IPO Forum フォローセミナー 第6回
法務・労務コンプライアンス

開催情報
2020年2月19日(水) 13:30~16:30/東京
セミナー概要
コストがかかる法務対応・・しかし、不備があり問題が起きた時のリカバリコストはそれ以上に甚大。

IPO実現のための必須テーマ全8回 少人数徹底解説セミナー
今回は、第6回「法務・労務コンプライアンス」の「第一部 法務コンプライアンス」のセミナーレポートをお届けします。

IPOにおける法務審査は、近年厳しさを増しています。 そのため、何か問題が起きてから対応するという従来の考え方とは変わり、今後は“法務戦略” として捉えていく必要があります。
本セミナーでは、“企業の実態が上場会社として相応しいか”という観点から、どのような法務に関する審査がされているか、その対応方法を解説します。
セミナー総括
法務コンプライアンス
[講師] TMI総合法律事務所
パートナー弁護士
高野 大滋郎氏




◆ IPO審査で重要となる法務問題。法務上の問題で審査が通らないことも。
IPOにおいては、法務面では、以下の2つの視点により、審査されます。
1. 事業の継続性
2. コンプライアンス

事業の継続性とは、そもそも法務面からみて、ビジネスを継続していけるのかということです。ビジネスの根幹となる特許に関して、第三者から無効の訴訟が起こされているなどがある場合、事業の継続性が疑問視されます。法的問題がゼロの状態でなければいけないかというと、そうではありません。個人利用者からのクレーム(訴訟)などで、金額的規模などから、重要性が乏しいと判断できるものであれば、開示をしていれば、審査上問題にならないケースもあります。ただし、一件ずつが少額の訴訟であったとしても、主力製品に対しての訴訟が多数ある場合などは問題視されることもあります。様々な論点がある中、重要性が高いものを見極める必要があります。

コンプライアンスの視点では、不祥事・会社法関連・反社会的勢力・労務管理など、コーポレート・ガバナンス及び管理体制が有効であるかどうかを問われます。
いずれも、審査に大きく影響し、訴訟を起こされていたり、監督官庁に是正勧告を出されていたりする状況では、審査が止まったり、承認が下りないケースもあります。

◆ ビジネスに関する法規制は、 “事業を行うことについての許認可”と“事業に付随する領域の法規制”の2つ
ビジネスに関する法規制には、当該事業を行うことについての許認可と、当該事業に付随する領域の法規制に大別できます。

ビジネスに関する法規制を遵守していないと、会社の成長期になってから、当該ビジネスを中止しなくてはならないというリスクがあります。また、中止にならない場合でも、売上減少やコスト増加により事業計画に影響が出ることがあります。
また、一度法的な問題が起きて、公になってしまうと、インターネットなどで情報が広がりやすいこともあり、企業の評判を著しく損なうこともあります。

◆ 事業を行うことについての許認可-乗り越えられなかった白タク規制と民泊事業―
まずは「事業を行うことについての許認可」の例を見ていきます。
たとえば、米配車大手ウーバー・テクノロジーズの日本法人が、日本でライドシェア事業の実験を行っていたところ、道路運送法に抵触する可能性が高いということで、国土交通省から中止の行政指導を受けた事例があります。道路運送法では「他人の需要に応じて有償で自動車を使用して旅客を運送する事業」は許可が必要で、いわゆる白タク行為が禁止されています。実験では、利用者が支払う利用料は無料ということでしたが、データ提供などの対価として、会社からドライバーに金銭の支払いがあったことなどから、事実上有償であり、白タク行為に該当すると判断されたようです。

事業の許認可というと、銀行、証券、貸金、保険などの業種ではイメージがつきやすいですが、新しいビジネスでは、どの法律に抵触するかを、即座に判断できないようなケースが多くあります。
ヘルスケア関連ビジネスによる、運動指導、栄養指導、検査等(医師法・薬機法・臨床検査技師等法など)
決済アプリなど(資金決済法など)

また、すでに存在する法規制への抵触だけでなく、新たに法規制が定められるケースもあります。
仮想通貨の交換業などは、当初は規制がありませんでしたが、事業開始後に法律ができ、許認可ビジネスとなりました。許認可の取得に対応するための管理体制が必要となり、コストがふくらみ、事業計画が下振れしてしまうということが、例として挙げられます。また、民泊事業で、住宅宿泊事業法が規定され、年間の提供日数が180日(泊)までと制限されるなど、売上減少に直結するような規制が定められることもあります。

◆ 自社のビジネスが法務上問題ないことを把握するには?
では、自社のビジネスに関する法規制を、把握するにはどうしたらいいでしょうか。以下のような方法が考えられます。
1. 同業他社の有価証券報告書(「事業等のリスク」に、関連する法規制の記載がある場合が多い)
2. 監督官庁のHP等での情報収集(最新法令情報、パブリックコメント、Q&Aなど)
3. 業界団体への加入、勉強会への参加
4. 弁護士事務所への相談

新しいビジネスモデルなどでは、弁護士事務所を通じて、「法令適用事前確認手続」や「グレーゾーン解消制度」などを利用し、監督官庁に照会を行うことができます。過去に法令適用事前確認手続がとられた例として、「家賃保証事業が、保険業に該当するかどうかを照会する」といった事例がありました。
また、過去にそのような手続きが行われた事例については、公開されているものもあるため、類似のケースがあれば、自社での調査に利用できます。こういった国の制度を利用するにあたっては、「このビジネスが何らかの法規制に抵触していないか?」といった漠然とした確認ではなく、「○○法○条の○という解釈に抵触していないか」など、具体的な法規制を示したうえ、会社側の見解(「~~という理由により、当該法律にはあたらないと考えています。」など)も提示する必要があるため、弁護士との連携も重要です。

◆見逃しがちな、事業に付随する領域の法規制とは?景品表示法、下請法etc・・・
また、事業に付随する法規制が審査で問題になるケースも増えています。多くの企業が関係する、事業に付随する法規制には以下のようなものがあります。

景品表示法
景品表示法は、広告やWebサイト上における表現に関する、「不当表示の禁止」が、幅広い会社に関係します。無根拠に「業界No.1」と謳ってしまう、本当はいつも同じ価格のものを「今だけ特別価格」と表現するような例があります。

下請法
親事業者による下請事業者に対する優越的地位の濫用行為の取締を目的とした法律です。
アプリなどの製造委託を行っている場合、規制に抵触していないか注意が必要です。大企業が下請けに無理を強いないための法律というイメージがありますが、資本金規模によって適用の対象となるかどうかが変わるため、増資などで資本金が増え、気づかぬうちに親事業者に該当しているケースがあります。

個人情報保護法
このほか、顧客情報などの個人情報を管理する場合、取り扱う個人情報の件数や、企業規模にかかわらず、個人情報保護法を順守する必要があります。

これらの、事業に付随する法規制は、本業に直結しない部分であり、自社リソースでの対応は限界がある場合もあります。しかし、万が一抵触してしまった場合に負うリスクは甚大です。弁護士事務所などに外部委託をすることも選択肢として検討するとよいでしょう。

◆内容を精査しないまま契約を締結してしまうと、取り返しがつかない事態に。
IPO審査においては、会社が締結している契約についても、審査の対象となります。契約は、一度締結すると、相手方の承諾がない限り変更ができないため、適切ではない契約を締結してしまうと、長期的にビジネスに影響が出ることがあります。
たとえば、自社のビジネスの根幹をなす技術に関してライセンスを受けている場合において、当該ライセンス契約が権利者によりいつでも中途解約できることになっていたり、他社からアプリ等の開発受託をした請負契約において、莫大な違約金条項がある場合など、事業の継続性に疑義が生じます。
また、資金調達時に、VCから提示された契約書をそのまま締結してしまい、事前承認事項や取締役の指名権など必要以上の関与を許し、会社経営の自由を損なう恐れがあります。
事業が拡大する成長期には、様々な企業と契約を締結することが多くあります。確認を怠ると、自社にとって不利な契約を結んでしてしまうことや、社内で利用した契約書のひな形が社内で独り歩きし、内容について検討することなく利用されてしまう危険があります。個人向けのサービスにおける、利用規約なども含め、事業が大幅に拡大する前にリーガルチェックを行っておくことがよいでしょう。


◆その他のテーマ
◇会社法
・利益相反取引とは具体的にどのようなもの?
・他社のM&A時に、価格を自由に決めてもOK?
・過去の決算書類に誤りがあった場合の対処法は?

◇知財戦略・管理
・特許化するか、ノウハウ化するかはどのように判断?
・FTO調査の手法

◇反社会的勢力
・反社会的勢力の排除のための体制はどのように整備すればいいか?
・反社会的勢力チェックはどこまで必要?金額の小さい取引先などは?

◆アンケートには以下のようなご感想が寄せられていました。
・法務面で注意が必要な点を、全体的に理解できた。
・あまり手が回っていない、知財関連の話が参考になった。
・契約書の整備をすぐにしなくてはいけないと感じた。

◆ 高野氏によるコラムはこちら
・上場審査における法務面での問題点 審査で問われる「事業の継続性及び収益性」

・上場審査における法務面での問題点 「企業のコーポレート・ガバナンス及び内部管理体制の有効性」
講師紹介
TMI総合法律事務所<br>パートナー弁護士<br>高野 大滋郎氏
TMI総合法律事務所
パートナー弁護士
高野 大滋郎氏
2005年弁護士登録。2015年ニューヨーク州弁護士資格を取得。主な取扱分野は訴訟、上場会社法務、IPO、事業再生等。現在、大手証券会社の引受審査部門に対して法的アドバイスを提供するほか、上場申請会社の法務顧問を務めるなど、IPO実務に従事している。
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著書「この1冊ですべてがわかる 経営者のためのIPOバイブル 第2版」(中央経済社)

監査法人内研修でも活用される、プロが認めたIPO指南書。
株式公開を行うために必要となる前提知識・資本政策・人員体制・ IPO準備で絶対にやってはいけないことまで、Q&Aで優しく解説。
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※掲載している情報は記事更新時点のものです。
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