2020年12月29日マザーズ上場、オンデック 代表 久保氏が語る上場体験談

2020年12月29日、マザーズへの上場を実現したM&A仲介・アドバイザリー業のオンデック。オンデックはなぜ上場の道を選んだのか?上場準備段階での苦労は?上場準備期間、わずか2年で上場が出来た理由は?そして上場後見えた世界は?オンデック代表取締役社長 久保氏が上場体験談を語る。
2021年4月20日

1.大阪で産声を上げて15年、オンデック上場

2020年12月29日、年の瀬も迫るころ、大阪でその年最後の上場企業が誕生しました。
M&A仲介・アドバイザリー業の株式会社オンデックです。
クオリティの高いコンサルティングに定評があり、案件の実に9割が紹介によるというオンデック。2005年の創業から15年後、東証マザーズ市場へ上場を果たします。

なぜ、オンデックは上場したのでしょうか?
上場時に最も苦労したことは何でしょうか?
そして上場後見えた世界とは?

オンデック 代表取締役社長 久保氏が上場体験談を語ります。

会社概要
会社名:株式会社オンデック
代表者名:代表取締役社長 久保 良介
本社所在地:大阪府大阪市
創業:2005年7月
事業内容:M&Aに関する仲介、アドバイザリー業務/企業及び事業の再生、再構築に関するアドバイザリー業務/企業、事業のデューデリジェンス業務
資本金:3億7,272万円
従業員数:40名
証券コード:7360
※2021年1月31日時点

2.2018年初夏、知名度・信用力向上を目指し上場を決意

当社が属するM&A仲介・アドバイザリー業界では、支援会社のタイプが大きく分けて2種類あります。
一つはマッチング型、もう一つはコンサルティング型です。当社は後者にあたり、お客様重視の丁寧な対応を心掛け、難度の高い案件に取り組むことで知見やノウハウを積み重ねてきました。その結果、案件の9割は過去にご支援させていただいた企業様や金融機関様からのご紹介です。コンペでの勝率も7割を超えており、コンペの場にさえ上がることができれば我々が選ばれるという自負もありました。

しかし、同業他社がここ数年で次々と上場を果たし、当社はコンペの場に上がれないことが増えてきました。マーケットは変わらず拡大基調でしたが、このままでは自社の成長が先細るという懸念から上場を視野に入れ始めました。

上場体験談を語るオンデック 代表取締役社長 久保氏
▲上場体験談を語るオンデック 代表取締役社長 久保氏

3.2020年夏までの上場実現を目指し準備開始

上場をするなら、2020年夏に予定されていた東京オリンピックまでに実現したいと考えていました。オリンピックに向けて日本の景気は上がっていくでしょうが、その後は読めないと考えたためです。
2020年夏から逆算すると、監査法人のショートレビューは2018年5月がギリギリだということになりました。そこで共同創業者である代表取締役副社長の舩戸、その他幹部メンバー、お世話になった方々のご意見を聞いて回り、大きな反対がなかったため上場を目指すことを決めました。

2018年5月、あずさ監査法人様にショートレビューをしていただき、2018年8月に社内に告知しました。2020年9月に設定した上場実現まで2年しかありませんでしたので、このときから全社一丸となって上場準備に取り掛かりました。
それから1年後の2019年9月に野村證券様の中間審査、2020年8月の最終審査を経て、2020年9月に東京証券取引所に上場申請を行い、2020年11月に上場承認が下りました。
そして、2020年12月29日上場を果たすことができたのです。

オンデックの上場実現までのスケジュール
▲オンデックの上場実現までのスケジュール

4.2年で上場を実現するために、厳しい主幹事証券を選択

監査法人は周りの経営者の方々などにヒアリングし、あずさ監査法人様を薦められました。最近では監査難民という言葉もありますので、ショートレビューもなかなか受けてもらえない覚悟でいましたが、幸いにも受けていただくことができました。

主幹事証券会社は数社からご提案いただきましたが、最も指導と審査が厳しいと評判の野村證券様にお願いすることを決めました。何もないところから2年で上場を実現しようとしていたので、厳しいところのほうが良いと思ったからです。
実際、野村證券様のご指導は厳しかったと思います。その代わり取引所審査では、大きな指摘もなく非常にスピーディーに審査が進行しました。事前の野村證券様の審査で適切な範囲がしっかりとカバーされていたからではないかと思います。

5.申請期、コロナ禍での予算達成に苦しめられる

上場準備段階での最大の苦労と言えば、予算達成です。
当社ではお客様重視の観点から個人のノルマを設けていません。また、当社の業界の特徴として成約時期が自社ではコントロールしにくいということもあります。
さらに申請期の2020年は、3~6月にかけてコロナ禍により案件の進捗がストップしていた時期もありました。予算の達成を優先して、かなり保守的な手堅い予算を置いていたはずが、第3四半期まで、低調に推移する展開となってしまったのです。夏場以降、感染状況も落ち着きを見せたことから、第4四半期に一気に盛り返す形で予算を達成することができましたが、これは上場を実現させたいという社員全員の決意と覚悟のおかげだと思っています。

当社には「ONDECK WAY」という組織の共通の価値観を定めたものがあります。理念やビジョン、行動原理、それを実現するための10の行動指針を設けており、お客様への姿勢、競争力、戦略、ガバナンス等、弊社の社員がビジネスと向き合う際の原理原則を記しています。この「ONDECK WAY」がメンバー全員の根底にあったからこそ、上場という目的に向かって全社一丸となって進んでいけたのだと思います。

とはいえ、正直二度と経験したくないくらい大変な作業でしたね。

ONDECK WAY 2020年11月期決算説明資料より
▲ONDECK WAY 2020年11月期決算説明資料より

6.上場を実現して見えた世界

上場の目的であった知名度や信用力の向上は果たせたと感じています。
コンペで当社を選択していただいたお客様に選定理由をお伺いすると、当社の提案を気に入っていただくと同時に「上場もされているし。」という言葉が付されるようになりました。
また今後の成長投資や新規事業を立ち上げる際の資金調達の手段が増えたメリットは大きいと感じています。私ども自身がM&Aによって相応の規模の買収を行うことも可能です。

周囲からの見る目は変わりました。問い合わせも一気に増えましたし、多くの金融機関様とのセミナーの共催が決まるなど、当社の希望を積極的に受け入れてくれる企業が増えたと感じます。

2020年12月29日、東京証券取引所上場
▲2020年12月29日、東京証券取引所上場

7.業界を牽引する存在になるために

上場を実現し振り返ってみると、これまでは所詮、ワンマン経営に近い会社だったなと思うところがあります。
上場に向けて従業員数を増やしたり、権限を委譲したりと組織の体制整備はしてきましたが、事の大小に係わらず、最終判断は私や副社長の舩戸に集中する傾向がありました。これからはもっと組織力を強化し、より権限を委譲して、組織としてのマネジメントを強化していこうと気を引き締めています。

また、クオリティの維持向上と取扱件数の増加、即ち質と量の同時実現を目指します。
クオリティに関しては今ももちろん自信がありますが、今後も徹底的に追及していきます。案件の9割がご紹介であることは当社の強みでもありますが、紹介のみでは飛躍的な成長に限界があるのも事実です。上場で得た資金も活用し、オンラインとオフラインの両面で案件を創出する新しいプラットフォームを構築する予定です。
M&A業界は事業承継ニーズを背景に活況ではありますが、それゆえに理念なき膨張が続いていると感じる面もあります。健全なマーケットの発展を牽引していくためには、質・量ともに求めていく必要があります。これからの2~3年でこの点をしっかりと体現していきます。

8.爪を研ぎ続ける、そうすればおのずと道は拓かれる

上場は企業としても、経営者個人としても本当に得るものが大きいです。上場をすでに準備されている方はぜひやり切ってください。

そしてまだ会社の将来像を漠然としか描けていないアーリーステージの方々は、まず、「爪を研ぐこと」に集中することをお勧めします。
爪を研ぎ、地力をつけてマーケットや周囲からしかるべき評価をいただけるようになれば、選択肢が自然と増えていきます。そのときに上場が適合すれば上場を選べばよいでしょう。
当社も、早い段階から上場を明確に目指していたわけではありません。しかし自らの「爪を研ぐこと」に集中するうち、周りから上場を勧められるようになりました。自然と上場が視野に入ってきたのです。

色々な方から、「目標やビジョンをどのように設定したか」と聞かれることがありますが、私は、特にアーリーステージにおいては、明確な目標やビジョンなど不要だと思っています。自分達に力が無い段階では、見えている世界も狭いですし、その限られた視野・知見の中から設定される目標やビジョンなんて、そもそも大したものでもない。大きく、魅力的で、具体的な目標やビジョンを描くためには、まず「地力」が必要だと思います。

爪を研ぎ続けていれば、おのずと道は拓かれます。まずは地力をつけること。それに尽きると思います。

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執筆
株式会社オンデック<br>代表取締役社長<br>久保 良介氏
株式会社オンデック
代表取締役社長
久保 良介氏
大手クレジットカード会社、上場商社での勤務を経て、2005年に創業。以降15年間にわたり中小M&Aのアドバイザリー事業を展開。自らも多くのディールを成功に導く。2015年中小企業庁「事業引継ぎガイドライン」検討委員、2020年同庁「中小M&Aガイドライン」検討委員。
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