経理の畑

なぜ、同じ月次決算なのに負担が違うのか? 成功企業の事例から見えた「無理なく締まる会社」の共通点

作成者: 月次決算|Aug 3, 2026, 12:00:00 AM

なぜ、「無理なく締まる月次決算」と「負担が減らない月次決算」に分かれてしまうのか

月次決算は、経理担当者にとって毎月必ずやってくる重要な業務です。
どの会社でも「毎月決められた期間内に数字を締める」という点は共通しています。
しかし実際の現場では、同じように月次決算を行っていても、負担感には大きな差があります。

「毎月なんとか締めているけれど、担当者の経験や頑張りに支えられている」
「締め期間になると、提出待ち・確認待ち・修正対応に追われる」
「月次決算のたびに、経理だけが慌ただしくなる」

こうした悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。
一方で、大きな残業や混乱なく月次決算を回している会社も存在します。
では、その違いはどこにあるのでしょうか?
経理の畑で月次決算に関する複数のインタビューを行う中で見えてきたのは、「人手が多い」「担当者の能力が高い」「高価なシステムを導入している」といった単純な違いではありませんでした。

無理なく締まる月次決算は、「全社で締める体制」ができている!

月次決算というと、どうしても経理が行う作業というイメージがあります。
しかし実際には、請求書を提出する、経費精算を行う、工数を入力する、売上情報を登録する、といった作業の多くは、経理以外の部門が関わっています。
経理の畑でインタビューした企業に共通していたのは、月次決算を経理部門だけの仕事として考えていないことでした。
企業ごとに組織規模や業種、決算スケジュールは異なります。
しかし、それぞれの取り組みを振り返ると、共通して見えてきたポイントがあります。

それは、

  1. 回収・確認を経理だけの仕事にしない
  2. 「後でまとめてやろう」をルールでなくす
  3. 現場が迷わず処理できる仕組みをつくる

という状態をつくっていたことです。
言い換えると、決算につながる業務が日常業務の中に組み込まれ、現場も自然と月次決算の一部を担っている状態です。
ここからは、実際のインタビュー事例をもとに、「全社で締める体制」を実現している企業の工夫を見ていきましょう。

①回収・確認を経理だけの仕事にしない

事例1:「未着請求書シート」で確認待ちを減らす

従業員数100名以上 情報通信業

過去の請求書や月次推移をもとに「本来発生しているはずの請求書」を一覧化した「未着請求書シート」を運用しています。
経理側から事業部へ「この請求書は漏れていませんか?」と具体的に確認できるほか、事業部側も「今月は発生しない」など状況を記入します。
また、請求書の取りまとめは営業管理チームが担当しているため、大幅に作業が遅れるということはありません。

事例2:経営陣から「経費の意味」を伝える

従業員規模20名 コンサルティング業

経費提出の締切を守ってもらうために、経理からリマインドを行うだけでなく、経営陣が社員へ経費の重要性を伝えています。
経費精算は立替金を精算するためだけの手続きではなく、会社の数字を把握するために必要な業務。そうした考え方が社内に浸透していたことで、社員も「経理のため」ではなく、「会社のため」に期限を守る意識を持つようになったと思います。

月次決算で時間を取られるのが、請求書や領収書の回収、内容確認です。
今回ご紹介した事例では、「未着請求書シート」の運用や、経営陣から経費の重要性を伝えるといった工夫を行っていました。
回収・確認業務を経理だけで抱え込まず、現場と役割分担できる状態をつくることが、無理なく月次決算を締めるポイントだといえそうです。

②「後でまとめてやろう」をルールでなくす

事例3:経費精算を「ためない」ための67日ルール

従業員規模80名 金融サービス業

社員の立替経費を月2回精算しています。
その際、電子帳簿保存法の要件も踏まえ、「領収書は67日以内に必ず経費精算する」というルールを設定しました。定着するまでは繰り返し社内アナウンスを行い、経費精算を後回しにしない運用を整えました。
結果として、社員側も「早めに申請するのが当たり前」となり、経費の滞留や確認漏れを防げています。

事例4:工数は月末ではなく週次で確定する

従業員規模80名 情報通信業

システム会社のため、工数を入力してもらう必要があるのですが、エンジニアは日々の作業時間を基幹システムへ入力し、管理職が週次で内容を確認・確定しています。月次決算時には、売上や仕入だけでなく工数データもほぼ揃った状態になっています。

月次決算の負担を大きくしている原因の一つが、「月末にまとめて処理する」という運用です。
経費精算や工数入力など、本来は月の途中で処理できる業務も、後回しになると負担が月末・月初に集中してしまいます。
月次決算を早く終わらせるための取り組みというよりも、月次決算につながる業務を日常業務の中で無理なく回せる状態をつくることが重要だといえそうです。

③現場が迷わず処理できる仕組みをつくる

事例5:経費精算時に迷わない仕組みをつくる

従業員規模80名 金融サービス業

経費精算を後回しにしないために、申請時に迷わない仕組みをシステムで整備しています。
例えば、現場担当者に「書籍購入は教育研修費です」と説明しても、毎回覚えて正しく入力するのは簡単ではありません。
そこで、精算システム上で「利用内容」と「勘定科目」をあらかじめ紐づけ、交通費なら旅費交通費、書籍購入なら教育研修費が自動で設定されるようにしています。

現場に協力してもらう際も、「どの勘定科目にすればいいの?」「この申請方法で合ってる?」と迷う場面が多いと、入力は後回しになりがちです。
無理なく月次決算を締めている企業では、現場に会計知識を求めるのではなく、迷わなくても正しく処理できる仕組みを整えていました。
「正しく入力してください」ではなく、「正しく入力できる仕組みをつくる」ことが、経理と現場双方の負担軽減につながっているようです。

今回ご紹介した事例は、業種も企業規模も異なります。
ですが共通していたのは、経理だけが月次締めを行うのではなく、月次決算に必要な業務を現場も自然と担えるようにしていたことでした。
請求書の回収や確認を現場と分担する。
経費精算や工数入力をため込まない。
会計知識がなくても迷わず処理できる仕組みをつくる。
こうした工夫によって、決算につながる業務が日常業務の中に組み込まれ、月末・月初に負担が集中しない状態を実現していました。

「決算は経理の仕事」という思い込みが、月次決算を重くしているのかもしれない

月次決算の効率化というと、「システムを導入する」「担当者のスキルを上げる」といったことに目が向きがちです。
もちろん、それらも大切な取り組みです。
しかし、今回の事例から見えてきたのは、経理業務そのものを変える前に、まず「経理が代わりに抱えている仕事はないか」を見直すことの重要性でした。
たとえば、次のような業務はないでしょうか。

  • 本来は現場で確認できるはずなのに、経理が毎月確認している
  • 月末になってから、まとめて提出・入力されている
  • 現場が処理に迷うため、経理への確認や差し戻しが発生している

こうした業務を一つひとつ見直していくことが、月次決算の負担を減らす第一歩になります。
月次決算の負担を減らすヒントは、経理部門の中だけにあるとは限りません。
「全社で締める体制」になっているかを見直すことが、無理なく締まる月次決算への近道になるのかもしれません。