コロナ禍のマレーシア、現状と今後 ~withコロナ時代の企業体制維持及びガバナンス強化の秘訣~

開催情報
2020年8月7日(金) 13:30~14:30/Web
セミナー概要
コロナ禍のマレーシア。規制と緩和の間で揺れる今とこれからの課題を解説
ASEANの中心、マレーシア。先進国入りを果たすべく「VISION2020」を掲げ、積極的な経済政策を実施してきたところにコロナ禍が襲った。 しかし早い段階からの活動制限令が功を奏し、2020年7月現在はRMCO(Recovery movement control order)へ移行、経済活動を緩やかに再開している。 コロナ禍は収束に向かっているマレーシアだが、見えてきた課題がある。それは現地の大幅な売上減・キャッシュ不足と、コロナ禍で一時帰国させた駐在員が戻れない、内部監査に行くことができないことにより子会社管理体制が一層ブラックボックス化しているという2点だ。 2つの課題を解決し、withコロナ時代の海外ビジネスを成功させるための秘訣は何か?本セミナーでは、マレーシアの状況と今後の企業活動維持手法及びガバナンス強化手法をマレーシア在住のプロフェッショナルが解説する。
セミナー総括
1.マレーシアにおける新型コロナウイルスの状況
2020年3月18日より活動制限令(Movement Control Order:MCO)が敷かれ、全土ロックダウンを実施したマレーシア。ほとんどの商業施設、さらには政府機関の窓口も閉鎖されました。多くの企業は在宅勤務となり、工場も許可を得た一部のみが稼働できる状況でした。

しかし、感染拡大が緩やかになり、5月からは条件付き活動制限令(Conditional MCO)へ移行し、大部分の経済活動が再開されました。6月10日からは回復のための活動制限令(Recovery MCO)に移行し、ほぼすべての経済活動が再開しています(2020年8月28日時点、RMCOは2020年12月31日まで延長が決定)。

落ち着きを取り戻したマレーシアですが、ロックダウンの影響が企業活動に大きな影を落としています。

2020年GDP成長率はマイナス予想、ジェトロの調査によりますと、2020年1月~12月の売り上げ見込みは回答企業の9割が「減少」と答えています。
また、国境をまたぐ移動は相変わらず制限が厳しく、有効な就労ビザを持っていても、政府指定施設での14日間の隔離措置は必須となっています。

マレーシアにおけるコロナウイルスの状況
▲マレーシアにおけるコロナウイルスの状況
2.マレーシア子会社を持つ日系企業からの相談に見る現状と課題
マレーシアに子会社を持つ日系企業は現在どのような状況なのか、当社にいただくお問い合わせ内容から現状と課題を解説します。

まず1つ目は、「補助金や支援策」です。
補助金に関しては政府が早い段階で対応を打ち出しました。
「賃金助成プログラム(WSP: Wage Subsidy Program)」という制度があり、これは業種を問わず受けることが可能です。
雇用継続が目的であり、解雇や賃金カットをしないことの要件を満たすことで、月額給与がRM4,000以下のマレーシア人スタッフに最大6か月支給されます。
すでに申請している企業に補助金の交付が始まっていますので対応もスピーディと言えます。WPSは日系企業も活用することができます。

件数の多い問い合わせ「補助金や支援策の内容」
▲件数の多い問い合わせ「補助金や支援策の内容」

マレーシア政府は、経済活性化のための景気刺激策を複数打ち出しています。
まず法人税ですが、損金算入できる対象項目が増えています。
通常は売り上げに結びつかない費用は損金算入が認められていませんでしたが、コロナ関連費用を含めて良いことになりました。
また、国内建設重要促進のため、オフィスの改修・改装費用もRM300,000までの税額控除が認められています。
その他、ICT機器等の固定資産における購入時の加速償却や2020年7月~12月に設立した中小法人に対する年間RM20,000までの法人税還付(3賦課年度の間に限る)が認められています(中小法人とは親会社も含む資本金RM2,500,000の企業)。

2つ目は「新規進出・駐在の時期」です。
まず新規進出に伴う設立ですが、現在も可能です。
元々マレーシアは設立時に、株主または取締役がマレーシアに入国する必要はありません。
また銀行口座の開設も、日系の銀行であれば基本的に可能です。ローカルの銀行口座は、新型コロナウイルスに関係なく、年々開設が難しくなっているので、駐在員の方が就労ビザを取得後に開設することが多いです。

就労許可の新規申請及び更新手続きは可能で、ビザの発給も通常より時間はかかりますが、可能です。
ただし実際に入国する際には、14日間の隔離措置、PCR検査等が条件となっています。
また、一時的に駐在員の方が帰国されている場合、日本とマレーシアでの二重課税が生じる場合があるので注意してください。
一時帰国中の給与所得は基本的にマレーシアで課税対象となりますが、留守宅手当など日本本社が駐在員の給与を一部負担している場合、日本でも課税されることがあります。
二重課税となった場合、マレーシアで外国税額控除適用を受けられるか検討が必要です。

3つ目は「賃金カット、就業規則変更」です。
コロナ禍により固定費の削減として、解雇などを検討される場合は十分な注意が必要です。
マレーシアは労務リスクが非常に高い国で、従業員は日本でいうところの労基署にすぐに相談に行きます。そして訴えられることも多々あります。
まずは雇用維持のためにできる限りの努力をし、やむを得ず解雇などを行う場合にも必ず合意をしてもらい、なおかつその内容を書面で残しておくことが肝要です。

4つ目は「撤退、再編の検討」です。
会社の清算には通常2年程度かかります。特にタックスクリアランスの手続きに1年以上の期間を要することが一般的です
コロナ禍で政府の税収が減る中、清算する外資企業からは税金を徴収する最後のチャンスとも言えますので、税務当局から厳しい税務調査が入ることが予想されます。
あらかじめ税務面で問題がないか、税務コンサルなどに入ってもらいヘルスチェックをすることをおすすめします。

清算は上述の通り時間がかかりますが、株式譲渡であれば手間とコストがかなり削減できます。譲渡時のキャピタルゲインは非課税ですし、資本再編しやすいということで税制的にメリットが大きいです。

5つ目は「海外子会社決算」です。
渡航制限により、本社から出張により対応ができない、必要な情報がタイムリーにあがってこない、現地担当者とコミュニケーションが取れない等のご相談が増えています。
渡航できない状況はまだしばらく続きますので、管理業務をアウトソースすることやセカンドオピニオンの取得・スキル不足の現地担当者のバックアップなど、専門家の支援も有効です。

上記、5つのお問い合わせから、マレーシア子会社と日本本社が抱える2つの課題が見えてきます。

①キャッシュや売り上げの課題
②グループ管理の課題

不確実性が高まる中で生産性の向上が見直されています。
自社のリソースは本業で最大限活用し、管理業務などの外部でもできる業務はアウトソースして経費を削減する、というように、リソースのバランスをとって生産性を向上させることが、これからの子会社管理に求められています。
3.新型コロナウイルスがもたらす環境変化にどう対応すべきか
先ほどマレーシア子会社を持つ日系企業からのご相談を5つ紹介しました。
それらに加えて、全世界から寄せられるご相談事項に「内部監査等ガバナンス維持施策」と「2020年3月期決算及び記帳業務の遅延」という2点があります。
コロナ禍により、グループガバナンスは機能せず、さらに2020年3月期決算で、海外子会社を持つ日本企業は世界的に見ても決算が大幅に遅延したというデータも出ており、グループガバナンス体制と決算体制の確立は急務です。

厳しい状況の中、日本本社は改めて「生産性の向上(≒コスト削減)」に目を向け始めています。そしてそのための手段として以下の2つが注目されています。

1.外部リソースの活用(アウトソーシング)
2.ボーダレスな情報基盤の整備(DX:デジタルトランスフォーメーション)

生産性向上のためのリストラクチャリングは、今が好機と考えている企業が多いことがわかります。
4.マレーシア現地法人清算アウトソース事例
生産性向上の1つ目の手段であるアウトソースを活用した事例を紹介します。

マレーシアにおける清算には約2年という長い期間がかかります。また、コロナ禍で一層厳しい税務調査が入る可能性があること、清算人を選任し、清算が始まれば清算会社の従業員が現地にいる必要はなくアウトソースが一般的であること、などから当社が清算業務のアウトソースを請け負いました。

アウトソースの結果、人件費・管理費等のコスト削減、追徴リスクの低減、社内リソースの有効活用など多くの効果を感じていただくことができ、清算業務も無事に完了しました。(まだ清算中であれば、清算業務も着々と進んでいます、などに変更。★)

清算業務は、担当する従業員の方がモチベーションを保つことが難しいという事情もあるため、アウトソースに適した業務と言えます。

アウトソーシング事例:マレーシア現法清算
▲アウトソーシング事例:マレーシア現法清算
5.駐在員を置かずに進出を果たしたバーチャル駐在員事例
インド進出を検討している企業がありましたが、駐在人材のめどがつかず、資金的な余裕もインドでの事業ノウハウもありませんでした。
そこで、当社のバーチャル駐在員サービスを活用していただくことになりました。

現地には駐在員をおかず、管理業務はアウトソースで当社が対応、営業活動・情報収集等は日本から出張いただくことやオンラインで対応され、少ない資金でも進出に成功することができました。

現地に駐在員を派遣するには、人件費以外にもオフィス費用や家賃等固定費がかなりかかります(国によっては数千万かかることも)。また、現在インドは新型コロナウイルス感染拡大に歯止めがかからず、駐在員が帰国したまま戻れていない状況が続いています。
現地での業務をアウトソースすることによるコスト削減効果は、コロナ禍の今は平時以上に大きいと言えます。

アウトソーシング事例:バーチャル駐在員
▲子会社情報のボーダレス・リアルタイムの把握・可視化はもはや必然。
6.ボーダレスな情報基盤の整備、クラウド会計システム導入事例
コロナ禍で人の移動が制限される中、世界的にクラウドを活用したボーダレスな情報基盤を整備する流れが加速しています。
たとえば当社が導入支援をしている「勘定奉行クラウドGlobal Edition」で情報基盤を整備した事例があります。

・グループ全体のキャッシュの可視化を実現(中国、アメリカ、ドイツ、マレーシアなど全世界10か国以上展開)
-全世界の現預金及び債権回収状況の可視化に成功。
-債権回収に課題のある子会社を把握し、早期の対策を講じられるように。

・自動翻訳機能で会計情報の詳細把握を実現(ベトナム)
 -解読困難なベトナム語の摘要欄が自動翻訳され、会計データ詳細の把握に成功。
 -現地税務基準と日本基準との差異が把握でき、正確な連結決算に貢献。


その他、勘定奉行クラウドGlobal Editionの特長は以下の5点です。

①日本語で直接レポーティング
日本語以外の言語が読める方は多いですが、やはり日本語のレポートが一番わかりやすいことに間違いありません。
②多彩な管理軸
自社に適した管理軸でのレポート出力により、分析が容易に。
③直感的でわかりやすいGUI
現地スタッフも直感的に利用。日本以外でも受け入れられる優れたインターフェース。
④拡張性
日本本社が利用する連結会計システムとの連動機能によりスムーズな連結決算を実現。
⑤セキュリティ
Microsoft Azureを採用した安心・安全のセキュリティ。
⑥短期間で導入
数年・数億円かけて導入していた海外子会社用システムが数週間で導入可能に。

勘定奉行クラウドGlobal Edition導入効果
▲勘定奉行クラウドGlobal Edition導入効果

生産性の向上という目的を果たすために、アウトソースとボーダレスな情報基盤の整備の2つの手段をご紹介しました。人の移動が制限される中、この2つの手段は必須です。
今こそ生産性を向上させ、海外を含めた筋肉質な組織を作る絶好のチャンスなのではないでしょうか。
※本セミナーの内容は2020年8月7日時点の情報です。最新情報はフェアコンサルティングにご確認ください。

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フェアコンサルティング マレーシア ダイレクター/日本国税理士 青木 貴宣氏
フェアコンサルティング マレーシア ダイレクター/日本国税理士 青木 貴宣氏
中堅会計事務所にてオーナー企業や中小企業の月次・年次決算、会社法計算書類・税務申告書の作成といった経理業務全般に従事。 その後、新日本アーンストアンドヤング税理士法人にて、主に上場企業と外資系企業の税務申告業務や税務アドバイザリー業務に従事し、国内・国際税務、組織再編税制、連結納税などの幅広い分野での税務業務を担当した。 これらの経験と税務・会計の知識を活かして、現在は、日系企業が海外進出する際の様々な問題を解決するためのコンサルティング(タックスヘイブン税制、移転価格税制、組織再編税制などの税務・会計アドバイザリー)業務を行っている。
株式会社フェアコンサルティング 玉村 健氏
株式会社フェアコンサルティング 玉村 健氏
大手外資系コンサルティングファームを経て、日本トップシェアの連結会計システムベンダーで製品企画や中西日本地域コンサルティング部門責任者として従事。 フェアコンサルティングでは、日本企業にグローバルソリューションを提案する部門の責任者を務めるとともに、 システムソリューション事業責任者としてグループマネジメントシステムやクラウド型グローバル会計システムのソリューション提供を行っている。
※掲載している情報は記事更新時点のものです。
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