働き方改革法案成立。
IPO審査における労務関連分野のトレンドは。

IPOコラム 第8回

第6回「」

  • アイ社会保険労務士法人 代表社員 土屋 信彦氏

    得意分野はIPOやM&A及びリスク対応にかかわる労務監査や就業規則整備。
    証券会社、税理士会、宅建業協会、異業種交流会等でのセミナー多数。
    埼玉県社会保険労務士会理事、社会保険労務士会川口支部副支部長等を歴任。名南経営LCG会員。上場実務研究士業会会員。
    人事担当者向け情報が充実!詳しくはホームページをご覧ください。
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IPO Compassコラム「労務管理3」


<ポイント>IPO審査における労務関連分野の最新トレンドは

  • ・解決せずしてIPOは実現しない?!「過重労働問題」
  • ・個別労使間紛争No.1「ハラスメント問題」

  •  2018年6月29日、働き方改革法案が成立し、残業時間の上限規制が決定しました。今後IPO準備企業に求められる労務問題への対応はますます厳しくなることが明らかです。
     今回のコラムでは、IPOにおける労務コンプライアンスの応用編として、働き方改革の行方そしてハラスメント・健康管理のための安全衛生対策について、アイ社会保険労務士法人の土屋信彦先生にお話しいただきました。

    -IPO審査における労務関連分野の最近のトレンドは?

    (1)過重労働問題

     過重労働に対する労働時間規制が強化されている状況で、ついに平成30年6月29日「働き方改革法案」が成立し残業時間の上限規制が決定しました。上限規制は原則月45時間・年360時間、上限は繁忙期に配慮し、年間で計720時間、単月では100時間未満となり、違反した企業には罰則が科されます。適用まではまだ猶予がありますので、適用までの期間でしっかりと労働時間管理の準備を整えておくことが重要です。

    (2)ハラスメント問題

     ハラスメント問題が労使紛争のトップとなっており、健康管理のための安全衛生体制についてもしっかり整備しておく必要があります。
     それでは上記2つの問題を詳しく解説していきます。

    1.働き方改革法案のゆくえ~残業上限規制~

     大手広告代理店の社員が過重労働によりメンタルヘルスを患い、過労自殺をした事件が大きく報道され、代表者が引責辞任するという事案にまで発展したことは記憶に新しいことです。過重労働に対してはこれまでも平成26年11月に「過労死等防止対策推進法」が新たに施行され、これを受けて平成27年4月に東京と大阪の労働局に通称「かとく」(過重労働撲滅特別対策班)を設置して、100時間を超える過重労働が認められる企業に立ち入り調査を実施するという動きがあったのです。これにより大手靴小売店チェーン運営会社、大手スーパーマーケット、大手飲食チェーン、大手ディスカウントショップ運営会社等の書類送検事件が次々と公表されました。平成28年4月には「かとく」は全国47都道府県の労働局に設置され、時間外労働が80時間を超える会社を対象として立ち入り調査に動いています。また、平成28年12月末に「過労死等ゼロ」緊急対策を公表し、長時間労働是正や過労死等防止のために、さらに強力に取組を進めていく方針を打ち出しました。
     「過労死等ゼロ」緊急対策は、以下の3つの柱で構成されています。

    (1)長時間労働の是正
    (2)メンタルヘルス・パワハラ防止対策
    (3)社会全体で過労死等ゼロを目指す取り組み

     さらにこの緊急対策を受けて、平成29年1月20日に労働時間適正把握ガイドライン(以下、「新ガイドライン」という)が厚労省より公表され、実際の「実労働時間」と「自己申告した労働時間」にかい離がある場合に会社は実態調査をすること、使用者の明示または黙示の指示により受講した研修時間や手待時間は労働時間として取り扱うこと、また労働時間の記録方法として、タイムカード、ICカード以外にもPCの使用記録等により適正に記録すること等が記載されています。
     こうした背景の中で、政府の「働き方改革」による残業上限規制が平成30年6月29日に成立しました。今後、時間外労働や休日労働の管理はますます厳格に管理していく必要があるでしょう。

    【働き方改革法案 残業上限規制】

    <上限>
    原則:月45時間・年360時間
    繁忙期など:6カ月までは45時間を超えることができる、かつ年間では計720時間以内。(休日労働を含める場合は単月で100時間未満、2~6カ月平均で月80時間以下)
    <罰則>
    6カ月以下の懲役か30万円以下の罰金
    <適用時期>
    大企業は2019年4月から。
    中小企業は2020年4月から。


     いずれにせよ過重労働による過労死事件が起きてしまった場合、遺族からの民事的な損害賠償請求をされることが一般的であり、その額は億単位にのぼることも少なくありません。IPO準備会社がこのような事件を起こした場合は、上場審査が延期されるどころか、上場をあきらめざるを得ない事態になってしまうでしょう。

    2.ハラスメント対策、健康管理のための安全衛生体制

     労働安全衛生法において従業員常時50人以上を使用する事業場には、衛生管理者の選任の義務、産業医の選任の義務、また月1回の衛生委員会の開催義務が課されています。これらの労働安全衛生管理体制づくりは、法律的な義務となっているので、当然のことながらIPO審査上でも選任義務が果たされていなければ、改善の指摘をうけることとなります。
     一方、企業経営の今日的問題として、うつ病をはじめとしたメンタルヘルス不全を起こしてしまう従業員が非常に多く、その対応に苦慮する企業担当者をよく見かけます。原因が過重労働として業務上災害として認定されれば、問題は非常に大きなこととなります。当然休業中の解雇は労基法上禁止されていますし、民事的にも安全配慮義務違反が問われることになります。また、業務外が原因のメンタルヘルス不全であったとしてもその後の休職、復職への本人との協議、交渉は決して平坦なものではありません。
     これら総合的に判断すると、会社としてのメンタルヘルス対策、健康管理体制づくりは産業医、衛生管理者を中心とした衛生委員会で本格的に検討すべきものとして位置づけなければならないでしょう。
     

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