IPO 2021年総括と今後の展望

2021年の株式市場はコロナ禍や原油高などの経済要因が影響を与えたものの、財政・金融政策に支えられ、結果として32年ぶりに日経平均が2万8000円を超えた。IPOについてもベンチャー企業のマザーズ上場が90社を超えるなど活況で、2007年以来の120社超えに。2022年のIPOはどうなるか?9つの論点で解説。
2022年1月14日
更新:2022年6月30日
  • ※本コラムは、2022年1月14日時点の記事です。2022年4月4日より新市場区分(東京証券取引所:プライム・スタンダード・グロース)に再編されています。

はじめに

2021年の日本の株式市場は、新型コロナウイルス感染症の世界的流行が収まらず、原油高などの経済要因が影響を与えたものの、財政と金融政策に引続き支えられ、日経平均は3万円を超える局面もあり、32年ぶりの高値水準である2万8000円台で年末を迎えました。
IPOについては、ベンチャー企業のマザーズ上場が90社を超えるなど活況で、2007年以来の120社超えとなりました。
2022年は、オミクロン株の脅威に晒されたコロナ禍の中で神経質な展開で株式相場がスタートしました。
東証の市場再編、参議院選挙などが待ち受けています。
以下9つの注目点で、2021年のIPOの状況を確認し、2022年以降の展望を記したいと思います。

1.年間125社と14年ぶりの活況

2021年のIPO社数は125社(外国籍企業のJDR上場2社を含む)となり、かつては200社時代もありましたが、東証集中で市場間競争が無くなったことを考えると、非常に件数が増加した年と言えます。来年も、現時点では同水準のIPO社数ではないかと予想しています。
市場別の内訳は、東証一部6社、東証二部8社、マザーズ93社、ジャスダック16社、福証Q-Board 2社で、名証、札証には単独上場がありませんでした。

2017~2021年上場社数の推移
▲2017~2021年上場社数の推移

2.主幹事証券の競争状況

主幹事件数は、野村證券とみずほ証券が27社で首位となりました(トップレフト証券のみをカウント)。みずほ証券は共同主幹事案件もカウントすると32社の主幹事をつとめています。2022年もこの2社と、SMBC日興証券、更にはSBI証券も加わり、激しいリーグテーブル争いをするものと見込んでいます。大和証券は13社の主幹事(共同主幹事を含めると16社)に留まりましたが、注目セクターの案件を手掛けています。

2021年IPOにおける主幹事証券状況、担当社数と割合
▲2021年IPOにおける主幹事証券状況、担当社数と割合

3.監査法人はEY新日本が独走

監査法人では、EY新日本が昨年同様に首位(33社)となりました。2位のあずさ・トーマツ(いずれも19社)に大差を付けました。4位の太陽(17社)は昨年の11社から大幅に増加しました。準大手といえるPwC京都(8社)、仰星(7社)、東洋(6社)はいずれも増加しており、今後も一定のシェアを占めていくことが見込まれます。
中小監査法人のシェアも増えており、IPOを手掛ける監査法人の多様化が進んでいくと思われます。

2021年IPOにおける監査法人状況、担当社数と割合
▲2021年IPOにおける監査法人状況、担当社数と割合

4.期越えIPOが常識化

期越え(期末後で株主総会前まで)にIPOすることが一般的になってきました。上場審査における業績確認の厳格化の影響が指摘されています。期越え上場は49社と4割近くに達し、過去最高となりました。2022年もこの傾向は継続すると見込んでいます。

5.海外投資家への販売

国内規制に基づいて海外投資家に販売する方式(旧臨報方式)を採用するケースが増加しています。旧臨報方式は27社と過去最多を更新(2020年13社から倍増)し、海外投資家へ直接マーケティングする方法が普及してきました。
機関投資家への販売手法にも工夫が見られ、機関投資家に対する親引け(発行会社が指定する先への販売)を活用した事例が4件ありました。また、機関投資家からの購入希望株数/金額を開示して行う「IOI(Indication of interest)」と呼ばれる手法を使ったグローバル・オファリングが2社あり(ビジョナル、ネットプロテクションホールディングス)、証券業界で話題になりました。

6.クロスボーダー案件

外国籍企業の株式を国内証券とする「JDR(日本預託証券)」を活用したシンガポール企業のマザーズ上場が2社(OMNI-PLUS SYSTEM、YCP Holdings)ありました。台湾発祥のAppier Groupは、日本籍企業に変換(インバージョン)してIPOを達成しました。ベトナム人の方が社長であるハイブリッドテクノロジーズのように外国人経営者によるIPOを含めて、メディアでは「クロスボーダー案件」と呼ばれていますが、今後も東証IPOの国際化が一層推進されるものと考えられます。

7.ラッシュ時の初値崩れとIPO後の株価下落

例年同様、小型案件を中心に初値が高騰する銘柄が多くみられた(公開価格の2倍以上が27社)ものの、IPOラッシュだった年末案件では公開価格を割り込んだ銘柄も多く(公開価格割れ20社)ありました。(2020年は公開価格割れ23社のうちコロナ禍発生で大幅株価下落の3・4月IPOが18社。)
また、公開価格と年末時点の株価を比較すると、平均で80%を下回り、上場後パフォーマンスの悪化も指摘されています。
「公開価格が安すぎるのではないか」という指摘を契機として、日本証券業協会により「公開価格の設定プロセスのあり方等に関するワーキング・グループ」が設置されましたが、今後の議論に影響を与える可能性があります。

8.ソーシャルIPOの登場

ESG投資が拡大する中、IPOにおいても「セカンドパーティ・オピニオン(SPO)」を開示した事例が登場しました。SPOとは、第三者評価機関から、調達する資金の充当先に関する環境及び社会面でのインパクトの評価、もしくは発行会社自身のESGへの対応を評価する意見書を取得することです(目論見書等で開示)。再生可能エネルギー関連のテスホールディングス、リニューアブル・ジャパン、更には環境関連事業(リサイクル対応製品の販売、廃棄物の資源化等)の三和油化工業もSPOを開示して注目を集めました。

9.東証市場区分変更の影響とTOKYO PRO Market他

東証の株式市場は、4月4日から「プライム」「スタンダード」「グロース」の3市場に再編されますが、成長可能性についてグロース市場が求めるほど高くはなく、企業規模についてスタンダード市場に上場するほどではない場合等について、地方取引所でのIPOやTOKYO PRO Marketを目指す企業が現れることが指摘されています。
TOKYO PRO Marketの2021年の新規上場社数は13社(上記IPOに含めていません)と過去最高を更新しました。上場希望社数の増加に伴い、上場審査の厳格化が指摘されていますが、同市場への上場社数の増加は更にスピードアップすると見込んでいます。

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執筆
宝印刷株式会社<br>取締役常務執行役員/企業成長支援部長<br>大村 法生氏
宝印刷株式会社
取締役常務執行役員/企業成長支援部長
大村 法生氏
1986年に東京大学法学部を卒業後、野村證券株式会社に入社。20年以上にわたりIPO関連業務に携わる。2005年に公開引受部次長、2011年から同部東京エリアヘッドを歴任。2018年に宝印刷株式会社に顧問として入社。同年7月執行役員、2019年7月常務執行役員企業成長支援部長に就任。2021年8月より現職。
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