資本政策②「ストックオプション編」

POINT
・ストックオプションは株価が安いうちに発行する
・税制適格SOの発行は必ず経験豊富な専門家に相談する
・ストックオプションの発行計画は必ず「逆算型」
資本政策の《具体事例》と《ポイント》を解説。
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IPO準備企業の多くが導入するストックオプションについて、失敗しやすい実務上のポイントやより効果的な使い方を中心に解説します。
2017年1月
① ストックオプションとは?
 ストックオプション(以下「SO」と言います)とは、あらかじめ定められた「価格」、「数」、「期間内」に株式を購入することができる権利をいいます。 SOをもらった社員は、会社が上場した後にSOを権利行使して株式を取得し、その株式を市場等で売却することによって利益を得ることができるというわけです。

【図表1】ストックオプションの仕組み ストックオプションの仕組み

 【図表1】をご覧ください。SOの発行にあたっては、まず「権利行使価格」を設定します。 この権利行使価格は、一般的にはそのSO発行時点におけるその会社の株価と同額に設定されます。 権利行使価格が100円とは、将来、会社が上場した後に市場でいくらの株価が付いていようと、100円支払うことによってその会社の株式1株を購入することができることを意味します。 【図表1】のように株価が190円の時点で権利行使すると、本来は市場で190円支払って購入すべき株式を100円という割安価格で購入できるということになるわけです。 その後、仮に株価が200円になった時点で売却したとすると差引100円が利益になるという仕組みです。

 ここでのポイントはSOの権利行使価格が「 SO発行時点におけるその会社の株価をベースに設定」される、ということです。 株価が安いうちにSOを発行しておくことで、より多くのメリットを得られるわけですから、株価が上がる前の早いタイミングでのSO発行が成功の鍵になります。 資金調達のために外部に増資を行うような場合には、増資株価が増資前の何倍、何十倍もの株価になるケースが多々あります。 近々増資を予定している場合には、増資前にSOを発行することにより権利行使価格の上昇を回避することでSOのメリットを最大化できる可能性があるのです。
② 税制適格要件に要注意!
 SOはもらう側の社員からするとお金の代わりに株式で受け取る給料のようなものですが、同じ給料でもお金と株式とでは実は大きな違いがあります。 それは税金です。お金でもらう場合には、いわゆる「累進税率」により最高55%の税金がかかります。 しかし株式でもらうSOの場合には、どれだけ多額のSOをもらっても一律約20%の軽減税率で税金の支払いは完了します。 お金でもらうと最高「55%」、株式でもらうと「20%」ですから、その差は歴然です。

 ただし、ここで注意が必要なのは、無条件に20%の軽減税率が適用されるわけではないということです。 軽減税率は税務上の一定要件を満たす「税制適格SO」の場合に限って適用されますので、SO発行にあたってはこの税制適格SOの要件を満たすかどうかの検討が最も重要になってきます。

【図表2】税制適格SOの要件 税制適格SOの要件

 【図表2】の1~7の要件を満たせば「税制適格SO」として軽減税率の適用対象となりますが、残念ながら「税制適格だと思っていたら、じつは税制非適格だった」という事例が後を絶ちません。 感覚的には、10社に3社位の割合で非適格SOであることが判明するケースがあり、上場直前になって資本政策を見直さざるを得なくなることも少なくありません。 ここでは詳細な説明は割愛しますが、失敗するパターンはある程度決まっていますので、必ず経験豊富な税理士に相談しましょう。
③ その他の留意事項
 SOは無制限に発行できるというものではありません。一般的にはIPO直前で発行済株式数の10%~15%程度が上限になります。 したがって誰に、どのタイミングで、どの程度のSOを発行するかをIPOイメージから逆算して検討します。 SO制度は社員(とくに幹部社員)へのインセンティブプランの中核を成すもので、一度に多くのSOを発行することは、その後の選択の幅を狭めることになりますのでお勧めできません。

 近年ではSOの権利行使の条件として「べスティング条項」を設ける会社が増えています。 たとえばある社員に100株のSOを付与する場合に、会社が上場したらまずは「100株中50株のみ権利行使できる」とし、さらにそこから1年勤続時点で「残りの50株中25株を権利行使できる」とし、 さらにそこから1年勤続時点で「残りの25株すべてを権利行使できる」というように上場してから2年経ってすべてのSOの権利行使ができるような段階的な行使条件を付すというものです。 このようなべスティング条項を付けることで、イメージとしてはマザーズ上場から一部上場まで会社の成長とともに段階的にSOの権利行使をしてもらうことができます。

  また、SO制度と並ぶ代表的なインセンティブプランとして「持株会制度」があります。 よく「ストックオプションと持株会はどっちが良いですか?」というご質問を頂きますが、両者は似て非なるものです。 SOは無償なのに対し、持株会では社員がお金を拠出する必要があります。SOは株式ではありませんが、持株会では株式を保有してもらうため上場前から社員に株主としての権利が発生します。 どちらも一長一短ありますが、各々のメリット・デメリットを慎重に見極める必要があります。 このようにSO発行一つとっても、発行タイミングや発行数、行使条件の有無や持株会との選択など検討すべき項目は多く、現在からIPOまでの時間軸の中でIPOから「逆算」してその発行計画を立案する必要があります。

【図表3】ストックオプションと持株会の比較 ストックオプションと持株会の比較

以上、資本政策2回目のポイントは、
①ストックオプションは株価が安いうちに発行する!
②税制適格SOの発行は必ず経験豊富な専門家に相談する!
③ストックオプションの発行計画は必ず「逆算型」で!
でした。
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執筆
あいわ税理士法人 代表社員 杉山 康弘氏
あいわ税理士法人 代表社員 杉山 康弘氏
1995年大手会計事務所入社。2000年税理士登録。2005年あいわ税理士法人入社。
現在、上場準備企業への資本政策立案コンサルティングや各種上場準備支援業務に多数従事するほか、M&A関連業務や海外進出企業への税務コンサルティング業務にも精通。
2018年約100社の資本政策立案に関与。
あいわ税理士法人 ホームページ
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