コロナ禍の労務にも活かせる!労働条件通知書の電子化とは

このエントリーをはてなブックマークに追加
post137

労働条件通知書は、雇用契約を結ぶ時に欠かせない重要書類の一つです。この労働条件通知書が、現在メールなど電子手段で交付できるようになっていることはご存じのことでしょう。
解禁となって1年が過ぎ、多くの企業で対応も進んでいると思われがちですが、ある調査では「電子化を検討したいという現場の声があるにも関わらず未対応」という企業も少ないことが判明しています。
コロナ時代と呼ばれる現在、在宅勤務/テレワークの普及に伴い多くの業務がデジタル化されています。労働条件通知書の電子交付の解禁は、時代に即した業務スタイルとして大いに役立つはずです。
今回は、労働条件通知書の電子化について、概要から交付に当たっての注意点などを解説します。

労働条件通知書とは

労働条件通知書は、企業(使用者)がその労働条件を従業員に提示するために作成する書類のことです。
労働基準法では次のように定義されています。

「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない」

(労働基準法第15条1項より)

労働条件通知書の交付は「企業の義務」となっており、雇い入れの際、労働者に交付するよう強く行政指導が行われています。
労働条件通知書は、契約書ではないため押印やサインは不要です。交付対象は、正社員はもちろん、パートやアルバイトといった労働者にも及びます。万が一「労働条件を書面でもらっていない」「通知された労働条件が労働基準法を満たしていない」などが発生した場合、労働基準法第15条第1項違反、パートタイム労働法第6条第1項の違反となり、罰金(労働基準法では30万円以下、パートタイム労働法では10万円以下)が科されるので注意しましょう。

なお、似たようなものに「雇用契約書」がありますが、法的には労働条件通知書の方が優位となるため、混同しないようにしましょう。(雇用契約書については、コラム「なくてもOK?雇用契約書とは~記載事項や「労働条件通知書」との違い」を参照ください)

「労働条件通知書の電子化」の内容と4つの注意点

労働条件通知書は、労働基準法(15条1項)により、特に賃金に関する事項等5項目については「書面で交付すること」とされていました。
この「書面での交付」が明記されていた施行規則は、昭和22年の制定から改正されないまま今日まで続いていました。一方、時代はIT化が進み、書面としては法的効力のない雇用契約書はメールやFAXなどで取り交わすケースが増えていき、なんとも“ちぐはぐ”な状態が長く続いていたのです。
そこで2019年(平成31年)に、ようやく労働基準法第15条の規定に基づく労働条件の明示の方法に「電子手段での交付」が加わることになりました。
具体的な内容は、以下のようになっています。

出典: 厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「労働基準法施行規則」改正のお知らせ

※「G その他」について
書面の交付は義務付けられていないものの「明示する必要があるとされる」として、以下の事項があります。

  • 退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定・計算・支払方法、退職手当の支払時期
  • 臨時に支払われる賃⾦(退職手当除く)、賞与、精勤手当、勤続手当、奨励加給、能率手当、最低賃⾦額
  • 労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項
  • 安全衛⽣、職業訓練、災害補償・業務外の疾病扶助、表彰・制裁、休職に関する事項

これまで労働条件通知書を発行する際は、自社で書類を作成し印刷したのち、労働者へ送るために封をして発送する・・・といった作業が必要でした。電子交付が解禁されたことにより、この作業工程が大幅に短縮でき業務効率化にもつながると期待されています。

なお、パートタイム労働者については、すでにパートタイム労働法で電子メールまたはファクシミリでの明示が可能となっています。(同法施行規則2条2項)

ただし、労働条件通知書を電子交付する際には、以下4点に対して注意が必要です。

<労働条件通知書の電子交付・注意点>

①労働者が電子交付を希望しているかを確認する

電子交付は、労働者がその手段での交付を希望していることが前提です。当人の意向を聞かずに電子メールなどで労働条件通知書を送る行為は労働基準関係法令違反となります。
採用時や内定を出すタイミングで、労働者に労働条件通知書の交付方法について「従来の書面交付」または「電子メール・ファクシミリでの交付」いずれを希望するか、本人に確認しておけばスムーズです。

②本人のみが見られるように送信する

労働条件通知書の電子交付は、「電子メールほか受信者を特定して送ることができる電気通信」、つまり、本人だけが見られる電子的手段で交付することと定められています。
電子メールは、パソコンやスマートフォンのキャリアメール以外にも、Yahoo!メール、Gメールといったウェブサービスを利用したものも「可」とされています。また、LINEやFacebookなどのソーシャル・ネット・サービス(SNS)のメッセージ機能は「個別交付」とみなされていますが、個人のブログやホームページ等は第3者も閲覧できるとして認められていませんので、送信方法には注意が必要です。社内の誰もが閲覧、ダウンロードできるような共有フォルダに保管したり、アプリにアップロードしたりするのも厳禁です。「うっかり」のないよう、交付時には注意しましょう。

③書面として出力できるデータで送信する

電子交付を行う場合、そのデータ様式は受信した労働者がプリントアウト等して書面にできるものでなくてはなりません。労働者が受信後に出力できるツールや添付ファイルで送信するようにしましょう。
先に述べたように、手段としてSNSのメッセージ機能も「可」とされていますが、これらは印刷を前提として設計されていないため、メッセージとして送信にするのではなく、データをPDF化するなど工夫が必要になります。
特定のデバイスでしか見られない、一定期間でデータが閲覧できなくなる通信サービスなどは、出力要件を満たしませんので注意しましょう。

④労働者が受信したかを確認する

電子メールで交付した際によくあるトラブルが、「迷惑メールフォルダに当該メールが振り分けられ気づかなかった」「送信先となるメールアドレスを間違えていた」など、労働者が肝心のデータを確認できないというものです。
メールを送信しただけで終わらず、「受信したか」「内容を確認したか」を労働者に確認することが重要です。また、SNSなどの一部サービスでは、情報の保存期間が限られている場合もありますので、なるべく出力して保存するよう促すことも必要です。
交付手段が便利になった一方で、労働条件通知書の取り扱いのポイントを把握し、相応の確認作業を行っておかなければ、最悪の場合、罰則の対象にもなりかねませんので注意しましょう。

労働条件通知書に記載すべき事項

明示すべき労働条件には、絶対的明示事項と相対的明示事項があります。絶対的明示事項は書面などで明示することが求められており、相対的明示事項は口頭での明示も可とされています。(労働基準法施⾏規則5条3項4項参照)労働条件通知書には、これらを合わせて作成することが求められています。

出典: 厚生労働省 パンフレット抜粋PDF 労働条件の明示

ただし、労働条件通知書には特段決まった書式はありません。厚生労働省のホームページからもひな形がダウンロードできるので、自社でフォーマットを設定していない場合は、これをモデルに作成するとよいでしょう。

出典: 厚生労働省労働条件通知書 モデル様式PDF

契約社員やパート、アルバイトなどは、雇用形態によって労働条件通知書の明示事項には特例が発生します。パートタイム労働者への明示は、労働基準法で定められた絶対的明示事項に加え、下記の4項目も書面による明示が義務付けられていますので、忘れないようにしましょう。(パートタイム労働法6条1項、同法施⾏規則2条1項)

<パートタイム労働者への絶対的明示事項で追加される項目>

  1. 昇給の有無
  2. 退職手当の有無
  3. 賞与の有無
  4. 短時間労働者の雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口の有無

労働条件通知書を作成する際の注意店頭については、ホワイトペーパー「労務担当者が押さえておくべき労働条件通知書の書き方」も参照ください。

労働条件通知書の電子交付ができるクラウドサービスで
入社手続きも在宅勤務/テレワークに!

労働者が希望した場合のみという規則があるとはいえ、労働条件通知書の電子化は様々な人的コスト・物理的コストの削減につながります。
また、新型コロナウイルスの影響で在宅勤務/テレワークが主流となってきており、労働条件通知書の電子化解禁は「オンラインでも入社手続き業務が行える」と大いに期待されています。

在宅勤務/テレワークで入社に関する手続きを適正に行うには、労働条件通知書の電子交付にも対応しているクラウドサービスを利用することがオススメです。
例えば、奉⾏Edge労務管理電⼦化クラウドは、労働条件通知書の電子交付を希望する労働者に対してweb上で労働条件を明示し、労働者は同意ボタンを押すことで、その内容を理解・同意したというサインになります。その後、同意の有無を証明するものとして、労働条件通知書のPDFデータにタイムスタンプが付与され、コンプライアンスも担保することができます。

急速に広まった在宅勤務/テレワークで業務の見直しを求められている担当者も多いと思いますが、目に見えるところから着実に改善に取り組めば、ピンチをチャンスに変えていけるはずです。これを機に、ぜひ労働条件通知書も電子交付を進めてはいかがでしょうか。

関連リンク

こちらの記事もおすすめ

新規CTA