IPOにおけるCFOとは?使命・役割・採用方法を解説

IPO実現を左右するCFO。その使命と役割とは何か?またCFO人材を採用する方法として社内昇格、外部からの招へいの2種類があるが、それぞれのメリット・デメリットとは?外部コンサルタントの活用方法とともにブリッジコンサルティンググループ中山氏が解説 。
2022年2月14日

1.はじめに

成長し続ける企業や成功している企業の経営者として、CEO(最高経営責任者、日本では社長とイコールになることが多い)、COO(最高執行責任者)やCTO(最高技術責任者)は日本でも一般的によく知られます。

CFO(最高財務責任者)に関しては、企業の成長を財務面から支え企業成長のカギを握る存在であり、欧米では多くの場合早い段階で必須メンバーとして経営に参画するのが一般的です。しかし、日本ではCFOが不在といった企業も珍しくありません。特にシードやスタートアップといった早い段階にある企業では、自社にとっての必要性を認識されない(時期尚早であると理解されている)ケースも少なからず見られます。

日本におけるこのような状況は、CFOの存在意義、CFOの使命や役割、自社に適したCFOの人物像について十分に理解されていないことがその背景にあると考えられます。

2.CFO(最高財務責任者)とは

CFOとはChief Financial Officerの略称であり、「最高財務責任者」と訳されます。日本では、CFOは単に経理屋や企業財務の専門家あるいは経理・財務部長といった意味合いでとらえられがちです。このような傾向は「財務責任者」という訳語にも起因しているのかもしれません。しかし、本来CFOとは財務戦略を経営戦略に取り込める経営者の一員であり、欧米においてはCEO同様にその地位が確立されています。

CFOの立ち位置

    ▲CFOの立ち位置

3.CFOの使命と役割

3-1.CFOの使命と基本的な役割
CFOの使命は、企業の成長を財務面で支え企業の資本効率を上げ、企業価値の最大化を図ることと言われます。よってその視線を将来に向ける必要があります。
CFOの役割は、経営メンバーとして財務戦略を経営戦略に取り込み企業活動をマネジメントすることです。その業務領域は資金調達のみならず、財務戦略の立案と実行、内部統制をはじめとするリスクマネジメント、予算実績比較分析といった予算立案と管理、投資家とのコミュニケーションを基礎とするIR(Investor Relations、投資家への情報提供)活動等多岐にわたります。
ただし実際にはCFOの担う業務領域は各企業で均一ではなく、企業の置かれた環境やCFO経営戦略により各社で多少異なります。

CFOの使命・役割
         ▲CFOの使命・役割

CFOの業務領域
▲CFOの業務領域

3-2.従来の財務部長や経理部長との違い
財務部長は企業の財務に関する業務の責任者であり、経理部長は企業の経理に関する業務の責任者です。他方CFOは前述のとおり、資本効率を上げて企業価値の最大化を図ることを使命とし、その役割は経営陣のメンバーとして財務戦略を経営戦略に取り込み企業活動をマネジメントすることです。
つまりCFOと財務部長や経理部長では、企業内での立ち位置やその業務範囲が大きく異なります。

CFOと財務部長・経理部長の立ち位置
      ▲CFOと財務部長・経理部長の立ち位置

3-3.日本でもCFOが重要視されるようになった理由
かつて日本では、CFOになじみがなくその必要性は高くはありませんでした。しかし近年では、企業が継続的に成長するために重要な存在であるとの認知が広まり、特に資本市場で資金を調達する企業にとって必要不可欠な存在となっています。

CFOが重要視されるようになった主な理由を、以下に示します。

①資本市場での資金調達の必要性が高まったこと
  • バブル経済が崩壊する1990年代前半までは、企業の資金調達手段はほとんどが金融機関からの融資でした。不動産の価格の上昇を背景に、土地を担保に企業は金融機関から比較的容易に融資を受けることができ、役員や財務担当者が金融機関と良好な関係を構築していれば資金調達をスムーズに行うことができました 。

    しかしバブル経済崩壊で融資の担保資産である不動産価格が著しく下落すると、金融機関によるいわゆる貸し渋りが生じ、企業は金融機関からの融資頼みの資金調達方法を見直さざるを得ない状況になりました。このような背景があり、企業は成長のための潤沢な資金を投資家から調達する必要性が高まりました。

    投資家から資金調達をするには、自社の事業戦略・成長性・競争優位性・株主価値を最大化する財務戦略を策定し、その成果を透明性のある財務情報として開示する必要があります。自社が投資リターンを生み出すことができる魅力のある投資先であることを投資家にアピールしなければならないからです。

    そのためにも投資家とコミュニケーションを基に良好な関係を構築することが非常に重要ですが、中間管理職たる財務部長クラスの人材ではこのような幅広い役割を担うのは困難です。財務の専門知識のみならず経営者として企業を俯瞰できるCFOが求められています。

②キャッシュフロー経営の重要性が高まったこと
  • 過去企業経営において売上高や利益を重視する傾向がありました。しかし、帳簿上で利益が計上されていても手元に十分な資金がなく倒産してしまう黒字倒産が少なからず発生していました。
    そのようなことから、経営を維持しさらなる成長を遂げるためには、資金収支を重視するキャッシュフロー経営が必要であるとの認識が広まっています。

    キャッシュフロー経営では資金調達、投資、資金配分等、手元資金を増やすための財務戦略の立案と実行が必要であり、ここでも①同様に、財務の専門知識のみならず企業経営の広い見識を持つCFOが求められています。

③企業会計の透明性がより求められるようになったこと
  • 投資家にとって魅力的な投資先であることをアピールするためには、企業の財政状態や経営成績といった財務情報の透明性と比較可能性が求められます。資本市場のグローバル化が進む今日ではIFRS(国際財務報告基準)に基づく財務情報の開示の必要性が高まっています。また、会計基準や税法等法令の改正を適時適切にアップデートしてルールに従った透明性のある財務情報を投資家にわかりやすく開示することも必要です。
    財務情報の開示やIR活動の戦略立案と実行をリーダーとして指揮する役割がCFOに求められています。

④企業価値向上にむけた事業再編が求められること
  • 企業価値を向上させるためには事業の収益性を上げなければなりません。そのために、不採算事業の撤退やグループ会社における経営改善・事業の撤退、事業やグループ会社の売却の意思決定が必要となります。既存事業やグループ会社の財務及び市場等の分析による将来の収益性予測がその意思決定の材料です。

    また、企業や事業の合併や買収(いわゆるM&A)といった積極的な事業再編活動により企業価値を向上させることも投資家から期待されます。
    既存事業やグループ会社の将来性予測や外部企業の合併・買収が自社にシナジーを生み企業価値の向上に資するかどうか。その判断を的確に行うこともCFOに求められています。

4.IPO準備段階におけるCFOの役割とスキル

4-1.IPO準備実務におけるCFO
上場企業には投資家保護を常に意識した経営管理が求められます。経営管理体制が脆弱ですと投資家保護を意識した経営管理は期待できず上場企業として不適格とされます。そこで上場申請時には経営管理体制、すなわち管理部門の体制が重点的審査項目であり、審査の過程で多くの時間を費やされるのが通例です。
また、IPOを目指す企業であれば特に、企業価値向上にむけた財務戦略が重要です。そのため、スタートアップ段階では資金調達のために実効性のある資本政策の立案と実行が求められます。

これらの事情を総合的に勘案すると、IPOを目指す企業は成長ステージの早い段階からCFOを設置する必要性が高いと考えられます。
しかしスタートアップ企業含めIPO準備企業では、事業部門の拡大と充実に注力し管理部門の整備は後手に回りがちです。管理部門は経理実務や出納業務担当者がいれば十分であると考えられていたり、前述のCFOに対する理解が十分になされていない風潮と相まって、CFOが不在のケースが少なくないというのが実情です。

4-2.IPO準備段階で果たすべきCFOの役割
IPO準備段階で期待されるCFOの役割としては、IPOプロジェクトマネジメント、資本政策の立案と実行、資金調達、業務プロセスの確立と検証、各種規程の整備、予算の策定と予実管理、内部統制の整備(いわゆるJ-SOX対応)、四半期決算及び年次決算の取りまとめ、会社法及び金商法開示書類の準備、上場申請書類の準備などがあげられます。

IPO準備段階及びIPO後にCFOに期待される役割
▲IPO準備段階及びIPO後にCFOに期待される役割

IPOプロジェクトマネジメントでは、IPOの計画立案・実行・管理、チーム編成とまとめ役、証券取引所・証券会社・監査法人など関係者との質疑応答、コミュニケーションや連携、審査対応が求められます。
資本政策、開示資料の作成、上場申請書類の準備といった業務では、経理や財務の知識はもとより、投資家に対し自社事業や成長性を口頭や書面でアピールすることが必要ですし、投資家とのコミュニケーション能力が求められます。
業務プロセス構築や各種規程の整備ではコンプライアンス意識をしっかりと持ち、コーポレート・ガバナンスやリスクマネジメントに対する見識、社内の調整能力やコミュニケーション能力も必要です。
予算管理業務では市場分析と将来予測に関するノウハウや知識、マネジメント能力も求められます。
このようにCFOがIPO準備段階で果たす役割は広範にわたります。IPO準備の出来る限り早い段階でCFOが経営に参画することが、IPO後の持続的成長にも資することとなります。

5.IPOに貢献するCFO人材の採用

5-1.CFO採用の第一歩、CFO人材の要件明確化
IPOを成功させるためにどのようなCFOを採用すべきか、IPO準備企業の多くが頭を抱える課題です。
当社・ブリッジコンサルティンググループがIPO支援をさせていただく中で、財務に関する専門的知識があり、経営に関する経験があり、コミュニケーション能力に長け、調整能力があり、IPO準備段階ではスピーディに広範にわたる業務をCEO他経営メンバーと伴走しながら遂行できる人をCFOとして迎えたいといった声がよく聞かれます。
しかしながらそれらの要件をクリアするスーパーマンのような人材に出会うことはまれですし、仮に出会えたとしても報酬面で自社の予算と折り合いがつかなかったり、社内メンバーと相性が合わなかったり、結局CFOを採用できないままといった状況も少なくありません。
IPOを目指すにあたり、自社の実態と経営方針に照らしあわせて、CFOに期待する主要な役割、業務領域、人柄を明確にするのがCFO採用の第一歩です。

5-2.CFO採用方法とメリット・デメリット
CFO採用方法として、社内の人材を充てる内部昇格か、外部から招へいするのか、いずれが適当かを検討する必要があります。

内部昇格であれば、自社の事情に精通した人材であるため、信頼関係を築けている、スムーズに業務に取り掛かれる、採用コストがかからないといったメリットがあります。デメリットとしては、育成に時間がかかることがあげられます。

外部招へいの場合は必要とするリソースを即座に補うことができる、外部で培ったノウハウや情報を自社に取り込めるといったメリットがあります。デメリットとしては、信頼関係を一から構築しないといけない、採用コストや追加の人件費の負担が発生するといったことがあげられます。

そこで最近増えているのが、外部のコンサルタントの活用です。この方法であれば、ノウハウの提供を受けながら社内で人材を育成することができます。外部コンサルタントが伴走してIPOプロジェクトを進めることで、社内人材にノウハウがインストールされ、CFO人材の内部昇格も可能となります。また日常業務と並行して、社内管理体制の構築やIPO審査に向けた事務作業を短期間でスピーディに遂行するためのリソースを補充する点でも、外部コンサルタントの活用は有効な手段です。

外部コンサルタントの活用にあたりコスト負担が懸念されます。しかし自社に適合するCFO像を明確にできないままCFOを採用してしまうことのほうが、コストがかさむ可能性がある点を考慮すると、コスト面で逆にポジティブな効果が得られることも多々あります。
ただし、企業と外部コンサルタントとの相性がIPOの成否やコスト負担に影響を与えますので、外部コンサルタントの選択の際、その経験や能力に加え自社との相性も重要な指標となります。

CFOの採用手段とメリット・デメリット
▲CFOの採用手段とメリット・デメリット

6.地方でのCFO採用

最近、地方企業のIPO熱の高まりが見受けられます。まだ数は少ないながらもTOKYO PRO Marketに上場する地方企業の存在感が高まっています。
しかし地方の場合、CFOの人材確保がより難しく、IPOへのハードルが高くなってしまっているという現状も同時に見受けられます。

地方企業がCFO人材を確保するためには、比較的人材が豊富な東京その他都市部といった遠隔地での人材採用も視野に入れること、リモートワークなど柔軟な勤務形態を用意することも一つの手段になりえます。都市部に事業拠点を設けることで人材確保が容易になる可能性もあるので、一考の価値はあるものと考えられます。

また当社のような外部コンサルを活用してCFO人材を社内で育成しIPOを達成する企業も増えています。オンラインでの情報共有が発達した今、かつて地方企業が感じていたようなIPOに関する情報格差は少なくなっています。信頼できる外部コンサルタントと出会い、必要な時に必要な支援を受けてIPOを実現することも十分に可能なのです 。

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執筆
ブリッジコンサルティンググループ株式会社<br>執行役員 関西統轄事業部長 公認会計士<br>中山 博行氏
ブリッジコンサルティンググループ株式会社
執行役員 関西統轄事業部長 公認会計士
中山 博行氏
大手製造メーカーでの経理経験と大手監査法人での会計監査の経験により、企業の成長段階における管理部門を熟知している。また、大手会計系コンサルティングファームでの経験を基礎に管理部門の強化支援に取り組む。
クライアントの思いを大切にしつつ、クライアントとすべての関係者が納得できる解を追求することをモットーとしている。
現在は、ブリッジコンサルティンググループ株式会社の関西統括として、西日本拠点の立ち上げ以来、グループ経営業務を中心に1社でも多くのIPO支援ができることを目指して、日々奮闘中。
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