障害者雇用とは?企業の義務やメリット、助成金や制度を解説

このエントリーをはてなブックマークに追加
pic_post228_main

障害者雇用は、法律に定められた企業の義務であり、より良い社会を実現していくために検討すべき課題でもあります。大企業だけでなく中小企業も障害者雇用について理解を深め、取り組んでいく必要があります。
ここでは、障害者雇用の目的や企業が行うべき理由と得られるメリットのほか、障害者雇用によって利用できる助成金・支援制度などについて解説します。

目次

障害者雇用とは障害者の安定雇用を目的とした制度

障害者雇用とは、「障害者の雇用の促進等に関する法律」(障害者雇用促進法)において定められた制度であり、障害者の安定的な雇用を目的としています。まずは、障害者雇用という制度が設けられた背景や、対象者について詳しく解説します。

障害者雇用の背景

障害の有無にかかわらず、個々人がそれぞれの希望やスキルに合った仕事において活躍できる社会を構築していくこと――それが、障害者雇用の目的です。身体や精神に障害を持つ人も、障害を持たない人も、社会を担う一員に変わりはありません。障害者雇用の制度が設けられた背景には、すべての人との「共生社会」の実現という理念があるのです。
厚生労働省は、この共生社会を実現するため、民間企業や国、地方公共団体、都道府県教育委員会などに対する雇用義務の制定や各種助成制度を通して、障害者雇用を推進しています。

障害者雇用枠の対象者

障害者雇用枠の対象となる障害者のうち、身体障害者は「身体障害者手帳」の、知的障害者の場合は「療育手帳」の保有が条件となります。精神障害者については「精神障害者保健福祉手帳」を所持しており、さらに症状が安定していて、就労可能な状態である障害者が対象です。後述する、民間企業の「障害者の法定雇用率」の対象になるかどうかは、これらの各種手帳によって確認が行われます。

民間企業に対する障害者の雇用義務

厚生労働省は、43.5人以上の従業員を雇用している民間企業に対して、1人以上の障害者の常用雇用義務を課しています。民間企業に課せられた「障害者の法定雇用率」は、従業員の2.3%(国、地方公共団体は2.6%、都道府県等教育委員会は2.5%)です

<民間企業における雇用率設定基準>

法定雇用障害者数=企業全体の常時雇用する労働者の総数×法定雇用率(2.3%)

常時雇用の従業員が120人の企業だと、120人×2.3%=2.76人となります。小数点以下は切り捨てなので、2人以上の障害者雇用義務が生じます。
ちなみに、「1人」というカウントの方法は、勤務時間や障害の程度によって下記のように定められています。短時間労働者を「0.5人」としてカウントする場合があるので注意しましょう。

■常用労働者の数に対する障害者の労働者割合(障害者雇用率)
厚生労働省「障害者雇用率制度の概要」
※「新規雇用から3年以内、あるいは精神障害者保健福祉手帳取得から3年以内」および「2023年3月31日までに雇用され、精神障害者保健福祉手帳を取得」している精神障害者は1人とみなす。

出典:厚生労働省「障害者雇用率制度の概要」

設定基準を超える障害者を雇用している事業主に対しては、超過1人あたり月額2万7,000円の調整金や、月額2万1,000円の報奨金が支払われます。一方で、障害者の常用雇用義務を達成していない従業員100人超の企業は、不足1人あたり月額5万円の障害者雇用納付金を納めなければなりません。

日本の民間企業における障害者雇用の状況

日本の民間企業における障害者雇用率の達成割合は、厚生労働省が2021年12月24日に公表した「令和3年 障害者雇用状況の集計結果」によると47.0%でした。対前年比で1.6ポイントの低下となっています。

■企業規模別の障害者雇用状況
厚生労働省「令和3年 障害者雇用状況の集計結果」

出典:厚生労働省「令和3年 障害者雇用状況の集計結果」

主に、従業員1,000人以上の大企業で障害者雇用が進んでいます。また100~300人未満の中小企業でも、積極的に取り組みを行っている企業が半数以上です。
一方で、厚生労働省から障害者雇い入れ計画の適正実施勧告を受けたにもかかわらず障害者の雇用状況に改善が見られない企業は、2014年以来最多となる6社。厚生労働省によって企業名が公表されました。企業名が公表されるからというわけではありませんが、43.5人以上の従業員を雇用しているすべての企業にとって、障害者雇用は前向きに検討していくべき案件なのです。

障害者を雇用する手順

実際に企業が障害者を雇用するには、何をどのように進めたらいいのでしょうか。まずは計画的に準備を進めていく必要があります。雇用するだけでは、実際に就労する現場の従業員が対応できなかったり、障害者が働ける環境が整っていなかったりするトラブルが起きる可能性があります。
障害者を雇用する手順は、下記を参考にしてください。

<障害者雇用から定着までの手順>
  1. 障害者雇用に対する理解を深める
  2. ハローワークや地域障害者職業センターなど支援機関への相談
  3. 社員研修の実施等を通して現場の理解を深める
  4. 受け入れ部署の決定
  5. 就労に必要な備品等の整備
  6. 募集人数や採用時期の決定
  7. 募集~採用活動
  8. 雇用
  9. 雇用継続・定着のための施策実行

企業が障害者雇用を行うべき理由と得られるメリット

企業が障害者雇用を行うべき理由とは何でしょうか。法律に定められた義務を果たすだけではなく、企業が障害者雇用を行うことによって得られるメリットも多々あります。
ここでは、企業が障害者雇用を行うべき理由や、それによって得られるメリットを解説します。

障害者雇用によってSDGsに貢献できる

障害の有無にかかわらず、個々人がそれぞれの希望やスキルに合った仕事において活躍できる社会を構築していく共生社会の実現には、多様な人材を雇用する企業の存在が不可欠です。
企業による障害者雇用は、持続可能な開発目標(SDGs)の目標である「8 働きがいも経済成長も」「10 人や国の不平等をなくそう」「17 パートナーシップで目標を達成しよう」などにつながります。障害者雇用という企業としての社会的責任(CSR)を果たすことで、取引先や株主などからの信頼を高められるでしょう。

障害者雇用に関する各種助成・支援を受けられる

障害者雇用によって、企業は行政などから各種助成・支援を受けられます。
労働力不足の現代において、自社の労働力を確保できるだけではなく各種助成・支援も受けられるのは、企業にとって大きなメリットといえるのではないでしょうか。

合理的配慮による業務効率化が期待できる

障害者が企業でストレスを感じることなく働く環境を整えるためには、障害者のための個別の調整や変更、いわゆる「合理的配慮」が必要となります。
これまで当たり前に行っていた業務フローをあらためて見直すことは、それまでの企業内の属人的な業務手順を見直すいいタイミングです。誰にとってもわかりやすく無駄のないフローへの改善は、結果として企業としての業務効率化につながるはずです。

企業が障害者を雇用すると受けられる助成金や支援制度

企業は障害者を雇用するにあたって、さまざまな助成金や支援を受けられます。障害者雇用においてはどのような助成金・支援制度があるのかを理解し、積極的に活用していきたいところです。ここでは、代表的な助成金・支援制度をピックアップしました。

企業が障害者の適性を確認できる「トライアル雇用助成金」

「トライアル雇用助成金」とは、企業がハローワークや民間の職業紹介事業者から紹介を受けた障害者を、一定期間雇用した際に支給される助成金です。企業は障害のある求職者の適性やスキルを確認し、継続雇用へ移行するかどうかを判断できるため、障害者雇用に際して不安を抱える企業にはおすすめです。
トライアル雇用助成金は、勤務時間が異なる2つのコースが設定されています。

・障害者トライアルコース
障害者トライアルコースを使って障害者を雇用すると、1人あたり月額最大4万円の助成金が支給されます。雇用期間は原則3ヵ月間です(テレワーク勤務だと6ヵ月まで延長可)。精神障害者の雇用期間は6ヵ月となり、最初の3ヵ月は1人あたり月額最大8万円、4ヵ月目以降は月額最大4万円の助成金が支給されます。

・障害者短時間トライアルコース
精神障害者や発達障害者によっては、週20時間以上の勤務が難しい場合があります。そのような障害者を、短時間から雇用を始めるのが障害者短時間トライアルコースです。雇い入れ時の週所定労働時間を10時間以上20時間未満として、障害者の適応状況や体調などに応じて、同期間中の20時間以上勤務を目指します。最長12ヵ月間、1人あたり月額最大4万円の助成金が支給されます。

障害者の継続雇用で支給される「特定求職者雇用開発助成金」

「特定求職者雇用開発助成金」とは、高齢者や就職氷河期世代など就職が難しい求職者を、継続的に雇用した企業に支払われる助成金制度です。障害者に関しては、「特定就職困難者コース」と「発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース」の2コースが用意されています。いずれも、トライアル雇用助成金の障害者トライアルコースとの併用も可能です。ただし、該当の障害者を雇用日から過去3年以内に雇用していた場合は、助成金は支給されないため注意が必要です。

・特定就職困難者コース
特定就職困難者コースは、企業が重度の身体・知的障害者、45歳以上の身体・知的障害者や精神障害者などをハローワークなどの紹介で継続的に雇用すると適用される制度です。
障害者の状況や企業規模などに応じ、1~2年間で30万~240万円の助成金が支払われます。

・発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース
発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コースは、発達障害者やもやもや病などの難病患者をハローワークなどの紹介によって継続的に雇用した場合に適用されます。労働時間や企業規模に応じて、1~2年間で30万~120万円の助成金が支給されます。

障害者の正規雇用で支給される「キャリアアップ助成金」

非正規雇用労働者の企業内でのいわゆるキャリアアップを促進するため、正規雇用化や処遇改善などの取り組みを実施した企業に対して支給されるのが、「キャリアアップ助成金」です。
障害者正社員コースでは、下記のいずれかの場合に1年間で33万~120万円の助成金が支給されます。

<障害者に対するキャリアアップ助成金の支給条件>
  • 有期雇用の障害者を正規雇用した場合、あるいは多様な正社員または無期雇用労働者に転換した場合
  • 無期雇用の障害者を正規雇用、あるいは多様な正社員に転換した場合

このほか、キャリアアップ管理者を置き、キャリアアップ計画書の作成・提出を行うことが条件となります。
ちなみに、ここでいう「多様な正社員」は、一般的な正社員に比べて、勤務地・勤務時間・職務内容などが限定的な正社員を指しています。

週20時間未満の障害者を雇用する事業主へ支給される「特例給付金」

週20時間未満の障害者を雇用する事業主に向けた「特例給付金」は、短時間なら就労できる障害者の雇用機会を確保するために設けられた制度です。障害者手帳を持つ障害者を、週10時間以上20時間未満の短時間雇用した場合、100人以下の事業主には1人あたり月5,000円、100人超の事業主には1人あたり月7,000円の給付金が支給されます。この特例給付金は、中長期にわたり20時間以上の勤務に移行できない障害者もいることから、支給期間が限定的ではない点が大きな特徴です。ただし、1年以上の長期雇用が見込まれる場合に限られますので、ご注意ください。

在宅勤務の障害者への発注で支給される「在宅就業障害者特例調整金」

「在宅就業障害者特例調整金」は、自宅や就労移行支援事業所などで働く障害者に対し、業務を直接発注、あるいは在宅就業支援団体を介して発注し、対価を支払っている企業に支給される助成金です。
ある企業が年間で在宅就業障害者へ支払った総額に対して評価額で割り、それに調整額を掛けて特例調整金を算出します。

例)企業が在宅就業障害者に年間250万円分の発注を行った場合

250万円(発注総額)÷35万円(評価額)=7(小数点以下は切り捨て)
7×2万1,000円(調整額)=14万7,000円(特例調整金)

障害者を雇用する企業への「就労支援機器の紹介・無料貸出」

独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)は、障害者が就労する際に役立つキーボード・マウス補助具や筆談支援機器などの紹介・貸出を行っています。
下記サイトにて紹介されている機器は、原則6ヵ月間、無料貸出が可能です。

出典:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構「就労支援機器貸出について」

企業が障害者を雇用する際の注意点

障害者雇用にあたって、企業はどのようなことに注意すべきでしょうか。ここでは、企業が障害者を雇用する際の注意点をご紹介します。

社内で人的・物的な受け入れ態勢を整えておく

障害者を雇用するにあたって、企業は従業員に対してどのような点に気をつけるべきなのか、障害者差別となる行為とはどのようなことか説明し、周知と理解をしてもらう必要があります。同時に、障害に応じた職場環境を整えておくことも重要です。
障害者がストレスなく働くための支援機器導入などにコストがかかる場合もありますが、高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)の機器を借りれば、一定のコスト削減は図れるでしょう。

業務上のミスマッチが起きないようにする

障害者を雇用して実際にどのような仕事をしてもらうのかは、個々人の障害の程度や内容によって判断する必要があります。雇用しようとする障害者に何ができるのか、何を苦手としているのかなどを事前にヒアリング、あるいはトライアル雇用などの制度を活用して見極め、無理なく安全に行える業務を託してください。
また、業務に入る際にも、それぞれの障害の程度に合った説明を行うとともに、きめ細やかなフォローをしていく仕組みを構築するようにしましょう。

周囲の従業員に過度な負担をかけないようにする

障害者雇用で雇用された従業員が働き続けるためには、周囲の従業員の配慮やサポートが不可欠です。しかし、いっしょに働く従業員が差別をしないよう配慮したり、コミュニケーションをとろうとしたりすると、周囲に大きな負担がかかるかもしれません。
障害者の周囲の従業員に理解を求めることは必要ですが、彼らの負担にならないような業務フローや仕事内容を検討する必要があります。また、障害のある従業員へのフォローは、入社後も継続して行っていくものです。障害のある従業員は、業務の状況によって障害の程度が変化することもありますので、周囲の従業員にもストレスがなく働けるように配慮する必要があります。

障害者雇用に関する相談先

障害者雇用に関して興味があり、もっと詳細が知りたい、もしくは不明点がある総務人事担当者は、下記の窓口に相談してください。

障害者に職業リハビリテーションを提供する「地域障害者職業センター」

地域障害者職業センターは、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)が運営しており、全国の各都道府県に1ヵ所ずつ設置され、障害のある人に職業評価、職業指導、職業準備訓練、職場適応援助などを提供している施設です。障害者の雇い入れ計画や必要な配慮、業務指導方法などについての専門的な助言や、助成金の申請受付などを行っています。

障害者の求人紹介などを行う「ハローワーク」

ハローワーク(公共職業安定所)は、障害者求人の受付や紹介、トライアル雇用の手続きなどが可能な国(厚生労働省)の機関。障害者の雇用管理上の配慮について相談をしたり、一部助成金の申請をしたりすることも可能です。設置箇所は全国544ヵ所と多いため、気軽に活用しやすい相談窓口です。

障害者の適応支援を行う「障害者就業・生活支援センター」

障害者就業・生活支援センターは、全国336拠点が設置され、障害者の就業支援と生活支援を一体的に行う機関です。基本的には障害者の仕事や生活の相談・支援を行う機関ですが、企業からの雇用管理相談にも応じていて、障害者の職場適応支援を行っています。

障害者雇用後に企業が活用できる支援制度

企業は雇用した障害者について、継続して支援を行っていく必要があります。企業が障害者を従業員として雇用した後も利用できる、支援制度について解説します。

ジョブコーチ(職場適応援助者)

ジョブコーチ(職場適応援助者)は、障害者が職場に適応する際に課題を抱えた場合、障害者・企業双方に対するアドバイスを行う存在です。企業には、雇用した障害者の障害特性に配慮した雇用管理を支援します。
ジョブコーチには下記の種類があります。

<ジョブコーチの種類>
  • 配置型ジョブコーチ:地域障害者職業センターに在籍
  • 訪問型ジョブコーチ:社会福祉法人などに在籍
  • 企業在籍型ジョブコーチ:障害者雇用企業に在籍

一般的にジョブコーチは、就労当初に週3~4日程度の集中的支援を行い、その後、週1~2日の支援に移行。最終的には、数週間から数ヵ月に1回のフォローアップに入ります。

障害者雇用支援人材ネットワーク事業

障害者雇用支援人材ネットワーク事業は、障害者を雇用、あるいは雇用を予定していて、雇用管理に際して具体的な助言や支援を希望する企業などに対し、さまざまな分野の専門家(障害者雇用管理サポーター)が障害特性を踏まえた雇用管理(合理的配慮の提供、企業内教育・人的環境整備など)に関する助言を行う仕組みです。専門分野や障害者種別、地域、料金の有無等で、条件に合うサポーターを障害者雇用支援人材ネットワークシステムで検索して依頼します。

多忙な総務業務の自動化は「総務⼈事奉⾏クラウド」がおすすめ

障害者雇用に対する企業の取り組みは、社会的責任(CSR)を果たすだけではなく、業務効率化などにもつながります。法律に定められた企業の義務ではありますが、前向きな姿勢で社内における障害者の雇用を検討したり、最寄りのハローワークなどで相談したりするところから始めてみてはいかがでしょうか。
ただし、人事労務業務は「仕事は増えても人は増えない」部門のひとつ。今後予想される「一人総務時代」を見越し、業務の効率化を図るなら、バックオフィス業務をアシストしてくれる総務人事系システムをおすすめします。
「総務⼈事奉⾏クラウド」なら、法令文書や社内用の書類、リスト作成などは、フォーマットやパターンを選ぶだけで、都度手作業することなく、業務を自動化することができます。
「総務⼈事奉⾏クラウド」の活用を、ぜひご検討ください。

「総務⼈事奉⾏クラウド」

山本 喜一

■監修者
山本 喜一

特定社会保険労務士、精神保健福祉士
大学院修了後、経済産業省所管の財団法人に技術職として勤務し、産業技術総合研究所との共同研究にも携わる。その後、法務部門の業務や労働組合役員も経験。退職後、社会保険労務士法人日本人事を設立。社外取締役として上場も経験。上場支援、メンタルヘルス不調者、問題社員対応などを得意とする。

関連リンク

こちらの記事もおすすめ

新規CTA