管理部門とは?役割および業務内容、年間スケジュール、構築方法を解説

管理部門とは、会社の経営資源を管理する部署の総称で、主に、経理・財務、人事・労務・総務、法務などの職種が管理部門に該当します。管理部門の各職種の役割や、管理部門の構築における成功事例・失敗事例を、株式会社MS-Japanが解説。
更新:2024年3月5日

1.管理部門とは

管理部門とは、会社の経営資源を管理する部署の総称です。営業などのフロント部門とは異なり、間接部門やバックオフィスと呼ばれることや、最近では企業によってコーポレート部門と呼ばれることもあります。

主に、経理・財務、人事・労務・総務、法務などの職種が管理部門に該当します。中小規模の組織になればなるほど、一人のスタッフが複数の職種を横断的に担っているなど、最小人数で構成されていることが多い部門です。

2.管理部門の役割

管理部門の役割は主に以下の3つです。

  • ・事業運営を直接行う部門を間接的にサポートする
  • ・経営資源の状況の把握と管理を通じて、企業経営の意思決定に資する情報を適時に経営陣に提供する
  • ・円滑な事業運営をサポートする

管理部門は、管理する経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)の内容により部署が異なります。例えばヒトについては主に人事・労務、モノについては主に総務、カネについては主に経理・財務、更には全社にまたがる種々の法的なリスク管理については法務等、管理する対象ごとに分かれています。

また管理部門の役割は、上場企業か否かによって大きく異なります。上場企業の場合、不特定多数の外部の株主が数多く存在する事から、会社の経営成績や財政状態によって影響を受ける関係者(=ステークホルダー)が非上場企業より多く存在する事となります。よって、上記の役割に以下が加わります。

  • ・東京証券取引所の上場規則や金融商品取引所等の上場企業に適用される関連法規やルールの適切な把握
  • ・会社の財政状態や経営成績について、適時適切な開示・説明をするための準備(元となるデータの整備、資料作成、経営陣への説明) など

非上場企業の管理部門に比べて、上場企業の管理部門は責任も大きく、難易度も格段に高くなります。

2-1.管理部門の各職種の役割

2-1-1.経理

特定の時点や期間の会社の財政状態や経営成績を、会計基準に則って帳簿として正確に記録し管理することが主な役割です。
ここでいう「特定の期間」は「決算」と呼ばれ、短い期間から月次、四半期、年次ごとに決算業務を行います。これらを作成するための業務に加え、日々の出納管理等や請求・支払業務等、日常的にも多くの業務を担当します。なお、中小企業では決算業務自体を会計事務所などに委託していることも少なくありません。

2-1-2.財務

資金を管理することが主な役割です。
会社が事業活動を行う上での資金繰り管理から、資金を調達する場合にはその調達方法、並びに外部の借入の場合は返済計画の管理等を行います。会社の血液ともいわれる資金を、時にはレバレッジを掛けてダイナミックに活用し、事業が円滑に進むようにサポートします。
同じくお金にまつわる役割を担う経理と混同されることがありますが、経理は会社の事業活動の記録が主たる役割であり、財務の役割とは大きく異なります。

なお、会社によっては必ずしも財務部門を部署として分けているわけではありません。上場企業でも経理財務部門の中で、担当や課として分けるケースも珍しくありません。一方で、会社の規模が大きく、また日本のみならずグローバルに事業を広く展開している場合は、グループ全体での資金管理がより複雑かつ高度になるため、専門部署として分けているケースが見られます。

2-1-3.人事

人という字の通り、人材を活用・管理することが主な役割です。その範囲は、採用、教育・研修、評価・賃金等の人事制度・戦略、労務管理と非常に多岐にわたります。
また、昨今では「人的資本」というワードが注目されており、企業活動の源泉としての「人」の重要性が見直される中で、その役割が改めて注目されています。冒頭に管理部門はバックオフィスとも呼ばれると記載しましたが、管理部門の中でも採用や人事戦略は事業成長に直結することも少なくないため、バックオフィスの位置づけとは少々趣が異なります。会社によっては管理部門に位置付けず、経営企画や社長室などフロントに近いポジションに置くこともあります。
また最近では、HRBP(Human Resource Business Partner)という経営と現場の間に立ち、人事のプロとして事業成長に関わる役割も登場しています。

2-1-4.総務

企業運営を円滑に進めるために、他の部署が扱わない業務全般を担うことが主な役割です。「何でも屋」と呼ばれることもあるくらい、その業務は多岐にわたります。規模に関わらず共通して扱うのは、備品管理や施設管理、文書管理などファシリティ関連業務であり、受付や来客対応なども担います。

なお、会社が上場している場合には総務の業務はさらに高度かつ広範となります。株主総会・取締役会等、会社法上要求される会議体の企画・運営や、各種規程の整備や運用など、会社の統制環境に大きく影響を及ぼす業務を担います。

2-1-5.法務

企業が事業を営む領域について全社横断的に法的リスクを洗い出し、そのリスクを低減することや、法的問題が起きた際に対応することが主な役割です。中小企業の多くは、法務専門の部署は設けず、総務部門が兼務していることがほとんどです。会社規模や事業が増えると、契約書の種類や業法規制なども多岐にわたるため、法務部門が独立して設けられることが増えてきます。上場企業ではコンプライアンス法務がさらに分かれて、各種法律や法令遵守対応に特化する部署を設置するケースも見られます。

2-2.企業規模別の役割

管理部門は、企業が成長する過程でその役割や重要性が変化していきます。

2-2-1.創業期

創業期においては、社長一人でも会社全体の状況をある程度把握することができます。経理業務は日常処理等の定型的な処理が多いため会計事務所に丸々委託することもできるでしょう。また、従業員ひとりひとりの顔と名前が一致する規模のため、人材管理も比較的容易でしょう。この時期は管理部門の必要性は高くないため、社長が直々に管理領域も担当することや専任者一人ですべて対応することも珍しくありません。

2-2-2.成長期

成長期を迎えると、従業員が増えることで労務環境の整理や把握が必要になります。さらにはオフィスも広くなるため施設管理や備品管理も必要です。また事業が成長し、事業の種類も増えることで、売上高や費用の規模が大きくなり、企業活動全体を定量的に瞬時に把握することが創業期に比べて困難となります。ヒト・モノ・カネ・情報といった経営資源を正確に管理する必要性が高まるため、部門として設置する企業が増えます。
たとえば経理部門はタイムリーな予算実績分析や資金管理で自社の経営状態や財務状況を数値で正確に把握することが求められます。それにより、重要な会社経営に関する意思決定を適時適切に行うことや経営陣も気づかないうちに財務的に大きなリスクを抱えることも回避できることでしょう。

2-2-3.成長期から上場企業へ

上場企業ともなると、社会的責任が大きくなります。コンプライアンス上のリスクが顕在化した場合はレピュテーションリスクや業績や株価の下落等、その影響は甚大です。また東京証券取引所の開示規則や金融商品取引法、会社法上要求される開示事項等、会社に関する情報の適時開示ルールの理解や開示のタイムスケジュール、正確性も求められます。

上場企業の管理部門に求められる役割は高度かつ専門的になります。経営戦略に資する財務戦略や人事戦略を策定し、全社を巻き込んで戦略を実行することが求められるでしょう。リソースもそれまで以上に必要となるため、会社の成長を見据えて、なるべく早いタイミングで、管理部門のデザインや機能、人員配置について検討が必要です。

3.IPOを目指す会社の管理部門に求められる役割

IPOを目指す場合は、管理部門の責任は重くなり、求められる役割は大きく変わります。

3-1.会計周りの体制作り

経理周りについては、明確に対応期日が設けられ、スピーディな対応が求められます。
たとえば決算締め関連の対応が必要です。

・月次締め

毎月開催される取締役会までに数値を締め、報告します。
そもそも期限が設けられていないこと、正確な数値で締められないこと、締めた後に修正が入ることなどは許されません。

・四半期や年次決算の報告・開示

法定開示に向けて四半期・年次で決算を締め、報告・開示する義務があります。

つまり会社の経営成績並びに財政状態を恒常的にタイムリーに把握できる体制を整備する必要があります。

加えて、不正に対して内部牽制を利かせるために「財経分離(財務と経理の分離)」および「実施者と承認者の区分」を行わなければなりません。財経分離のためには、出金の仕訳を切って記帳する担当者と、実際に出金処理を行う担当者を分け、出金の実施者と承認者も分けます。
つまり、経理部門については最低でも経理担当者・財務担当者・承認者の3人が必要です。承認者である管理部長も含めたクロスチェックする体制を構築して内部牽制を効かせていきます。

3-2.ガバナンス周りの体制作り

具体的には、会社法や労働基準法等、会社が関わる関連法規の遵守、規程の洗い出しと整備、規程通りに運用できていることなど、ガバナンスの実現に向けた体制を整える必要があります。
「我が社なら大丈夫」と思っていても、未整備の規程が存在することや、遵守しきれていない法令の項目が必ずといっていいほど存在します。規程および法令関連の対応は総務や法務担当者が中心となって対応することが一般的でしょう。

また規程通りに運用されているか、法令等が遵守されているかをチェックする体制として、「内部監査」の機能も別途必要です。上場する企業の規模などによっては、他の業務との兼務が実質認められないケースもありますので注意が必要です。

【関連コラム】管理部門体制の整備と人材採用
https://www.ipopro.jp/career/3/

3-3.予算・エクイティストーリーの策定

IPOを目指すにあたっては、IPOの目的や、IPO後も見据えた成長のストーリーと具体的な計画を合理的な根拠をもって説明する必要があります。この計画は、単に「絵にかいた餅」とならないよう、実現に向けた具体的な方法や仮説をもとに算出した予算と実績の正確な数値などが含まれていることが重要です。会社として正確な見通しを立てることが出来る管理・処理能力があるのかも見られており、これらは予算と実績の乖離を軸に判断されます。
よって、合理的な根拠のある計画を作る前提となる計数管理ができること、そして会社の強みや成長戦略をわかりやすくまとめたエクイティストーリーを策定し投資家や株主に伝えることが求められます。これらは管理部門のメンバーで必要な情報を収集・分析し、CFOや管理部長などが中心となって進めていきます。

4.管理部門の構築方法

4-1.管理部門の構築方法

まずは管理部長を決めます。管理部長は全体設計に対して指揮がとれるマネジメント力のある人材が適任です。次に管理部長が全体設計に沿った管理部門メンバーの要件を設定し、経理や総務、法務といった担当者を順次決めていきます。
社長が直接管理部門のメンバーを増やしていくことも可能です。しかし社長は事業や会社全体の運営に集中することが最も重要であるため、管理部門の構築は信頼できる管理部長に任せることが理想的です。

4-2.IPOを見据えた管理部門構築のポイント

4-2-1.構築における3つのポイント

IPOを見据えた場合は、管理部門をIPO準備のためのチームとして構築していくことが重要です。比較的規模の大きいIPO準備企業の場合は、IPO準備に特化した専門チームである上場準備室を組成し、事業サイドとも連携しながら上場に向けたタスクをこなしていくこともあります。
IPOを見据えた管理部門構築のポイントとして、以下の3つが挙げられます。

  • ・メンバー一人一人のIPOに向けた意識向上
  • ・IPOに向けて、管理部門をまとめ、牽引するリーダーの存在
  • ・IPO後を見据えた余裕のある体制づくり

上場企業の管理部門は、非上場会社と比べて役割の広さも責任の重さも桁違いです。例えば日常的には月次決算を短時間で締めなければならないことや、正確な予実管理の実施、乖離が起きた場合の原因分析、解消に向けた改善案の検討などを行います。投資家や株主に向けての報告・開示義務も果たさなければなりません。このような業務がIPO準備段階から求められるため、管理部門のメンバーへのプレッシャーは相当なものでしょう。このプレッシャーに打ち勝ち、IPOを実現するためには、メンバー一人ひとりがIPOの目的・意義を理解し、達成に向けて意識を一つにすること、そして管理部門をまとめあげ牽引するリーダーの存在が重要です。

また、IPO準備段階では人的・費用的リソースが足りず、最小人数で管理部門を構築するケースが多々見受けられます。しかし最少人数で構成されていることで、管理部長が採用等多くの業務を兼務せざるを得ず、監査法人・証券会社対応や、予算策定などの本来担うべき業務に充分な時間を割けなくなってしまうことがあります。また、リソース不足による恒常的なハードワークから、管理部門の人材が定着しないという問題が起きることも珍しくありません。このような状況はIPO準備中の企業によくあることですが、これでは本末転倒です。IPO後も見据えた余裕のある体制づくりが重要です。

4-2-2.外部リソースの活用も有効

IPO特有のスポット業務については、外部のIPOコンサルタントの支援を受ける手段も有効です。たとえば開示書類の作成業務は作成する書類の種類もボリュームも多いため、非常に手間がかかります。審査時に開示書類をもとに質問を受けるため、すべてを外部にアウトソースすることはできませんが、役割分担により会社のリソースはなるべくかけずに、質の高い開示資料を作成することができる可能性があります。
そのほか内部統制や内部監査など、IPO準備で初めて取り掛かる業務に関しては、知見のある外部のコンサルタントに支援してもらうことでスムーズに準備を進められるでしょう。さらに質も担保され、新たな人材を採用するよりも固定的な費用を増やすことなく対応が可能になるかもしれません。

ただし、コンサルタントと会社の相性が大事であり、すぐに自社に適した人材をアサインできるとも限りません。支援を希望する場合は早めに検討することが肝要です。

5.管理部門構築の成功事例・失敗事例

5-1.管理部門構築の成功事例

管理部門構築成功の鍵は、ずばりトップダウンです。経営者が管理部門の重要性を理解し、将来を見据えて体制構築に力を入れている場合、優秀な人材の獲得率も、部門が構築されるまでのスピード感も目に見えて向上します。
当社MS-Japanがご支援した企業の具体的な事例でお話しましょう。

<前提となる企業情報>
  • ・社長は2代目で40歳代
  • ・管理部門は先代から永く勤める管理部長と経理総務事務2名体制
  • ・将来的なIPOやM&Aに向けて、国内外で事業を拡大中

<管理部門構築の流れ>
  • ・まだIPO準備を進めていない段階で、管理部長兼経理部長に公認会計士を採用
  • ・採用した会計士主導で社内外から人材を揃えて管理部門を短期間で構築

<成功のポイント:トップダウン>
  • ・公認会計士を採用する際に、既存社員を気にしすぎず転職市場と乖離しない年収(800~1,000万円)を提示、中小企業でありながら優秀な人材を獲得できた
  • ・社長自ら採用や面接に関わり、自社に適した人材を探し、候補者を口説いた

管理部門構築成功の要因は間違いなくトップダウンです。経営者が管理部門の重要性を意識しているか否かで成否は決まります。
また事例の企業では、最初に採用した公認会計士の方の高いスキルとマネジメント能力により、管理部門構築後の管理部門全体のレベルアップも実現しました。管理部門のメンバー一人一人が高い意識をもち、IPOに向けた連結決算などの会計スキルの向上や自分自身の市場価値を認めてポジティブな雰囲気の醸成に成功したのです。その後、この企業はIPOを実現することになるのですが、その際に管理部門がIPO準備を支えたことは言わずもがなでしょう。

5-2.管理部門の採用

成長期の企業が管理部門を構築する場合、必要な人材を確保するため、外部から新たに採用することになります。社内での人事異動もありますが、それだけではリソースを質・量ともに補いきれないこと、即戦力人材が必要なことから、多くの会社は採用を検討するでしょう。

5-2-1.管理部門の採用事情

採用を検討する前提として現在の管理部門の転職市場を見てみましょう。他の職種同様にコロナ禍以前より求人数が増えている一方、転職者は横ばいから微増で求人倍率が上がっています(当社 MS-Japan調べ)。さらに管理職レイヤーや、経理・法務など専門的な職種になればなるほど、引き合いが多く、獲得は容易ではありません。
また、管理部門の転職理由で多いのは、キャリアアップや年収アップ、次に働き方の改善です。自社の欲する人材を獲得するためにはこれらの条件を充足して募集をかけなければいけませんが、やはりそこは福利厚生や待遇面が充実した大手企業や資金力のある企業が優位になってしまいます。これから管理部門を構築する企業にとっては、不利と言わざるを得ないでしょう。

【2023年版】管理部門・士業の転職理由の実態を徹底解説
https://www.jmsc.co.jp/knowhow/topics/12356.html

5-2-2.採用成功事例

しかしそのような厳しい状況でも、採用に成功している企業があります。成功企業は、即戦力人材の採用を行いながらも、もう一つの選択肢として比較的市場に求人が少ない人材ゾーンをうまく活用しています。
具体的には、以下のようなケースがあります。

・自由な働き方で、時間的制約のある人材および地方人材を獲得

時短勤務やフレックスにより時間的制約のあるワーキングマザーや介護中の人材を獲得することや、リモートワークで全国採用を実現し、優秀な地方人材を獲得している企業があります。
コロナ禍以降、自由な働き方を認める会社は増えており、このような会社の求人への応募は目に見えて増えています(当社MS-Japan調べ)。

【2023年版】管理部門・士業のリモートワーク求人の動向を徹底解説
https://www.jmsc.co.jp/knowhow/topics/12307.html

・経験豊富なシニア層と未経験者の採用

50代後半~60歳以上の経験豊富な人材の採用と、併せて未経験で管理部門にキャリアチェンジしたい人材を採用します。シニア人材のノウハウを活用しつつ、未経験者や経験の浅い社内の人材を教育して、将来の中核人材の育成までをも実現している企業があります。30~40代の即戦力を採用するよりも人件費コストは抑えられ、且つ社内で専門的な人材や将来の幹部を育てられます。
当社MS-Japan調べによると、シニア層の登録者数は年々増えています。人生100年時代の今、経験豊富なシニアを活用しない手はないでしょう。

【2023年最新調査】「70歳現役社会」シニア世代は何歳まで働きたい? 管理部門の就業実態を調査
https://www.manegy.com/news/detail/7529/

5-3.管理部門構築におけるあるある失敗事例

経営資源を管理する管理部門の構築が成功するか否かは企業運営を円滑に進められるかどうかを左右します。
特にIPO準備中における管理部門構築の失敗は致命的です。実際に管理部門の体制が十分でないことからIPOスケジュールが伸びてしまうことも珍しくありません。
IPO準備企業における管理部門構築の失敗事例を3つ紹介します。

・IPO準備中のCFO(管理部長)交代

IPOのために外部からCFO(管理部長)を採用したものの、社長や創業メンバーとの意見相違などでIPO準備の途中でCFOが会社を去るということが少なくありません。IPO準備のリーダー的存在であるCFOが途中交代してしまう事態は、IPOスケジュールの進捗を確実に止めてしまうため致命的と言えます。

・管理部長の力量不足

IPO準備は、業績面も含めて常に予定通りにいかないことの連続です。状況が流動的な中で、共有すべき情報が経営陣や部長以上で止まってしまうことがあります。IPO準備を担当している管理部門メンバーに、必要な情報が共有されないと、メンバーは方向性を見失い、困惑し疑念を持ち、モチベーションを低下させます。最悪、退職につながってしまうこともあります。
管理部長が経営陣とのコミュニケーションを取り、適時適切に必要な情報を現場に落とし、IPOに向けて管理部門が一丸とならなければIPO準備は円滑に進みません。つまり管理部長が高いコミュニケーション能力とマネジメント能力を持っているかどうかがIPO実現を左右するのです。

・中途採用の経験者と既存社員との待遇面格差による不和

中途採用が厳しい中で、上場企業の管理部門経験者を採用しようとすると、既存社員と待遇面(年収)で差がついてしまうことがあります。待遇面で差がついてしまうと、既存社員は不満を持ち、この場合も退職に繋がってしまうことがあります。とはいえ、既存社員を基準に給与を決めると、転職市場が厳しい昨今、今度は採用ができなくなるというジレンマに陥ります。
多忙極めるIPO準備中に、人事制度の整備(給与規程や評価基準等)は後回しになりがちです。しかし適正な人事制度の整備・運用があってこそ、採用に繋がり、IPOを実現する管理部門が構築できるのです。待遇面格差の原因は、経営者が管理部門の重要性を正しく認識していないことにあります。トップが管理部門の役割や重要性を認識し、待遇面を他社と比較しつつ、アップデートすることが重要です。

■ 管理部門・士業を採用するならMS-Japan
MS-Japanホームページ

6.管理部門を構築するために重要なこと

前述のとおり、管理部門は会社の経営資源を管理する重要な役割を担っています。そのため適切な意思決定や、スムーズな事業運営のためにも、管理部門が適切に機能していることが前提であることは言うまでもありません。しかし、管理部門はコストセンターであるが故に、その存在が軽視されている例も残念ながら見受けられます。
たしかに、直接的に収益を上げる部門ではありません。しかし経営に直結する非常に重要な部門です。管理部門がうまく機能しないと、結果的に様々な経営上のリスクを孕むことにもつながります。
経営者が管理部門の重要性を正しく認識し、会社として管理部門の構築に力を注ぎましょう。安定した管理部門が、安定した経営につながることは自明の理なのです。
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IPO準備企業に求められる管理部門とは
更新:2022年6月30日
執筆
株式会社MS-Japan<br>執行役員 キャリア事業部 西日本 Division長<br>神谷 年秋氏
株式会社MS-Japan
執行役員 キャリア事業部 西日本 Division長
神谷 年秋氏
1980年生まれ。2008年に株式会社MS-Japan入社後、2018年までの約10年間で、関東首都圏のベンチャー・IPO準備企業を中心にのべ300名以上の管理部門人材の転職を支援。2019年より関西、2020年より東海も含む西日本エリアを管轄する西日本事業部長として従事。
株式会社MS-Japan<br>常務取締役 CFO/公認会計士<br>山本 拓氏
株式会社MS-Japan
常務取締役 CFO/公認会計士
山本 拓氏
2010年2月あずさ監査法人入所。主に国際的に事業を展開するクライアントの会計監査に従事。2013年9月株式会社MS-Japan入社後は主に公認会計士の転職及び採用支援のエージェントとして活躍。その後、同社が上場準備を開始するにあたり経営管理本部に異動し東京証券取引マザーズ市場への新規上場、その後同市場第一部への市場変更を達成。

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