翌月1営業日締めでも現場が経費を提出できるワケとは?社員20名前後の経理に聞く、「小口現金・立替経費精算」業務をスムーズに進める秘訣

営業社員を中心に発生する立替経費。数が増えれば増えるほど、経理側の作業が増える仕事です。さらに数が増えるとなかなか期日には届かない。そんな苦労をお持ちの経理の方は多いのではないでしょうか。

今回は、さまざまな会社の経理を担当されてきたUさんに、立替精算業務の進め方についてお話をお聞きしました。

申請期日はなんと翌月1営業日目!
それでも遅れない理由とは?

――まずは御社の経理体制について、教えていただけますか?

Uさん:バックオフィス全体の管理を私が担っており、秘書業務、労務と各部門で担当を分け、5名前後の人員で全体を担当しています。

――ありがとうございます!今回は「立替精算業務」についてお聞きしていきたいと思います。まずは承認までの流れについてお教えいただけますか?

Uさん:導入している会計ソフトを使い、社員にアップロード、申請作業を翌月1営業日目までにやってもらっています。そこからの流れは私に一任されているため、申請内容を見て承認しているという感じですね。もし、気になる内容の申請があれば、役員に報告しています。1営業日目に間に合わなかった場合は、基本的には翌月扱いになるというのが弊社のルールです。

――基本的にUさんが承認までされているということは、スピード感を持った対応が可能ということになりますね。

Uさん:そうですね。

――ただ、翌月1営業日目までに申請となると社員さんはタイトなので結構ギリギリに一気に申請をあげてきそうな気がしますが、みなさん実際どうですか?

Uさん:経費を使った際に都度会計ソフトにアップロードする人もいれば、月末にまとめて、という両タイプいますね。そのほかにも日々アップロードしている社員もいますし、最終日にまとめてという社員もいます。

――経理的には、できれば日々アップロードしてほしいところですか?

Uさん:社員たちに「こまめにアップロードしてください」と伝えているわけではありませんが、使っている会計ソフトには一括承認できる機能がないため、日々アップロードしていただけるほうがこちらの負担が軽くなるのが実際のところではあります。

――でも、「こまめにしてください」とお願いはされていないんですね。

Uさん:そうですね。そこは経理の作業負担のことだけを考えた話になるため、あまり言わないようにしているという感じです。経理に関連する物事について、社員に「会社の経営のために必要だからやらなければならないことだ」という認識を持ってもらいたいというのが、会社としての考えなんですよ。

経理側の作業効率の話だけを考えた「期日を守ってくれ」だと、どうしてもこちらから押し付けている感覚になってしまうと思うんですね。営業など、現場サイドがバックオフィスの仕事を軽く見ているわけでは決してないと思うのですが、やはり営業サイドで守るべき期日とバックオフィスサイドの期日とに優先順位の上下関係が多少はあるのではないかと思っていまして。「経理側のために期日を守る」という考え方より、経営面から必要性を理解してもらったほうが、期日を守るマインドが現場に浸透しやすいんじゃないかと感じます。

――個人的にも月末にまとめて出すタイプだったので、耳が痛い話でした(苦笑)。社員の方たちに自然と意識付けされていらっしゃるのは素晴らしいですね。

立替経費の振込は給与と同時に。振込口座を分けたい要望が出てきた場合は、前向きに検討予定

――社員の方への経費の振込の最終確認もUさんがやられていらっしゃるんでしょうか。

Uさん:そうです。

――振込のタイミングはいつですか?

Uさん:給与のタイミングですね。その月の給与に上乗せして振り込んでいます。

――翌月に給与が振り込まれたあと、さらにその翌月の別タイミングで経費分が振り込まれる会社もあると思うのですが、御社は同時なんですね。

Uさん:そうなんです。私の前職である上場企業は、月曜締めの金曜入金だったため、苦しい資金繰りを回していた印象があります。もう少し会社規模が大きくなったり、上場企業になったりすると、別のタイミングでという形が増えるのかもしれません。

――なるほど。社員からするとありがたい気がします。ちなみに、例えば経費分はお小遣いにしたいので別口座にしてほしいといった話を聞くことがあるのですが、御社は社員の方から立替分は給与口座とは別の口座に入金してほしいといった要望は出ていないですか?

Uさん:現状はないですね。現状、社員が20代の独身者が多く、口座を分ける必要が特にないことも関係しているかもしれません。数年経ち、既婚者が増えてきたら口座を分けたいという話が出てくるかもしれないなとは思いますね。

――もし出てきた場合、Uさんならどうされますか?

Uさん:対応可能なレベルであれば対応していくのが会社としての方針なので、対応はします。ただ、労務業務を別のソフトで行っていて、そこからデータを引っ張ってきている部分があるため、社労士側との連携が必要になるかなとは思います。

――会計ソフト上での仕訳の流れについても教えていただけますか?

Uさん:弊社が使っている会計ソフトは、承認後に取引登録という画面が出てきまして、そこからは私ではなく記帳担当者が担当する流れになっています。その担当者が領収書を1件ずつ見て、何月分の計上なのか登録しているという感じですね。

これは機能面の話になってしまうのですが、月が混ざった申請を同じものとして申請すると計上月を分けられないんですよ。要は、5月1日に3月と4月の分を混ぜて申請されると、取引登録時に3月と4月に分けて計上できないんですね。そのため、月を分けて申請するようルールを作っています。

――ルールを作って管理されているんですね。御社は社員の方が経営面から経理業務の大切さを理解されていらっしゃることがうかがえるのですが、年次決算のタイミングでの経費精算についてはいかがでしょうか。特に遅れやミスが出てはいけないタイミングですよね?

Uさん:うーん、もしかしたらそこは年に1回と少ない頻度なので、少し浸透が薄めかもしれません。そのため、そこだけは経理側から意識してアナウンスしていかなければならない部分かもしれないですね。

――なるほど。しかしこれまでのお話からも、経理の皆さんが現場の方たちと上手くコミュニケーションを取られていらっしゃるのだろうと感じますし、経営面から必要性を理解して期日通りに経費処理されている社員の方が多いのではないかと思いました。今日はありがとうございました!