資本政策①「基礎知識編」

POINT
・資本政策は「資金調達」「持株比率」「キャピタルゲイン」のバランスが重要!
・資本政策はとりあえずの「積上げ型」ではなく「逆算型」で!
・まずはIPOイメージを持つことからスタート!
資本政策とは事業計画を達成するための資金調達及び株主構成計画をいいます。「資本政策に重要である“3要素”をどの程度見込むのか?」がにキモになります。この3つの要素をくわしくご説明いたします。
2017年1月

1.資本政策とは?

 資本政策とは事業計画を達成するための資金調達及び株主構成計画をいいます。 具体的には「誰から、どれ位の金額を、いくらの株価で資金調達するのか?」「オーナー(もしくは経営陣)の持株比率をどの程度確保しておくのか?」 「オーナー個人の株式売却による利益(これを「キャピタルゲイン」と言います)をどの程度見込むのか?」が資本政策の重要な3要素になります。 
 この3つの要素を将来にわたってどのようにバランスさせるのかが資本政策のキモになります。 資金調達を重視するのであれば持株比率・キャピタルゲインをある程度抑える必要がありますし、オーナーが過半数の持株比率を確保したいのであれば、資金調達やキャピタルゲインを抑える必要があるわけです。

【図表1】資本政策3つの要素

資本政策3つの要素

 IPO準備企業では、上記3つの要素に加えて「役員・社員へストックオプション(以下「SO」と言います)をどの程度与えるか?」という点も考慮に入れる必要がありますので、より複雑になってきます。

2.資本政策は「逆算型」で!

 「今月中に資金調達が必要なのでとりあえず時価総額1億円の20%で2,000万円調達します!」とか「優秀な人材を採用するためにとりあえずSOを5%発行します!」など、 「とりあえず」で実行するとかなりの確率でその資本政策は失敗します。 IPO準備企業では、まずIPO時の資金調達額やキャピタルゲイン、株主構成のイメージを持ったうえで、そのイメージに向かって「逆算型」で資本政策を立案することが重要です。 「今の20%がIPOでいくらになるのか?」「今5%SOを発行するとIPOまでに他の社員には何%のSOを発行できるのか?」など、IPO時の株主構成や時価総額をイメージしながら事前に検討すべきことはたくさんあります。 資本政策の立案はこのIPOイメージを持つことからはじまります。

3.IPOイメージの作り方

 それでは、IPOイメージの作り方を見ていきましょう。 IPO時の時価総額はざっくりと下記の算式で計算されます(前回のコラム「IPO実現までのスケジュール」でも解説していますので、ご参照ください)。

 IPO時の時価総額=上場申請事業年度の純利益×PER(株価収益率)

 PERはその企業の成長期待度を表すもので、将来に向けてより成長可能性が高いと考えられる企業のPERは高くなります。IPOイメージの段階ではザックリとで構いませんので上場している同業種類似企業のPERを参考にするなどして決めましょう。

 仮にある企業の上場申請年度・の純利益(経常利益ではなく税金支払い後の利益です!)が3億円、PERが20倍だとすると、 その企業の時価総額は3億円×20倍=60億円となり、この時価総額60億円を発行済株式数で割った金額がIPO時の一株当たりの株価(これを「公開価格」と言います)となるわけです。

 この公開価格に上場時に新たに発行する株式数(これを「公募株数」と言います)を掛ければ「資金調達額」が、 上場時にオーナーなどの株主が売却する株式数(これを「売出株数」と言います)を掛ければ「キャピタルゲイン」の想定金額が計算されます (実際には、別途、手数料や税金が控除されます)。またこれらを実行した後の株主構成からオーナー(経営陣)の持株比率のイメージも浮かび上がってきます。 より多く資金調達をするために公募株数を増やしたり、オーナーの持株比率を維持するために売出株数を抑えたり、先ほどの天秤の図にある3つの要素の何を重視するかによって、IPOイメージは大きく変わってきます。

4.押さえておきたいルールとは?

 IPOイメージを作るにあたっては、最低限いくつかの基本的なルールを理解しておく必要があります。ここでは経営者が最低限押さえておきたい資本政策のルールをご紹介します。

・会社の経営権
 会社法上、持株比率(これを会社法では「議決権割合」と言います)によって、株主総会で決定権を持てる議案の範囲が決まります。 下記の表を参考にどの程度の持株比率を確保するのかをイメージしましょう。現時点でオーナーの持株比率がある程度高い場合には、IPO時にオーナーが過半数の持株比率を確保するような資本政策を組むケースが多くなるでしょう。

【図表2】株主総会の決議の種類
株主総会の決議の種類

・上場審査基準
 上場するにあたっては資本政策に関して下記に掲げる上場審査基準をすべて満たす必要があります。 ただし、IPOイメージの段階では「流通株式比率25%以上」だけ意識していれば十分です。 この基準は、簡単に言うと、役員(家族や役員の個人会社を含みます)と10%以上の大株主以外の株主が保有する株式数が発行済株式総数の25%以上となるように公募・売出株数を決める必要があるということです。

【図表3】上場審査基準
上場審査基準

 「資本政策」第1回のポイントは、
・資本政策は「資金調達」「持株比率」「キャピタルゲイン」のバランスが重要!
・資本政策はとりあえずの「積上げ型」ではなく「逆算型」で!
・資本政策はまずはIPOイメージを持つことからスタート!
でした。
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執筆
あいわ税理士法人 代表社員 杉山 康弘氏
あいわ税理士法人 代表社員 杉山 康弘氏
1995年大手会計事務所入社。2000年税理士登録。2005年あいわ税理士法人入社。
現在、上場準備企業への資本政策立案コンサルティングや各種上場準備支援業務に多数従事するほか、M&A関連業務や海外進出企業への税務コンサルティング業務にも精通。
2018年約100社の資本政策立案に関与。
あいわ税理士法人 ホームページ
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