「IPO後や将来の成長を見据えたシステム選定を」。株式会社CINCが語る、システム選びの勘所

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2021年10月に東証マザーズ市場(現:東証グロース市場)へIPOを果たした株式会社CINC。「勘定奉行クラウド」などの導入により、権限管理や承認フローをシステムで担保し、IPO審査を乗り越えるガバナンス体制の構築につながりました。IPO準備期から現在に至るまで経理財務を統括してきたマネージャーにお話を伺いました。

この記事でわかること

  • 株式会社CINCがIPO準備のために整えた、上場に耐えうる経理体制
  • 勘定奉行を長年使い続ける理由とその評価
  • 奉行シリーズのデータ連携がもたらした経理業務の変化
  • IPO準備企業が会計システム選定で重視すべきポイント

マーケター向けキーワード調査・分析ツール「Keywordmap」の販売とマーケティングコンサルティングを主軸とする株式会社CINC。同社は2018年からIPO準備を本格化するなかで、上場に耐えうる経理体制の整備が急務となりました。オンプレミス環境での運用に加え、承認フローの未整備や管理体制のゼロからの構築が課題となり、現場との調整にも多くの工数を要していたといいます。
そこで同社は、内部統制要件に対応できる「勘定奉行クラウド」などを導入しました。その結果、権限管理や承認フローをシステムで担保できる体制を確立。監査法人からの指摘なく審査を乗り越えられるガバナンス体制の構築につながっています。今回は、IPO準備期から現在に至るまで経理財務を統括してきた、経理財務部マネージャーの小野田淑恵様にお話を伺いました。

<IPO準備での会計システム選定・リプレイスの観点>

  • 成長を見据えた拡張性と、上場企業経理に耐えうる操作性・機能
  • 内部統制およびSOCレポート提供など、監査対応を支える体制
  • IPOスケジュールを踏まえた、無理のない導入・定着まで見据えた計画

【会社情報】

企業名:株式会社CINC
設立:2014年4月
社員数:105名
市場:東京証券取引所 マザーズ市場(現:グロース市場)
上場日:2021年10月26日
事業内容:マーケター向けのキーワード調査・分析ツール「Keywordmap」の販売(ソリューション事業)とマーケティングコンサルティング事業の2本柱で事業を展開。

【インタビュイー紹介】

経理財務部 マネージャー 小野田 淑恵 様

IPO支援の税理士法人に約7〜8年在籍し、複数社の経理整備を支援。前職でIPOと上位市場への市場変更を経験したのち、2019年にCINC社へ入社。現在は経理財務部マネージャーとして、部長・メンバー2名の4人体制で、月次決算から開示書類の作成まで担当する。

1.IPO準備のために整えた、上場に耐えうる経理体制

株式会社CINC 経理財務部 マネージャー 小野田 淑恵 様
▲株式会社CINC 経理財務部 マネージャー 小野田 淑恵 様

-はじめに、御社の事業内容と小野田さんの経歴を教えてください。

小野田様)弊社は、マーケター向けのキーワード調査・分析ツール「Keywordmap」の販売と、マーケティングコンサルティングの2本柱で事業を推進しています。

私自身は以前、IPO準備企業の経理周りの整備を支援するコンサルティング業務に7〜8年携わりました。ご支援する企業様のIPO準備が後半になると、CFOの方にバトンタッチして支援を終了することが多かったのですが、最後まで上場を自分で経験したいと思い、IPOを目指す企業へ転職しました。

そこでIPOと当時の一部市場への指定替えを経験し、その後ご縁があって、2019年にCINCに入社。現在は経理財務部のマネージャーとして、部長・メンバー2名の4人体制で、請求書の発行や、月次決算から税務処理、開示書類の作成まで対応しています。

-IPO準備はどのような状況で始まりましたか。

小野田様)2018年から本格的な準備が始まり、私が入社した2019年時点ではすでに整備が動き出していました。私の入社直前に、前任担当者が勘定奉行を導入していました。

IPO準備において求められるのは、ガバナンスと内部統制の確立です。そこを軸に、社内の管理体制をゼロから作り上げていく必要がありました。承認フローを整備しようとすると、現場からは「動きが遅くなる」「今まで自由にできていたのに」という声も上がります。反社チェックや与信管理、物品購入申請や稟議書の整備といった手続きも、その必要性をひとつひとつ丁寧に説明しながら理解を得ていくしかありませんでした。

例えば物品購入申請であれば、「会社が適正に取引を行っていることを対外的に証明すると同時に、個人を守るという側面もあります。例えば、『会社の金を私的に使ったのではないか』『不適切な業者と取引したのではないか』と疑われるリスクから守るためです。また、申請なしで各自自由に買ったものの、予算を超過してしまったからこれは精算できない。ということになるのも困りますよね。」というように申請する個人にとっても必要な作業であることを丁寧にお伝えするようにしていました。

「ルールだからやってください」と言うだけでは、その場では動いても継続しません。理由への共感があって初めて、ルールは現場に根付くと思っています。制度設計と社内調整を同時に進めるのが、IPO準備の経理担当者の役割です。

2.上場企業経理に適した操作性と安心感。勘定奉行を長年使い続ける理由

株式会社CINC 経理財務部 マネージャー 小野田 淑恵 様

-勘定奉行を使い続けてきた理由を教えてください。

小野田様)一言で言うと、安心感と使いやすさです。特にデータのインポート・エクスポートが簡単にできる点が、資料作成や他システムとの連携においてとても助かっています。Excelへの出力も画面上のアイコンをクリックするだけですし、印刷もその場で実行できます。画面で確認した通りのものがすぐ出てくるという当たり前のことが、日々の業務では意外と重要です。また、勘定科目・部門・取引先が一画面に揃って表示され、借方と貸方を自分で選ぶ形式になっていて、簿記で学んだ通りのイメージで仕訳を入力できるため、新人でも入力時に困ることがなかったと言ってます。こうした高い操作性の積み重ねが、経理の現場では重要です。

勘定奉行クラウド 合計残高試算表
▲勘定奉行クラウド 合計残高試算表

-上場企業の経理が使うシステムとして、勘定奉行はいかがでしょうか。

小野田様)私はとても助かってます。弊社の子会社では規模が小さいこともあり別のクラウド会計システムを導入しましたが、経理の知識がある担当者にとっては使いにくい場面が出てきました。例えば、交通費を入力すると相手科目が自動で設定されてしまいます。弊社では社内の交通費は給与と一緒に支払うため「未払賃金給与」を設定していますので、社外の方に交通費を払う場合はそれを毎回修正しなければならないのです。

簿記を学んでいない方が経理を担当するケースにはとても便利な設計だと思いますが、上場企業の経理となると発生主義での処理や資産除去債務への対応など、高度な会計基準への対応が求められます。私としては貸借を自分で選んで計上していく方が安心です。

また、子会社で別のクラウド会計システムを使うなかで、シリーズ間でUIが統一されていない部分があり少し戸惑いがありました。債務奉行や固定資産奉行を追加で導入した際も、画面の構成や操作の流れが勘定奉行と共通しているので、他のメンバーに聞いても、操作で困ったことはなかったと言っています。

さらに付け加えると、監査法人から監査の際に提出を求められる「SOCレポート」や「ブリッジレター」が追加費用なしで提供されることも大変ありがたいです。システムベンダーによっては有料での提供であったり、上位プランでないと対応できないケースもあると伺っています。あらかじめ対応されている点は安心して利用できるポイントだと感じています。

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3.機能進化とシリーズ拡張が生んだ効率化。債務・固定資産奉行との連携で変わった経理現場

株式会社CINC 経理財務部 マネージャー 小野田 淑恵 様

-セキュリティ面で、意識していることがあれば聞かせてください。

小野田様)勘定奉行クラウドにはIPアドレス制御機能があり、登録した拠点からのアクセスのみを許可する設定ができます。弊社でもこの機能を活用し、意図しない場所からのアクセスをシステム側で遮断しています。

権限管理も細かく設定しており、勘定科目の追加権限は、管理職以上に限定し、科目を追加する際は必ず稟議書を通す運用にしています。承認の階層もシステムで管理しており、メンバーが入力した伝票は私が承認し、私が処理したものは部長が承認する形をとっています。

-ほかに機能面で特に役立っている点はありますか?

小野田様)汎用データの取り込みが使いやすい点も重宝しています。どの列に何が入っているかを自分で紐付けられる形式なので、売上仕訳や給与データをExcel経由で取り込むパターンなど複数作っており、手入力の作業はかなり減っています。

勘定奉行クラウド 仕訳伝票データ受入
▲勘定奉行クラウド 仕訳伝票データ受入

シリーズ連携の面では、支払いの件数が増えてきたタイミングで債務奉行を追加しました。入力したデータを勘定奉行に確認しながら連携できますし、振込のFBデータも簡単に作れるようになっています。
固定資産は以前、別のシステムで管理していましたが、四半期決算への対応が難しかったため固定資産奉行に移行しました。同じシリーズで連携できるため、データの突合作業もなくなりました。

サポート体制も充実しています。導入当初はリモートで画面を共有しながら操作を一緒に確認していただき、今は勘定奉行に搭載されたAIアシスタントに、困ったことをそのまま話しかけるように入力すれば答えが出てきます。以前はマニュアルを探す必要がありましたが、大きく変わりました。顧問税理士も専門家ライセンスでシステムにアクセスしてくださっており、消費税の区分設定など細かい部分までリモートで確認・指摘していただいています。

4.「IPO後や将来の成長を見据えた選択を」IPO支援の経験者が語る、システム選びの勘所

-IPOを目指す企業が会計システムを選ぶ際、どのような点を重視すべきでしょうか。

小野田様)システムの載せ替えは、並行稼働の期間やデータの移行・検証、何年分を新システムに載せるかの判断など、手間と時間がかかりますので、数年後の成長や規模感を見据えて、長く使っていけるシステムを選ぶといいのではないかと思います。その時々で使いやすそうなものやコストだけで選んでいくと、会計、経費精算、支払管理、固定資産とシステムがバラバラになりがちです。

弊社でも経費精算は少ないので他社システムを利用しておりますが、コストと相談しつつ、可能な範囲で同一シリーズで揃えると、他社システム間の連携に係るストレスもなく、業務全体の流れがスムーズであると感じます。勘定奉行・債務奉行・固定資産奉行はシリーズ内で連携ができるので、データをそのまま受け渡せます。受け入れ前と受け入れ後のチェックの手間が手動に比べて大幅に削減できます。

もうひとつは、J-SOXのIT統制の観点です。監査では人の手が介在するところに不正や間違いが起こるとみられてしまいます。そのため仕訳連携も手動ではなくシステム間で自動連携することが望ましいです。シリーズで揃えておくことの価値は、効率化と内部統制の面で非常に大きいと感じています。

-最後に、これからIPOを目指す経理担当者へメッセージをお願いします。

小野田様)会計基準も内部統制の考え方もそう頻繁には変わりません。だからこそ、操作性が高く、シリーズで連携でき、監査法人やIPOにかかわる関係者からの信頼も厚い。そういったシステムを早い段階で導入しておくことが、準備を円滑に進めるうえでの大きな土台になると感じますし、数年後の成長や規模感を見据えた選択が、結果として一番の近道だと思います。

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