IPO準備における内部監査

2020年9月24日
セミナー概要
新型コロナウイルスの影響により、テレワークの導入など多くの企業が運用面の変更を実施しました。 内部監査に関してもその影響を大きく受け、監査手法や実施状況は大きく変わりつつあります。
本セミナーでは、IPOで求められる内部監査の基本とともに、コロナ禍における内部監査のポイントを解説しました。 (セミナー案内状ダウンロード
セミナー総括

1.内部監査の役割

内部監査と聞くと、「社内の問題点をチェックし、指摘する。」というイメージがありますが、内部監査の役割はそれだけではありません。
日本内部監査協会の規程に、「当社の経営目標の達成に役立つことを目的とする。」とあるように、 内部監査の役割は、「経営目標の達成に寄与すること」です。

つまり、経営全体を見て、業務が規程どおり進められているか、ボトルネックになっているものがあれば、 どのように改善するのか、改善策として、具体的な代替案を会社に提案することが求められるのです。

>> 内部監査の年間スケジュール、監査人選定方法など内部監査の基本はこちらのコラムでチェック!

2.WithコロナAfterコロナの内部監査

新型コロナウイルスをきっかけに、業態や実務の運用が変わった企業も多くありますが、 内部監査も同様に、新型コロナウイルスの影響を大きく受けています。

内部監査協会が2020年5月に実施したアンケート (新型コロナウイルス感染症の内部監査への影響に関するアンケート調査)では、 個別・年度の監査計画を見直した、監査の手法を見直したという回答が全体の半数以上を占めました。
テレワーク化によって、現地への訪問や実査ができず、Webのミーティングに切り替える等したことにより、 監査計画の見直しが必要になった企業が多かったと考えられます。

新型コロナウイルスの内部監査への影響
※グラフは、一般社団法人日本内部監査協会「新型コロナウイルス感染症の内部監査への影響に関するアンケート調査 結果」より抜粋

また、監査計画にどのような影響があったかについても、 「いくつかの監査について、実施困難あるいは監査範囲の縮小を迫られている。」と回答された企業が7割弱と、 従来のやり方では監査がしにくくなっていると言えます。
もしもテレワークの導入等で自社DX化が進んでいるならば、内部監査もそれに合わせて変わっていく必要があり、 内部監査室として、このコロナ禍でどのように監査を実施していくかを考えていく必要があるのです。

新型コロナウイルスの内部監査への影響
※グラフは、一般社団法人日本内部監査協会「新型コロナウイルス感染症の内部監査への影響に関するアンケート調査 結果」より抜粋

内部監査そのものをリモートで行う「リモート監査」については、コロナ禍以前から実施していた企業は15%程度ですが、 新型コロナウイルスをきっかけに実施した企業は約4割に上りました。
リモート監査では、メールの他、ZoomなどのWeb会議ツールを使用することも一般的になりつつあり、 アンケート実施時点の2020年5月では、半分の企業がリモート監査を実施していますが、 2020年9月現在は、さらにリモート監査の割合は伸びていると考えられます。

新型コロナウイルスの内部監査への影響
※グラフは、一般社団法人日本内部監査協会「新型コロナウイルス感染症の内部監査への影響に関するアンケート調査 結果」より抜粋

元ボストン・コンサルティング・グループ日本代表の内田和成氏は、『「技術革新」「構造変化」「心理的変化」の3つが揃うと イノベーションが起きる。』と提言しています。 そして、業種・業態が移り変わるコロナ禍は、まさにこの3つが揃っている状況と言えます。
コロナ禍で内部監査が今までと同様には実施できないということをネガティブに受け止めるのではなく、 監査手法を変えることをイノベーションのきっかけとして考え、どのようにすれば内部監査が実施しやすくなるのか、 どういったシステムを構築すればより適切な業務の運用ができるのかをリードしていくことが、コロナ禍の内部監査部門に求められる力 ではないでしょうか。
常に世の中の情報をキャッチアップするとともに、内部監査に必要な教育プログラムも準備された方が良いかと思います。

3.テレワーク形態導入による監査時の注意点

テレワーク形態導入による監査時の注意点としてよく言われるものは、以下の5点です。
(1)セキュリティ対策
(2)労務管理
(3)コミュニケーションツール
(4)承認システム
(5)情報共有システムの利用

(1)セキュリティ対策
セキュリティ対策では、「使用している端末の管理方法」が、最も重要です。
盗難・紛失が発生した際のオペレーションが、適切に整備・運用されているか、パスワード管理やウイルス対策が実施されているかという、 MDM(モバイル端末管理)の観点でチェックしましょう。
また、会社サーバーへのアクセスにあたって、VPN環境が構築できているか、 構築したVPN環境が実際の運用に耐えるレベルのものかという点にも注意しましょう。
セキュリティポリシーも、定められているかどうかはもちろん、 現代で求められるレベルで定められているかどうかも見直すことをおすすめします。

(2)労務管理
テレワークでは、仕事とプライベートのメリハリがつかないのでは、という懸念が多く見受けられます。 出社時と比べて業務にかける時間が長くなりすぎていないか、仕事しづらい環境に置かれていないかといった労務管理の面もチェックしておく必要があります。

(3)コミュニケーションツール
テレワーク導入等により、直接対話の代わりに、いわゆるチャットといったツールの運用を始めた企業も多いかと思います。全社的に活用できているか、本来の目的について効率的に活用できているかがポイントになります。

(4)承認システム
テレワークで出社しなくなったことにより、これまでの紙・判子での承認から、システムによる承認へ切り替えるケースもあります。稟議システムなどの承認システムにおいて、承認フローが正しく整備・運用されているかチェックしましょう。

(5)情報共有システムの利用
対面の機会が少ないテレワークでは、全社的な連絡は情報共有システムを活用することが有効です。ポータルなどを利用されている場合は、目的に沿って正しく運用されているかチェックしましょう。また、各社員のIDに対して正しく権限が付与されているか、退職した社員のIDがそのまま残っていないかなど、ツールが正しく運用されているかチェックしましょう。

4.海外拠点の内部監査の実現方法

コロナ禍における海外拠点監査をどう実現するかは、業種・業態にもよりますが、非常に難しい問題です。 まずは、経理・売上システムの運用状況がどうなっているのか、本社と連結されているのか、 完全に分離しているかを確認し、その上で、ガバナンス体制がどのようになっているのか (現地スタッフのみなのか、本国からコントロールする人が派遣されているのか等)を鑑みて、監査として、どこまで実現すべきかのレベルを精査しましょう。

監査方法としては、基本的にはWebでの監査がベースになると考えられます。
例えば、製造工場であれば、在庫の状況や工場の稼働状況、保管物の取扱などは現地の人にパソコンを持ってもらい、 工場内をウォークスルーして実査するといった手段で代替するといった方法です。

また、海外拠点の役割と、経営上のリスクとを鑑みたときに、内部統制上重要性が低いと考えられるのであれば、 ある程度内部監査方法が簡略化できる可能性もあります。
反対に、海外拠点の重要性によっては、主幹事証券会社等から厳正な内部監査が求められる可能性もありますので、 その場合は現地のプロバイダ・外部委託業者を活用することも視野に入れましょう。

上記の例のような代替手法はあっても、海外拠点の監査は国内の監査よりも、さらにハードルが高くなると予想されます。
まずは、海外拠点の監査の重要性を精査し、監査できる内容の限界を確認した上で、 代わりにどのように対応するかを経営陣・監査法人・会計監査人・監査役等と相談し、今期実施できる現実的な監査レベルを決定していきましょう。

5.まとめ

内部監査は担当者に業務知識や監査スキルが求められることから、人的リソース不足に悩み、アウトソーシングを検討する企業が増えています。内部監査をアウトソーシングしてIPOを果たした企業は何社もありますので、社内で賄うことが難しい場合は、アウトソーシングを活用する事も有効です。

アウトソーシングするかどうかの判断基準としては、業種・業態の専門性の高さ、企業規模(監査対象となる拠点の数等)があります。自社で求められる監査スキルや、短期間で、どの程度監査を実施できるかを考えて検討しましょう。
アウトソーシングをする場合は、専任でなくてもよいので、 内部監査担当者は社内に必ず立てるようにしてください。担当者が内部監査の報告・実査に立ち会い、 その結果を、社内・監査法人・監査役にレポーティングできる体制があるということが重要です。

コロナ禍であっても、内部監査部門に求められることは、「経営目標の達成に寄与する。」から変わることはありません。
自社の業種・業態を鑑みて、どこまでの内部監査が求められるのか、それが今までの手法で達成できるのか、できなければどう対応するのかを、経営陣を巻き込んで検討・決定していきましょう。

セミナーでは、上記の他、お客様からいただいたご質問にも回答しました。
Q.内部監査担当者に求められるスキルとは?
Q.スキルアップのための勉強方法は?
Q.具体的な監査手法や監査項目は、どのようにして決めたらよいか?
Q.海外子会社に関して、リモート監査を検討しているが、実施のノウハウがなく、他社事例も見つけられない。どのように実施すべきか?
Q.海外子会社が複数あるが、内部監査の実施レベルをどう分けたらよいか?

【関連コラム】IPOにおける内部監査の「はじめの1歩」
【関連セミナーレポート】効果的な内部監査の実施方法とは?講師・丹羽氏の内部監査セミナーレポート

株式会社タスク
講師紹介
株式会社タスク コンサルタント 丹羽 悠木氏
株式会社タスク コンサルタント 丹羽 悠木氏
早稲田大学大学院商学研究科ビジネス専攻終了(MBA)。
事業会社にて、IPO推進及び内部監査室の立ち上げを経て、2018年3月にタスクに参画。
以降、内部監査支援コンサルティング、上場申請書類作成コンサルティングに従事。
株式会社タスク ホームページ

IPO Forum ネットワークとは

IPOを目指す経営者や企業をワンストップでサポートする、IPOの専門家によるネットワーク組織。
2014年発足。 事業計画書作成支援、内部統制構築支援などの実務サポートのほか、 IPOの審査トレンドを解説する「IPO Forum」を半期に1度開催し、 資本政策、労務管理など、IPOに必須の論点を解説する「IPO塾」を年間を通して開催している。 メンバーによるコラムも定評がある。


【IPO Forumネットワークメンバー】
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IPO Forumネットワーク紹介資料

著書:「この1冊ですべてがわかる 経営者のためのIPOバイブル」(中央経済社)

監査法人内研修でも活用される、プロが認めたIPO指南書。
株式公開を行うために必要となる前提知識・資本政策・人員体制・ IPO準備で絶対にやってはいけないことまで、Q&Aで優しく解説。
中央経済社・ビジネス専門書オンライン

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