withコロナの海外子会社グローバル経営管理-ガバナンス体制、決算体制維持や不正リスクについて

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人の移動が制約されるwithコロナ時代。今回は海外子会社のガバナンス体制及び決算体制維持のポイント、影響を大きく受けている内部監査と不正リスクについて、人の移動を前提としない取り組みや、合わせてアウトソーシングやDXの事例も解説します。

目次

1. コロナ禍で海外子会社管理に頭を悩ませる日本本社が急増

新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るう中、海外子会社を持つ日系企業では、現地法人の管理・運営にこれまで以上に頭を悩ませています。
当社、フェアコンサルティンググループは世界15ヵ国27拠点に直営の事務所を有する会計事務所系コンサルティング会社であり、クライアントは99%超が日系の現地法人又は本社ですが、新型コロナウイルスの影響を受けて、クライアントからご相談いただく内容が大きく変わってきています。

ここ数年多かった海外への投資(M&Aや進出)のご相談よりも、海外子会社の管理・運営に関するご相談が大半を占めるようになりました。コロナ禍で各国の国境が事実上閉鎖され、海外子会社の状況が把握できない中、この機に子会社管理体制を整備しなければならないと意識されている企業が増えています。

2. 人の移動が極めて制約を受ける事態に

新型コロナウイルスの蔓延がもたらした状況を一言で表現すると「人の移動に極めて制約を受ける事態」です。ウイルスは人同士の接触により伝染するため、各国政府主導で以下の2種類の制約が課されております。

  1. ①ロックダウン、サーキットブレーカーにより、国・地域の中でも外出の制約を受け、在宅などでのワークを求められる
  2. ②国境が事実上閉鎖されるなどし、他国への渡航に制約を受ける

2020年7月時点で、世界での感染者は増加する一方ではありますが、各国濃淡はあるものの経済を優先して①の制約は徐々に解除されてまいりました。一方で②の制約はまだまだ時間がかかることが予想されております。

特に②の影響を受けて、日本企業のマネジメントの観点から下記のような状況にあります。

  • 駐在員が日本に帰国し、本社から赴任している管理職が不在の状態が続く(インド、インドネシア、フィリピン等で顕著)
  • 本社やシンガポール等の地域統括拠点から出張ができず、出張によって対応していた業務の進捗が芳しくない
  • 新設拠点に駐在員が赴任できない、機械は現地に到着しているが据付ができず業務が開始できない

3. 2020年3月期決算における影響

報道によると、3月決算企業において2020年3月期の決算を遅延させた割合は実に30%とのことです。その割合は海外売上高が大きい企業ほど高く、決算発表を遅延した日数も長くなる傾向にありました。

具体的に弊社にも下記のような相談を受けました。

  • 欧州子会社の決算を、毎年日本本社の担当が出張して締めていた。今年は出張ができず遠隔で決算できるか心配。
  • インドがロックダウンされ、インド子会社の担当からフェアコンサルティングインドに記帳のための証憑が渡すことできない。(フェアコンサルティングインドではスタッフが在宅でも業務を進められる環境は整えておりました)
  • オーストラリア子会社の倉庫での実地棚卸に会計監査人が立ち会えず、監査が困難な状況。(カメラをオンにしたパソコンを持った現法担当者が倉庫を歩き回り、リモート棚卸監査を行いました)

日本国内における業務も緊急事態宣言の影響を受けましたが、日本よりも厳しい外出制限が敷かれた国も多く、普段から日本等統括拠点からの出張を前提とした決算体制であったこともあり、海外子会社の決算業務が連結決算業務全体に与えた影響が大きかったようです。

4. 本社の目が行き届かないことによる不正リスク

弊社が当コラムと同様のテーマで開催したウェブセミナーのアンケートにて、最も新型コロナによる影響を受けている業務は“内部監査”でした。人の移動が制約を受けた状態において、多くの企業で2020年度の内部監査業務が止まったままのようです。
2月~3月にかけて、一旦今年の海外内部監査スケジュールを延期した企業が多いのですが、その頃はここまで“国境を超える制約”が長引くことを想定されていない方も多かったのではないでしょうか。現在では2020年内の出張を断念される企業もあり、海外の内部監査を1年以上延期しても大丈夫かと悩まれている方もいらっしゃいます。

近年、日本企業の海外進出が進む中で、海外子会社を起因としたグループガバナンスインシデント事例が増加傾向にありました。報道では金額の影響が大きい中国や欧米のインシデントが目立つのですが、フェアコンサルティンググループへの相談では金額は小さいもののASEAN諸国や中南米でも頻発しているイメージがあります。不正の種類には、不正会計、横領等がありますが、本社からのガバナンスが適切に働いていれば防げるものがほとんどです。
それが現在、駐在員の帰国や内部監査の延期によって本社からの目がより一層行き届かなくなり、グループガバナンスのリスクが増大している可能性は高まっていると想定されます。

5. 人が移動できないことを前提としたガバナンス体制

このように新型コロナウイルスの影響を多大に受け、長期化が想定される中で、どのようにグローバルなガバナンス体制、あるいは決算体制を維持していくべきなのでしょうか。“人が移動できないことを前提とした”ガバナンス体制の構築が急務になっているといえるでしょう。ガバナンス体制維持の観点から、現地法人にいかに“見られている意識”を残すかも重要です。

フェアコンサルティンググループでは、長年クライアント様に提供してきたソリューションに、コロナ禍における体制強化の大きなヒントがあると考えました。そのソリューションとは、次の2点です。

  1. 現地外部リソースの活用(アウトソーシング)
  2. ボーダレスな情報基盤の整備(DXデジタルトランスフォーメーション)

それでは、この2点のソリューションを事例と共に紹介してまいります。

6. ①現地外部リソースの活用(アウトソーシング)

フェアコンサルティンググループでは、展開する世界15ヵ国を中心に会計・税務・労務のアウトソーシングを実施してまいりました。その数は1000社近くになります。
以下は、一例としてシンガポールでのアウトソーシングメニューです。

法人運営 カンパニー・セクレタリー / 居住者ダイレクター / 住所使用
会計・税務 記帳代行 / 決算書作成 / 連結決算報告 / (サブ)連結決算代行 / 会計監査支援 / 法人税申告 / GST申告 / 内部監査
駐在員・従業員 個人所得税申告 / 給与計算

国地域によって制度の違いからアウトソーシングメニューは異なってくるのですが、各国での導入時に、既存のお客様の業務を整理しお客様との役割分担を明確に定義します。このプロセス自体が業務改善につながることもあります。

ここで、コロナ禍でも参考いただける当社の特徴的なアウトソーシング事例を紹介いたします。

① 海外内部監査のアウトソーシング

フェアコンサルティンググループでここ数年急増しているアウトソーシングのメニューです。日本本社の内部監査担当と内部監査方法を調整し、各海外子会社の内部監査をフェアコンサルティングの近隣拠点が日本人と現地人の会計士がチームを組んで代行いたします。以下の効果があります。

  • 現地監査の経験豊富なチームが担当するため、内部監査品質が向上
  • 世界各拠点の内部監査品質が安定
  • 内部監査サイクルを短縮することができる
  • 現地リソースを活用するため、大幅なコスト削減を実現

前述のとおり、コロナ禍で海外の内部監査がPENDINGになっている企業様には参考にしていただきたい事例です。

② ASEAN包括アウトソーシング

シンガポールの地域統括会社様とフェアコンサルティングシンガポールで進めているアウトソーシングメニューです。シンガポール法人のアウトソースだけでなく、タイ、マレーシア、インドネシア、香港 などASEAN+αの地域統括会社の会計税務業務を一括してフェアコンサルティンググループが代行しています。
地域統括拠点を有する大手企業ですが、連結決算スケジュールは非常にタイトで、フェアコンサルティンググループのアウトソーシングを活用いただいています。
以下の効果が出ております。

  • シンガポール国内でコミュニケーションが完結し効率的、状況に応じて東京本社にもフォローできる安心感がある
  • ASEAN拠点の業務量拡大に対する自社リソース増強をケアする必要がなくなる

これはあまり意識されていない企業も多いのですが、海外管理業務をアウトソーシングされると、結果的にコスト削減になることが多くあります。
日本での人件費よりも、日本人駐在員を海外拠点にアサインするコストは諸手当や税務負担分高くなり、アウトソーシングのコスト削減効果は海外の方がより高くなる傾向にあるのです。

7. ②ボーダレスな情報基盤の整備
(DXデジタルトランスフォーメーション)

日本でも4月7日に緊急事態宣言が発令され、その前後から多くの方が在宅勤務を経験されたかと思います。そのワークスタイルを実現する手段がオンライン会議システム等の情報技術でした。
このコロナ禍をきっかけに、IT後進国である日本でもデジタルトランスフォーメーションが進むと見込まれております。
海外ガバナンス、決算という観点から重要なポイントは、デジタルトランスフォーメーションで得られる手段が最初からボーダレスであるということです。これは、特に国境を越えた移動の制約が大きい状況ではより有効な手段であると言えるでしょう。

ここで、コロナ禍でも有効に活用できたボーダレスな情報基盤を紹介いたします。

① オンラインストレージ

フェアコンサルティンググループでは、日頃からクロスボーダーM&A等秘匿性の高い情報を、法人を越えてやり取りする機会が多く、セキュアなオンラインストレージを活用してまいりました。
それが、今回のコロナ禍でロックダウン等が起きた状況で、書類の手渡しや郵送に代わる手段として活用することができました。例えば記帳代行に必要な証憑などは、スマートフォンのカメラで撮影し、フェアコンサルティングとの共有オンラインストレージにデータを格納することで記帳や決算業務を進めることができたのです。

② クラウド会計システム、業務システム

世界27の都市に拠点を展開するフェアコンサルティンググループでは、ロックダウンや緊急事態宣言の影響を受け、一時期は20を超える拠点でオフィスに出社できない状況が発生いたしました。
記帳代行や決算支援等の業務を止めることなく進めることができたのは、ほとんどのシステムがクラウド化することができていたためです。セキュリティが高く、ネットワークの制約を受けにくいSAAS型のクラウドシステムが有効でした。
クラウドシステムのメリットは在宅勤務にも対応できるだけではありません。ボーダレスでもあるのです。実際にフェアコンサルティンググループでは、欧米やシンガポールなど人件費の高い国の記帳業務を、日本など生産性の高いスタッフが揃う拠点でクラウドシステムを用いて行っております。

8.withコロナ時代、今こそ海外子会社管理体制に変革を

  1. 現地外部リソースの活用(アウトソーシング)
  2. ボーダレスな情報基盤の整備(DXデジタルトランスフォーメーション)

の2点は、新型コロナウイルスの影響が出る以前から注目されていた手段でした。新型コロナウイルスの影響が長期化する中、海外子会社管理体制の変革に着手するタイミングかもしれません。

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