IPOを目指す企業の海外進出

POINT
・IPO準備段階における安易な海外進出は、IPOスケジュールを遅延させる可能性も。
・会計面においては、子会社の適時な月次会計報告は必須
・成功の秘訣は、親会社が子会社を本社同様に扱い、管理部門が積極的に関わること。
IPO準備段階で、市場規模・売上規模の拡大を目的に海外進出されるケースが増えています。しかし、IPO準備段階での安易な海外進出はIPOスケジュールの遅延を招くことも・・・海外進出で気を付けるべき点、子会社管理で不可欠な会計管理とは?
2020年1月8日
1.IPO準備段階で海外進出をするということ
 日系企業の海外進出の流れが一層加速している昨今、IPOを目指す企業が海外進出をする際に、どのような点に注意すべきか、お話させていただきます。

 既に海外に進出している企業がIPOを目指す場合、監査法人や主幹事証券からは、グループとして重要性のある海外子会社については日本親会社と同じレベルの内部統制の整備(ここでいう整備とは規定等の書類がそろっていることを指します。) 並びに運用を実行するように指導があり、整備ができた後は、実際に運用が行われているか親会社の内部監査が入ります。

 整備の手順は、まず日本本社の内部統制を整え、それらと同じレベルで海外子会社の整備を行います。この点を理解した上で、計画を立てなければなりません。 IPO準備段階で海外に進出することは、投資家のみなさんへのアピールには、絶好の材料にはなりますが、内部統制を構築するための相当な負担が生じます。 これらのメリット、デメリットを検討し、管理コストが相当必要になる点につき覚悟した上で、専門家に相談しながら進めることをお薦めします。
2.子会社における予実管理と適時な月次会計報告は必須
 会計面においては、海外子会社の適時な月次会計報告が可能かどうかがすべてとなります。 理想としては、毎月10営業日前後に親会社の要求するフォーマットに基づく月次決算報告が日本親本社に提出されることが必要になります。 月次予算管理を検討する親会社の取締役会に間に合わせなければならないためです。この予実管理制度の体制構築が通常難しく、そもそも予算を立てていないケースも多くみられます。 立てた予算と実績との対比、分析、翌月のアクションについて毎月、取締役会で議論することになります。 この予算管理制度については、PDCAサイクルでちゃんと運用している実績を示す必要があることから、直前期、直前々期から求められるケースもありますので、そのつもりで準備する必要があります。

 これができていない場合は、監査法人による監査の際に、海外子会社の内部統制の脆弱さを指摘されることとなり、 最悪の場合には、適時に改善できないために、IPOの時期を延期しなければいけない可能性も十分にあることから、留意が必要です。 監査人による指摘として私どもがよく経験する事例としては、海外進出検討段階において、フィージビリティスタディの実施、月次決算報告体制の検討等、を事前にしっかり検討しましたか? 管理部主導の海外進出になっていますか?などです。実際には、海外進出は、事業部主導で行われるケースが多く、管理部は進出決定後または進出後より関与するケースが多くみられます。

 また、月次決算を締めるにあたっては、グループ全体の会計方針を事前に決定する必要があります。 これは海外子会社の月次、四半期、年次の会計方針を親会社管理部主導で親会社の監査人と事前に相談した上で、あらかじめ上場に耐えうる会計方針の設定及び運用することを留意しておく必要があります。

 上場会社が海外に進出する場合は、一般的にここまで慎重に検討、準備してから進出されることが多いです。 月次決算報告が翌月何営業日までに出てくるかというのを必ず質問されます。 現地での記帳業務をアウトソースするために会計事務所を選ぶ場合も取締役会に間に合うよう提出日を常に意識しています。 一方で、IPO準備中の会社は、日本本社自体の内部統制が不十分であることが多く、海外にも慣れていない状況で、海外子会社の内部管理体制まで留意する余裕がないのが実情です。
3.子会社会計管理はアウトソースも可能、システム化も有効
 次に海外子会社の会計業務を自社で行うか、アウトソースするかのどちからになりますが、自社で行う際には、初期のセットアップをコントロールできる人材が必要となりますが、 適任者不在のことが多く、新規での採用も難しくアウトソースするケースが多くなります。 ただ、アウトソースする場合は記帳を行う会社と日本の親会社の間で密接なコミュニケーションを持つことが肝心で、アウトソースとはいえ、まかせっきりではいけません。 密にコミュニケーションを取って、親会社の意向、月次決算等のスケジューリングを適時伝えなければなりません。 そのなかで、2019年5月にリリースされた勘定奉行クラウドGlobal Editionによる、進捗管理、現地の見える化が有効な手段となります。

 勘定奉行クラウドGlobal Editionは、「勘定奉行クラウドを海外子会社でも利用したい」という日本企業様の声に応えた、グローバル対応クラウド会計システムです。 勘定奉行クラウドの使い勝手の良さや柔軟性はそのままに、多言語対応、多通貨対応、ユーザインタフェースのグローバル化など、海外対応機能を実装しています。

 クラウドのため海外でも展開を進めやすく利用する国に制限はありません。また、弊グループが海外子会社の導入支援いたしますので、IPOを機に海外の会計システムを勘定奉行クラウドGlobal Editionで統一させることも可能です。 IPOのタイミングで導入を検討されることが多い、主要な連結会計システムとも連動しています。
4.予実管理の次は、規定の整備と内部監査
 予算を立てて、月次で予実管理を行う、これができ始めると、次に人事規定、取締役会規定、子会社のガバナンスに関する規定の整備に手が付けられます。 子会社の権限を明確にするためにも、規程整備が重要になります。 これらの規定に、日系企業特有のポイントを盛り込むことが必要になるので、親会社主導のもと、日本目線での規定を作ることが重要です。 一方、海外の法人では、現地のローカルルールも存在するので、そこは現地の弁護士等専門家に任せないといけませんが、その特殊性を日本の管理部門も理解、把握したうえで整備を行わなければなりません。 きちんと整備をするには半年くらいはかかります。 整備ができれば、次は運用フェーズに入ります。運用を軌道に乗せるには、少なくとも半年はかかるので、整備と運用で1年くらいとし、これを直前々期には行っておくことが望ましいです。

 整備・運用が整った後、ようやく親会社による内部監査ができる状態になります。場合によっては、2期分の内部監査を求められるケースもあるので、さらに1年前より整備が必要な場合もあります。 内部監査では現地法人の現地実査があり、問題点の指摘、それに基づく改善報告書の作成とその後の運用で改善済みであることを親会社が確認できた段階で完結することとなります。 現地特有の法規制、慣習等もあり自社単独での実施は難易度が高いですが、現地の専門家と協力して内部監査を実施することも効果的、効率的ですので、ぜひその選択肢も考慮ください。 海外拠点不正の最も有効な防止策の1つとして、現地に伺い現場環境を把握することもありますので、内部監査の重要性を再認識いただきたいと思います。
5.成功の鍵は、“海外子会社の会計管理”
 これまで見てきたIPOを目指す企業の海外進出の中で、親会社主導で、海外子会社のことを本社同様に扱って計画を進めるケースや、管理部門が強い会社は成功しているケースが多い一方、 事業部主導で海外子会社のことを事業部にまかせっきりで管理部門が積極的に関わっていない会社は、適時、適切な会計数値が見えず、 親会社側が適切なジャッジができないことから、会計面を含め海外事業がうまくいかないケースが多いように感じられます。

  以上のように、上場企業としてのグループガバナンス体制の構築を行うにあたり難易度が高かったのが海外子会社の会計管理でした。 勘定奉行クラウドGlobal Editionを活用した海外子会社の会計業務の見える化、安定化がIPOプロジェクトの成功だけでなく、その後の運営面の安定につながるものと思います。
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執筆
株式会社フェアコンサルティング 日本国公認会計士/税理士 田中 健一氏
株式会社フェアコンサルティング 日本国公認会計士/税理士 田中 健一氏
あずさ監査法人において、多様な業種の企業の法定監査、上場準備会社の監査及びアドバイザリー業務を行う。
特にIPOコンサルティングについては多数の上場に携わった経験を有し、豊富な実務経験と知識を有する。
当グループ入社後は、経営コンサルティング及びIPOコンサルティングに従事しておりクライアントの直面する諸課題について財務会計、管理会計、税務及びコーポレートガバナンスの観点から最も適切なソリューションを提供している。
近年は、ASEAN諸国に進出する日系企業の日本側窓口として、当グループの海外拠点を活用した会計・税務的観点からのアドバイザリー業務を主として行っている。
また、ASEAN諸国から撤退する日系企業の計画立案・実行に関するアドバイザリー業務も行っている。
株式会社フェアコンサルティング ホームページ
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