2021年度に税・社会保険の書類が消える?行政手続きのクラウド化から企業が突入するクラウド時代を考える

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2021年度に税・社会保険の書類が消える?行政手続きのクラウド化から企業が突入するクラウド時代を考える

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<掲載内容に関する訂正とお詫び>
コラムの中にあります電子申請の普及率に関するデータが最新ではありませんでしたので、公表されている最新データに差し替えをさせていただきました。
ご迷惑をお掛けした読者の皆様に深くお詫び申し上げます。(2018年8月10日)

【訂正内容】
平成28年時点で普及率は11.8%にとどまっており(※1)、9割近くの企業が紙で届出を行っているのが現状なのです。
[訂正前] 普及率8.9%⇒[訂正後] 普及率11.8%
※1)内閣官房IT総合戦略室:行政手続等の棚卸結果等の概要  24スライド目「(参考)改善促進手続の状況」

先月2018年7月3日付の日本経済新聞に、『税・社会保険の書類不要に 企業、クラウドにデータ 官民の生産性向上/起業もしやすく』というタイトルの記事が掲載されました。今回は、本記事に掲載されている行政手続きのクラウド化から、今後企業が直面するクラウド時代と、企業が今から取り組むべき備えについて考えていきます。

2021年には税・社会保険の書類が不要になる?!

記事では、「政府は2021年度を目標に企業による税・社会保険関連の書類の作成や提出を不要にする検討に入った」とあり、今後は源泉徴収票や社会保険の届出書類など「従業員に関する書類」の作成が不要になることが書かれています。企業が行うべき業務の流れは明らかにされていませんが、安全面などの要件を満たした政府認定のクラウドサービスを利用して、給与情報などをクラウド上へアップロードすることが想定されています。その後、行政側がそのデータにアクセスして、手続きを進める形になるということです。

では、なぜこのような動きがでてきたのでしょうか?それは、深刻な労働力人口不足を背景に、官民双方の事務負担を減らして生産性を高める狙いがあるためです。そして同時に、人事・総務部門に人手を割けないスタートアップ企業の創設も後押ししようとしています。なんと、世界銀行が発表した「2018年ビジネス環境ランキング」によると、日本の「起業のしやすさ」は190カ国中106位なのです。記事にも書かれていますが、日本の企業における行政手続きの煩雑さは先進国の中でも突出しており、「従業員に関する書類」の提出は社会保険だけでも全体で年1億件を超える数の申請があるそうです。社会保険の分野では、「e-Gov」という電子申請の仕組みがあるのですが、平成28年時点で普及率は11.8%にとどまっており(※1)、9割近くの企業が紙で届出を行っているのが現状なのです。

将来的にクラウドが当たり前の時代に

では、政府が行政手続きのクラウド化に踏み切ることで、企業にとってどのような影響があるのでしょうか?一言でいうと、企業にとってクラウドが当たり前の時代になり、本格的なクラウド時代に突入することが考えられます。ここからは、今後企業に求められる対応や変化について、いくつかの推測を交えながら示していきます。

その1:基幹システムのクラウド化が加速する

行政手続きがクラウド化されることで、基幹システムにおけるクラウド化が一層進むと考えられます。すでに企業においては、メールやグループウェア、ファイルサーバーなどの情報系のシステムにおいてクラウド化が定着してきています。これは、社外にいても容易にコミュニケーションがとれるというメリットが大きく関係していると考えられます。

基幹システムにおいては、これまでクラウド化のメリットがあまり認知されてきませんでした。しかしこれから、特に人事労務業務の分野においては、行政手続きのクラウド化をきっかけとして、自動化や効率化というメリットがさらに認知されることでしょう。将来的には、企業内における給与システムや勤怠管理システムなどの基幹システムがすべてクラウド化され、それぞれのシステム同士が連携し、人事労務業務が流れるように自動化されるという日も遠くないかもしれません。

その2:社内のペーパーレス化が一層進むように

行政手続きのクラウド化により、企業内の紙や書類を廃止する風潮が定着すると考えられます。企業の中には多くの紙が存在していますが、その中でも廃止される可能性が高いのが給与明細・賞与明細と源泉徴収票です。源泉徴収票の税務署への提出がクラウド化され、紙で提出されなくなることから、社内で配布する給与関連帳票も同時にペーパーレス化されることが考えられます。

その3:従業員とのやりとりにもクラウドが求められるように

源泉徴収票や社会保険の届出書類など、「従業員に関する書類」の届出が効率化されることで、企業の中でも、従業員からの情報収集を効率化する動きが出てくると考えられます。たとえば、源泉徴収票を作成するためには、「扶養控除等(異動)申告書」や「保険料控除申告書」など年末調整申告書の回収が必要になりますが、多くの企業では紙で回収されているのが現状です。また、社会保険の届出に必要な「身上異動届出書」などにおいても、ほとんどの企業で紙が使われています。
今後は、<企業→行政>だけでなく、<従業員→企業>の間においても生産性向上を求めることが必須となるでしょう。すでに最近では、年末調整申告や労務手続きにおけるクラウドサービスは存在していますが、<従業員→企業>の間において、クラウドサービスの活用による情報収集が一層推進されていくことが予想されます。

クラウドが当たり前の時代に

来たるクラウド時代に向けて、企業はどこから取り組めばよいのか?

「これからクラウド時代に突入する」と聞いた方の多くは、「では、どこから取り組むべきか?」と思われたでしょう。ほとんどの企業が電子メールやファイル共有のためのクラウド利用にとどまっている状況ですので、そのような疑問が沸くのは当然のことです。従業員とのやり取りや基幹業務においてクラウドを取り入れることが必須となるこれからの時代に備えるのであれば、「給与業務のクラウド化」から取り組むことが賢い選択です。

「給与業務のクラウド化」から始めるべき最大の理由は、今から給与システムをクラウド化しておくことにより、行政手続きのクラウド化が始まるタイミングで、すぐに政府認定のクラウドサービスを活用できる可能性が高まるためです。

詳細は明らかにされていませんが、政府認定のクラウドサービスに、企業が利用する給与システムを連携できるようにする措置が取られると想定できます。つまり、企業が利用する給与システムを経由して給与情報をアップロードできるようになるということです。この時の措置として考えられるのが、複数のクラウドサービスを連携させるために使われる「API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)」です。「API」とは、簡単に言うと、外部にクラウドの機能を共有して、別のサービスからもその機能を利用できるようにする仕組みのことです。給与システムをクラウドサービスにしておくことで、政府が「API」を公開したときにクラウド同士ですぐにつながり、他の企業に乗り遅れることなく行政手続きのクラウド化に移行できる可能性が高まるのです。

また、人事労務業務の中心となる給与システムをクラウド化しておくことにより、勤怠管理や人事管理などおいても段階的にクラウド化を進めやすくなります。給与システムの中には、もっとも基本的な社員情報が保管されています。給与システムをクラウド化することで、クラウド上にある基本的な社員情報を活用できるようになり、周辺業務のクラウド化をスムーズに進められます。クラウド利用の範囲を広げていくことで、人事労務業務がつながり、生産性を飛躍的に高めることができます。

さらに、給与システムをクラウド化することで、年末調整申告や労務手続きのクラウドサービスと容易に連携できるようになります。これにより、従業員からの情報収集をクラウド上で行い、収集した情報をすぐに年末調整や社会保険手続きに活用できるようになります。さらに、給与・賞与明細や源泉徴収票がクラウド上にアップロードされるようになることで、給与・賞与明細や源泉徴収票のペーパーレス化も実現できるようになるのです。

さいごに

これから突入するクラウド時代に向け、今からどのような備えをするかで、企業の生産性向上の行方は大きく左右されると考えられます。これからのクラウド時代の波に乗れるように、クラウド化について一度向き合ってみてはいかがでしょうか?

いま取り組むべき給与業務のクラウド化「給与奉行クラウド」

※1 内閣官房IT総合戦略室:行政手続等の棚卸結果等の概要  24スライド目「(参考)改善促進手続の状況」