奉行シリーズでIPOを実現:第4回「資本政策② ストックオプション編」

IPOコラム 第4回

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第4回「IPO実現までのスケジュール」

第4回 資本政策②「ストックオプション編」

  • あいわ税理士法人 代表社員 杉山 康弘氏

    1995年大手会計事務所入社。2000年税理士登録。2005年あいわ税理士法人入社。
    現在、上場準備企業への資本政策立案コンサルティングや各種上場準備支援業務に多数従事するほか、M&A関連業務や海外進出企業への税務コンサルティング業務にも精通。
    2015年約100社の資本政策立案に関与。

① ストックオプションとは?

ストックオプション(以下「SO」と言います)とは、あらかじめ定められた「価格」、「数」、「期間内」に株式を購入することができる権利をいいます。SOをもらった社員は、会社が上場した後にSOを権利行使して株式を取得し、その株式を市場等で売却することによって利益を得ることができるというわけです。

【図表1】ストックオプションの仕組み

【図表1】をご覧ください。SOの発行にあたっては、まず「権利行使価格」を設定します。この権利行使価格は、一般的にはそのSO発行時点におけるその会社の株価と同額に設定されます。権利行使価格が100円とは、将来、会社が上場した後に市場でいくらの株価が付いていようと、100円支払うことによってその会社の株式1株を購入することができることを意味します。【図表1】のように株価が190円の時点で権利行使すると、本来は市場で190円支払って購入すべき株式を100円という割安価格で購入できるということになるわけです。その後、仮に株価が200円になった時点で売却したとすると差引100円が利益になるという仕組みです。

ここでのポイントはSOの権利行使価格が「 SO発行時点におけるその会社の株価をベースに設定」される、ということです。株価が安いうちにSOを発行しておくことで、より多くのメリットを得られるわけですから、株価が上がる前の早いタイミングでのSO発行が成功の鍵になります。資金調達のために外部に増資を行うような場合には、増資株価が増資前の何倍、何十倍もの株価になるケースが多々あります。近々増資を予定している場合には、増資前にSOを発行することにより権利行使価格の上昇を回避することでSOのメリットを最大化できる可能性があるのです。

② 税制適格要件に要注意!

SOはもらう側の社員からするとお金の代わりに株式で受け取る給料のようなものですが、同じ給料でもお金と株式とでは実は大きな違いがあります。それは税金です。お金でもらう場合には、いわゆる「累進税率」により最高55%の税金がかかります。しかし株式でもらうSOの場合には、どれだけ多額のSOをもらっても一律約20%の軽減税率で税金の支払いは完了します。お金でもらうと最高「55%」、株式でもらうと「20%」ですから、その差は歴然です。

ただし、ここで注意が必要なのは、無条件に20%の軽減税率が適用されるわけではないということです。軽減税率は税務上の一定要件を満たす「税制適格SO」の場合に限って適用されますので、SO発行にあたってはこの税制適格SOの要件を満たすかどうかの検討が最も重要になってきます。

【図表2】税制適格SOの要件

税制適格ストックオプション
1.付与対象者 ① 自社の取締役または使用人
② 50%(議決権のあるものに限る)超の株式または出資を直接または間接に保有する関係会社の取締役または使用人
③ ①および②の相続人

ただし、上記①、②、③のうち、大口株主および大口株主の特別関係者を除く
・大口株主
当該付与決議のあった日において、上場会社などについては発行済株式総数の10分の1、未公開会社については3分の1を超える数の株式を有している個人をいいます。
・大口株主の特別関係者
※大口株主の親族(配偶者、6親等内の血族および親等内の姻続)、大口株主と事実上婚姻関係と同様の事情がある者、大口株主から受ける金銭その他の財産によって生計を維持している者およびその直径血族、大口株主直系血族から受ける金銭その他の財産によって生計をいじしているものをいいます。

2.権利行使価値 1株当たり権利行使価値が契約締結時の1株当たり価値(時価)以上であること
3.新株予約券の発行価値 無償
4.権利行使期間 付与決議の日から2年経過後10年以内
5.年間権利行使限度額 年間1,200万円以下
6.譲渡制限 譲渡禁止
7.その他の税制適格要件 ① 新株予約権の講師が会社法に反しない付与決議のもとで行われるもの
② 権利行使により取得した株式は、一定の方法によって株式の取得後ただちに付与会社を通じて証券会社などに保管の委託などがなされること
③ 権利者が新株予約権の付与決議において大口株主およびその特別利害関係者に該当しないことを誓約し、かつ、新株予約権講師日の属する年における新株予約権講師の有無について記載した書面を会社に提出すること


【図表2】の1~7の要件を満たせば「税制適格SO」として軽減税率の適用対象となりますが、残念ながら「税制適格だと思っていたら、じつは税制非適格だった」という事例が後を絶ちません。感覚的には、10社に3社位の割合で非適格SOであることが判明するケースがあり、上場直前になって資本政策を見直さざるを得なくなることも少なくありません。ここでは詳細な説明は割愛しますが、失敗するパターンはある程度決まっていますので、必ず経験豊富な税理士に相談しましょう。

③ その他の留意事項

SOは無制限に発行できるというものではありません。一般的にはIPO直前で発行済株式数の10%~15%程度が上限になります。したがって誰に、どのタイミングで、どの程度のSOを発行するかをIPOイメージから逆算して検討します。SO制度は社員(とくに幹部社員)へのインセンティブプランの中核を成すもので、一度に多くのSOを発行することは、その後の選択の幅を狭めることになりますのでお勧めできません。
近年ではSOの権利行使の条件として「べスティング条項」を設ける会社が増えています。たとえばある社員に100株のSOを付与する場合に、会社が上場したらまずは「100株中50株のみ権利行使できる」とし、さらにそこから1年勤続時点で「残りの50株中25株を権利行使できる」とし、さらにそこから1年勤続時点で「残りの25株すべてを権利行使できる」というように上場してから2年経ってすべてのSOの権利行使ができるような段階的な行使条件を付すというものです。このようなべスティング条項を付けることで、イメージとしてはマザーズ上場から一部上場まで会社の成長とともに段階的にSOの権利行使をしてもらうことができます。
また、SO制度と並ぶ代表的なインセンティブプランとして「持株会制度」があります。よく「ストックオプションと持株会はどっちが良いですか?」というご質問を頂きますが、両者は似て非なるものです。SOは無償なのに対し、持株会では社員がお金を拠出する必要があります。SOは株式ではありませんが、持株会では株式を保有してもらうため上場前から社員に株主としての権利が発生します。どちらも一長一短ありますが、各々のメリット・デメリットを慎重に見極める必要があります。 このようにSO発行一つとっても、発行タイミングや発行数、行使条件の有無や持株会との選択など検討すべき項目は多く、現在からIPOまでの時間軸の中でIPOから「逆算」してその発行計画を立案する必要があります。

【図表3】ストックオプションと持株会の比較

  ストックオプション 社員持株会
概要 あらかじめ決められた価格(権利行使価格)で、一定期間内(税制適格の場合、権利付与から2年経過後10年以内)に株式を購入できる権利を付与し、権利行使後の株式売却によってキャピタルゲインを得てもらう制度。 社員が自社株式を購入するための「持株会」を設立し、毎月給与天引き等で株式購入資金を拠出してもらい、長期間にわたって財産形成をはかってもらう制度
メリット 会社 ・退職時やIPOできなかった場合には権利を消滅させることができる。
・特定の者への付与が可能
安定株主として寄与
対象者 インセンティブ付与時点では対象者からの資金拠出は不要 奨励金の支給を受けることができる
デメリット 会社 ・安定株主としては付与しない
・税制適格要件の設計に注意が必要
IPOの可否に関わらず株主となる
対象者 ・付与基準が不明確な場合、不公平感によりモラル低下の可能性
・多額の報酬を手にしたものが人材流出する可能性
・加入時に資金拠出が必要
・株価が下落した場合に実際に損失を被る


資本政策2回目のポイントは、

①ストックオプションは株価が安いうちに発行する!
②税制適格SOの発行は必ず経験豊富な専門家に相談する!
③ストックオプションの発行計画は必ず「逆算型」で!
でした。

以上

  • 次回「資本政策」の3回目のテーマは「資産管理会社編」です。(近日公開)
  • 近年非常に増えている資産管理会社について、「資産管理会社の真の目的とは?」「メリットとスキーム」を中心に解説します。
    お楽しみに。

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