社会保険・労働保険の電子申請義務化に向けて今から準備しておきたいこと

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OBC360°記事でもご紹介しましたが、2020年に一部の法人に対して、法人税などの納税申告において電子申告が義務化されます。
実は、社会保険や労働保険関係についても、同時期に電子申請が義務化されるということをご存知でしょうか。
今回は、「社会保険・労働保険の電子申請義務化」について、対象や具体的な申請方法、また、電子申請に切り替える際に準備しておきたいことなどをご紹介します。

社会保険・労働保険の電子申請義務化の時期、対象企業とは

2017年6月の「規制改革実施計画」で、「行政手続コスト」(行政手続きに要する事業者の作業時間)を削減するため、厚生労働省は特定の法人に対して社会保険・労働保険に関する一部の手続きにおいて電子申請を義務化すると発表しました。
電子申請の義務化は、2020年4月1日以降に開始する特定の事業者の事業年度から適用されます。

社会保険・労働保険の電子申請義務化の対象と「特定の法人」とは、以下のように定義されています。

電子申請義務化の対象となる法人

  • 資本金または出資金額が1億円を超える法人
  • 相互会社(保険業法)
  • 投資法人(投資信託及び投資法⼈に関する法律)
  • 特定目的会社(資産の流動化に関する法律)

つまり、大企業に関わらず「資本金または出資金額が1億円を超える」企業規模であれば、中小企業であっても「電子申請義務化の対象」となります。
また、社会保険労務士や社会保険労務士法人が手続きを代行する場合も、上記のいずれかに該当する法人であれば対象となりますので、注意が必要です。

現在、厚生労働省では、告知パンフレットを作成し、対象となる企業に対して「社会保険・労働保険に関する一部の手続を行う場合には、必ず電子申請で行っていただくこととなりました」と呼びかけており、電子申請義務化の周知徹底を行っています。

電子申請が義務化される「一部の手続き」は、以下のものになります。

健康保険
厚生年金保険
被保険者報酬月額算定基礎届
被保険者報酬月額変更届
被保険者賞与支払届
労働保険 継続事業(一括有期事業を含む)を行う事業主が提出する以下の申告書
・年度更新に関する申告書
概算保険料申告書
確定保険料申告書
一般拠出⾦申告書
・増加概算保険料申告書
雇用保険 被保険者資格取得届
被保険者資格喪失届
被保険者転勤届
⾼年齢雇用継続給付支給申請
育児休業給付支給申請

ただし、労働保険関係の手続き(保険料申告関係)については、労働保険事務組合に労働保険事務が委託されている場合や、単独有期事業を行う場合、中途入社の従業員に対して保険関係が成立した日から50日以内に申告書を提出する場合は、電子申請以外の方法で申請することが認められています。
また、電気通信回線の故障や災害などの理由により電子申請が困難と認められる場合も、電子申請以外の方法が認められています。

電子申請義務化で認められている、2つの手続き方法とは

今回の「電子申請義務化」において認められている手続き方法には、e-Gov(イーガブ「電子政府の総合窓口」)電子申請システムを利用する方法と、外部連携API対応システムを利用する方法の2通りがあります。
かつての電子申請を促す施策では「書面以外の電子媒体」としてCD-Rなどでの提出も可能でしたが、今回の電子申請義務化においては、CD-Rなどの電子媒体は認められず、上記2点の方法から選ぶことになります。

■ e-Gov電子申請システムを利用する方法

e-Gov電子申請システムを利用する場合、自社からダイレクトに申請できるので、申請コストがかからないことがメリットです。ただし、動作環境がWindowsに限られるほか、操作上でも「従業員ごとに1回ずつ申請しなければならない」「提出した申請書の進捗状況を確認しにくい」「誤記入をチェックしづらい」など、作業効率面では逆に負担と感じやすい面が多くあります。
手続きの方法は、e-Gov電子申請システムにて必要な申請情報を入力して、一件ずつ申請を行います。初めて利用する際は、e-Govホームページに解説「初めて使う方に」がありますので、確認しながら申請を行うとよいでしょう。

※イラスト出典:「e-Govオンライン申請入門講座〜実習編」平成28年度版

■ 外部連携API対応システムを利用する方法

ITの進化に伴い、e-Gov電子申請システムとAPI連携した労務系システムを使用して申請する方法も認められています。API連携した労務系システムを使うと、e-Gov単体で申請を行うよりも以下のようなメリットを得ることができます。

  • 既に利用している人事・給与システム等のデータを用いて、申請に必要な添付書類を自動で作成できる。
  • e-Govに入力する上で必要な情報をシステムが集めてくれるので入力ミスがない。
  • 申請データの作成、進捗管理、申請、公文書の取得まで、全ての機能をシステム上の操作画面から行える。
  • プログラムに反復作業の組み込みができ、大量処理でも効率的に実施することができる。
  • 利用するシステムの機能仕様次第では複数の手続きを同時申請することもでき、申請届出事項を入力する際にかかる事務負担を大幅に軽減できる。

ただし、自社に外部連携API対応システムがない場合は、導入費が必要になります。最近では、電子申請に対応しているクラウドサービスも増えていますので、年間利用料のみで導入することも可能になっています。
また、クラウドサービスにすれば、「権限の付与」だけで社会保険労務士や税理士などとも情報共有ができ、さらにスムーズな業務委託が可能になります。
現在、外部連携APIの使い勝手を向上させるため、厚生労働省でも総務省と連携し、ソフトウェアベンダーとの協議を頻繁に実施しており、ユーザビリティの高い外部連携API対応システムの普及に取り組んでいます。

※イラスト出典:2017年3月 厚生労働省「社会保険・労働保険手続等の電子申請の 利用促進に関する取組について

電子申請を行う前に「準備しておくこと」とは

電子申請を行うための届出は必要ありませんが、電子申請を行うには事前準備が必要になります。e-Gov電子申請システムで必要な準備、外部連携API対応システム必要な準備、共通して必要な準備がありますので、それぞれに確認しておきましょう。

共通して必要な準備

● 電子証明書を取得する

e-Gov電子申請システムを利用する方法でも、外部連携API対応システムを利用する方法でも、電子申請を行う場合は、必ず電子証明書を取得しなければなりません。
電子証明書を発行する認証局は複数あり、e-Govホームページ内でも紹介されています。
申請・届出等手続によっては、利用できない電子証明書もありますので、所轄の行政機関に確認のうえ認証局に問い合わせ、電子証明書の発行を受けましょう。
なお、電子証明書の発行には、手数料が必要になります。詳しくは各認証局に問い合わせてください。

● 利用に必要な環境整備(パソコン環境確認、ブラウザ設定、インストールなど)をする

e-Gov電子申請システムを利用する場合は、パソコン環境の確認、ブラウザの設定確認、アプリのインストールが必要になります。
e-Govから直接申請する場合は、対応するOSはWindowsのみとなります。ポップアップブロックが設定されていると正しく作動しない場合があるので、パソコン環境はしっかり確認しておきましょう。
また、専用のe-Gov電子申請アプリケーションをインストールする必要もあります。
詳しい対応環境、アプリのインストール方法については、e-Govホームページで紹介されていますので、参考にしてください。

外部連携API対応システムを利用する場合は、現在自社で使用している労務系システムがAPI連携できるものであれば、電子申請は可能と考えられます。今は使用できなくても、バージョンアップ等で電子申請に対応可能になることもあるため、契約先のベンダーに問い合わせることをオススメします。
また、「給与奉行クラウド」のように、電子申請に対応している給与システムもあります。ただし、今回義務化される手続きの全てには対応していないため、別途労務系システムが必要です。現在、労務系システムをまだ導入していないのであれば、e-Govや既存の給与計算システムとAPI連携できる労務系システムをオススメします。

e-Gov電子申請システムを利用する場合のみ必要な準備

● パーソナライズを開設する

e-Gov電子申請システムを利用する場合は、「パーソナライズ」を開設する必要があります。
「パーソナライズ」とは、よく見る手続の情報や提出をした申請の情報を管理することができる機能のことをいいます。
パーソナライズを開設するには、e-Govホームページの開設画面から必要事項を入力し、パーソナライズIDとパスワードを設定します。詳しくはe-Govホームページ内の「パーソナライズ開設の手順」を参照ください。
よく見る手続きや提出した申請の情報は、到達番号と問い合わせ番号をパーソナライズに登録すれば、パーソナライズ内の「状況照会」画面から確認することができるようになります。

● 添付書類を準備する

外部連携API対応システムを利用する場合は、システム上で必要なデータを収集し添付書類を作成することができますが、e-Gov電子申請システムを利用する場合は、添付する書類を予め用意しておく必要があります。
申請・届出書の添付書類の形式は、申請届出を行う行政手続において限定されている場合があります。e-Gov電子申請システムを利用する場合で、社会保険労務士などに業務委託せず直接申請する際は、適合する形式の添付書類を独自に作成・提出しなければならないので、申請届出を行う前に行政手続案内ページで確認することが必要です。

いずれ来る全企業への「電子申請義務化」に向けて今から対策を!

電子申請の義務化については、今のところ「電子申請をしなかった場合の罰則」などはないようです。しかし、正しく手続きが行われないと申請自体が無効なものと扱われ、事実上受理されない可能性が高いことが予想されます。
また、現在は「特定の法人」として対象法人が定められていますが、いずれその枠は取り除かれ、近い将来、規模にかかわらず全ての企業に義務づけられる日がやってくる可能性もあります。

とはいえ、企業にとっては、この「電子申請義務化」が業務効率化の足がかりになる可能性もあります。今回電子申請が義務化されるのは、手続き件数が多い上位 20 位にコスト削減効果が見込まれる手続きなど、日頃から業務負荷かがかかりやすい手続きが対象ですので、うまく活用できれば現状の業務を効率化でき、働き方改革の推進にも貢献できるでしょう。

もし「手続き自体が難しい」「よくわからない」ときは、社労士など専門家のサポートを受けるのもいいですが、OBCの「奉行Edge 労務管理クラウド」のように、最近は労務申請手続きの電子申請に対応するサービスも多くリリースされていますので、そうしたサービスを利用するのもよいでしょう。
例えば、「奉行Edge 労務管理クラウド」は、各種届出書の作成から電子申請まで、社会保険、労働保険の各手続きがシステム上で行えます。人事データや給与管理システムともデータ連携ができるので、手間をかけず簡単に申請することができます。

奉行シリーズ以外の給与計算システムとも連携できるので、ぜひ活用してみてはいかがでしょうか。

詳しくは、「奉行Edge 労務管理クラウド」をご参照のうえ、「導入のご相談フォーム」からお問い合わせください。

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