ソーシャルメディア時代における危機管理と労務管理

SNSでの不適切投稿・情報漏洩によって、企業が厳しい責任を問われる事案が増えています。
企業はどのように対応したらよいのでしょうか?

開催日時
2019年6月5日(水) 13:30~16:30/東京
セミナー概要
SNSにおける「炎上」は、すべての企業が対象に・・・

SNSの急速な発展にともない、個人が簡単に情報発信できる昨今。
従業員等による不適切な投稿、転職サイトへの企業の悪口の書き込み、SNSを通じての情報漏洩等、SNSがきっかけで炎上し拡散され、大問題に発展するケースが急増しています。
しかし、ソーシャルネットワーク時代におけるこのような問題に対応できている企業は多くありません。

従業員全員での危機管理意識の共有、問題が起こってしまった場合にどう動くべきかという「危機管理」とインターネット上での問題が発生した場合を想定した就業規則の改定、 ガイドライン・誓約書等の具備といった「労務管理」の2つの面で対応を検討する必要があります。

本セミナーでは、危機管理コミュニケーションの専門家と現代型の労務問題に精通した弁護士のお二人に、昨今のSNSにおける炎上事例と事前・事後の対応策を解説いただきました。
セミナープログラム
第一部 危機管理コミュニケーションの要諦
<講師>
株式会社電通パブリックリレーションズ コーポーレートコミュニケーション戦略局リスクマネジメント部 チーフ・アドバイザー 青木 浩一氏
第二部 ソーシャルメディア時代の労務管理
<講師>
弁護士法人ALG&Associates 執行役員/弁護士 家永 勲氏
セミナー総括
第一部 危機管理コミュニケ―ションの要諦
[講師] 株式会社電通パブリックリレーションズ コーポーレートコミュニケーション戦略局リスクマネジメント部 チーフ・アドバイザー 青木 浩一氏
第一部は、株式会社電通パブリックリレーションズ青木浩一氏に、危機管理についてお話いただきました。
一部をご紹介いたします。

◇危機管理はなぜ必要? ―些細なことが大きな損失に、一億総ジャーナリスト社会―

不祥事はある日突然、たった一人の不埒な行動やミスによって引き起こされます。
ひとたび危機が訪れると、コツコツ積み上げているものがガラガラと崩れ去ってしまう可能性があります。
対応を誤ると、
  • ・取引先との取引停止
  • ・監督官庁からの業務停止(改善)命令
  • ・顧客による不買運動
  • ・株主からの株主代表訴訟
など、企業にとってダメージが大きい結果になることがあります。

不祥事による企業への影響
※セミナー資料より抜粋


インターネットが普及した現代は、個人が容易に情報発信できる「一億総ジャーナリスト社会」ともいえます。 ささいなことでも、対処を間違えると大ニュースに発展してしまいます。

たとえば、社員が交通事故を起こしてしまった場合などでも、社用車を使っていたり、スマートフォンを操作しながらの事故であったりなど、事故の性質によっては会社への取材の嵐になることも考えられます。
対策は考えられていますか?
コトが起きてから対策を考えていては、迅速な対応はできません。

◇危機管理の分類 ―リスク・マネジメントとクライシス・マネジメント―

危機管理は「リスク・マネジメント」「クライシス・マネジメント」に分類することができます。

リスクマネジメントは、リスクアセスメント(リスクの棚卸)を行うことや、顕在化してきたリスクを、小さい芽のうちに防ぐなど、危機を予防するための危機管理です。
情報漏洩や不慮の事故、過労死などさまざまなケースを想定したシミュレーショントレーニングなどが重要です。

クライシス・マネジメントは、実際に危機が起きた場合の対応(事態収拾、被害対応、ステークホルダー対応)など、レピュテーションダメージを最小限に抑えることを目的とした危機管理です。
クライシス・マネジメントにおいては、初動が最も重要です。広報対応方針決定、情報開示の準備などは1時間以内に行い、3時間以内に、記者会見準備やプレスリリースを準備するなど、即座に対応できるようなフローの構築を行います。

リスク・マネジメント、クライシス・マネジメントそれぞれにおいて、体制を社内で構築することが必要です。
しかし、体制の構築はあくまで、必要条件であり、形だけを整えても、社員の意識が低いままでは、十分とは言えません。
危機管理の意識の醸成がなにより重要です。

◇危機管理対応の成功事例 -危機対応の見本といわれる、某通販会社の事例-

記者会見などで謝罪をしたにもかかわらず、さらなる不祥事を重ねてしまうこともあります。こうなると、信頼を取り戻すのは容易ではありません。

一方、即座に誠意を見せた対応を行い、信頼を失わなくて済んだ事例もあります。

某通販会社で、契約した顧客の名簿が何者かによって持ち出され、 個人情報が流出するという事件がおきました。 流出規模は最終的に 数十万件を超えました。

その際、社長は2時間以内に全ての販売を止めるという決断をし、「 多くの方々にご迷惑をかけているのだから、会見で販売自粛を発表し、問題の解決に取り組むことが必要 」 という考えから、 記者会見も終了時間を設けず、質問が全部で尽くすまで答えました。

クライシス・マネジメントにおいて、最も重要な「謝罪の姿勢」を真摯に示したところ、事件翌年からは、売上高が倍増するなど、顧客の信頼を取り戻しました。

◇ソーシャルネットワーク時代の今、法令を守るだけでは不十分

近頃の不祥事では、コンプライアンス違反に関するものが多く、コンプライアンスが話題になることがたびたびあります。
コンプライアンスは、しばしば「法令遵守」と訳されますが、法令を順守することは当たり前であり、それだけでなく社会の倫理・常識を逸脱しないこと、 社会の期待にこたえる(裏切らない)ということが、コンプライアンスの本来の意味ではないでしょうか。


第二部 ソーシャルメディア時代の労務管理
[講師] 弁護士法人ALG&Associates 執行役員/弁護士 家永 勲氏
第二部では、労務管理と、SNSに関する法的手続きなどについて、弁護士法人ALG&Associatesの家永 勲氏にお話しいただきました。

SNSというメディアの特性、特性からくる問題点、実際の炎上事例のご紹介からはじまりました。

◇SNSの特性と、これまでの炎上事例

以前からある掲示板などと違い、積極的に情報を見に行かなくても目に触れることが、SNSの特徴の一つ目として挙げられます。
また、多くの人が積極的発信をしないまでも、「いいね」ボタンを押すなどの消極的発信を行っており、それによっても情報が伝播し、悪意なく情報が拡散されていくことがあります。
情報の真偽を確認せずに消極的発信が繰り返されることで、誤った情報が広がることもありますし、文字数の制限などにより事象の背景が伝わらずに誤解を生んでしまう可能性もあります。

このほかにも、発信の安易さ、特定可能性、一度発信した情報が残ってしまうという特性などにより、SNSをきっかけとした炎上事件が多く発生しています。

これまでの炎上事例には、以下のようなものがあります。
  • ・従業員の立場で知った、有名人の個人的情報を投稿。
  • ・店舗の冷蔵庫に入った従業員がSNSへ写真を投稿。
  • ・求人サイトに、「ブラック企業」との評価を記載される。
アルバイトによる、不適切動画などの投稿は、今年に入ってからも数件、炎上となっています。
実際に見た覚えのある方も多いのではないでしょうか?
では、それらが具体的にどこの企業(お店)で起きたのかを覚えていますか?
多くの方が、「コンビニ」などの業種は思い出せても、会社名まではわからないのではないでしょうか。

SNS炎上の特徴として、「一過性」であるということがあります。
対応を正しく行うことで、レピュテーションが傷ついたとしても、多くの人は忘れていきます。

◇炎上が起きた場合に法的責任を問われるのは誰?

SNSによる炎上事件が起きた場合、発信者、行為者だけでなく、会社・役員や管理監督者が法的責任を問われる可能性もあります。
たとえば、会社・役員に対して以下のような責任を問われる可能性があります。
  • ・株主代表訴訟により、会社に生じた損害の補填を要求される
  • ・食品衛生法などに抵触したことによる責任
  • ・炎上を起こした行為者である労働者についての使用者責任

◇事後対応に有用なのは、就業規則の整備

炎上対応に向けた準備の第一段階として、SNS対応可能な就業規則の整備が第一段階と言えます。
ソーシャルメディア利用の際の、禁止規定を整備しておくことは、現代においては必須です。

しかし、就業規則に定めるだけでは、事後対応がしやすくなっても、炎上を「防ぐ」ことはできません。 これらの就業規則を従業員に守ってもらうためには、 SNS利用のガイドラインやポリシーを定め、それに基づいた教育を実施することが不可欠です。

◇事後的対応の詳細

事後的対応で知っておくべきことは、どのようなものがあるでしょうか。
セミナーでは以下のような内容について、細かくお話がありました。
証拠の保存について(PC画面の保存など)
名誉棄損の定義
プロバイダに対する開示又は削除請求(具体的手法、類型など)
プロバイダ責任制限法とは
海外法人(Twitter、Facebook、Googleなど)の対応
削除請求等と非弁行為

後半は、プロバイダへの請求などについての対応など、企業側弁護士として実際に対応されている家永氏ならではの具体的な話が多くありました。
ソーシャルメディア利用の際の就業規則については、実際の条文の例が示されました。
ご参加者様のコメント
・甘く考えていると切り取られ、トラブルになることがイメージではなく具体的に想像できた。対応のスピードがいかに大切か理解できた。
・会社全体で取り組んでいきたいと強く感じました。社員ひとりひとりの意識を変える必要があると気づかされました。
・SNSにかかわる問題の所在がよく分かった。
・就業規則の具体的な条文案はそのまま使えて非常に有用。
・具体的な名誉棄損等の判別、非弁行為等、大変勉強になりました。
・法律上の観点からどのように問題があるのかなどとても分かりやすかった。
編集後記
ソーシャルメディアに関する炎上事例は誰でも一度は目にしたことがあると思います。 企業に関するものだと、アルバイトによる投稿などがぱっと思いつきますが、 従業員の家族による書き込みなどがきっかけで炎上するなど、もはや業種を問わず、すべての企業に可能性のあるリスクであると感じます。
予期できない従業員による炎上などは、回避できないリスクのように感じていましたが、事前の対策や、事後対応を正しく行うことで、レピュテーションリスクを抑えることができるということがわかりました。
IPOを考える企業は、これから会社が自分だけのものではなくなり、ステークホルダーが増えることで影響が大きくなることを考えると、ソーシャルメディア等による炎上の対策は、必須のものであるということを感じました。
講師紹介
株式会社電通パブリックリレーションズ コーポーレートコミュニケーション戦略局リスクマネジメント部 チーフ・アドバイザー 青木 浩一氏
株式会社電通パブリックリレーションズ コーポーレートコミュニケーション戦略局リスクマネジメント部 チーフ・アドバイザー 青木 浩一氏
1983年4月株式会社電通PRセンター(現:電通パブリックリレーションズ)入社。2000年頃から近年の一連の企業不祥事にあたり、渦中のクライアントのメディア対応などをサポート。これらの経験とノウハウを踏まえ、多くの自治体、業界団体、民間企業の研修等において危機管理レクチャーや各種メディアトレーニングなど広報業務サポートを遂行中。 2007年10月から2011年9月まで、内閣府 「食品安全委員会 緊急時対応専門委員」。日本パブリックリレーションズ協会認定プランナー。
弁護士法人ALG&Associates 執行役員/弁護士 家永 勲氏
弁護士法人ALG&Associates 執行役員/弁護士 家永 勲氏
立命館大学法科大学院卒業、東京弁護士会所属 企業法務全般の法律業務を得意とし、使用者側の労働審判、 労働関係訴訟の代理人を務める等、企業側の紛争及び予防 法務に主として従事。企業法務におけるトラブルへの対応 とその予防策についてセミナーや執筆も多数行っている。 近著に「労働紛争解決のための民事訴訟法等の基礎知識」(労働調査会)など。
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