2023年のTOKYO PRO Market(東京プロマーケット)の振り返りと今後の展望~新規上場企業数32社にまで増加した背景に迫る~

2023年は過去最多となる32社が新規上場を果たしたTOKYO PRO Market(東京プロマーケット)。上場企業の特徴や、J-Adviser・監査法人の状況のほか、2023年最新のTOKYO PRO Market(東京プロマーケット)のトレンドを、J-Adviser船井総合研究所が解説。
2024年2月20日

1.2023年のTOKYO PRO Market(東京プロマーケット)の状況

1-1.TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)上場企業数の推移

2023年は、32社がTOKYO PRO Market(東京プロマーケット)に新規上場を果たしました。2017年以降、毎年過去最多の新規上場社数を更新し続けており、2023年12月末時点での上場企業数は90社です。

TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)上場企業数の推移

右肩あがりの要因としては、TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)市場の知名度の向上、目標市場をグロース・スタンダード市場からTOKYO PRO Market(東京プロマーケット)へ変更するケースの増加、J-Adviser数の増加などがあると考えられます。

1-2.TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)上場企業の本社所在地

2023年12月末時点でTOKYO PRO Market(東京プロマーケット)に上場している90社のうち、約6割は東京都以外に本社を置いています。
しかし近年では、東京都に本社を置く企業が増加傾向にあります。実際に、2023年にTOKYO PRO Market(東京プロマーケット)へ新規上場した32社のうち半数の16社は本社所在地が東京都です。

TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)上場企業の本社所在地

1-3.TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)上場企業の創業年数

これまでは、東京都以外の地方に本社を置く老舗企業が上場しているという特徴がありました。そのため、一般市場と比較して、TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)の方が、創業年数が長い傾向にありました。
しかし、2023年の平均創業変数は22.09年、2022年の24.07年と比べて約2年短くなっています。

TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)上場企業の創業年数

1-4.TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)上場企業の業種

2022年までは、建設業・不動産業が多い傾向にありましたが、2023年では一般市場のように情報・通信業やサービス業が増えています。

TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)上場企業の業種

1-5.TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)上場企業数の業績

2022年までは、TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)の新規上場企業の業績規模は、旧マザーズ市場やグロース市場と比べても引けを取らない水準であり、年によっては、TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)の売上高の中央値ほうが高いときもありました。しかし2023年はここ数年の中で最も低い水準となり、売上高は約14億(中央値)、経常利益は約1億(中央値)となっています。まだ傾向と言えるほどではありませんが、上場企業数の増加、業種や規模の多様化が影響している可能性があります。

TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)上場企業の業績

1-6.TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)のJ-Adviserの状況

前述の通り、TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)上場企業数が増加している要因の一つとして、J-Adviserの増加が考えられます。
一般市場では監査難民や証券難民が問題となっていることからわかるように、支援家不足は上場企業数に歯止めをかけます。一方で、TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)上場を支援するJ-Adviserが増えているため、比例して上場企業数も増加していくのです。
2023年8月にはSBI証券が、2024年1月には三田証券がJ-Adviser資格を取得しました。2024年1月末時点で17社がJ-Adviser資格を取得しています。SBI証券や三田証券のように一般市場の主幹事証券も引き受けられる証券会社がJ-Adviserになることは、一般市場へのステップアップ上場やTOKYO PRO Market(東京プロマーケット)上場時のファイナンス事例のさらなる増加が期待できるかもしれません。

■J-Adviser一覧(日本取引所グループより) https://www.jpx.co.jp/equities/products/tpm/outline/02-01.html

1-7.TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)の監査法人の状況

TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)では、一般市場と比較して、中小監査法人の実績が多いという特徴があります。
監査先企業数の多い監査法人上位5位の顔ぶれは、1位の監査法人コスモス以外は2022年とすべて変わっています。監査法人の多様化が今後進んでいくことが期待されます。

TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)の監査法人の状況

【船井総研YouTube】2023年のTOKYO PRO Market(東京プロマーケット)の総括と今後の展望

2.近年のTOKYO PRO Market(東京プロマーケット)のトレンド・トピック

2023年最新のTOKYO PRO Market(東京プロマーケット)のトレンド・トピックとして、以下4つを紹介します。

2-1.TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)を活用したステップアップ上場事例の増加

2023年12月末で累計10社、2023年においては4社がTOKYO PRO Market(東京プロマーケット)上場後に一般市場にステップアップしています。ステップアップ先としては、東京証券取引所だけでなく名古屋証券取引所や福岡証券取引所を選択する企業もあり、市場の選択肢が多様化しています。

TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)を活用したステップアップ上場事例の増加

ここで、2023年にステップアップ上場を実現でした4社の中から、ブリッジコンサルティンググループ株式会社の事例を紹介します。
同社は、2022年6月にTOKYO PRO Market(東京プロマーケット)へ上場しました。そのわずか3か月後の2022年9月に「市場変更準備開始に関するお知らせ」と題して、東証グロース市場への上場準備を開始した旨を開示、2023年6月にはステップアップ上場を実現しました。
短期間でのステップアップ上場実現の裏では、TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)の上場準備と並行して、一般市場の上場準備も計画的に進めていたことが伺えます。
(出典:ブリッジコンサルティンググループ株式会社の開示「市場変更準備開始に関するお知らせ」

2-2.一般市場からTOKYO PRO Market(東京プロマーケット)への目標市場の変更

一般市場への上場準備を進めていたものの、TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)へ目標市場を変更した事例を紹介します。

A社は主幹事証券会社・監査法人も決まっており、旧マザーズ市場への上場準備を進めていました。しかし、申請期の第2Qに、旧マザーズ市場へ上場は業績面から断念せざるを得ないことを主幹事証券より伝えられます。そこで急遽TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)への目標市場変更を決意しました。第3QにはJ-Adviserとの契約を締結し準備を開始します。旧マザーズ市場への上場に向けて内部管理体制は構築・整備されていたため、TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)に向けての準備もスムーズに進めることができました。
そして第4Qには、晴れてTOKYO PRO Market(東京プロマーケット)へ上場を果たすことができたのです。

一般市場からTOKYO PRO Market(東京プロマーケット)への目標市場の変更

A社のような意思決定ができず、上場準備が長引いてしまう企業は少なくありません。そのような場合は、目標市場の変更で新しい道を切り拓くこともぜひ視野に入れてみてください。

2-3.TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)上場後のM&A

2022年10月にTOKYO PRO Market(東京プロマーケット)へ上場した株式会社LUMBER ONEが、さらなる成長を遂げるため、上場から約1年後の2023年9月にヤマエグループホールディングス株式会社(東証プライム・コード7130、以下ヤマエグループ)の子会社になりました。
ヤマエグループの適時開示によると、株式会社LUMBER ONEの株式を1株5,000円、全株式(2,000,000株)を100億円で取得したとあります。2022年7月期の株式会社LUMBER ONEの当期純利益が3.2億円であったことからすると、M&A実行時にはPER約30倍相当の高い評価を受けられたことがわかります。
同社以外にも、2012年5月にTOKYO PRO Market(東京プロマーケット)上場した五洋食品産業株式会社が、2021年12月に三井物産株式会社の連結子会社になった事例もあります。
これらの2社は、TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)上場企業となることで、決算の透明性や内部管理体制がM&Aにおいて評価されたと言えるでしょう。上場がゴールではなく、さらなる成長の選択肢としてM&Aを選ぶことができたと言えるのではないでしょうか。
(出典:株式会社LUMBER ONE 適時開示
(出典:ヤマエホールディングス株式会社 適時開示

2-4.福岡証券取引所でのプロ投資家向け市場の開設

2023年5月に福岡証券取引所が、これまでの本則市場・Q-Boardに続く第三の市場として、プロ投資家向け市場を2024年下期に開設することを公表しました。市場の概要としては、TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)の制度設計をそのまま踏襲するということから、柔軟な上場審査基準となることが予想されます。
(出典:福岡証券取引所 福証第三の市場の開設に向けた準備の開始について~プロ投資家向け市場の準備開始~

福岡証券取引所のプロ投資家向け市場の詳細情報については、今後福岡証券取引所より公表されるということです。TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)とあわせてプロ投資家向け市場が注目されることになりそうです。

3.2024年以降のTOKYO PRO Market(東京プロマーケット)の展望

柔軟な制度設計に、近年の認知度の高まりから、TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)を目指す企業は増えており、この傾向は続くでしょう。
その場合の懸念事項としては、TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)の人気が高くなりすぎると、一般市場のようにJ-Adviserや監査法人等の支援を請け負う側のリソースが不足してしまう可能性があることです。現時点ではリソース不足は感じていませんが、あり得ない話ではないと考えています。当社船井総合研究所もJ-Adviserとして、TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)についてご相談を受ける中で、相談件数は著しく増加しています。TOKYO PRO Market(東京プロマーケット)上場を検討されている企業においては、年間上場企業数と各支援家の受託状況は注視しておき、検討を始める場合は、早めにJ-Adviserに相談することをおすすめします。
新しい道が拓けるかもしれません。

【船井総研YouTube】2023年のTOKYO PRO Market(東京プロマーケット)の総括と今後の展望

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