企業の財務を支える経理業務は、正確さと効率が常に求められる仕事です。しかし、日々の業務量の多さや複雑な処理、時間的制約の中で、ミスが発生する可能性は十分に考えられます。実際に400名の経理担当者を対象に実施したアンケート調査によると、77%もの人が「ヒヤリ」としたミスを経験していることがわかりました。
経理現場のミスは担当者だけでなく、管理職も含めて対策をとらなくてはいけません。同調査からは、8割の管理職が部下のミスに注意を払っていることもわかっています。
ここでは、管理職が気をつけている部下の具体的なミスと対策について紹介します。経理現場でミスが起きやすい業務を知り、実際にヒヤリミスが発生しないための参考としてください。
経理現場でヒヤリとしたミスを経験した人は77%もいる
管理職は、部下がミスなく業務を遂行できているのか確認しなくてはいけません。中には「ミスは滅多に起きない」と考えている人もいるかもしれませんが、「経理業務において、過去に経験したことのある『失敗』や『ヒヤリとしたミス』を教えてください」という質問に対し、「特にない」と答えた経理担当者は23%のみでした。
つまり、77%もの経理担当者がヒヤリミス、つまり大きな問題につながりかねないミスを経験しています。そのため、管理職は部下の業務を入念に確認する必要があります。
管理職が注意している部下のミス
管理職として経理・会計の部署に在籍している、または在籍していた200名は、「次の業務内容のうち、“部下”が失敗・ミスをしやすいと思うもの、注意を払っている業務を教えてください。」の質問に対して20%が「特にない」と回答しました。つまり、80%の管理職が部下の失敗やミスについて注意を払っていることになります。
また、具体的に管理職がミスのないように気をつけている業務の上位3つは以下となりました。
これら3つの他には「固定資産管理」「予算管理」などの業務に加えて「電子帳簿保存法/インボイス制度」といった法改正への対応もあげられました。
ミスが起きないための対策
管理職が注意を払っている部下の業務について、実際にミスが発生しないためにとられている対策を紹介します。
月次決算
月次決算のミスは、間違えた仕訳をしてしまうことで起きると考えられます。400名の経理担当者にとったアンケートでは「貸方借方が反対」「1億円の誤計上」といったミスがあげられました。仕訳のミスは、すぐに気づけばまだ対処しやすいものの、発見が遅れると修正作業が複雑になる可能性があります。
そこで、経理担当者がとっている対策は以下のようになりました。
仕訳ミスを防ぐためには、多くの経理担当者が「複数回のチェック」をしていることがわかりました。中にはダブルチェックにとどまらずトリプルチェックを行う人もいるようです。複雑な取引や処理が発生した場合は、専門家に相談して進めるのがおすすめです。
請求書業務
請求書業務におけるミスとしては「振込先を間違えた」「振込先銀行名を誤って登録して振込が実行されなかった」「先方に伝えた口座情報が誤っていたため、全く他人の口座に振り込まれてしまった」といった振込先に関するミスがあげられました。
また、「支払いを一桁多く振り込んでしまった」「桁数の入力誤りで、税理士を待たせてしまった」「多額の二重払い」といった金額に関するミスも目立っています。
これらのミスへの対策は、主に以下のようになりました。
請求書業務についても、複数回の確認によるミスの防止が多くあげられていました。また、取引先コードやエクセルでの確認とあるように、システム上の数字との照らし合わせも有効だと考えられるでしょう。
小口現金/立替精算管理
経理担当者は従業員の経費を立て替えるケースがあるため、現金を扱う人もいます。そこで発生したミスとして「社員の不適切なプライベート使用の経費を通してしまった」といった理解不足のミスや、「領収書紛失」「お金の紛失」といった紛失のミスなどがあげられました。
これらにおいても複数回の確認が対策としてあがっていますが、その他の対策は以下のとおりです。
現金や領収書を管理していると紛失のリスクがあるため、領収書であればデータ化して保存、現金であれば金庫での管理といった方法で紛失リスクを減らせます。また、近年はAIも活用して経理業務を効率化している人もいるようです。
まとめ
経理現場でのヒヤリミスは多く、8割の管理職が部下の失敗やミスに注意を払っています。その中でも「月次決算」「請求書業務」「小口現金/立替精算管理」の3つの業務は特に注意が払われている業務です。
これらのミスを防止するためには、ダブルチェックやトリプルチェックはもちろん、専門家に相談したりデータ化を進めたりすることも有効でしょう。より具体的な経理現場での失敗談と対策は、こちらの記事でも紹介しています。経理現場で気をつけるべきミスを把握して、現場で発生しない環境を整えましょう。