収益認識に関する会計基準と適用実務
- 早期適用企業から見えてきた問題点と解決策 -

開催情報
2019年7月2日(火)/東京
セミナー概要
2021年から適用が始まるIFRS 第15号に即した新しい収益認識基準。

従来、収益認識に関する包括的な会計基準はなく、企業会計原則の実現主義のもと様々な会計処理がとられてきました。

しかし、これからは、上場企業では個別財務諸表において適用が求められ、そして自社が適用する必要がないとしても、適用企業から会計処理の変更や契約条件の変更など対応を求められるケースも想定されます。

早期適用企業の事例からわかる新しい収益認識基準対応の問題点とその解決策とは何か。
改めて新しい収益認識基準の概要を確認するとともに、業種別・税務上の注意点及び会計システムでどう対応すべきか、という具体的論点まで公認会計士3人が徹底解説。


セミナー総括
第一部 収益認識基準の概説
[講師] 株式会社日本橋アカウンティングサービス 代表取締役社長  公認会計士 山本 守氏

1.収益認識基準の概説
  ・収益認識基準開発の経緯
  ・これまでの会計基準
  ・収益認識基準の体系
  ・特定の状況等及び重要性等に関する代替的な取り扱い
  ・特に影響のあると思われる事項
2.収益認識基準の導入とシステム対応及び内部統制の変更
  ・業務フローの見直し
  ・システムの見直し

◇IFRS15号の原則を取り入れ、国際的比較可能性を高めた会計基準「収益認識基準」
これまで、日本における、収益認識に関する会計基準は、企業会計原則に「売上高は、実現主義の原則に伴い、商品等の販売または役務の給付によって実現したものに限る。」として、実現主義による売上計上基準が定められているのみでした。
国際的な会計基準として、IASBとFASBが共同して「顧客との契約から生じる収益」(IFRS第15号、Topic606)を公表したことを受け、2018年3月に企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」及び同適用指針第30号「収益認識に関する会計基準の適用指針」が公表されました。

収益認識基準の基本原則は、「約束した財又はサービスの顧客への移転を当該財又はサービスと交換に企業が権利を得ると見込む対価の額で描写するように、収益を認識する」(収益認識に関する会計基準 第16項)というものです。


収益認識基準では、基本原則に従って収益を認識するための5つのステップが示されています。
ステップ1:顧客との契約を識別する
ステップ2:契約における履行義務を識別する
ステップ3:取引価格を算定する
ステップ4:契約における履行義務に取引価格を配分する
ステップ5:履行義務を充足した時に又は充足するにつれて収益を認識する

◇ [特に影響あり] 契約の単位が変わる
収益認識基準の大きな論点のひとつとして、契約の単位があります。(「ステップ1:顧客との契約を識別する」より)
これまでの契約書を見直す必要が出てくるケースも考えられます。
具体的には、以下のような内容です。

・契約の結合
収益認識基準第27項には、「同一の顧客と同時又はほぼ同時に締結した複数の契約について、次の(1)~(3)のいずれかに該当する場合には、当該複数の契約を結合し、単一の契約とみなして処理する」
(1)~(3)には、簡単に言い換えると以下のような内容が記載されています。
(1) 契約が同一の商業目的を有するものとして交渉されている
(2) 1つの契約で支払われる対価の額がほかの契約に左右される
(3) 財またはサービスが単一の履行義務となること

例として、システムの受託開発で、これまでフェーズごとに契約を切っていた場合などがこれにあたります。上記に該当する場合は、契約の結合を行い、一つの契約とみなすことが必要です。

・契約の変更
契約締結後に、契約範囲や契約価格について変更があった場合、契約の範囲が拡大かつ独立販売価格に適切な調整を加えた金額分だけ契約価格が増額される場合は、その部分を別個の契約として処理します。


◇ [特に影響あり] 収益を認識するタイミングが変わる
特に影響のあると思われる項目の、二つ目として、履行義務の充足パターンがあります。(「ステップ5:履行義務を充足した時に又は充足するにつれて収益を認識する」より)
ステップ2で認識した履行義務について、どのタイミングで収益を認識するのかを判定する必要があります。
これまでは、契約締結時にすべての収益を認識している処理が一般的でしたが、収益認識基準においては、契約開始時に、「一時点で」充足される履行義務であるのか、「一定の期間にわたり」充足される履行義務なのかを判断します。
清掃サービスのように、日常的・反復的なサービスであり、企業が顧客との契約における義務を履行するにつれて、顧客が便益を享受するようなものであれば、「一定の期間にわたり」充足されると判断されます。
このような場合は、契約開始時にすべての収益を認識するのでなく、サービスの提供期間にわたり、収益を認識する必要があります。
サービスが仮に、2年間の契約であった場合、契約時に全額を収益計上するのではなく、当期及び翌期の 2年間にわたり収益を認識します。

第二部 業界別収益認識基準の適用実務
[講師] 朝日ビジネスソリューション株式会社 公認会計士  日坂 幸史氏

1.IT業界
  ・IT業界の特色とIT業界に与える影響
  ・IT業界における主な論点
  ・IT業界~一式契約(履行義務の識別)~
2.製造業
  ・製造業の特色と製造業に与える影響
  ・製造業における主な論点
  ・製造業~目標達成リベート~
3.小売業・卸売業
  ・小売業・卸売業の特色と小売業・卸売業に与える影響
  ・小売業・卸売業における主な論点
  ・小売業・卸売業~本人or代理~

◇IT業界 一式契約は、原則的に取扱製品・サービスごとに分けて収益認識する場合がある
ソフトウェアの受託制作契約の場合、サーバーや通信、ネットワーク機器等のハードウェアの販売と、ソフトウェアのカスタマイズ、インストール、運用サポート等のいくつかの業務や商品の販売を一括して請け負うことがあります。このような、「一式契約」は、収益認識基準に照らして履行義務を識別・検討する必要があります。
顧客に約束した財又はサービスが、次の要件をいずれも満たす場合には、別個のものとして収益認識します。
<要件1>
当該財又はサービスから単独で顧客が便益を享受できること、あるいは、当該財又はサービスと顧客が容易に利用できる他の資源を組み合わせて顧客が便益を享受できること
<要件2>
契約に含まれる他の約束と区分して識別できること

◇小売業 本人or代理人の判断により、売上が激減することも
企業が本人として取引を行っているのか、代理人として取引を行っているのかを判断する必要があります。
収益認識基準において、顧客へのサービス提供に他の当事者が関与している場合、財又はサービスが顧客に提供される前に企業が当該財又はサービスを支配しているときには、企業は本人に該当します。
本人と判断された場合、売上高と売上原価を総額表示し、代理人と判断された場合には、売上高と売上原価を相殺した差額のみが売上高として表示されます。
百貨店など、店舗で売れた商品をメーカーから仕入れる『消化仕入』を行っている場合、百貨店は在庫リスクを負っておらず、また価格決定の裁量権がないことが一般的です。
このような場合、百貨店は「代理人」と考えられるため、売上高として表示できるのは、商品の販売代金ではなく、メーカーから得る手数料部分のみとなります。

第三部 収益認識基準の適用に伴う税務への影響
[講師] 朝日ビジネスソリューション株式会社  公認会計士 松山 浩也氏

1. 収益認識基準の税務上の取扱い
  ・法人税 2018年税制改正
  ・消費税の影響
2. 設例
  ・返品が見込まれる部分の取り扱い
  ・ポイント制度の取り扱い

◆法人税は、ほぼ収益認識基準に対応
これまで、法人税法上の収益計上の時期については、さまざまな解釈が考えられましたが、2018年度税制改正において、法人税法第22条の2が新設され、あわせて法人税法施行令第18条の2が定められました。これらにより、収益の計上時期、計上額、変動について明確化されました。
内容は「収益の計上時期は目的物の引き渡しまたは役務の提供の日の属する事業年度となる」などと、基本的に収益認識基準に沿ったものになっています。
注意が必要なのは、貸倒れや返品の可能性がある場合において、その影響を織り込むことはできないという点です。この点においては、収益認識基準と、法人税法で乖離が生じています。

◆消費税は、収益認識基準に非対応。額や計上時期に乖離が生じる
消費税については、その課税標準は課税資産の譲渡等の対価の額、すなわち、対価として収受し、又は収受すべき一切の金銭又は金銭以外のもの若しくは権利その他経済的な利益の額とされており(消費税法第28条)、特に収益認識基準に対応する税制改正は行われていません。
そのため、法人税法と消費税法で収益計上金額と資産の譲渡等の対価の額、あるいは収益の帰属時期と資産の譲渡等の対価の額の認識時期に乖離が生じることが想定されます。会計システムへの、仕訳入力方法について留意が必要です。

◆収益認識基準は「どこまで提供すればお客様が満足してくれるのか」で考える 
契約や、履行義務の識別など、複雑な論点の多い収益認識基準ですが、自社のサービスとして、「どこまで提供すればお客様が満足してくれるのか」という観点で考えると識別の基準になるかと思います。
単体のサービスでも、お客様に提供するものとして成り立つのか、すべてセットにしてようやく満足していただけるものなのか。
会社の実態に沿って、収益認識基準の適用を検討することが望まれます。
また、収益認識というと、収益ばかりに目がいきますが、当然原価にも影響があります。
さらに、IFRSへのコンバージェンスが進む中で、B/Sが単に取得価額だけを記載するものではなくなってきています。収益認識基準の適用により、これからどんな義務を負うのか(負債)についてもB/Sに計上されることになります。
講師紹介
株式会社日本橋アカウンティングサービス 代表取締役社長  公認会計士 山本 守氏
株式会社日本橋アカウンティングサービス 代表取締役社長  公認会計士 山本 守氏
あずさ監査法人のパートナーとして、多数のIPOに携わり、主に、独立系のオーナー企業、大学発ベンチャー企業の上場準備支援等を行ってきました。現在、株式会社日本橋アカウンティングサービスを設立、代表取締役に就任、上場企業からIPO準備会社まで、会計アドバイザリー並びにIPO支援業務等に従事している。
【著書】
「Q&A株式上場の実務ガイド」(中央経済社)
「これですべてがわかる内部統制の実務」(中央経済社)
「これですべてがわかるIPOの実務」(中央経済社)
出版書籍多数
朝日ビジネスソリューション株式会社 公認会計士  日坂 幸史氏
朝日ビジネスソリューション株式会社 公認会計士  日坂 幸史氏
大手監査法人で約10年間、商社、製造業、サービス業等の監査に従事後、朝日税理士法人へ転職。現在は法人の税務顧問業務を中心に、関連コンサル会社である朝日ビジネスソリューションにてIPOのコンサル業務にも従事。
朝日ビジネスソリューション株式会社  公認会計士 松山 浩也氏
朝日ビジネスソリューション株式会社  公認会計士 松山 浩也氏
大手監査法人で約6年勤務後、当法人へ転職。現在は法人の税務顧問業務と関連コンサル会社でIPOのコンサル業務を中心に従事。
書籍のご紹介
「業種別・収益認識基準の適用実務」
“業種別”収益認識基準を丁寧に解説した、講師企業共著の書籍です。
小売業・卸売業,IT業界,建設業,製造業,運送業などごとに,想定される論点と会計処理を明示。内部統制や法人税・消費税との関係も解説しています。
共著:株式会社日本橋アカウンティングサービス/朝日ビジネスソリューション株式会社/朝日税理士法人
ご参加者様のコメント
・税務に関する点、実際の仕訳の説明があり、分かりやすかった。
・業種ごとの論点、税務とのかかわり等、期待していた通りのお話を伺うことができた。
・弊社にはあまり影響がないと聞いていたものの、なぜ影響がないのか、本当に影響がないのかということが、講演を聞いてかなり理解できた。
編集後記
収益認識基準のように、IFRSを基にしている会計基準は、原則主義のため、以前から存在する日本の会計基準と比較して、内容が曖昧に感じられることが多いですが、
具体的な仕訳例などを交えてのご説明により、業種別の実務対応が見えるとのお声を多くいただきました。
第三部での、「どこまで提供すればお客様が満足してくれるのか」という一言は、基準の文言を読み解くのに苦戦していた私にとっても、とてもすっきりとピンとくる表現でした。
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