IPO 2019年総括と2020年の展望

2019年は米中貿易摩擦や香港デモ等の外的要因に振り回されつつも、後半は株価が底堅い推移を見せ、1年2か月ぶりの高値を付ける局面もありました。IPO市場においては、赤字上場企業が目立ったこと、名古屋地区が全体の1割を占めるなど例年とは違った動きも見えました。2020年のIPO市場はどうなるのか。2019年の状況と2020年の展望を解説します。
2020年1月7日

はじめに

2019年の日本の株式市場は、引き続き米中貿易摩擦や香港をはじめとする抗議デモなどの外的要因に振り回されつつも、後半はFRBの連続利下げや米中貿易交渉で「第1段階の合意」に達したと発表したことが好感され、株価は1年2か月ぶりに2万4000円台を回復する局面がありました。
上場企業においては、親子上場の解消や社外取締役の割合が増えるなど、コーポレートガバナンスを強化する流れが加速しました。IPO市場においては、赤字上場が増えたこと、名古屋エリアが全体の1割を占めるなど、昨年とは違った動きがありました。
2020年は米大統領選挙、東京オリンピック・パラリンピックなどのビックイベントが予定されています。このような状況下で今後のIPO市場はどう展開していくのでしょうか。以下8つの注目点で、2019年のIPOの状況を確認し、2020年以降の展望を記します。

1.年間86社と昨年比微減。マザーズIPOは最多数更新

2019年のIPO社数は86社(2018年は90社)。ここ数年ほぼ横ばいで推移していますが、後述の上場審査厳格化の流れを受けて微減となりました。今後も当面のIPO社数は変化が少ないのではないかと予想しています。
東証上場の内訳は、東証一部1社、東証二部6社、マザーズ64社、ジャスダック11社で、マザーズの64社というのは最高記録になります。名証は東証との重複が多く、単独上場はセントレックスの1社となりました。福証は本則1社とQボード1社の計2社、札証にもアンビシャスに1社が上場し、国内全ての証券取引所でIPOがありました。
昨年末に、政府の金融審議会のワーキングである「市場構造専門グループ」から、東証の株式市場について「プライム市場」「スタンダード市場」「グロース市場」の3市場に再編するという案が提示されています(市場名は仮称)。今後は東証内で詳細が検討されることと思いますが、再編後のIPOについても、マザーズの後継である「グロース市場」が主役になると見込まれます。

2.主幹事、監査法人の競争状況

主幹事件数は、共同主幹事をどのように判断するかが難しいのですが、トップレフト(国内引受シェア最多証券)のみでカウントすると、SMBC日興証券が首位となりました。SMBC日興証券が手掛けた20社のうち19社がマザーズです。2位の大和は19社で、こちらもマザーズが17社と大半を占めています。3位は野村(17社)ですが、マザーズは7社で半数以下となり、異なる特徴を持っています。2020年もこの3社とみずほ証券が首位争いをするものと見込まれます。
監査法人では、EY新日本が昨年同様に首位(22社)となりました。2位トーマツ(21社)、3位あずさ(19社)と大手法人が上位を占めています。一方、現状では大手法人が社数を追及しない方針になっていますので、IPOに際して監査法人が決まらないという問題が発生するケースがあります。昨年末に、金融庁が「株式新規上場(IPO)に係る監査事務所の選任等に関する連絡協議会」を設置しましたので、同協議会の提案が待たれる状況です。

3.上場日が遅くなる傾向が定着

引受審査および取引所審査において業績確認の厳格化が続いている影響で、期初から上場日までの期間が長期化しています。第4四半期中、あるいは期越え(期末後で株主総会前まで)にIPOすることが一般的になってきました。今後も同様な傾向が続くと想定しており、IPOの年間ピークはこれまで12月でしたが、3月になるのではないかという観測もあり、2020年の3月(及び4月)に何社がIPOするか注目されます。

4.上場審査の厳格化

東証の上場審査を担当しているJPX自主規制法人の「年次報告2019」では、年度の上場審査数(市場変更等を含む)254件のうち、承認に至らなかった数が46件と2割程度に上ることが公表されました。「内部管理体制等に係る上場審査基準を満たさない事案が多く認められた」とあり、「各幹事取引参加者(証券会社)に対して公開指導及び引受審査の徹底を要請」とのことです。上場申請する前の段階で、主幹事の引受審査が更に厳格化・長期化することが見込まれます。

5.赤字企業のIPOが注目を集める

IPO直前期に赤字の会社のIPOが16社となりました。また、上場期の予想損益も赤字であるSansan、フリー(freee)が注目を集め、この両社が初値時価総額の1位・2位となりました。目先のPLよりも、クラウド関連あるいはSaaS事業の成長性に係る評価が高かったものと思われます。事業内容のテーマ性という意味では、医療・介護に係る多様なサービス展開を行う企業も目立ちました。
今後も、赤字か黒字かという足元の事実よりは、成長性あるいは収益化への道筋といった将来性が重視されていくものと思われます。

6.名古屋エリアのIPOが熱い

本社所在地では、名古屋エリアのIPO社数が10社(愛知9社、三重1社)になりました。2020年以降もIPO予備軍が多く存在しますので、同エリアの経営者の意識変革が指摘されています。個人的には近畿の企業のIPOも増えて欲しいと期待しています。

7.初値は比較的順調だったが・・・

初値の公開価格割れは9社と1割程度でしたし、年間の平均初値騰落率(公開価格比)は75%上昇と、比較的順調であったと評価できます。一方で、バイオ関連で公開価格が大きく引き下げられたケース、IPO中止になったケースもあり、価格決定時における機関投資家の評価には厳しいものがあったと思います。
IPO前のファイナンスでは、ユニコーン候補として高いバリューが既に付いている会社も散見されますので、今後のIPOに影響を与える可能性があります。

8.プロ市場

上記IPOに含めていませんが、東証のプロ投資家向け株式市場(TOKYO PRO Market)の年間新規上場社数は9社となり、過去最高を更新しました。また、同市場に上場していたglobal bridge HOLDINGSが、マザーズに上場しました。
今後も、東証上場企業としての信用力の向上、海外への事業進出の際のアピール等をメリットと考え、プロ市場をステップにする企業が更に増える可能性があります。
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執筆
宝印刷株式会社 常務執行役員/企業成長支援部長 大村 法生氏
宝印刷株式会社 常務執行役員/企業成長支援部長 大村 法生氏
1986年に東京大学法学部を卒業後、野村證券株式会社に入社。20年以上にわたりIPO関連業務に携わる。2005年に公開引受部次長、2011年から同部東京エリアヘッドを歴任。2018年に宝印刷株式会社に顧問として入社。同年7月執行役員に就任。2019年7月より現職。
宝印刷株式会社 ホームページ
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