佐渡汽船株式会社

子会社経理担当者の人手不足で表面化した人材面の課題経理部門統合を目指した先に見えてきた「グループ一体経営」

  • 経理・会計・財務​
  • 海上運送/道路運送/港湾運送事業
  • 旅行業
  • 奉行iクラウド Group Shared Model
佐渡汽船株式会社
経理部 経理課 主任
西 麻貴氏
佐渡汽船株式会社
経理部 次長
服部 賢一氏

検討のきっかけ

人手不足で子会社の経理が困難に
子会社の経理を一括で引き受ける仕組みづくりが急務

みちのりグループの一員である当社グループは、当社のほか連結子会社7社で構成されており、佐渡島と本土を結ぶ定期航路事業を営み人流・物流インフラを担うとともに、佐渡島の基幹産業の一つである観光産業に付帯するサービスを手がけています。

佐渡島は、「佐渡島の金山」が2024年にユネスコの世界文化遺産に登録されたことで注目を集めており、観光客の増加が期待されているところですが、経理担当者としては業績アップへの期待の一方で、子会社の経理業務へ一層の負荷がかかることが心配でもありました。

当社では、これまで連結決算作業やグループ業績管理を行う中で、子会社の月次決算早期化が課題となっていました。一般的に経理業務は属人化しやすいと言われますが、それは子会社も同様であり、加えて新たな経理担当者の育成も課題でした。子会社においては経理業務とフロント、売店、食堂などの営業現場を兼務というケースがほとんどであり、特に繁忙期においては経理業務が後回しになる傾向があるため、子会社の経理担当者に問い合わせても「今は現場が忙しくて経理業務ができません。待ってください。」と言われてしまい、月次決算締めに多くの時間を要していました。

経理担当者の育成が進んでいない中、佐渡島では本土側と比較して人口減少や高齢化の進行による人手不足が顕著であり、新たな人材採用もままならない状況が続きました。それでも当社の経理担当者が定期的に子会社に出向くなどの支援を行いながら何とか子会社にて経理業務を継続していましたが、互いに限界を感じるようになりました。こうして、現金管理や棚卸などを除いた子会社の経理業務を当社に集約することを決断しました。

しかし、子会社の経理業務を追加で担うには、これまで当社が行っていた既存の連結決算業務やグループ業績管理に労力がかかりすぎていました。

第一に会計情報の収集に伴う手間です。子会社が使用している会計ソフトは統一されておらず、また、その会計ソフトから直接情報を取得できる体制ではなかったため、連結パッケージや月次決算書だけでは業績の概略しか把握できず、連結決算資料の作成や監査対応の際には、その詳細な内容は別途、電話やメールで確認しなければなりませんでした。

第二に勘定科目や仕訳の修正に伴う手間です。子会社の業種は運輸や観光、不動産・ビル管理など多岐にわたっており、使用する勘定科目もグループで統一されておらず、また、子会社特有の仕訳・記帳がありました。このため、連結決算作業においては、勘定科目の組替えや連結修正仕訳など多くの修正作業が必要となっており、こうした手間が影響してグループ全体の業績把握に約1か月もかかっていました。

こうしたなか、このままやり方を変えずに進めてはパンクするという危機感があり、仕組みそのものを変えようと思いました。そこで思い描いたのは子会社の会計情報を当社で直接収集、管理でき、子会社と連携がとりやすい仕組みです。そうなれば、経理業務の労力を減らして決算早期化も実現できる。そんなことを考えながらシステム検討を始めました。

佐渡汽船株式会社 経理部 次長 服部 賢一氏

導入の決め手

奉行クラウドはグループ一体経営推進に資する
唯一無二のシステム

奉行 i クラウド Group Shared Model(以下GS)を導入したのはグループ全体の会計業務の基盤となるシステムだと判断したからです。具体的には当社と子会社の両方で、同時に確認しながら業務を進められることが魅力的でした。また、一度のログインですべての子会社の会計情報を確認できるため、必要な情報を手間なく取得できます。このような仕組みであれば子会社の会計情報を当社で直接管理できますし、子会社と連携を取ることも容易になると確信しました。

そして、会計業務からスタートして固定資産管理や債務管理など子会社ごとに、対応する業務範囲を段階的に拡張できることも大きな決め手となりました。これならば、7社ある子会社それぞれの状況を判断して、いつまでに、どこまでの業務を当社に集約するのかについて柔軟な対応を取ることができます。さらに経営幹部がリアルタイムで経営状況を確認できる点も高く評価しました。

GSを使うことで、グループとしての数字だけでなく、子会社ごとの決算の中身がいつでもどこでも確認できるほか、時宜に応じた適切な手を打つための材料を得ることが可能になるからです。近年ではグループ一体経営が重要視されており、GSはそれを実現するための最適なツールだと判断しました。

佐渡汽船株式会社 経理部 経理課 主任 西 麻貴氏

導入効果

グループでの会計基盤の統一によって業務の質が向上
決算早期化で経営判断の迅速化も実現

子会社の経理業務を当社に集約するにあたり、「属人化防止」、「業務の共通化」、「省力化」の仕組みづくりを目指しました。

まず「属人化防止」については当社側の人員配置を工夫しました。子会社1社に当社の経理担当者2人を置くことに加え、一定期間で担当者を変えていくことで情報の点在を防止するとともに、子会社全社への理解度が深まることも目指しています。GSの仕組みだと関係者全員が必要な時に必要な情報に手間なくアクセスできるため、コミュニケーションをスムーズに取ることができています。

次に「業務の共通化」については、バラバラだった勘定科目の統一に取り組みました。現在では、子会社ごとに必要な情報の管理は補助科目で行うことで、機械的な処理が可能になっています。また、子会社特有の仕訳・記帳を改め、当社と同じルールに統一することで連結決算作業における修正作業の負担軽減に繋がっています。

そして「省力化」については、いかにして伝票入力等の人の手による作業を減らすかを検討しました。奉行シリーズにはAI-OCR機能や自動仕訳、他社システムとのAPI連携機能など便利な機能がありますので、これらを最大限活用することにより、省力化はもちろん、経理業務のスピードアップ、正確性の担保などの効果も得られています。

システム基盤が統一されたことで各種フォーマットが揃い、子会社の統制が効くようになったことも大きな変化です。これまで予算管理を行うフォーマットは各社各様で正確な予実管理ができない状況でした。同じシステムを使用し、同じフォーマットで管理できるようになったことで、管理のしやすさや確認のしやすさに大きな変化を感じています。

また、業務の工夫などの良い取り組みを簡単に横展開できるようになりました。これまで子会社各社が行っていた業務には必ず良い部分がありますが、システムが別々では真似しようにも限界がありました。現在ではシステムが統一されているため、操作方法や業務のやり方を容易に横展開できます。今後は子会社ごとの良い部分をピックアップし、佐渡汽船グループの”ベストプラクティス”をつくっていきたいと思っています。

もちろん、子会社の会計情報の収集もスムーズになりました。現在では、子会社の担当者にメールや電話をせずとも取引の元となる証憑に直接アクセスでき、会計情報の確認が手間なく行えています。

また、債務奉行や固定資産奉行と併用することで支払業務や月次決算資料、更には連結パッケージの作成までを当社で行うことも可能になりました。こうした取り組みを行った結果、以前はグループ全体の業績把握に約1か月かかっていましたが、現在は約15日に短縮することができました。

子会社経理担当者の採用難をきっかけとして、子会社の経理業務を当社に集約する仕組みを模索するなかで、長年の課題であった決算早期化を実現できたことはうれしい限りです。季節によって変動の大きい観光業だからこそ、子会社の経営状況を早く正確に可視化できたのはとても大きなことです。現在では、経営幹部が経営状況を素早く把握できるようになり、グループ全体の業績改善などに役立てることができています。

バラバラだったシステム基盤を統一して、業務改善を実現
旧システムでは会計情報の収集に手間がかかる・勘定科目や仕訳の修正作業が大変。新システムは子会社の管理や統制が容易に・情報収集がスムーズに!
導入効果
システム基盤統一と人材配置の工夫により属人化や情報の点在を防止
奉行クラウドの仕組みなら関係者全員が必要な時に必要な情報に手間なくアクセスできる
子会社からの情報収集がスムーズになりグループ全体の決算早期化経営状況の改善に寄与
バラバラだった勘定科目を統一し連結決算作業における修正業務の負担軽減

今後の展望

バックオフィス統合からグループ一体経営のさらなる推進へ

総務省によれば2024年の日本の総人口は推計で1億2380万2000人と前の年より55万人減り、14年連続の減少となりました。今後も人口減少や高齢化は加速すると見込まれますが、先に触れたとおり佐渡島ではその傾向が顕著であるため、早急な対策が必要です。

そこで、現在、各社で行っている給与計算業務を将来的に当社に集約したいと考えています。経理業務にとどまらない「バックオフィス統合」を図り、子会社側の業務負担を軽くすることで労働環境や待遇を改善し、人材の確保・維持ができる体制を作り、人手不足に対応していければと考えています。また、人件費の把握が当社でできるようなれば、採用計画に基づくコストシミュレーションなども正確に確認できるため、グループ一体経営のさらなる推進も可能になります。

佐渡島には2024年にユネスコの世界文化遺産に登録された金山のほか、豊かな自然や食材、温泉、伝統芸能など、多くの観光資源があり、注目を集めています。こうしたなかで、本土と佐渡島を結ぶ佐渡汽船グループが地域活性化に果たす役割は大きいと自負しています。当社の経理としては、バックオフィス統合やグループ一体経営を通して佐渡へ訪れるお客様へのサービス向上、そして地域活性化に貢献していくことができればと考えています。

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企業情報

1913年設立。
2022年3月株式会社みちのりホールディングスの子会社に。
同年5月東京証券取引所スタンダード市場の上場廃止。
当社グループは当社のほか親会社、連結子会社7社で構成されており、佐渡島と本土間の人流および物流とこれに付帯するサービスを手がけている。
佐渡島は歴史的な名所や旧跡、伝統芸能が多く、四季折々で異なる姿を見せる自然は観光客を魅了。佐渡島の金山は2024年にユネスコの世界文化遺産に登録され、注目を集めている。