参与、執行役などの業務執行ポジションに就いていないこと
ハ) 当該会社の親会社等の役員・重要な使用人でないこと
ニ) 親会社等の子会社等(当該会社およびその子会社を除く)の業務執行取締役等でないこと
ホ) 当該会社の取締役や重要な使用人、または親会社等(自然人に限る)の配偶者・二親等内の親族でないこと
参考:e-GOV 法令検索「会社法 第2条 第16号」
東京証券取引所(以下、東証)は、上場会社に対して一般株主保護のため、「独立役員」を1名以上確保しなければならないことを義務付けています。この独立役員は、会社法にもとづく社外取締役または社外監査役であり、かつ東証が定める独立役員基準(一般株主と利益相反が生じるおそれのないこと)を満たす必要があります。
なお、IPO準備企業は、上場時に独立役員を1名以上選任することが必須です。そのため、役員選任の段階で、社外監査役が独立役員として認められるかどうか、また人材を確保する必要がある点に留意が必要です。
参考:
・株式会社東京証券取引所「上場管理等に関するガイドライン」Ⅲ5.(3)の2
・株式会社東京証券取引所「独立役員の確保に係る実務上の留意事項」
常勤監査役とは、他に常勤の仕事をしておらず、業務時間中はその会社の監査業務に従事している監査役を指します。
どの程度の勤務状況を「常勤」とみなすかについては、法令上の明確な規定はありません。そのため、勤務状況が常勤監査役として求められる役割や善管注意義務を十分に履行できるかどうかで判断されます。
一方、非常勤監査役は、常勤ではない形で監査役の職務を担う監査役を指します。非常勤であっても、常勤監査役と同等の責任を果たす必要があります。
なお、監査役会設置会社では、会社法により1名以上の常勤監査役の設置が義務付けられています。これは、監査役会の機能を確保し、取締役の業務執行を適切に監査するためです。
監査役の選任は、株主総会の普通決議で行います(会社法第329条、331条)。また、取締役の恣意的な人選を防ぐため、監査役には以下の権利があります。
一般的には、以下の観点から選任されるケースが多いです。
近年は多様性の観点から女性を選任する会社が増加しています。
なお、IPO経験者である必要はありません。これは、監査役に限ったことではありませんが、その経験がマイナスに働くこともあります(過去はこうだった等)。
当然ですが、形式的に判断するのではなく、経験に頼らず、柔軟性があり、自己研磨する意識が高い人材であることが重要です。また、自社に適した人材かを見極めるためには、事業への理解や将来像への共感等も重要です。
監査役は、会社法第335条により以下の職務と兼務できません。
・当該会社の取締役、支配人、その他の使用人
・子会社の取締役、支配人、その他の使用人
・会計参与(法人の場合はその職務を行う社員)
・執行役
参考:e-GOV 法令検索「会社法 第335条 第2項」
監査役を選任した場合、会社法第915条に基づき、選任日(就任承諾日)から2週間以内に本店所在地を管轄する法務局で登記申請を行う必要があります。
登記に係る費用として、資本金1億円以下の株式会社の場合、監査役就任登記には登録免許税1万円がかかります(資本金1億円を超える場合は3万円)。なお、登記を怠った場合、会社法第976条により、代表者に100万円以下の過料が科される可能性があります。
参考:
・e-GOV 法令検索「会社法 第915条」「会社法 第976条」
・法務局「商業・法人登記の申請書様式」、「1-10-1:株式会社役員変更登記申請書」
監査役を解任するには、株主総会の特別決議が必要です。これは、監査役の独立性を確保し、恣意的な解任を防ぐための仕組みです。正当な理由なく解任した場合、会社は監査役に対して損害賠償義務を負います。
また、解任後は、選任時と同様に、2週間以内に法務局で変更登記を行う必要があります。
参考:e-GOV 法令検索「会社法 第309条2項7号、第339条、第339条2項、第915条」
監査役が職務を終える事由には、次のものがあります。
これらの事由が発生した場合も、事由発生日から2週間以内に変更登記を行う必要があります。
監査役の任期は4年です。非公開会社の場合、監査役の任期を最長10年まで延長できますが、IPOを目指すのであれば、監査役の任期は4年にする必要があります。
また、原則2年の任期かつ定款の定めにより任期を短縮できる取締役と異なり、定款等で定めても任期を4年未満に短縮することはできません。これは、監査役の権限と立場の安定性を担保することが目的です。また、後述する監査等委員である取締役の任期は、2年になります。
| 役割 | 任期 | 短縮可否 | 非公開会社での延長 | IPO準備企業での設定 |
|---|---|---|---|---|
| 監査役 | 4年 | 不可 | 最長10年まで延長 | 4年に設定 |
| 取締役 | 2年 | 可 | 最長10年まで延長 | 1年または2年に設定 |
監査役の報酬は株主総会の普通決議により定められます(会社法 第387条)。一般的には、株主総会では報酬の総額を決議し、その範囲内で各監査役の個別報酬額を、監査役会などの場において、監査役相互の協議により決定されます。
報酬額は、会社の規模、上場・非上場の区分、監査役の年齢、職務範囲、経歴・資格などを総合的に勘案します。ちなみに、「出社は週4日なので、報酬も週5日の4/5」といった類の話を時々耳にしますが、監査役等の報酬は、出社日数の対価ではなく、その職務の責任とリスクに対する対価と考えるべきでしょう。週4日でも週5日でも監査役として負っている責任とリスクは同じなのですから。
監査役の報酬水準は、企業規模や上場区分によって大きく異なります。以下は、日本監査役協会の調査結果や公開情報などを参考にした、上場企業における監査役報酬の一般的な目安です。
| 区分 | 年額の目安 |
|---|---|
| 社内常勤監査役 | 約500万~1,200万円 |
| 社外常勤監査役 | 約500万~1,000万円 |
| 社外非常勤監査役 | 約200万~500万円 |
参考:
日本監査役協会「第26回 定時株主総会後の監査役等の体制に関する年次調査 集計結果」
あくまで上場企業における目安であり、IPO準備企業では企業規模や成長フェーズなどに応じて、これより低い水準で設定されるケースが一般的です。
取締役の監査に関する組織形態は、監査役会設置会社、指名委員会等設置会社、監査等委員会設置会社の3種類があります。それぞれの会社形態において、監査役会・監査委員会・監査等委員会が監督機関として設置されます。
監査役会は、監査役会設置会社において設置される機関であり、監査役間の意思統一と組織的な監査を目的としています。
監査等委員会は、監査等委員会設置会社において設置される機関であり、監査等委員である取締役3名以上(過半数は社外取締役)で構成され、取締役の業務執行を監査します。監査等委員は、取締役ではありますが、業務執行することはできません。常勤の監査等委員の選任義務はなく、委員会としての組織監査かつ内部統制システムを利用した監査を前提としている点は、監査委員会と共通しています。
監査委員会は、指名委員会等設置会社において設置される機関であり、経営の監督を担う「取締役」と業務執行を担う「執行役」の職務執行を監査します。指名委員会等設置会社の取締役会内に指名委員会・報酬委員会とともに設置され、取締役3名以上、過半数は社外取締役で構成されます。監査役のように独任制ではなく、委員会としての組織監査を行い、内部統制システムを活用した監査を前提としている点が特徴です。
【関連コラム】
東京証券取引所の有価証券上場規程437条第2項により、上場会社は監査役会・監査委員会・監査等委員会のいずれかを設置する義務があります。
東京証券取引所が2026年7月に公表した資料によると、東証上場企業における組織形態の選択状況は以下のとおりです。
参考:
株式会社東京証券取引所「東証上場会社における独⽴社外取締役の選任状況及び指名委員会・報酬委員会の設置状況」
東証全体(全上場会社)で見ると、監査役会設置会社の割合(49.7%)が最も高く、次いで監査等委員会設置会社(47.6%)が続きます。
一方、上場市場別に見ると、プライム市場では監査等委員会設置会社(50.5%)が監査役会設置会社(44.1%)を上回っています。また、全市場を通じて監査等委員会設置会社の割合は増加傾向にあり、上場企業における機関設計の選択にも変化が見られます。
背景には、社外取締役を複数選任したうえで、取締役会をモニタリング型のガバナンス体制へ移行する企業が増えていることが挙げられます。
他方で、指名委員会等設置会社は、取締役・社外取締役の人数要件が厳しく、必要な人材の確保が難しいことから、全市場を通じて採用率は低い傾向にあります。
IPO準備企業においても、従来は監査役会設置会社を選択するケースが多く見られましたが、近年は上場企業における傾向と同様に、監査等委員会設置会社を選択肢として検討するケースも見られるようになっています。
なお、監査等委員会設置会社を選択する場合には、監査等委員に対して経営上の妥当性を判断できる知見や経験が求められる点にも留意が必要です。
IPO準備企業が組織形態を選択する際には、自社の成長ステージや目指すガバナンス体制だけでなく、こうした人材を確保できるかどうかも踏まえながら、将来的な機関設計を検討することが重要です。
コーポレート・ガバナンスは、株主をはじめ、顧客・従業員・地域社会などのステークホルダーの立場を踏まえ、企業の持続的な成長と中長期的な社外監査役の要件企業価値の向上を実現するために、会社が経営者を監督・監視するために構築する仕組みです。
コンプライアンスや内部統制と混同されることが多いのですが、目的や主体が異なります。
コンプライアンスは、法律や規則といった法令(広い意味で社会的規範や企業倫理も含む)を守ることであり、コーポレート・ガバナンスや内部統制の一部であると解されます。
内部統制は、業務の有効性・効率性、財務報告の信頼性、法令遵守等を確保するために、経営者が社内に構築する仕組みです。
経営者の監視をする役割は、取締役会と監査役(会)が担うとされています。しかし日本における取締役会の構成員は、社外取締役も増えているものの、まだ社内取締役が大半であり、経営者の部下のような存在であるケースも見受けられます。
一方、監査役会は、経営陣からの独立性を確保するために、半数以上は社外監査役で構成され、任期は4年と取締役よりも長く設定されています。また解任された場合の意見陳述権も与えられており、取締役と比較して、身分が担保されています。
したがって、コーポレート・ガバナンスにおいて、監査役は経営者を監視する主翼であり、キーマンであると言えるのです。
監査役はコーポレート・ガバナンスの観点から非常に重要な役割を担っています。しかし、その重要性を残念ながら理解されていない経営者が多いことも事実です。またベンチャー企業においては、オーナー(大株主)と経営者である(代表)取締役が同一であることが多く、コーポレート・ガバナンスが機能しにくい状況であり、いい加減な経営をしているという誤った認識を持たれてしまうケースがあります。その思い込みを払拭するためにも監査役の存在は重要です。
私は、IPOを目指す経営者に監査役とは何かをしっかり理解していただくために、このコラムを執筆しました。また、IPO準備企業の監査役の皆様にも、その役割の大切さを再認識していただき、IPO後も取締役会に頼られる監査役を目指して欲しいと思っています。そのような想いから、一般社団法人ベンチャー監査役協会を設立しました。興味がある方は、是非、お問合せ頂けたら幸いです。
■監査役に関するご相談は「ベンチャー監査役協会」まで!