IPO準備企業のための景品表示法セミナー

多くの事例から景品表示法を理解し、IPO準備企業が早期に表示コンプライアンス体制を整える方法を、“景品表示法の伝道師“ 野村弁護士に解説いただきました。

開催日時
2019年4月9日(火) 14:00~16:00/東京
セミナー概要
今、意外なところでIPO準備が止まっていると言われています。
それは景品表示法違反です。

「※個人の感想です。」は、もうNG?
厳格化される景品表示法とIPO準備上のリスク

2014年に景品表示法が改正され、2017年度は前年度から8割増の50件の措置命令が発令されています。
措置命令を受けると、消費者庁のHP上に社名や違反内容が公開されるため、インターネット上に公開されつづけることによるレピュテーションリスクが懸念されます。
また、IPO審査においても、景品表示法などのコンプライアンス対応は必ず求められます。
多くの事例から景品表示法を理解し、IPO準備企業が早期に表示コンプライアンス体制を整える方法を、“景品表示法の伝道師“野村弁護士に解説いただきました。
セミナープログラム
第一部 オープニングパネル「近年IPO準備企業を悩ますコンプライアンス体制」
<パネリスト>
辻・重見 税理士法人 代表社員 公認会計士/税理士 重見 亘彦氏
1993年に監査法人トーマツ(現:有限責任監査法人トーマツ)へ入所。
2010年に独立し、重見会計事務所開設 。2013年に税理士法人重見会計設立、代表社員就任。
地方での上場会社創出のため尽力している。


葉山社会保険労務士事務所 所長 特定社会保険労務士 葉山 憲夫氏
一般事業会社での経験ののち、1994年7月葉山社会保険労務士事務所、設立。
監査役や社外取締役を歴任。2018年もIPO実現企業の労務顧問実績あり。


<ファシリテーター>
株式会社名古屋証券取引所 営業推進グループ長 伊藤 和仁氏
第二部 景品表示法違反を防ぐ管理体制確立のために
<講師>
エジソン法律事務所 弁護士 野村 亮輔 氏
著作・出演等
『「審決・命令・警告」徹底整理 景品表示法の理論と実務』(共著)(中央経済社 2017年8月)
「ウェブマーケティングにおける表示の問題」(月刊ビジネス法務・2015年2月号)
「表示担当者のためのはじめての景表法セミナー Q&A編」(月刊ビジネス法務・2015年5月号)
「表示担当者のためのはじめての景表法セミナー チェックテスト編」(月刊ビジネス法務・2015年6月号)
「基本用語と講習例でわかる!LGBT基礎知識」(月刊ビジネス法務・2017年3月号)(共同執筆)
セミナー総括
第一部 オープニングパネル
「近年IPO準備企業を悩ますコンプライアンス体制」
近年IPO準備企業を悩ますコンプライアンス体制

IPOファクトデータ分析 - 上場市場はマザーズが7割

冒頭では、2018年までのIPOに関するデータ分析のお話がありました。

重見氏:IPOの推移についてネットバブル、ITバブル、リーマンショックなどにより上下しましたが、近年は90社前後で推移しています。
上場市場別の推移では、全IPO企業のうち、7割がマザーズに上場しています。
札証アンビシャスでは、時価総額の基準が緩和され、2017~2018年は、時価総額が10億円以下の会社のIPOが数件ありました。

【表】市場別IPO数推移
市場別IPO数推移
※レジュメより抜粋

そのほか、ファクトデータには、IPO数の推移、主幹事証券会社の分布、監査法人の分布の結果がありました。
代表者の年齢別の分布と、コンプライアンス違反の内容に傾向がみられるなど、新たな切り口での分析もありました。
上場月は、決算月であることが多い3月と12月に集中していますが、その理由は、予算に対しての実績の見通しを待ってから上場が認められるケースが多いという背景が考えられます。


IPOに向けて、立ちはだかる「壁」とは? 監査難民、審査の厳格化とその内容について

ファシリテーターの方からの問いかけにより、以下のような話題がありました。

◇監査難民について
――― 「監査難民」ともいわれる現状、なぜそのようになったのか、また対策は?

重見氏:
IPO 前は、少し無理をしてでも良い業績を計上したい、という事例も見受けられたことから、一般的には監査におけるリスクが高いと考えられる傾向にあります。
監査法人は不適切な監査を行っていると名指しされるようなことがあれば、レピュテーション上大ダメージとなり存続そのもののリスクが生じる可能性が考えられることから、 新規 IPO は監査法人が積極的に行いたいと思うような仕事ではなくなってしまっているのではないでしょうか。

また、昨今は、監査法人側も人手不足により受注をお断りするケースも耳にします。
個人的には監査法人に契約をお願いする対策としては、監査法人にとって「コスパの良い会社になる」ことだと考えています。
どういうことかと申しますと、コーポレート・ガバナンスの構築を会社の重要な経営課題として取り組み、社内が透明で見える化されている、 すなわち監査法人にとっても監査が効率的に実施できるような体制を、経営者はじめ会社の皆様が取り組んでいることが重要ということなのです。

IPO準備だから、と対応を始めるのではなく、あくまでも会社の皆様が自社のガバナンスは自分たちが構築して守るという姿勢で、 ルール作りや制度構築を通じて適切な事業経営を行うこと、監査法人や証券会社からIPO準備段階で指摘されるのを待つのではなく予め各種セミナーに出ての勉強やコンサルティングを受けるなどの対応により、 監査法人が来る前に監査がしやすい「コスパの良い会社」になっていただくことが望ましいといえます。

◇上場数について
――― 上場数が頭打ちになっているのはなぜでしょう。
重見氏:
予算と実績の乖離、コンプライアンス違反などが見受けられる場合、延期または中止になってしまうことがあるのではないでしょうか?

この項では、IPOの現場に関わる先生ならではの、”ココだけの裏話”が多く出ていました!

◇コンプライアンス違反について
―――― 注意が必要な法律は?

伊藤氏:
法令は基本的にすべて順守する必要がありますが、トレンドもあります。
耐震偽造が社会問題になった際には、建築基準法が厳しく審査される、など世の中の流れが反映されます。
最近は過重労働が問題になり、労働基準法がトレンドに、また、インターネットの普及・高度化により、直接消費者にアピールする場面が増えたことなどにより、景品表示法がトレンドになっています。

当日は、特に労務管理について、葉山氏に、具体的に違反と捉えられてしまう事例などを用い、重点的にお話しいただきました。

伊藤氏:
コンプライアンス違反は上場審査で見つからなければ、そのまま通過できてしまいます。
しかし、万が一表沙汰になったときに、これまで積み上げていったものがすべてご破算になってしまいます。
上場していれば株主にも迷惑がかかります。上場だけを目的にするのではなく、本質的に上場に適格な会社になることが必要です。

そして、一部の最後に、IPOを目指す皆様に、パネリストの両氏より一言いただきました。

葉山氏:
上場は、高い山のように下を見ると怖くなることもあるかもしれません。
だけど上ったらそこにしかない景色、出会えない人たちがいます。
ぜひ皆さんにもIPOを目指していただきたいです。

重見氏:
成長段階の皆様が監査法人を選べるくらいの「コスパの良い」会社になっていただき、そしてそのような会社が多く育成されIPOしていただきたいという願いを持っておりまして、この度コンサル会社を設立することといたしました。
今までにご支援した IPO 企業の社長で、『最初はキャピタルゲインを目的に上場を目指したけれど、上場したことにより、組織がしっかりして、その中で人を育てることができた。
そのおかげで、自分の後継者になってくれる人が現れた。上場していなかったら人の面でも会社はつぶれていたかもしれない。』と回顧する方がおられました。
上場を経て、会社が、まさに会社法でいうところの「会社」になることができます。
そのためには達成するという強い気持ちが必要です。


◇名古屋証券取引所◇
東証マザーズ・ジャスダックだけではない「IPOマーケットの選択肢を提供する」との理念のもと、首都圏をはじめ全国での上場誘致にも注力。
将来の東証1部へのステップアップのための足掛りとして、 「成長企業向けのセントレックス」と「中堅企業向けの名証2部(本則市場)」という
2つのステップアップ市場を提供しています。


名古屋証券取引所様コラム
飽和するマザーズ市場。 IPOの確度を高める、地方証取の活用 ~ステップアップ市場としての名証の魅力とは~
名古屋証券取引所様 ホームページ
名古屋証券取引所


第二部 景品表示法
[講師] エジソン法律事務所 弁護士 野村 亮輔氏
景品表示法についての詳しいお話を、野村弁護士が解説。

第二部では、景品表示法についての詳しいお話を、野村弁護士に解説していただきました。

景表法クイズ!あなたは答えられますか?

第二部、景品表示法は、○×クイズからはじまりました。
「不当表示」になるか、○×で答えてください。

資格などの通信教育を行っているB社では「春のフレッシュマンフェアー」として、4/1~5/31まで、1万円の入会金を無料にしていた。
好評だったが、6月になったので、6/1から「大人の夏休み!夏こそ自己啓発!フェアー」として、7/31までやはり1万円の入会金を無料にすることにした。
実際に3/31までの入会者からは1万円の入会金を徴収しており、フェアー中は広告どおり、入会金を徴収していない。


おわかりでしょうか?
こちらは、実際に措置命令を受けた事例をもとにしたクイズです。


◇景品表示法とは?

条文には以下のように記載されています。
不当景品類及び不当表示防止法

第一条
この法律は、商品及び役務の取引に関連する不当な景品類及び表示による顧客の誘引を防止するため、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれのある行為の制限及び禁止について定めることにより、一般消費者の利益を保護することを目的とする。

「一般消費者の利益を保護すること」が目的の法律です。

景品表示法は、「不当表示の禁止」と「景品類の制限及び禁止」の2つからなります。

景品表示法の概要
※画像は消費者庁ホームページより

◇「不当表示の禁止」はさらに3つの分類

今回主として取り扱った、「不当表示の禁止」の中には、さらに3つの分類があります。

1.
優良誤認表示の禁止
例1)実際には、国産有名ブランド牛ではない国産牛肉であるにもかかわらず、あたかも「国産有名ブランド牛の肉」であるかのように表示。
例2)実際には、他校と異なる方法で数値化し、適正な比較をしていないにもかかわらず、あたかも「大学合格実績No.1」であるかのように表示。
2.
有利誤認表示の禁止
例1)実際には、別途、矯正装置の費用が必要であるにもかかわらず、あたかも、初診料や検査診断料などとして記載された「○○円」だけを支払えば歯列矯正のサービスを利用できるかのように表示。
例2)その商品を「通常価格」で販売していた期間がほとんどないにもかかわらず、「今だけ、当店通常価格から○○%OFF」のように表示
3.
その他、認識されるおそれがある表示の禁止(指定告示)
例)無果汁にも関わらず、「果汁0%」と表記せずにオレンジ風味の飲料を「オレンジ飲料」と表示。



◇景品表示法違反で措置命令を受けてしまうと・・? 見逃せないリスクの大きさ

景品表示法で躓くと、どのようなリスクがあるでしょうか。

1.レピュテーションリスク
景品表示法に関して措置命令などを受けてしまうと、消費者庁のHPで公開されます。
消費者庁HP(2019年度)
  
インターネットで簡単に情報が拡散され、誰でも手に入るようになった昨今、一度失った信頼を取り戻すのは容易ではありません。

2.財務状態の悪化
・販売停止などによる売り上げ減少
・株価下落
・億単位の課徴金を課せられた例も
→上場審査においても改善を求められることもあり、上場を考える企業にとって重要な項目です。

近年、規制が厳格化しているため、リーガル面に気を配っていると思われる大企業でも、措置命令を受けることがあります。
セミナーでは、具体的な例と、何が景品表示法に抵触したのかについて、他業種にわたるケースを紹介しました。
同業他社が争っている場合などに起きやすく、まわりもやっているからと同様な表示を行い、数社が同時に措置命令を受けたケースもありました。
また、昨今インターネットの普及により、広告媒体がWebになることが多く、消費者庁が注目していると思われる「打消し表示」についても、消費者庁がいっそう厳しく見る向きがあります。


◇事業者が行うべき景品表示法対策

平成26年6月改正により、「事業者が講ずべき表示等の管理上の措置」が定められました。(以下は消費者庁HPで確認できます。)
1 景品表示法の考え方の周知・啓発
2 法令遵守の方針等の明確化
3 表示等に関する情報の確認
4 表示等に関する情報の共有
5 表示等を管理するための担当者等を定めること
6 表示等の根拠となる情報を事後的に確認するために必要な措置を採ること
7 不当な表示等が明らかになった場合における迅速かつ適切な対応


現状では多くの会社で、表示についての管理体制が整っていない状態です。
景品表示法の定義する「表示」とは、代表的な、ちらし、商品パッケージのほか、インターネット上のメールや、実演広告、訪問や電話によるセールストークまでもが含まれます。
そのため、会社の中の一部の人間だけがしっかり把握していても、全社員に周知徹底しなければ法令違反を防げません。
また、ここまでは許され、ここからは許されないという明確な基準があるわけではないため、根本的な考え方を社内で共有する必要があり、表示がセーフかどうかの判断を顧問弁護士に頼り切るのでなく、全社で対応するということが重要です。
ご参加者様のコメント
「様々な景表法違反の具体事例と、消費者庁の着眼点の説明があり、資料もわかりやすかった」
「弁護士としての本音も伺うことができ、業務にフィードバックできる内容だった」
「弊社はBtoB企業ではあるものの、広告を取り扱っているため、景表法周辺の話は興味深かった。」
編集後記
講義も、難しい法令を平易な言葉に噛み砕いて説明していただきました。
消費者として目にしたことのあるような表示が、違反として措置命令を受けている例が多数提示され、それぞれどの部分が抵触しているのかを解説されていて、景品表示法の知識がなくても法令について理解できるセミナー内容でした。

景品表示法をはじめとする消費者法は、昨今、IPOの審査ポイントのトレンドと言われています。
IPO準備企業には、法令を正しく理解し、表示コンプライアンス体制を早期に整えることが、求められています。
講師紹介
エジソン法律事務所 弁護士 野村 亮輔氏
エジソン法律事務所 弁護士 野村 亮輔氏
1997年東京大学法学部卒。2007年弁護士登録(東京弁護士会)。
2014年株式会社VOYAGE GROUP(現株式会社CARTA HOLDINGS)の非常勤監査役としてIPOを経験。現在も都内IT企業の非常勤監査役を務める。
景品表示法・労働法・コーポレートガバナンスなどを専門とし,景品表示法関連の著書には「景品表示法の理論と実務」(中央経済社・共著)がある。各地で講師を務めるセミナーは「わかりやすい」「法律のセミナーであんなに笑ったのは初めて」と多くの受講者から喝采を浴びている。

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