IPOを基礎から学ぼう!自社に適した市場はどこか?マザーズとJASDAQの特徴と東証市場再編の影響

POINT
・上場市場には、東京・名古屋・福岡・札幌の証券取引所があり、それぞれの取引所が証券市場を開設している。証券市場には「本則市場」と「新興市場」がある。
・IPOによって企業成長を加速させたい、と考える場合には、代表的な新興市場である「マザーズ市場」、安定成長型の場合は「JASDAQ市場」が適切。
・マザーズ市場が飽和状態、かつ東京証券取引所市場再編の影響に注意。
あなたの会社は安定成長型?それとも高成長企業型?自社に適した市場を見つけ、スムーズなIPOを果たすためのポイントを解説します。
2019年5月28日

はじめに

 上場市場には、東京・名古屋・福岡・札幌の証券取引所があり、それぞれの取引所には「本則市場」と称される市場と、「新興市場」と称される市場があります。 どの市場にIPOするかを考える際には、それぞれの市場の特性に加え、各市場の形式要件について予備知識を持つことが重要です。
 昨今、IPO企業の多くはマザーズを選択しています。2018年もIPOを果たした90社のうちの2/3がマザーズでIPOを実現しました。多くの企業が選択するマザーズとはどのような市場なのでしょうか。

1.マザーズ市場はどのような市場か?

 マザーズは、近い将来の東京証券取引所市場第1部(以降、東証1部)へのステップアップを視野に入れた成長企業向けの市場です。 そのため、申請会社には「高い成長可能性」を求めています。申請会社が高い成長可能性を有しているか否かについては、主幹事証券会社がビジネスモデルや事業環境などを基に評価・判断します。 多くの成長企業に資金調達の場を提供するという観点から、その上場対象とする企業について、規模や業種などによる制限を設けていません。マザーズ上場後、多くの企業が東証1部にステップアップしています。(日本取引所グループHPより)

 高い成長可能性があれば、規模や利益水準が大きくなくともIPOができる可能性のある市場で、極端な場合、赤字であってもIPOを実現することができます。 そのため、IPOによって企業成長を加速させたい、と考える経営者や会社には、まさに目指すべき市場といわれる所以です。
 なお、マザーズIPO後、多くの企業が東証1部にステップアップしていますが、これは、マザーズ市場から東証1部に上場する際の時価総額基準(形式要件)が40億円である、という優位性があるからです。 ちなみに、JASDAQ市場から東証1部に上場する場合には時価総額が250億円以上必要です。

2.「高い成長可能性」はどのように判断されるのか?

 高い成長可能性を有しているか否かについては主幹事証券会社が判断することになり、その旨を記載した「推薦書」を、東証に提出することになります。 その際、信ぴょう性・客観性の高いデータにて市場の状況を説明し、客観的事実に基づいて差別化要因を説明し、これらを実現するうえで重要となる経営資源の状況について説明することがポイントとなります。

 なお、1.直近で利益が前期比3割増かつ売上増の場合と、2.最近2年間において最初の1年間は赤字だが、最近1年間の利益が1億円以上かつ売上増の場合、この「推薦書」は不要となります。

3.マザーズ市場と比べられるJASDAQ市場とはどんな市場か?

 JASDAQは、1.信頼性、2.革新性、3.地域・国際性という3つのコンセプトを掲げる市場です。 また、一定の事業規模と実績を有する成長企業を対象とした「スタンダード」、特色ある技術やビジネスモデルを有し、より将来の成長可能性に富んだ企業群を対象とした「グロース」という2つの異なる内訳区分を設けています。(日本取引所グループHPより)

 JASDAQは、その多くの企業が上場している「スタンダード」を念頭に、一定の事業規模と実績を求めるため、安定成長型企業にあった市場と言われています。そのため、高い成長可能性があるならマザーズで、安定成長型の企業であればJASDAQで、といった形で多くの経営者や会社にIPO市場として検討されています。
 なおマザーズやJASDAQ以外の新興市場としては、セントレックス市場(名古屋証券取引所)、Q-Board市場(福岡証券取引所)、アンビシャス市場(札幌証券取引所)があります。

4.東証の市場構造再編がIPO準備企業に与える影響とは

 2018年IPO社数は前年と同じく90社となりました。しかしその内訳は90社中63社がマザーズ市場であり、昨年のマザーズ市場IPO社数より14社も増え、マザーズ人気の過熱感がうかがえます。 さらに、上場企業の全体で見ると、東証1部上場企業が2,100社超を占め、すべての市場の中で一番上場社数が多くなっています。 マザーズから東証1部への昇格は「近道上場」と揶揄されるように、時価総額基準の優位性の影響もあり、東証1部上場企業として、実態が伴わない企業が存在していると言われています。

 そのような状況を鑑みて、2018年12月に東証は市場構造の再編を公表し、2019年3月27日には「市場構造の在り方等に関する市場関係者からのご意見概要」と方針決定としての「現在の市場構造を巡る課題(論点整理)」を公表しました。
 3月27日の「現在の市場構造を巡る課題(論点整理)」では、これまでの4市場(東証1部、東証2部、マザーズ、JASDAQ)から3市場に減らすこと、“「市場区分」の明確なコンセプト”を公表するにとどまりました。 2018年12月の再編公表以後、マスコミ等で論じられていた時価総額500億基準等の具体案は発表されませんでした。

 このような流動的な環境の中で、IPO準備企業はどの市場を目指すべきなのでしょうか? 現時点であれば、東証1部への時価総額基準の優位性があるマザーズを選ぶことが賢明かもしれません。 しかし、市場構造が定まらない不確定な状況の中で、今すべきことは、目指す市場を決める以上に、上場企業にふさわしい実態のともなった企業になることではないでしょうか。
 市場再編の結論が出る時期は、そう遠くはないでしょう。 IPOのトレンドを随時チェックし、着実に準備を進め、そしてその中で自社に合う市場がどこなのかを見極めることが肝要です。

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更新:2022年6月30日
執筆
IPO Compass編集部
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