IPOコラム 第5回

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第5回「資本政策【資産管理会社編】」

第5回 「資本政策③管理会社編」

  • あいわ税理士法人 代表社員 杉山 康弘氏

    1995年大手会計事務所入社。2000年税理士登録。2005年あいわ税理士法人入社。
    現在、上場準備企業への資本政策立案コンサルティングや各種上場準備支援業務に多数従事するほか、M&A関連業務や海外進出企業への税務コンサルティング業務にも精通。
    2015年約100社の資本政策立案に関与。

① 資産管理会社の真の目的とは?

資産管理会社と聞くと、漠然と「オーナーの節税目的の会社」というイメージを抱く方が多いかも知れません。たしかに一般的に資産管理会社の最大のメリットは「オーナー家の相続税の節税」と言われています。これはある面では正しいのですが、これだけでは不十分です。その裏には、実は「相続税の節税」=「会社の財務基盤の安定」という図式が隠されているのです。
どういうことか説明しましょう。
上場会社のオーナーがお亡くなりになると、その所有する株式に莫大な相続税がかかります。相続税は10か月以内にお金で納付するのが原則ですから、株式を相続したオーナーの相続人は何とかしてその納税資金を捻出しなければなりません。ほとんどのオーナーは計算上の財産額は莫大でも、手元にそれだけのお金があるわけではありません。そこで相続人はオーナーから相続したばかりの会社株式を何とかして換金しようとするわけです。そして多くの場合、会社(自社)がその株式の買い手となり、いわゆる「自社株買い」によって会社から相続人にお金が渡るということになります。
言い換えると、会社がオーナー家の相続税を支払う、ということになるのです。

【図表1】オーナー会社の相続税納税スキーム

資産管理会社の目的は、将来、会社が負担することになるであろうオーナー家の相続税を節税することで、将来にわたって「会社の財務基盤」を安定させることなのです。

② 正しいスキームとは?

資産管理会社活用のスキームは極めてシンプルです。
イ) まず、オーナー(甲)が新たに会社(Z社)を設立します。資本金はいくらでも構いませんが、設立コスト等を賄う必要がありますので一般的には100万円程度に設定します。
ロ) 次に、甲がその所有するIPO準備会社株式(A社)をその時点の時価でZ社に売却します。Z社は資本金100万円で設立したばかりの会社でお金はありませんので、売買代金(1億円)は甲とZ社との間の貸し借りにしておきます。
ハ) 株式売却に伴い甲に税金が発生する場合には、株式売却の翌年3月15日までに確定申告で申告納税手続きを済ませます。

【図表2】資産管理会社設立&株式売却のスキーム図

ここまで実行しておけば、後はA社がIPOするのをじっと待つだけです。詳細は割愛しますが仮にIPOしてA社の株価が数十倍・数百倍になると、オーナー家は、数十億円、場合によっては数百億円の相続税の節税メリットが得られるため、それだけA社の財務基盤も将来にわたって安定するというわけです。
事例では、資産管理会社の株主はオーナーである甲本人ですが、オーナーに子供がいる場合には子供を資産管理会社の株主にすることも検討しましょう。オーナー本人を株主とする場合に比べて倍以上の相続税の節税メリットが得られます。ただし、子供を株主とする場合には、財産権と経営権を切り離して財産権のみ子供に渡し、経営権はオーナーが持ち続ける仕組みを採用するかどうか、子供が株主として会社を設立する手続きを具体的にどうするのか、など検討すべき項目が多岐にわたりますので慎重に進めましょう。

③ 配当金の節税メリットもお忘れなく!

上記②の他、見落としがちなのが配当の節税メリットです。通常、上場会社オーナーが受け取る配当金には約50%の税金がかかります。これに対して資産管理会社が受け取る配当金の場合には、せいぜい15%程度の税金で済むのです。
1億円の配当金を受け取る場合で考えてみましょう。
1億円の配当金をオーナー個人で受け取ると、オーナー個人でその50%約5,000万円の税金を支払う必要があり、差引5,000万円しか手元に残りません。一方、資産管理会社で受け取ると、税金は15%の1,500万円で済みますので、手元に8,500万円程度のキャッシュが残ることになります。個人だと5,000万円、資産管理会社だと8,500万円ですから、その差は歴然です。この差が、毎年毎年、積み上がっていくことになるわけです。

【図表3】資産管理会社のメリット・デメリット

    個人所有(直接保有) 法人保有(間接保有)
1 相続税評価 株価上昇に伴い、相続税も増加する ・取得後の株価上昇分について、相続税評価を全部又は一部圧縮できるので、節税効果が期待できる
2 配当の税制メリット ・持株割合3%以上の場合、個人が受け取る配当は総合課税(最高税率55%)の対象
・配当金額の約50%しか手元に残らない
・法人が受け取る配当金は法人税の法人税の対象(税率約30%
・さらに、資産管理会社の株式保有割合に応じて受け取る配当の全部又は一部が非課税になる
 →3分の1強で100%非課税
 →5%超3分の1以下で50%非課税
 →5%以下で20%非課税
3 株式売却に係る税金 ・譲渡所得の税率が低い
(譲渡価額-必要経費)×20%
・売却益が他の所得の損失と相殺できない
・売却益に対する税率が高い
 (売却価額-帳簿価額)×30%(法人実効税率)
・株式売却益を他のジャンルの損失とも葬祭できる
4 株主の安定 ・相続が発生するたびに株式が散逸していく ・相続が発生しても、上場会社への秘訣県は原則として変動しない(資産管理会社株式の遺産分割となる)

このようにIPO前に資産管理会社を設立して置くメリットは非常に大きいと言えます。ただし、これらのメリットは、オーナーや資産管理会社が各々何%の株式を保有するのか、やその時々の税制や株価によって大きく変わってきます。また、上場審査の観点からも実行時期や株価など慎重な検討が必要になりますので、必ず上場準備の経験豊富な税理士にご相談下さい。

④ 資産管理会社を「やりたくてもできない」ケースとは?

IPO準備会社のオーナーに資産管理会社のご提案をすると、ほとんどのオーナーが前向きな反応を示されます。ただし、残念ながら「やりたくてもできない」ケースがあるのです。それは税金が支払えないケースです。上記②ハ)にあるように資産管理会社実行の翌年3月15日までに株式売却に伴う税金を支払う必要があります。資産管理会社への株式売却はその時点の株式の時価によって行う必要がありますので、すでに資金調達などをされていて株価が高くなっているようなケースでは、実行後のこの税金が想定外に多額となってしまい納税資金が用意できずに資産管理会社の活用自体を断念せざるを得ないこととなるのです。前回のSOと同様に、資産管理会社も」株価が安いうちに実行する」が鉄則です。 第三回のポイントは、①オーナー家の相続税節税は会社の財務基盤の安定に繋がる、②資産管理会社には「会計税務の視点」と「上場審査の視点」が必要、③資産管理会社はとにかく株価が安いうちに実行する、です。 これまで全3回にわたって資本政策のお話をしてきました。会社の決算書は後から修正できますが資本政策は一度実行してしまうと後戻りが出来ません。資本政策の検討に早すぎることはありません。後回しにせず、まずはとにかく皆さんの会社のIPOイメージを持つことからはじめましょう。

以上

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