IPO 2020年総括と今後の展望

2020年の株式市場はコロナ禍により大幅に下落しつつも財政・金融政策に支えられ、結果として29年ぶりに日経平均が2万7000円を超えた。IPOについても、一時ストップするも、6月から再開、リーマンショック以降最多の93件に。2021年のIPOはどうなるか?9つの論点で解説。
2021年1月8日

はじめに

2020年の日本の株式市場は、新型コロナウイルス感染症の世界的流行により大幅に下落する局面があったものの、財政と金融政策に支えられ、日経平均は29年ぶりに2万7000円を超えました。
IPOについても、緊急事態宣言下で一時ストップしたものの、6月から再開し、結果的にリーマンショック以降では最多の件数となりました。
2021年は、コロナ禍の克服が達成できるか、東京オリンピック・パラリンピックが実施されるのか等、様々な不安定要因が残っていますし、2022年4月に予定されている東証の市場区分の見直しの影響がどうなるかも注目されます。
以下9つの注目点で、2020年のIPOの状況を確認し、2021年以降の展望を記したいと思います。

1.年間93社と前年比7社増加(コロナ禍の上場中止を乗り越える)

2020年のIPO社数は93社(2019年は86社)。
ここ数年90社前後で推移していますが、コロナ禍で上場承認後に18社も中止になったことを考えると、かなり健闘したと言えるのではないかと思います。2021年も現時点では同水準のIPO社数ではないかと予想しています。
市場別の内訳は、東証一部6社、東証二部9社、マザーズ63社、ジャスダック14社、名証セントレックス1社で、福証、札証にはIPOがありませんでした。

2.主幹事証券の競争状況

主幹事件数は、野村證券が22社で首位となりました(トップレフト証券のみをカウント)。
みずほ証券が21社で僅差の2位ですが、マザーズ上場件数では最も多く(16社)なりました。2021年もこの2社と、SMBC日興証券、大和証券、更にはSBI証券も加わり、激しいリーグテーブル争いをするものと見込んでいます。

3.中堅・中小監査法人の比率が増加

監査法人では、EY新日本が昨年同様に首位(27社)となりました。
2位あずさ(22社)で、3位に太陽(11社)が食い込みました。昨年2位だったトーマツが4位(10社)となり半減(2019年は21社)したように、大手法人の占めるシェアは下がっていくことが見込まれます。 IPOが年間1社の監査法人が9法人もあり、多様化が指摘されています。

4.関西エリアのIPOが大幅増加

本社所在地では、関西エリアのIPO社数が15社(大阪14社・滋賀1社)と大幅増加しました(2019年は大阪5社・兵庫2社)。 また、九州のIPOは2社(福岡1社・宮崎1社)ありました。今後も、首都圏以外では、関西、九州、更には名古屋エリア(愛知・三重・岐阜)からのIPOに注目しています。

5.期末、期越えIPOが定着

上場審査における業績確認の厳格化が続いている影響で、第4四半期中、あるいは期越え(期末後で株主総会前まで)にIPOすることが一般的になってきました。 期越え上場は3割近くに達しました(27社)。2021年も3月から6月に多くのIPOが予定されています。

6.海外投資家への販売

IPOにおける海外投資家への投資勧誘は、大型案件についてグローバル・オファリングを行う(海外へ赴き現地規制に基づいて投資勧誘を行う)ケースで行われていますが、大型でなくとも、国内規制に基づいて海外投資家に販売する方式(旧臨報方式)を採用するケースが増加しています。
2020年のグローバル・オファリングは3社でしたが、旧臨報方式は13社と過去最多になりました。同方式はグローバル・オファリングと比較するとアクセスする投資家層が薄くなりますが、事務負担が少ないメリットがあります。 一定の規模感があるIPOで、国内機関投資家の需要が限定的となるリスクがある場合は、海外投資家の需要を期待するという観点から定着していくと見込まれます。

7.赤字会社のIPO

2018年頃からP/L赤字のIPOが増加し、注目を集めるようになってきましたが、2020年ではIPO直前期に赤字の会社は15社、上場期の予想損益が赤字の会社も8社ありました。
プレイド、ウェルスナビ、ニューラルポケットは規模感もあり、初値時価総額では1位・4位・5位となりました。
マザーズ(新市場区分ではグロース)において「事業計画及び成長可能性に関する事項」の開示が義務付けられ、上場申請時にはそのドラフトの提出が必要となったことからも、足元の損益よりは成長可能性に係る説得力がベンチャー企業IPOのカギとなっていると言えます。

8.初値は二極化

初値の公開価格割れは23社と約25%に達しました。内訳は、コロナ禍に株価が下落した3月・4月のIPOが18社、秋以降の東証一部・二部上場(比較的大きな案件)が5社となっています。
一方で、初値の公開価格に対する倍率が2倍以上になったIPOは39社にのぼり、中には10倍を超えた案件も出ました。 個人投資家の投資意欲は高いものの国内機関投資家は慎重なままであるため、「小型は跳ね、大型は沈む」傾向が続いています。キオクシアHDは中止になりましたが、今後も大型IPOには厳しいマーケット環境が想定されます。

9.市場再編の影響は?

東証の株式市場は、2022年4月から「プライム」「スタンダード」「グロース」の3市場に再編されますが、再編を睨んで2020年11月から上場審査基準が変更になりました。
ジャスダック・スタンダードと東証二部の形式要件が統一され、ジャスダック・グロースはIPOができなくなりましたので、これまでのジャスダックの基準が消滅した形になっています。 マザーズに上場するほどの高い成長性はなく、東証二部に上場するほどの規模がない場合、これまでジャスダックを目指すのが一般的でしたが、今後は東証上場への行き場がなくなりますので、IPOの市場選択に影響を与えると思われます。

東証のプロ投資家向け市場(TOKYO PRO Market)の年間新規上場社数は10社(上記IPOに含めていません)と今年も過去最高を更新しました。
同市場に上場するためにはアドバイザー(J-Adviser)との契約が必須で、弊社もJ-Adviser業務を行っていますが、お問合せが急増しています。 資金調達が難しい市場ですが、「上場会社」というステータスを事業に生かすことを企図した予備軍が増加していることは明確です。一方で増加スピードがあまりに速いと、審査が厳格化する可能性があると考えています。

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執筆
宝印刷株式会社 常務執行役員/企業成長支援部長 大村 法生氏
宝印刷株式会社 常務執行役員/企業成長支援部長 大村 法生氏
1986年に東京大学法学部を卒業後、野村證券株式会社に入社。20年以上にわたりIPO関連業務に携わる。2005年に公開引受部次長、2011年から同部東京エリアヘッドを歴任。2018年に宝印刷株式会社に顧問として入社。同年7月執行役員に就任。2019年7月より現職。
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