東証マザーズ・名証セントレックス、2市場同時上場を実現。メイホーホールディングス 代表・尾松氏、上場体験談

2021年6月、東証マザーズ・名証セントレックスへの2市場同時上場を果たしたメイホー・尾松氏による上場体験談。尾松氏が考えるipoとは?メイホーのipo準備スケジュールは?地域創生を掲げ、M&Aを成長戦略に上場を実現した尾松流上場のポイントを語る。
更新:2022年6月30日
  • ※本コラムは、2022年3月14日時点の記事です。2022年4月4日より新市場区分(東京証券取引所:プライム・スタンダード・グロース/名古屋証券取引所:プレミア・メイン・ネクスト)に再編されています。旧市場名は新市場名に読み替えてご覧ください。

1.2021年6月、東証マザーズ・名証セントレックスの2市場同時上場を実現

建設関連サービス事業・人材関連サービス事業を手掛ける株式会社メイホーホールディングス。地域創生を掲げM&Aを成長戦略として大きく飛躍し、2021年6月2日に東京証券取引所マザーズ市場・名古屋証券取引所セントレックス市場の2市場同時上場を果たしました。

メイホーホールディングスはなぜ上場を選択したのでしょうか。
上場の軌跡と上場後に描く未来とは?
メイホーホールディングス 代表取締役社長 尾松氏が語ります。

<会社概要>
会社名:株式会社メイホーホールディングス
代表者名:代表取締役社長 尾松 豪紀
本社所在地:岐阜県岐阜市
創業:1981年7月25日(前身 株式会社メイホーエンジニアリング)
事業内容:建設関連サービス事業/人材関連サービス事業/建設事業/介護事業
資本金:445百万円
連結業績(2021年6月期 通期):売上高5,274百万円、経常利益403百万円(経常利益率7.6%)
従業員数:898名(2021年12月31日現在)
証券コード:7369

2.タバコ屋の角を曲がったら上場がある

当社は建設関連サービス事業、人材関連サービス事業等、暮らしを支え、行政を支える事業を全国及び海外で展開しています。M&Aを成長戦略として、地域を支えてきた中小企業と仲間になり、グループ全体で成長し、地域創生を実現することをミッションとして掲げています。

メイホーホールディングス グループミッション
▲メイホーホールディングス グループミッション
1981年の創業以来、地域社会に根付いて地道に業績を伸ばしてきた当社がなぜ上場をめざすことになったのか、それは本当にひょんなことがきっかけでした。

2005年頃のこと、ある先輩経営者にこういわれたのです。
「上場なんて、そこのタバコ屋の角を曲がったところくらいにある。利益が1億円を超えたら上場はすぐそこだ。」と。
当時の利益は1億円を少し切るくらい、上場なんて考えたことがなかった私が上場を意識した瞬間でした。名証セントレックスという新興市場の存在もこの時初めて知り、志も曖昧なまま、上場を決意したのです。

3.2009年、リーマン・ショックで上場を一時断念

監査法人のショートレビューも受け、主幹事証券会社も決まっていたところにリーマン・ショックが襲います。このタイミングで上場をしても、上場の目的の一つである資金調達が出来ないのではないかという懸念から、いったん上場を延期することに決めました。

しかし上場を諦めたわけではありませんでしたので、監査法人には引き続き会計監査を続けてもらい、主幹事証券会社とは再チャレンジを約束していったん契約を終了することになりました。

上場を目指した当初は、軽い気持ちでした。
しかし、この当時の世の中の閉塞感や地方経済の衰退を懸念する中で「この状況を打破したい、うちの会社が上場できれば地方の会社が元気になり、地域創生というミッション達成に近づける。」と思うようになりました。
延期をしたことで、理念を実現するための手段として上場を目指すという志が明確になったのです。

4.2018年1月、 上場に再びチャレンジ

2018年1月、再チャレンジに向けて上場プロジェクトを発足しました。
それから半年後、直前々期に入った2018年7月以降は上場に向けての課題抽出と改善、社内体制の整備・運用に取り組みました。

当時、非上場企業なりに社内体制を整備してきたつもりでした。この時点では「本当にここまでやる必要があるのか?」という気持ちが心のどこかにあったのも事実です。
しかし準備を進めていくうちに、だんだんと上場企業に求められるレベルがわかってきました。今思うと、監査法人や主幹事証券会社に認めていただけるような上場企業レベルには至っていなかったのです。

上場までのスケジュール
▲上場までのスケジュール

5.直前々期、社内体制整備に苦しむ

直前々期は社内体制を整備する時期です。しかしこの時期は売上・利益も上場に向けて確実に伸ばさなければいけませんので、通常業務と体制整備の両立が非常に大変でした。
特に大変だった点を振り返ります。

①月次予算統制(月次での予実分析資料作成)
その頃の当社では売上の定義が曖昧な部分がありました。恣意的に売上が変化できるような要素が存在したのです。
このタイミングで恣意的な要素をすべて無くし、予実管理及び分析、未達の場合の対応策等、しっかりと数値で示すことを徹底しました。

②社内規程、マニュアルの整備・運用/業務フローの作成
これには大変苦労しました。
社内規程と業務フローは外部のコンサルタントに作成を依頼しました。
しかし社内規程は、途中から作ることが目的に変わってしまい、実態に即したものが出来ませんでした。結果的に自社で第二版を作ることになってしまいました。

業務フローも、まずは各グループの社長と外部コンサルタントで作成しましたが、実務に関しては小さい会社であろうと担当者しか把握していないことも多く、正確な業務フローが出来ませんでした。結局これも自社で作り直すことになりました。
社内規程と業務フローに関してはもっと早いうちから対応しておくべきでした。

直前々期における上場への課題・社内体制整備
▲直前々期における上場への課題・社内体制整備

6.2021年6月、上場を実現

2020年3月、主幹事証券会社による審査が始まりました。
当初の計画では審査の回数は決まっていましたが、進捗次第で計画よりも審査の回数が増えることもあります。
自社のペースで審査を進めることはできませんし、審査の最中は審査がいつまで続くのかもわかりません。先が見えず非常に不安でした。

そして申請期になり、主幹事証券会社による審査をクリアすることができました。
続けて取引所審査です。取引所からくるヒアリング事項に対して、質問が来てから7日後に返事をしなければなりません。
取引所審査に対応してくれた当社の担当者が、「夜中に目が覚めてしまい、審査対応が気がかりで朝の4時に会社に来てしまった」と話していたことがあります。当時、もちろん残業時間は厳しく管理していました。しかし、そのぐらい必死になって、全社一丸となり対応しなければ達成できないことでもあります。このときの担当者のプレッシャーは相当なものだったと思います。担当者の話を聞き涙が出ました。絶対に上場を達成しなければならないと思いました。

そして2021年4月28日の上場承認を経て、2021年6月2日に東証マザーズ・名証セントレックスに上場を果たすことができたのです。

7.上場を実現させた2つのポイント

上場を実現することができたポイントは2つあります。

まず1つ目、上場できると信じ続けたことです。上場はブラックボックスです。上場できるかどうかは実際に上場するまで分かりません。社員に非常に負担をかけますし、利益も削ります。「これだけのことをやって上場できなかったらどうしよう、みんなに申し訳ない・・・」、そういう不安が常につきまといます。
この不安に耐えられるかどうか、自分たちを信じ続けられるかどうか、これが非常に重要なポイントです。

そして2つ目、理念を実現させたいという強い思いがあったことです。
上場を本気で目指せば誰でも実現することができます。しかし何のための上場か、実現したいビジョンは何かが明確でないと上場は難しいでしょう。

上場はあくまでも手段でしかないことを認識し、理念やビジョンを実現させたいという強い思いを持ち自分を信じることで、当社のような会社でも上場を実現させることができたと思っています。

上場時の思いを語る尾松氏
▲上場時の思いを語る尾松氏

8.地方企業における上場の意義

①理念実現のための最適な手段
上場企業になることで得られる資金調達力、知名度・信用力などは、地域に根付いた事業を営む地方の一企業が簡単に得られるものではありません。
当社は地域社会を支える企業の永続的な発展を支援し、雇用の創出を通じて地域創生に貢献することをミッションとして掲げています。上場企業になり、それらのメリットを享受することが、ミッションを達成し理念に近づく最適な手段であると思っています。

②地方企業に活力を
田舎の中小企業だった当社が、名古屋証券取引所から全国に羽ばたいていく姿をお見せすることが地方企業の活性化につながると考えています。

東京に比べて圧倒的に地方企業の上場社数は少ないのですが、実際には地方企業の上場は東京以上に1社あたりのサポ―ターはたくさんいると思っています。東京であれば、数百ある上場準備企業のうちの1社でしかないかもしれませんが、地方では唯一になれる可能性があります。
名古屋証券取引所には多くの投資家とのご縁を頂戴しましたし、その他にも証券会社や信託銀行、地方銀行、上場コンサルティング会社等、地方企業の上場を熱く応援してくれる企業はたくさんあります。意外と有利とすら言えるかもしれません。

9.これからのメイホーグループ

これからのメイホーグループ
▲これからのメイホーグループ

私たちメイホーグループは長年にわたり地域を支えてきた中小企業経営者の考え方に手を打つことで、地域中小企業を永続的発展的な企業に変えていきます。そしてこれらの地域中小企業を結ぶ全国ネットワークを築くことで地域創生の旗手となることを目指していきます。

また今後は上場企業としての責任を果たすことも求められます。
売上・利益を上げ続けるだけでなく、当社の理念やビジョン、具体的に何を成し遂げている会社なのかを投資家をはじめとする多くの方々にご理解いただく必要があります。そのためのブランディングを積極的に行っていきます。

2005年、「タバコ屋の角を曲がったところに上場がある」という軽い気持ちで名証セントレックスを目指すと決めてから17年。ついに当社は、東証マザーズ・名証セントレックスの2市場同時上場を果たすことができました。

しかし上場はゴールではありません。あくまでも理念やビジョンを実現するための手段であり、通過点です。当社は、これからも理念・ビジョンの実現に向けてグループ一丸となって邁進してまいります。
皆さんも、皆さん自身の発展を信じ、上場を実現させませんか。

※本上場体験談は、2022年2月25日開催ウェビナー「メイホーホールディングス代表・尾松 豪紀氏 上場体験談」をもとに構成しています。

■地域を支える企業を結び経営効率化、人材、業務連携をサポートするメイホーホールディングス
地域を支える企業を結び、経営効率化をサポートするメイホーホールディングス
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執筆
株式会社メイホーホールディングス<br>代表取締役社長<br>尾松 豪紀氏
株式会社メイホーホールディングス
代表取締役社長
尾松 豪紀氏
1992年、株式会社メイホーエンジニアリング入社、2001年に同社・代表取締役に就任。2017年、株式会社メイホーホールディングスを設立し持株会社体制に移行。2021年6月、東京証券取引所マザーズ市場および名古屋証券取引所セントレックス市場上場。
現在、同社代表取締役社長として、16社、900名の企業グループの経営を行う中で、「永続的発展的な企業を創る」「全従業員のしあわせを追求する」「地域社会の発展に貢献する」の3つの企業理念のもとに、建設関連から、人材派遣、介護等、地域を支えてきた中小企業を結び、企業の経営効率化、人材、業務連携をサポートする「地域企業支援プラットフォーム」を通じて「地域のサポーター企業」を育成している。
著書:「地域創生」の法則(東洋経済新報社、2021年7月刊)

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