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賞与明細(賞与明細書)とは?作成ポイントや注意点をわかりやすく解説|給与計算|OBC360°|給与計算システムの給与奉行クラウド|給与計算システム・会計ソフトのOBC

作成者: 人事給与|2025年10月21日

賞与(ボーナス)は、法律で義務づけられたものではなく、企業の就業規則や雇用時の労働契約で定めている場合に支給義務が生じます。しかし、毎月の給与と異なり年に数回しか発生しないため、賞与の明細書に「何を記載すべきか?」と迷う担当者も多いのではないでしょうか。
賞与計算では社会保険料・税額の計算が複雑なため、賞与明細の発行業務は一見ルーティーンワークのようですが、ミスが許されない重要な業務です。
そこで今回は、賞与明細について、給与明細との違いや発行時に起こりやすいミス、業務効率化の方法などをわかりやすく解説します。

目次

賞与明細(賞与明細書)とは?

賞与明細は、企業が従業員に賞与を支給する際、その内容を明らかにするために交付する書類です。法定に特定の名称は定められておらず、一般的には「賞与明細書」「賞与支払明細書」「賞与支給明細書」などとも言われます。

●賞与明細発行の法定根拠

労働基準法には「必ず賞与明細を交付しなければならない」とは明文化されていません。しかし、労働基準法第24条(賃金支払いの原則)や第108条(賃金台帳の記載義務)を踏まえ、労働基準監督署などの行政解釈では支給内容を従業員に明らかにすることが望ましいとされています。また、所得税法では、給与や退職手当、賞与を支払う者は、支払った際に“その内容を記載した書類”を受給者に交付しなければならない旨が規定されており(第231条)、源泉徴収義務の一部として、賞与を支払う場合は賞与明細に相当するものを従業員に交付する義務があると解釈されています。
なお、支給額の多少や在籍期間の長短は関係なく、金額が極端に少ない場合やゼロに近い場合でも、賞与明細を発行する必要があります。

●賞与明細の発行対象

賞与明細は、賞与を受け取る全ての従業員に対して発行するのが原則です。正社員に限らず、契約社員、パートタイマー、アルバイトなど、雇用形態を問わず支給対象となった場合や、支給対象が管理職や役員であっても、会社規程により賞与支給が行われる場合は、明細を交付するのが望ましいと言えます。

●賞与明細と給与明細との違い

賞与明細と給与明細は、支給対象、算出方法、控除内容、支給のタイミング、記載項目など、様々な点で違いがあります。
給与は毎月一定日に定額または一定の計算式で支給されるのに対し、賞与は年2回や業績連動など不定期で、支給額もその都度変動するものです。計算根拠も異なり、給与が基本給や諸手当を基準とするのに対し、賞与は評価期間の勤務成績、会社業績、支給方針に基づき算定されます。控除計算も同じではなく、社会保険料や所得税の控除額が給与時とは異なる場合があります。
記載項目については、給与明細では残業代や通勤手当など毎月発生する項目が並びますが、賞与明細には「基本賞与額」「業績加算」「特別加算」など賞与特有の項目が加わります。
このような違いが、結果として賞与明細の発行業務を複雑化し、ミスが発生しやすい要因となっている可能性があります。

●賞与明細と給与明細の違い
項目 賞与明細 給与明細
支給対象 特別に支給されるボーナス
(会社の業績や人事評価に基づく)
毎月の労働に対する基本給・残業代・手当など
支給頻度 年1〜2回(不定期) 毎月1回(定期的)
控除の特徴 社会保険料・所得税は天引きされるが、住民税は基本的に天引きされない 社会保険料・所得税・住民税などが通常どおり天引きされる
支給額の決まり方 就業規則の賞与規程、業績や評価で変動することが多い 雇用契約・就業規則で固定的に決まっている部分が多い
明細記載の特徴 「支給」欄は賞与額がメインでシンプルなケースが多い 「支給」欄に基本給や残業代など複数項目が並ぶ

賞与明細を発行する意義

賞与明細は、単に賞与の金額を通知する書類ではなく、支給の正当性と透明性を担保するツールでもあります。
賞与は給与に比べて金額差が大きく、従業員の受け止め方も強い感情を伴いやすいため、賞与明細で計算過程を明示することで、不公平感や誤解を回避しやすくなります。特に、業績連動型の賞与制度を採用している企業では、算定基準が複雑になりやすく、交付された明細が制度理解の補助にもなります。
一方で、賞与明細の記載が不足すると、従業員との間で誤解や不信感を生む要因にもなりかねません。
控除額の根拠を示さないまま手取り額だけを通知した場合、「なぜこんなに少ないのか」という不満が噴出することにもつながります。
また、評価期間や算定基準を明示しないと、「なぜ自分だけ額が低いのか」という個別相談や異議申し立てが増えるおそれもあり、前年との支給額差が大きい場合は、計算根拠の透明性が不可欠です。
正確かつ詳細な明細交付は、制度の透明性を高め、従業員との信頼関係を守るための最もシンプルで効果的な手段といえます。

賞与明細に必要な記載項目(フォーマット例付)

賞与明細に何を記載するかは、労働基準法第108条および労働基準法施行規則第54条により、会社が作成する賃金台帳が事実上の根拠となっています。
具体的には、次のように「必ず記載する項目」と「任意の記載項目」に分かれます。「任意で記載する項目」は、記載しておくと従業員が算定の背景を理解しやすくなり、前年との比較や自己評価とのギャップを確認する手掛かりにもなるため、説明責任を果たしやすくなります。

必ず記載する項目

  • 総支給額:賞与全体の金額。賞与計算の出発点となる。
  • 支給項目の内訳:基本賞与額、業績加算額、特別加算額など、算定根拠がわかる情報。
  • 控除額の内訳:健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料、所得税など。給与計算時とは異なる金額になることが多い。
  • 差引支給額(手取り額):最終的に従業員が受け取る金額。

任意の記載項目

  • 賞与支給日:銀行振込日や現金支給日を明記することで、資金計画を立てやすくなる。
  • 支給対象期間や評価期間:算定に使われた期間を示すことで、前年との比較や評価結果との整合性を確認できる。
  • 企業独自の控除項目(社内積立金、組合費など):従業員が控除の内訳を理解できるようにする。
  • 振込口座情報(給与と異なる場合):振込先が通常と異なるケースでの混乱を防ぐ。

賞与処理に対応する給与システムであれば、記載項目がデフォルトで用意されており、適切な計算処理が自動で反映されるようになっており、イチからフォーマットを作成する必要はありません。ただし、企業独自の項目がある場合などは別途設定が必要になります。そのため、賞与明細を作成する前に記載項目に抜け漏れがないか確認するよう心がけましょう。

賞与明細の作成手順

賞与明細の作成は、単に金額を入力して印刷するだけの作業ではありません。支給額の決定から明細の配付までには複数の工程があり、それぞれに注意すべき点があります。ここでは、標準的な発行の流れに沿って、注意点を解説します。

●賞与明細発行までの標準的な流れ

① 賞与支給額の決定

多くの企業では、半年から1年ほどの評価期間を設定し、その間の勤務成績、業績への貢献度、勤務態度などをもとに賞与支給額を算定します。この段階で大事なのは、支給額の計算ルールが全員に共通していることと、その金額について承認を得てから次に進むことです。
評価結果や業績の数字に基づいて金額が正しいかを、人事部門や経営層が確認し、正式に決定します。対象者によって基準や計算方法にばらつきがあると、金額の根拠を説明できなくなり、従業員が納得を得にくくなるため注意が必要です。

② 賞与計算の実施

支給額が決まったら、社会保険料や税金などの控除額を計算します。
社会保険料(健康保険、厚生年金、雇用保険)は、給与と賞与で計算方法が異なるため注意しましょう。
特に保険料率の改定時期や上限額の適用漏れはミスを起こしやすく、所得税も賞与額に応じて変動幅が大きいことから、最新の税額表や計算ツールで確認を徹底しなければなりません。控除計算を間違えると、そのまま明細に反映され、修正に大きな手間がかかるため、ここでの正確さが後の工程を左右します。
具体的には、控除額は支給額の確定後、「社会保険料→所得税」の順で計算するのが一般的です。

・社会保険料の計算

支給額に保険料率を掛けて算出(千円未満切り捨てなど、端数処理は法令に準拠)し、健康保険、厚生年金、雇用保険の順で計算します。

<控除額の計算式>

健康保険料 = 標準賞与額 × 健康保険料率 ÷ 2
介護保険料 = 標準賞与額 × 介護保険料率 ÷ 2 (※40歳〜64歳の従業員のみ)
厚生年金保険料= 標準賞与額 × 厚生年金保険料(18.3%) ÷ 2
雇用保険料 = 賞与額 × 雇用保険料率(0.55%/一般の事業の場合※)
2025年4月〜2026年3月までの保険料率です。保険料率は年度ごとに変更される場合があるため、最新の情報をご確認ください。

・所得税の計算

社会保険料控除後の課税対象額をもとに、国税庁の「賞与に対する源泉徴収税額の算出方法」に従って計算します。給与とは別枠で計算するため、月額給与の税率と異なる場合があります。

所得税 = (賞与総支給額 – 社会保険料の合計額) × 所得税率

賞与計算をミスなく行うためには、事前に最新の社会保険料率表、源泉所得税の税額表、従業員ごとの扶養控除等申告書の内容、過去の賞与支給実績などを揃えておくことが大切です。(ミス防止については次章参照)また、昇給や扶養状況の変更、途中入社・退職者の情報も、必ず最新の状態に更新しておきます。年度途中の変更情報は、給与計算システムに未反映の場合があるため、人事情報と連携できているかしっかり確認しましょう。
※住民税は、原則として賞与からは控除しませんが、自治体や本人希望により控除するケースがあります。その際は、住民税の特別徴収税額決定通知書を用意しておきましょう。

③ 明細書の作成

計算終了後、結果を賞与明細にまとめます。作成時は、システムの設定や必須項目が適切か、事前に確認しておきましょう。
多くの給与システムでは、賞与と給与は別に設定するようになっています。設定が適切でなければ、控除率や項目名が正しく反映されないことがあります。
記載内容については、先述した記載項目に加えて、支給日など実務上必要な項目がすべて記載されているかも確認しておきます。特に端数処理や表記ゆれなどがあると、従業員からの問い合わせを増やす原因にもなるため、正確性だけでなく、わかりやすさにも配慮することが大切です。

④ 内容確認と承認

作成した賞与明細は、必ず複数人でチェックします。金額や控除率、対象期間、氏名や所属など、誤りがないか細かく確認することが重要です。
前回や前年の賞与と比べて大きく増減している場合は、上司や従業員から質問があった際にすぐ回答できるよう、その理由を明確にしておきます。
また、承認フローは支給日の前に完了させておくことが求められます。遅れると印刷や配付に影響し、支給当日の混乱を招く可能性があります。そのため、計算から承認までのスケジュールをしっかり組み立てておくことが肝心です。

⑤ 配付・発行

承認された賞与明細を従業員に配付します。配付の遅れは不満や不信感につながるため、遅滞なく配付しましょう。
なお、賞与明細の配付方法は、紙での配付と電子配付が認められています。紙で配付する場合は、封入や封緘、手渡しや郵送などの手間とコストがかかりますが、確実に受領を確認できる利点があります。
一方、電子配付は、メールやWebで従業員に配付するため、配付作業の負担軽減になります。また、紙のように放置や紛失といったリスクがなく、セキュリティ対策にも有効です。ただし、事前に電子配付できる仕組みを整備する必要があります。

賞与明細作成時に起こりやすいミスはクラウドサービスで対策を!

賞与明細の発行業務では、給与明細と異なる部分が多く、発行回数が少ない割に人事考課の確定から明細発行までが短期間に集中するため、ミスも起こりやすくなっています。

ここでは、特によくあるミス例と対策について解説します。

●賞与明細作成時に記載漏れや控除額の記載ミスが発生

賞与明細には、総支給額、支給内訳、各種控除額、差引支給額といった必須項目を正確に記載する必要があります。ただし、一般的な給与システムでは、賞与と給与の設定が別々に管理されているため、賞与の設定が適切でない場合、一部の控除が反映されないことがあります。
特に、財形貯蓄や社宅費など独自控除項目については、システム設定の見落としや入力漏れを起こしやすくなります。
こうしたミスを防ぐには、賞与計算前にマスター設定や計算式を最新状態に更新し、前年の明細と比較して異常がないか確認するのが有効です。また、入力、設定変更、計算など、手作業を行った後は必ず複数人でチェックすることをルール化すれば、ヒューマンエラーを減らすことができます。

●最新の社会保険料率が反映されずに賞与計算している

社会保険料率は、毎年定期的に改定されます。特に、4月・9月の改定時期と賞与支給時期が重なる場合、料率の更新を忘れるミスが発生しやすくなります。料率を間違えると、控除額だけでなく会社負担額にも影響し、後から修正処理や差額調整が必要になるため、次のような対策を事前に講じることが大切です。

<効果的な対策>
  • 料率表の更新時期を年間スケジュールに組み込む
  • 改定前後の計算時には最新版への差し替えを徹底する
  • 給与システムの自動更新機能の有無を確認する(手動更新が必要な場合は、担当者と更新期日を明確にする)

●賞与明細の発行タイミングが遅れる

賞与明細の発行が遅れると、従業員は手取り額を事前に把握できず、ローンや生活費の計画に支障をきたします。その結果、従業員の不信感や不満が高まる要因となります。
紙の明細書の場合、印刷・封入・配付に時間がかかるため、繁忙期と重なると発行が遅れることもあります。このような遅延を防ぐには、次のような対策が有効です。

<効果的な対策>
  • 賞与計算のスケジュールを給与計算や他業務と重ならないよう事前調整する
  • 明細作成から承認・配付まで各工程に明確な締切を設定する
  • 電子明細を導入し、承認後すぐに従業員が閲覧できる環境を整える

●対策にはクラウド給与システムと電子発行サービスがおすすめ!

これらのミスを簡単に防ぐには、クラウドサービスの給与システムを利用し、賞与明細を電子配付にするのが効果的な解決策と言えます。
クラウドサービスなら、常に最新の法令や保険料率が自動で反映されるため、常に更新したかを気にする必要がありません。賞与に関する設定を最初に行っておけば、自動計算で正確な賞与額を算出し、明細書のフォーマットに落とし込むことができます。
また、最近は給与明細を電子配付するサービスも多く提供されており、給与システムと連携して従業員にメール添付で送信したり、Web上で閲覧したりすることができるようになっています。
このような仕組みを整えれば、賞与明細の正確性が向上し、発行業務の効率化も実現できます。

例えば給与奉行iクラウドの場合、賞与における所得税計算は、前月給与から「社会保険料を差し引いた金額」を自動算出し、「扶養親族等の数」は従業員の家族情報から自動判定されるため、計算を正確にできます。賞与計算に必要な社会保険料も自動算出されるため、煩わしい手計算が一切不要です。
12回分の賞与処理に対応しているため、夏季や冬季のボーナス支給だけでなく、毎月のインセンティブや歩合給、決算賞与などを支給している場合も、効率よく正確に計算できます。

また、給与奉行iクラウドには連携して賞与明細を電子発行する奉行Edge 給与明細電子化クラウドが用意されています。奉行Edge 給与明細電子化クラウドは、給与奉行iクラウドの給与・賞与データを反映し、web照会かメール配信を選択し、配信日時を設定すれば、後は自動で全従業員へ配信が可能です。

従業員側は、スマートフォンやパソコンから24時間いつでも閲覧でき、過去の明細も簡単に確認できます。従業員ごとにweb照会とメール配信を使い分けできるため、所有している端末や勤務場所など、環境に合わせた給与明細・賞与明細の受け取りが可能です。

各提供方法に応じてセキュリティ対策も実施されているため、情報漏洩や第三者に見られるという心配もなく、安心して配付できます。

 

おわりに

賞与明細の発行業務は、一見「給与明細と同じ」と思われがちですが、実は独特の課題も多くミスが起こりやすい業務でもあります。短納期でイレギュラー、説明責任も重い業務であるがゆえに、1つでもミスが起こらないよう注意しなければなりません。人材不足で悩む企業にとっては、手作業の負担も重くのしかかってくるでしょう。
こうした課題を根本から解決するには、賞与明細の発行業務のうち重要な「計算」と「配付」をシステムで“自動化”するのがもっとも有効です。給与システムをクラウド化し、最新の料率や法改正に自動対応するクラウドサービスで計算精度を高めつつ、電子発行サービスを連携することで、発行業務の負担軽減と遅延リスクの予防を同時に実現できます。個人情報への強固なセキュリティ対策にもなり、従業員の安心と信頼を高めることにもつながります。
ぜひこの機会に、賞与明細の発行業務を丸ごと電子化して、業務の効率化と従業員の安心・信頼度向上を目指してみませんか。

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