14年ぶりの高水準!新規上場企業数125社の市場別にみる売上高・経常利益【2021年版】

2021年の日本のIPO市場は、新規上場企業数が125社と14年振りに100社を超える高水準となった。なぜ、これほど新規上場企業数が増加したのか?実際にIPOを実現した企業のデータをもとに、船井総合研究所が市場別で解説。
2022年3月3日

1.株式市場激動の2021年

2021年の日本のIPO市場は、新規上場企業数が125社と14年振りに100社を超える高水準となりました。
なぜ、これほど新規上場企業数が増加したのでしょう?
その背景には以下の2つの要因が考えられます。

1つ目の要因は、東京証券取引所の市場再編の影響です。
2022年4月4日より、東京証券取引所は既存の「一部」「二部」「ジャスダック」「マザーズ」の4市場から「プライム」「スタンダード」「グロース」の3市場に再編される予定です。

日本取引所グループ『市場構造の見直し』
※引用:日本取引所グループ『市場構造の見直し』
市場再編に伴い、各市場は独立した市場になります。つまり市場変更という概念がなくなるのです。マザーズ企業が東証一部に昇格したい場合は、市場変更では新規上場と同じ扱いになります。これまで多かったマザーズからの東証一部への市場変更が無くなり、その代わりに主幹事証券による引き受けが活発化したことが上場企業数を押し上げた要因と考えられます。
結果的にマザーズ市場では2021年の新規上場企業数が93社と昨年の63社を大きく上回りました。

2つ目の要因は、2020年をターゲットに上場準備を行っていた企業の上場時期が2021年へとずれ込んだことです。
2020年には東京オリンピックが予定されており、日本経済の活性化やそれに伴い世界から注目が高まるなど期待されていました。しかしコロナ禍に見舞われ東京オリンピックは1年延期、市況も先行きが見えず不透明感が高まりました。2021年になり世界的に経済の持ち直しが見られたことで、上場準備を再開させ上場を実現した企業が一定数あったとみられます。
実際に2020年に上場承認が下りたものの、上場承認取消が行われ、2021年に改めて上場を果たした企業が6社ありました。

ここまでで2021年のIPO市場を振り返りました。2021年に実際に新規上場した企業のデータをもとに、「どの程度の規模の企業がどの市場に上場しているのか?」という点を解説します。

2.2021年に新規上場した企業の業績水準は?

上場する市場によって、求められる形式要件は異なります。
自社の成長性やマーケットの動向、資金調達の必要性、自社の現状や上場目的によって市場を決定する必要があります。また、IPOは約3~5年の準備期間を経て上場審査を受けることが一般的であるため、3~5年後に自社がどの程度の規模まで成長するのかを見据えながら、目指す市場を決めることも市場選択のポイントです。
では、実際にどのくらいの業績があれば上場を実現することができるのでしょうか。2021年に東京証券取引所における本則市場(東証一部・東証二部)ならびに新興市場(ジャスダック・マザーズ)へ上場した企業123社(全新規上場企業125社から福岡Qボードに単独上場した2社を除く)の業績を見ていきます。

2-1.東証一部(6社が上場)
【売上高】
東証一部-売上高

【経常利益】
東証一部-経常利益

※各社「新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)」を基に株式会社船井総合研究所にて集計、いずれも上場直前期(N-1期)の業績

東証一部に直接上場した企業は6社と、全上場企業125社のうち4.8%と割合としては多くありません。
これまではマザーズから東証一部への市場変更では、時価総額の基準が直接上場と比較して優遇されていました。しかし今後は、市場変更の概念はなくなり、申請手続及び審査内容については、新規上場申請手続及び新規上場審査と同様となります(一部例外有)。そのため、過去に多数の事例があったマザーズ市場を経由した東証一部へのステップアップ上場は減少すると考えられます。

2-2.東証二部(8社が上場)
【売上高】
東証二部-売上高

【経常利益】
東証二部-経常利益

※各社「新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)」を基に株式会社船井総合研究所にて集計、いずれも上場直前期(N-1期)の業績

東証一部と比較して企業規模は小さいものの、マザーズやジャスダックといった新興市場よりは大きくなります。

2-3.ジャスダック(16社が上場)
【売上高】
ジャスダック-売上高-MAX,MIN
ジャスダック-売上高-円グラフ

【経常利益】
ジャスダック-経常利益-MAX,MIN
ジャスダック-経常利益-円グラフ

※各社「新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)」を基に株式会社船井総合研究所にて集計、いずれも上場直前期(N-1期)の業績

売上高が50億円未満の企業が全体の約40%を占めています。経常利益については、半数以上の企業が3億円未満で上場をしています。

2-4.マザーズ(93社が上場)
【売上高】
マザーズ-売上高-MAX,MIN
マザーズ-売上高-円グラフ

※各社「新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)」を基に株式会社船井総合研究所にて集計、いずれも上場直前期(N-1期)の業績
※ステラファーマ株式会社はⅠの部に上場直前期の売上の記載がないため上記データに含めない。

【経常利益】
マザーズ-経常利益-MAX,MIN
マザーズ-経常利益-円グラフ

※各社「新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)」を基に株式会社船井総合研究所にて集計、いずれも上場直前期(N-1期)の業績

マザーズへの上場の場合、売上高20億円未満の上場が半数近くを占めます。経常利益についても、2億円未満(赤字で上場含む)で上場した企業が全体の60%以上を占めます。
マザーズでは、上場時の企業価値より、その後の成長性が特に問われます。上場時には、投資拡大期にあり経常利益を計上していない状況でも上場している企業があります。
赤字で上場した企業は20社(マザーズ上場企業の21.5%)で、経常損失の大きかったAppier Groupは2,253百万円の赤字で上場しています。

3.IPO実現に向けて

新規上場=IPOといっても、市場によって売上や利益水準などに違いがあるということをご理解いただけたのではないかと思います。
東京証券取引所の「市場第一部」、「市場第二部」、「ジャスダック」、「マザーズ」のデータを紹介しましたが、 地方市場といわれる札幌証券取引所、名古屋証券取引所、福岡証券取引所への上場や、東京証券取引所の「TOKYO PRO Market」へ上場を目指す場合は、必要とされる数字も異なってきます。

特にTOKYO PRO Marketに関しては、2021年に13社が上場を果たし、注目を集めています。(テクニカル上場である株式会社富士テクノホールディングスは除く)
TOKYO PRO Marketでは、「実質基準」と呼ばれる上場企業にふさわしい健全性を定める基準を満たしている限り、企業規模の大小関係なく、創業間もない企業であっても上場を目指すことが可能です。
ほかの市場では2年必要とされる監査法人による監査期間も1年分でよく、3か月ごとの四半期決算の開示や内部統制報告書の開示も任意であり、上場時や上場後の負担が軽減されています。
さらに近年ではTOKYO PRO Marketからのステップアップ上場の事例も出てきており、TOKYO PRO Marketへの関心が一層高まることが期待できます。

このように今後の成長戦略を踏まえ、自社に適した市場を選択することが上場実現に近づく第一歩なのです。

以上

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執筆
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