2022年のTOKYO PRO Market(東京プロマーケット)の総括と2023年以降の展望

2022年のTOKYO PRO Market(東京プロマーケット)の新規上場企業数、業績規模など、複数の視点からJ-Adviser船井総合研究所が解説
2023年2月20日

1.はじめに

2022年、TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)の新規上場社数は過去最多の21社となり、2022年12月末時点での全上場企業数は64社となりました。

2017年以降、毎年新規上場社数を更新し続けていることや2022年の新規上場社数が前年比160%と大幅に増加していることなどから、TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)という市場認知度の着実な向上と、「中堅・中小企業の成長戦略」の手段の一つとして認識されはじめていることがうかがえます。

本コラムでは、2022年のTOKYO PRO Market(東京プロマーケット)の状況、トレンドや今後の展望について、株式会社船井総合研究所がJ-Adviser視点で解説します。

2.2022年のTOKYO PRO Market(東京プロマーケット)の状況

2-1.TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)上場企業数と業績規模
2022年は、過去最多の21社がTOKYO PRO Market(東京プロマーケット)へ新規上場を果たしました。

TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)上場企業数の推移
▲TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)上場企業数の推移

2021年に比べて上場社数が160%の大幅増加となった要因として「東京証券取引所の市場再編」が大きく関わっていると考えられます。

市場再編後の上場基準のハードルが高くなったことにより、目標市場をTOKYO PRO Market(東京プロマーケット)に変更した企業が一定数あったと推察されます。また、目標市場変更の影響なのか、直前期の売上高が100億円超の企業による上場が増えており(2021年は2社、2022年は5社)、直近のTOKYO PRO Market(東京プロマーケット)上場企業の業績規模は、一般市場の新規上場企業と近い水準になってきています。

2020年以降のTOKYO PRO Market上場企業の業績規模
▲2020年以降のTOKYO PRO Market上場企業の業績規模

2-2.TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)上場企業の本社所在地
TOKYO PRO Market上場企業の本社所在地
▲TOKYO PRO Market上場企業の本社所在地

TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)上場企業のうち約7割が東京都以外に本社を置く地方企業です。しかし2022年は東京都に本社を置く企業が10社(2022年TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)新規上場企業21社の約48%)と急増しています。
東京の上場準備企業が目標市場をTOKYO PRO Market(東京プロマーケット)に変更したことと関連するものとみられます。

2-3.TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)上場企業の業種
一般市場とTOKYO PRO Market(東京プロマーケット)の業種構成を比較すると、不動産業・建設業の割合が比較的高いという特徴があります。

TOKYO PRO Market上場企業における不動産業・建設業の割合
▲TOKYO PRO Market上場企業における不動産業・建設業の割合

不動産業・建設業の割合が高くなっている要因の一つとして、不動産業・建設業特有の業界構造が挙げられます。
販売・仕入などの業務プロセスにおいて地域密着型経営が有効に働き、各エリアの「地域一番店」が上場を目指したことで、東京都以外に本社を置く不動産業・建設業の上場企業数が増加していると考えられます。

2-4.TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)上場企業の創業年数
2022年12月末時点でTOKYO PRO Market(東京プロマーケット)へ上場している64社の創業年数の平均は約23年です。
2022年に一般市場へ上場した91社の平均創業年数は約18年であり、一般市場の上場企業と比べて業歴が長いことがわかります。

一方で、創業2年弱の株式会社ペアキャピタルが2022年9月に上場しており、上場のしやすさからベンチャー企業に選ばれるケースも見られます。

TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)の上場基準として、直近1期間の監査法人による監査証明は必要ですが、一般市場と異なり形式基準として事業継続年数は求められていません。そのため創業して間もない上場が可能になります。
(プライム市場・スタンダード市場では、3か年以前から取締役会を設置して、継続的に事業活動をしていること、グロース市場では1か年以前から取締役会を設置して、継続的に事業活動をしていることが求められます。)

2-5.TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)のJ-Adviserの状況
TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)に上場するには、J-Adviser契約が必須です。

ここ数年、J-Adviser資格を取得する企業が増えており、2022年4月には当社・株式会社船井総合研究所が、同年10月には、名南M&A株式会社もJ-Adviser資格を取得しました。

TOKYO PRO MarketのJ-Adviserの状況
▲TOKYO PRO MarketのJ-Adviserの状況

J-Adviserの新規参入が増えるとともに、J-Adviser同士の業務提携も行われています。
(参考:株式会社日本M&AセンターホールディングスとのTOKYO PRO Market関連事業における業務提携に関するお知らせ

2017年以降の各J-Adviserの担当社数
▲2017年以降の各J-Adviserの担当社数

2-6.TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)の監査法人の状況
一般市場と比較して、TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)における監査法人は中堅・中小監査法人の割合が多いという特徴がありました。

しかし2022年では、EY新日本有限責任監査法人や有限責任監査法人トーマツなどの大手監査法人がTOKYO PRO Market(東京プロマーケット)においても合計4社の実績を上げています。

J-Adviser数の増加や大手監査法人の参入からIPO業界に関わるプレイヤー視点でもTOKYO PRO Market(東京プロマーケット)の注目度が高まっていることがわかります。

しかしその一方で、多くの監査実績のある監査法人が行政処分を受けてしまうという残念な出来事もありました。
(参考:監査法人ハイビスカスに対する検査結果に基づく勧告について

行政処分を受けたハイビスカス監査法人は、2021年まではTOKYO PRO Market(東京プロマーケット)の監査実績が最多でした。しかし2022年6月に行政処分となったことで、担当していた上場企業や上場準備企業にも影響を及ぼしてしまいました。実際に、同法人と監査契約を締結していたことで、上場申請を取り下げざるを得なくなった企業もあります。

2017年以降の累積実績数 上位5監査法人
▲2017年以降の累積実績数 上位5監査法人

3.近年のTOKYO PRO Market(東京プロマーケット)のトレンド・トピック

3-1.一般市場からTOKYO PRO Market(東京プロマーケット)への目標市場の変更
目標市場を一般市場からTOKYO PRO Market(東京プロマーケット)に変更する企業が増えています。

株式会社Geolocation Technologyは、10年前から一般市場への上場準備を進めていました。しかし一般市場ではなく目標市場をTOKYO PRO Market(東京プロマーケット)に変更し、2020年9月に担当J-AdviserとJ-Adviser契約を締結します。そして2020年12月にTOKYO PRO Market(東京プロマーケット)に上場、上場を機に増収増益兆候となり、事業拡大の流れに乗って、わずか9か月後の2021年9月に福岡証券取引所Q-Boardに上場を果たしました。
目標市場の変更をきっかけに、当初の目標であった一般市場の上場までを実現されたのです。

出典:株式会社Geolocation Technology 発行者情報

ちなみに、他の主幹事証券会社により一般市場への上場準備や上場審査手続きを進めていた企業の場合、担当J-Adviserが適宜の方法で上場審査を行うことが認められています。(東京証券取引所『特定上場有価証券に関する有価証券上場規程の特例』及び『特定上場有価証券に関する有価証券上場規程の特例の施行規則』)
TOKYO PRO Market上場企業(東京プロマーケット)のJ-Adviser契約締結から上場までの日数を見てみると、平均400日で上場していますが、J-Adviser契約締結後に数か月で上場した企業もあります。これらの企業の中には一般市場上場を目指して準備していた企業が含まれているため、一般市場への上場準備を活かして担当J-Adviserによる適宜の方法で審査を行った結果、平均よりも短期間で上場を実現することができたと考えられます。

【関連コラム】 TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)とは?メリット・特徴・上場スケジュールを解説

3-2.ステップアップ上場事例の増加
2022年12月末時点で、累計6社がTOKYO PRO Market(東京プロマーケット)上場後に一般市場へステップアップを果たしています。ステップアップ先としては東証(2社)および地方市場(4社)が選ばれており、企業の選択が東証一択ではなく多様化していると言えます。
ステップアップの好事例は株式会社ニッソウです。株式会社ニッソウは2018年2月にTOKYO PRO Market(東京プロマーケット)、2020年3月に名古屋証券取引所セントレックス市場、そして2022年7月に東京証券取引所グロース市場へステップアップ上場を果たしました。

前述の通り、今後より一層、TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)を活用したステップアップ上場が増加することが予想されます。

TOKYO PRO Marketにおけるステップアップ上場事例
▲TOKYO PRO Marketにおけるステップアップ上場事例

3-3.株主の姿勢の変化
オーナーシップを維持したまま上場できることが経営者におけるTOKYO PRO Market(東京プロマーケット)上場の大きなメリットである一方で、流動性のない市場への上場は株主にネガティブに捉えられてしまうことが少なくありません。これがTOKYO PRO Market(東京プロマーケット)上場のデメリットでもありました。

しかし、この状況は変化しています。
2022年5月にTOKYO PRO Market(東京プロマーケット)に上場したブリッジコンサルティンググループ株式会社は、株主である事業会社や投資ファンドと株主間契約を維持したまま上場を果たしました。
(参考:ブリッジコンサルティンググループ株式会社 発行者情報

株主の姿勢が変わった理由として、前述の通りTOKYO PRO Market(東京プロマーケット)上場後に大きく飛躍し一般市場へのステップアップを果たした事例が複数出てきていることが影響していると考えられます。ステップアップの可能性が株主に安心感をあたえ、成長を期待させる効果があるのではないでしょうか。

4.2023年以降のTOKYO PRO Market(東京プロマーケット)の展望

TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)への上場が、「中堅・中小企業の成長戦略」の手段の一つ、グロース市場やスタンダード市場といった一般市場へ上場をするためのステップアップ市場として認識されはじめています。今後より一層TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)の注目度向上、新規上場社数・ステップアップ上場数の増加が期待できます。

TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)への関心の高まりから、J-Adviser数や監査法人の参入は増えていますが、当社の感覚ではそれに追いつかないほどTOKYO PRO Market(東京プロマーケット)に関するお問い合わせが増えています。一般市場における監査難民のようにJ-Adviser難民が出てくる可能性もありますので、TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)への上場を検討される場合は、早めにJ-Adviserにご相談されることをお勧めします。

■【動画】「TOKYO PRO Market上場の、”本当のところ”」(2022/7/12 株式会社船井総合研究所 前田 講演)
【J-Adviser】TOKYO PRO Market上場の”本当のところ(前編)

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更新:2024年1月30日
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