SNS時代における信用棄損への対抗策と労務管理の実務

開催情報
2020年8月27日(木) 13:30~15:00/Web
セミナー概要
SNS時代における信用棄損・情報漏洩・・・見えないリスクを防ぐ労務管理とは?
一億総ジャーナリスト時代と呼ばれる昨今、SNSへの投稿に対する心理的障壁が低くなる一方で、安易な投稿により、企業の信用を棄損するケースが増えている。
□顧客情報をSNSに投稿し、情報漏洩
□給与明細を転職サイトで公開し、内部事情流出
□ブラック企業のレッテル貼り
□不適切動画の投稿でバッシング 等
企業の信用を棄損する情報が拡散された場合の影響は計り知れない。
本セミナーでは、企業が講ずべき就業規則・SNS利用ポリシーの整備と問題発生時の企業の責任及び従業員への責任追及、削除請求の方法を解説する。
セミナー総括
1.SNS というメディアの特性と昨今の炎上事例
今や利用したことがない人はいない、というほど一般的になったSNSですが、利用者の増加に伴い、企業におけるリスクも高まっています。

SNSというメディアには、「伝播可能性」、「公共空間性」、「情報の保存・維持」、「特定可能性」、「発信の容易さ」という5つの特性があります。 たとえば発信された情報が拡散される「伝播可能性」という特徴により、名誉棄損・信用棄損に該当しやすくなります。 また「情報の保存・維持」という特徴によって、情報が残り続けてしまうことや削除が簡単にはできないことにより、過去までさかのぼって炎上することも考えられます。

昨今の炎上事例を見てみましょう。
ここ数年は飲食店における「バイトテロ」と呼ばれる事例が目立ちました。
たとえば、冷蔵庫に入った従業員がSNSにその写真を投稿する、おでんの具材を口に入れる動画を投稿するなどです。しかし、最近ではSNSにおけるリスクはすべての企業が対象となっています。

SNSにおける炎上事例、BtoC企業だけではなくすべての企業が対象になる
▲SNSにおける炎上事例、BtoC企業だけではなくすべての企業が対象になる

求人サイトに「ブラック企業」との評価が記載される、ニュースになった出来事への対応が不適切であると拡散されるなどです。

企業において、SNSを介したレピュテーションリスク(企業におけるマイナスイメージによる業績の低下)は計り知れず、問題が発覚した際には早期に対処することが最も重要と言えます。
2.SNS上で問題発生!企業が責任を追及できるのは「発信者」?「拡散者」?「運営者」?
では、実際にSNSに不適切な投稿をされてしまった場合、企業は誰に責任を追及できるのでしょうか?

発信者が負うべき法的責任、名誉棄損・信用棄損などその責任は重い
▲発信者が負うべき法的責任、名誉棄損・信用棄損などその責任は重い

「発信者(及び行為者)」に対しては、名誉棄損・信用棄損等で法的責任を追及できる可能性があります。

不適切な投稿を拡散させた(例:Twitterの投稿をリツイートした)「拡散者」はどうでしょうか?
こちらも法的責任を追及できる可能性があります。権利侵害しているツイートをリツイートした場合も、発信者と同様の表現をしたとみなされることがあるからです。ただし、現時点の判例で判断されたのは、著作者人格権(写真の氏名表示権)侵害に関するリツイートであり、名誉棄損・信用棄損にまで及ぶかは専門家の間でも議論がされている段階です。今後、拡散者に対してどのような権利侵害で法的責任を追及できるかは注視する必要があるでしょう。

次にプロバイダなどの「運営者」はどうでしょうか?
こちらは不適切な投稿を掲載していたことだけでは罪に問うことはできません。
もちろん違法と知りながら放置した場合は法的責任を追及される可能性はありますが、一方で、違法行為と分からないない場合にも対応を求めることは運営者に過剰な負担を負わせることになることや、削除等の対応が広く行われるようになると発信者の権利を害するおそれもあります。

そこで板ばさみの立場になる運営者の責任を制限すべく「プロバイダ責任制限法」が設けられています。「プロバイダ責任制限法」では、プロバイダが一定の要件のもと、削除・開示をしても責任が問われないと定められています。

実際にプロバイダに削除・開示請求をする場合は、投稿されたサイトに削除・開示請求フォームが設けられていれば、企業側でフォームに入力して削除・開示請求することが可能です。ただし、フォームがそもそも存在しないサイトや、フォームから請求をしても理由が十分でなければ削除や開示が認められないこともありますので、そのような場合は、弁護士などの専門家に相談することも有効です。

◆ 具体的な削除請求の流れはこちらで確認「ネット削除請求ALG」
3.企業側にはどのような責任が追及される?不適切な投稿をした従業員は解雇できる?
SNS上で実際に問題が起こった場合、企業においては誰が責任を問われるのでしょうか。

「会社・役員」であれば、株主代表訴訟を起こされることや行政処分を受ける、被害者から使用者責任を追及されるなどの可能性があります。昨今のバイトテロを例にすると、従業員の教育が不十分だったという内部統制構築義務違反が問われるかもしれません。
「管理監督者」は管理監督義務違反による懲戒処分、「従業員」も懲戒処分となる可能性があります。

不適切な投稿をした従業員は解雇や退職処分を受けた。ただし解雇時は要注意。
▲不適切な投稿をした従業員は解雇や退職処分を受けた。ただし解雇時は要注意

解雇、退職処分などの重い処分をされているようです。
しかし実は「解雇」までその処分が相当であるものとして法的に有効と維持されるかについて、前例となる裁判例はまだ公表されていません。 問題を起こしてしまった従業員を教育することによって再発防止をするなど、解雇の前に取るべき措置があると判断される可能性があることや、後日の解雇紛争を避けるという意味でも、基本的には合意退職などを活用しながら退職処分として公表することも検討すべきです。
4.SNSリスクに対応する労務管理
ここまでで、SNSにおける問題発生時に誰に、どのような対応をとることができるかという事後のお話しをしてきました。ただ、SNSにおける問題は起こってしまってからでは遅いことが多々あります。重要なことは、事前の対策です。

労務の観点から事前にできる対策は以下の二段階の対策です。

第1段階 SNS対応可能な就業規則等の整備
第2段階 SNSガイドラインやポリシーの公表と教育


第1段階の就業規則の整備は今の時代、必須と言えます。就業規則上は「SNS利用に対する規制」に加え、実態調査の根拠として「情報機器の私的利用禁止・モニタリング根拠の確保」の項目を設けることをおすすめします。
また、「SNS利用に対する規制」の中には、SNSへの不適切な書き込みなどを行った場合に、企業側が従業員に削除命令ができる、と明記もしておきましょう。
さらに、就業規則に加えて入社誓約書に同内容を加えることも有効です。
そして、第二段階としてガイドラインやポリシーを設けて、その内容を周知・教育することが重要です。
5.SNS上の問題は専門家の活用で早期解決を目指す
SNS時代と呼ばれる今、SNSリスクへの対応は企業にとって欠かせません。
就業規則等の整備といった事前対応で問題が起こらない環境を整えること、そして問題が起こってしまった場合には、早期解決が最も重要です。 しかし不適切な投稿の削除・開示請求や問題を起こしてしまった従業員への対応に苦慮するケースが多々あります。そのような場合は、SNSでの問題に対処できる弁護士に一度ご相談ください。

◆ インターネット上の悪質な書き込みの削除請求は弁護士にお任せください(ネット削除請求ALG)

◆ 関連イベントレポートはこちら
2019/6/5開催「ソーシャルメディア時代における危機管理と労務管理」
講師紹介
弁護士法人ALG&Associates 執行役員 企業法務事業部長/弁護士 家永 勲氏
弁護士法人ALG&Associates 執行役員 企業法務事業部長/弁護士 家永 勲氏
企業法務全般の法律業務を得意とし、使用者側の労働審判、労働関係訴訟の代理人を務める等、企業側の紛争及び予防法務に主として従事。企業法務におけるトラブルへの対応とその予防策についてセミナーや執筆も多数行っている。近著に「中小企業のためのトラブルリスクと対応策Q&A」や「中小企業の防災マニュアル」(労働調査会)など。
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