IPO実現までのスケジュール

よくIPO準備に関する本には、IPO準備をスタートしてから少なくとも2年半から3年の期間がかかる、と記載されていますが、なぜIPOを実現するためには、少なくとも2年半から3年の期間を必要とするのでしょうか?経営者がIPO実現までのスケジュールを考えるにあたって、最低限必要な期間や押さえるべきポイントなどについてお話しします。
2017年1月
POINT
・IPO準備のスタートは、「監査法人によるショート・レビュー」と「資本政策」で切ろう!
・IPOはゴールではなく、「企業成長を加速させるための期間」と捉えよう
 よくIPO準備に関する本には、IPO準備をスタートしてから少なくとも2年半から3年の期間がかかる、と記載されていますが、 なぜIPOを実現するためには、少なくとも2年半から3年の期間を必要とするのでしょうか? 本コラムでは、経営者がIPO実現までのスケジュールを考えるにあたって、最低限必要な期間や押さえるべきポイントなどについて話をしたいと思います。
1.IPO実現までには少なくとも2年半から3年の準備期間が必要
IPO実現のためのスケジュール

 IPOの準備期間を考えるにあたって、絶対に忘れてはならないのが、監査法人によるIPO直前2期間の会計監査です (上図A。IPO直前2期間のことを、通常「直前期」「直前々期」、IPOする期を「申請期」といいます)。 IPOの要件として上場審査基準上求められており、特に最近では、遡及監査(過去に遡って監査を行うこと)が認められていませんので、会計監査の期間や上場審査の期間を考えると、最低2年半から3年の期間は必要になってきます。

 また、上場審査や主幹事証券の審査では、上場会社としてふさわしい管理体制が構築され、その体制が1年間運用されていることを確認するため(上図B)、少なくともIPO直前1年間は運用期間として必要であり、その管理体制の構築期間を考えると、やはり少なくとも2年半から3年の準備期間は必要となってきます。

 では、IPOを思い立ったら、最初に何から手をつけるのがいいでしょうか?一般的には、まず監査法人によるショート・レビュー(上図C)を受けることからその準備が始まります。 ショート・レビューでは、IPOに向けた課題の洗い出しを短期間で行うため、会社の現状がわかるとともに、IPOまでに何をしなければならないのか、そのロードマップが見えてきます。 また、通常はショート・レビューで明らかになった課題に対して、その属性ごとにプロジェクトチームを横断的に立ち上げ、解決案やスケジュールを検討することになるので、効率的に準備を行うためには、IPO準備のスタート時点で受けることが望ましいです。
2.2年半から3年間、準備をすればIPOできるのか?
 前項では、IPO実現のためには、少なくとも2年半から3年の準備期間が必要、と話をしてきましたが、その期間しっかりと準備さえすれば、IPOは実現するのでしょうか?答えはノーです。 一般投資家に皆さんの会社の株を買ってもらうためには、魅力的な会社だと感じてもらう必要があり、一定の企業価値(時価総額)と、そのベースとなる業績がなければなりません。 詳細はまた別の機会にでも話をしたいと思いますが、IPOを実現するためには、一般的に時価総額が20億~30億となるような業績が必要であり、 その業績は、『時価総額=申請期の税引後利益×PER(株価収益率)×IPOディスカウント(70%~80%)』という算式から求めることができます。 PERは業種やビジネスモデルによって異なりますが、今時点のマーケット平均が約15倍ですので、平均値で計算すれば、申請期の税引後利益が2億になれば、IPOの実現性が高まる、ということになります。

 つまり、IPOを実現するためには、少なくとも時価総額が20億~30億となるような業績がいつ達成できるのか、といった観点から逆算して考える必要もある、ということなのです。
3.IPO実現までのスケジュールにおいて、経営者として押さえるべきポイントは?
 IPO実現までには、少なくとも2年半から3年、という決して短くない準備期間が必要となりますが、経営者個人としては、いち早く資本政策を押えることが、非常に重要であると考えます(図D)。 先ほど私は、IPO準備はショート・レビューからスタートする、と話をしましたが、これは会社としての準備の話しになります。 経営者個人として最も大事なのは、資本政策(株主構成や資金調達、創業者利潤など)をいかに考えるか、なのです。

 資本政策は、一度決めてしまうと後戻りできません。 適切な時期に適切な資本政策を組まないと、経営者個人に多額の税金がかかったり、経営権が不安定になることもあります。 そのため、経営者がIPOを思い立ったら、いち早く資本政策をどうするか、をまず考えることこそが、IPOを成功させる大切な一歩となります。(資本政策については、関連コラムをご覧ください!)

 また、IPOのトレンドは常に変化している、という点も押えてほしいポイントです。 私はIPO関係の仕事をはじめてかれこれ17年たちますが、その間、IPOのトレンドが振り子のように大きく変化を繰り返しているのを実感しています。 現在の審査のポイントは、2,3年前ではそこまで言われていなかった経営者周りの話しや予実管理の話しに大きく焦点があたり、監査法人や証券会社の対応も、2,3年前とは大きく変わってきています。 そのため、IPO準備をスタートした時点では当たり前だった話が、IPO直前では通用しなくなっている可能性もあります。 だからこそ、これまでの常識や情報のみで準備を進めるのではなく、そのトレンドが常に変化していることを念頭において準備を進めることが重要になります。

 そして、IPOを考える上で間違ってはいけないのは、IPOありき(IPOゴール)にならないこと、IPOありきのスケジュールにならないこと、です。 IPOはあくまで企業成長のためのツールのひとつであり、通過点の一つにすぎません。企業成長のためには何が必要なのか、 上場会社としてその成長を加速するためには何が必要なのか、を常に考え、軸足をおいて準備を進めることが肝要かと考えます。

 IPO準備の項目(上場審査の項目)には、IPOするためにはクリアしなければならない項目もありますが、その多くは、IPOする、しないにかかわらず、企業成長のためには必要な項目ばかりです。 IPO実現までのスケジュールを、単なるIPO準備の期間、と考えるのではなく、IPOを実現し、企業成長を加速させるための期間、ととらえられれば、その準備期間や準備の内容も意味あるものとなり、成功への道へとつながるのではないでしょうか。
関連コラム
資本政策とは事業計画を達成するための資金調達及び株主構成計画をいいます。「資本政策に重要である“3要素”をどの程度見込むのか?」がにキモになります。この3つの要素をくわしくご説明いたします。
資本政策①「基礎知識編」
2017年1月
IPO準備企業の多くが導入するストックオプションについて、失敗しやすい実務上のポイントやより効果的な使い方を中心に解説します。
資本政策②「ストックオプション編」
2017年1月
近年非常に増えている資産管理会社について、「資産管理会社の真の目的とは?」「メリットとスキーム」を中心に解説します。
資本政策③「管理会社編」
2017年1月
執筆
あいわ税理士法人 パートナー/公認会計士/税理士 土屋 憲氏
あいわ税理士法人 パートナー/公認会計士/税理士 土屋 憲氏
1999年より、監査法人業界にて上場会社の監査や株式上場支援業務に従事。金融機関への出向なども経験し、2015年にあいわ税理士法人に入所し現在に至る。株式上場に関連するセミナー講師多数。「株式上場マニュアル」(税務研究会)、「ケーススタディ・データ分析による資本政策の実務」(税務研究会)などを執筆。
あいわ税理士法人 ホームページ
コラム一覧に戻る
開催中の無料セミナー
IPO Forumフォローセミナー「IPO後を見据えての内部統制構築・運用①」
東京
東京
IPO Forumフォローセミナー「IPO後を見据えての内部統制構築・運用①」
2019年6月6日 14:00~16:00
IPO Forumフォローセミナー「IPO後を見据えての内部統制構築・運用②」
東京
東京
IPO Forumフォローセミナー「IPO後を見据えての内部統制構築・運用②」
2019年6月13日 14:00~16:00
IPO Forumフォローセミナー「IPO準備における内部監査」
東京
東京
IPO Forumフォローセミナー「IPO準備における内部監査」
2019年6月20日 14:00~16:00
西日本IPO Forumスモールセミナー【全4回】
大阪
大阪
西日本IPO Forumスモールセミナー【全4回】
2019年6月~9月 13:30~17:30
IPO準備企業が抑えておくべき3要素 ~ IPO準備中に起こるヒト、モノ、カネの問題とは ~
東京
東京
IPO準備企業が抑えておくべき3要素 ~ IPO準備中に起こるヒト、モノ、カネの問題とは ~
2019年6月24日 13:30~16:00
IPO Forumフォローセミナー「法務・労務コンプライアンス」
東京
東京
IPO Forumフォローセミナー「法務・労務コンプライアンス」
2019年7月4日 13:30~16:30
IPO Forumフォローセミナー「IPOでこう変わる税務会計から財務会計へ①」
東京
東京
IPO Forumフォローセミナー「IPOでこう変わる税務会計から財務会計へ①」
2019年7月11日 14:00~16:00
IPO Forumフォローセミナー「IPOでこう変わる税務会計から財務会計へ②」
東京
東京
IPO Forumフォローセミナー「IPOでこう変わる税務会計から財務会計へ②」
2019年7月24日 14:00~16:00
人気のコラム
IPOをする市場によって審査基準は異なります。IPO準備段階で自社がどの市場に向いているのか、その市場で自社が成長できるのかという視点で検討してみましょう。
IPOを基礎から学ぼう! 上場審査基準とはどのようなものか?
よくIPO準備に関する本には、IPO準備をスタートしてから少なくとも2年半から3年の期間がかかる、と記載されていますが、なぜIPOを実現するためには、少なくとも2年半から3年の期間を必要とするのでしょうか?経営者がIPO実現までのスケジュールを考えるにあたって、最低限必要な期間や押さえるべきポイントなどについてお話しします。
IPO実現までのスケジュール
近年非常に増えている資産管理会社について、「資産管理会社の真の目的とは?」「メリットとスキーム」を中心に解説します。
資本政策③「管理会社編」
IPO準備企業の多くが導入するストックオプションについて、失敗しやすい実務上のポイントやより効果的な使い方を中心に解説します。
資本政策②「ストックオプション編」
2018年、IPO社数は前年と同数の90社でした。相変わらず活況ではありましたが、審査のさらなる厳格化などIPO準備企業にとって厳しい状況は2019年も続きそうです。2018年を振り返り、2019年の展望を解説します。
IPO 2018年総括と今後の展望

お気軽にご相談ください

自社に合う製品が分からない、導入についての詳細が知りたい… OBCでは専任のスタッフがあなたの疑問にお応えいたします。

ご検討のお客様専用ダイヤル

0120-121-250

10:00〜12:00/13:00〜17:00
(土・日・祝日を除く)