上場審査における法務面での問題点
「企業のコーポレート・ガバナンス及び内部管理体制の有効性」

IPOコラム 第10回

第9回「」

  • TMI総合法律事務所 パートナー弁護士 高野 大滋郎氏

    2005年弁護士登録。2015年ニューヨーク州弁護士資格を取得。主な取扱分野は訴訟、上場会社法務、IPO、事業再生等。現在、大手証券会社の引受審査部門に対して法的アドバイスを提供するほか、上場申請会社の法務顧問を務めるなど、IPO実務に従事している。
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IPO Compassコラム「法務2」


<ポイント>企業のコーポレート・ガバナンス及び内部管理体制の有効性を満たすには?

  • ・法令違反や不祥事が起きないような体制づくり
  • ・反社会的勢力を排除する仕組みづくり

  •  企業がIPOを実現するためには、主幹事証券会社による引受審査、取引所による公開審査を受ける必要があります。IPO準備会社は、これらの上場審査において法務面での問題がIPOの足枷にならないよう、多岐に亘り準備段階から自社の問題点をあらかじめ把握し、適切な対応を取っておくことが必要です。
     今回のコラムも前回に引き続き法務における審査上の注意点をTMI総合法律事務所 高野氏に解説いただきます。

    -IPOを実現するための法務上のポイントは?

    多岐にわたる上場審査の基準の中に「企業のコーポレート・ガバナンス及び内部管理体制の有効性」という項目があります。上場企業においては、コーポレート・ガバナンス及び内部管理体制が適切に整備され、機能していることが求められています。今回のコラムでは、この観点のポイントを2つ解説します。

    -「企業のコーポレート・ガバナンス及び内部管理体制の有効性」を実現するための2つのポイントを教えてください。

     まず一つ目は、法令違反・不祥事が起きないような体制が構築されているかという点です。
     会社が法令違反・不祥事を起こすと、課徴金が課される場合や、重要性によっては業務停止処分がなされる場合もあります。また、これらの処分が公表されれば、レピュテーションの低下により、取引先や顧客が離れてしまうリスクもあります。上場会社であれば、特設注意市場銘柄に指定されたり、最悪の場合は上場廃止となります。
     粉飾決算や、詐欺や背任などの犯罪行為、重加算税を課される脱税行為など、故意的な法令違反・不祥事が発生すれば、IPOは中止または大幅な延期とせざるを得ませんが、法令違反・不祥事は必ずしも故意的なものに限られません。法律を知らないことにより発生してしまうことの方が多いと言えます。

    -「法令違反・不祥事」の典型例はどのようなものでしょうか。

     前回のコラムでご説明した、会社が行っているビジネスに関して必要な監督官庁の許認可を得ていないことも法令違反ですが、よく見るのは、ビジネスの周辺領域の法規制に違反しているケースです。
     典型的な例は、いわゆる「景品表示法」違反の例です。例えば、ECサイトを運営している会社が、「今だけ半額」という宣伝文句を永続的に表示しているとか、メーカー希望価格が設定されていないにもかかわらず「メーカー希望価格の半額」などの表示をしていることは、景品表示法が禁止している不当な二重価格表示に該当するおそれがあります。
     その他、ECサイト上に適切な広告表示をしていない、承諾していない者に電子メール広告を提供するといった特定商取引法に違反する行為をしている可能性もあります。また、インターネット上でプラットフォームを提供している会社であれば、ユーザーや協力会社が他人の著作権を侵害する画像や動画をプラットフォームに上げることにより、間接的に著作権侵害を行っている可能性もあります。
     IPO審査の局面において、このような法令違反が発覚した場合、必ずしも直ちにIPOを中止しなければならないというわけではありませんが、当然、法令違反を解消することが求められるほか、再発防止策を含めた内部管理体制を厳格に確認されることになります。
     成長過程にある会社の場合、自社のリソースですべての規制を把握し、遵守することが難しいことも多いため、弁護士等の外部の専門家を起用し、自社のビジネスモデルに関わる法規制の有無と運用状況のチェックや、役職員に対する研修など、コンプライアンス対策を早期にしておくことも有用と思われます。

    -もう1つのポイントを教えてください。

      二つ目は、反社会的勢力を排除する仕組みづくりができているか、という点です。反社会的勢力の関与は、上場廃止基準に明記されておりますが、IPO審査の局面においても、反社会的勢力の関与は結果責任であり、致命的です。
     自ら反社会的勢力と積極的に接点を持とうとする人は通常おらず、ほとんどは知らないうちに接点ができてしまったというケースです。最も問題が大きいのは、資金調達で増資をする場面です。一度株主になった者を後になって排除するのは極めて困難であるからです。

    -具体的にはどのように体制を整備すればよいでしょうか?

     反社会的勢力排除の体制の整備にあたっては、「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」(平成19年6月19日犯罪対策閣僚会議幹事会申合せ)が実務上、参考にされています。 具体的には、①代表取締役等の経営トップが、反社会的勢力と一切の関係を持たないこと等の基本方針を、企業の行動規範や社内規則等に明記することにより、社内外に宣言すること、②反社会的勢力の対応部署を設置し、反社会的勢力のチェック、情報の一元管理・蓄積や、不当要求があった場合の対応を行い、また、社内研修の実施や対応マニュアルの整備、外部専門機関との連携をすること、③取引先との契約書、取引約款や雇用契約等に、反社会的勢力の排除条項を導入すること等が挙げられます。
     上記②の反社会的勢力のチェックの方法としては、インターネット検索や情報サービス会社の記事検索サービスの利用のほか、場合によっては警察から情報を取得することもあり得ます。
     近年、反社会的勢力排除の要請は高まっており、単に株主や取引先などに反社会的勢力がいないことを確認するにとどまらず、反社会的勢力の排除に向けた社内体制の整備を行うことも必要となっています。そして、前述のとおり、IPO審査の局面において、反社会的勢力の関与は結果責任であるため、単に形式だけを整えるだけでは不十分であり、実際に反社会的勢力を排除することができるよう、しっかりと運用することが重要です。

    以上

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